【短編】もしも潮田渚が殺人鬼に目醒めたら。【次回投稿未定】 作:うたたね。
大体半年ほどですか、本当に申し訳ないです!
書いては消して、書いては消してを繰り返し、ようやくここまで書き終えました!
スランプ明けで本調子は取り戻せていませんが、とりあえず、最新話どうぞです。
今回は最終章のプロローグのようなものです。
あと、渚くんは出て来ません。
3月12日。
殺せんせー暗殺期限まで、残すところ5時間。
地球が滅びるかもしれない日が3月13日。つまりその前日までに殺せんせーを暗殺出来なければ、地球が滅びるのはほぼ確定的と言える。
反物質のサイクルにはズレというものはない。
来たる時になれば依り代の体を飛び出し、今も空に浮かぶ三日月のように地球も破壊されてしまうだろう。
それを防ぐ為に政府は殺せんせーの提案を受け入れ、
そもそも、世界各国のトップ達は中学生が超生物を暗殺出来るなんて本気で思ってはいなかった。せいぜい暗殺出来ればラッキー程度。来たるべきその時まで時間を稼いでくれればそれで良かったのだ。
1年という短期間で超生物の
それが彼らの真の目的であり、絶対に失敗してはならない、絶対に
結果、彼らの目的は無事に終わり、今こうして──
──超生物を完全に捕縛することに成功していた。
「……ふふっ」
殺せんせーは、空を見上げて笑う。
視界の先にあるのは夜空ではなく、無機質な光を放つバリアのようなもの。それは、触手を持った生物だけを閉じ込める対先生用バリア。
地中深くまでバリアは覆っており、超生物は完全に逃げ場を失っていた。
完璧なまでの詰み。
完全なまでの敗北。
この一年、数々の殺し屋を退けて来たマッハ20の超生物は、人類の叡智に敗北した。
ここに閉じ込められて、もうかなりの時間が経つ。
この鳥籠から逃げようと試みたけれど、逃走するのは無理だと理解した。
そして、もう無駄な足掻きはせず、残された時間は生徒たちの為に何かを残すことにした。
「……これで、終わりですねぇ」
卒業アルバムも作り終わり、更に生徒たちに対して感謝の気持ちを込めて、アドバイスブックを作った。
消えてしまうことは、死ぬことは、怖くない。
超生物の自分に──今更恐れるものなどあろうはずもなくて。
「およそ、5時間くらいですか……」
バリアの先にあるのは、強烈な光。きっと、あのレーザーが再び発射されるのだろう。今度は避けることすら出来ない範囲で。
残された時間は──少ない。
☆ ☆ ☆
「──『天の矛』と『地の盾』の調子はどうだ?」
「多少の波はありますが、安定レベル3を維持。異常は見られません。予定通り、期限ちょうどに発射出来るでしょう」
「そうか。ならばその状態を維持してくれ」
男の言葉に研究者は「はい」と返事をしてモニターに目を向ける。男は研究者から教えてもらった情報に満足気に頷き、同じくモニターを見つめる。
そこに映っているのは、椚ヶ丘中学校のE組の学び舎。超生物の根城だ。
(『天の矛』と『地の盾』共に異常なし。くくっ、『計画』は順調だな)
男は、『PROJECT:LAST ASSASIN』の大役を任された──いわば全人類の命を握っている立場だ。
彼が超生物の暗殺を失敗すれば、人類は滅亡する。……いや、超生物が地球と共に消滅する可能性は1%未満なのだが、しかし、だからと言って野放しにするわけにはいかない。
1%という確率は、地球を賭けるには危険すぎる博打だった。
……いや、そもそも確率がゼロだったとしても、彼は暗殺を決行していただろう。
人間だった頃の彼は伝説の殺し屋。あの伝説の傭兵クレイグ・ホウジョウに匹敵するほどの実力と危険度を誇る。そんな相手を野放しに救うなど、容認できるはずもない。
その結果、あの中学生たちに好き勝手言われようとも男には関係ないことだった。
今のところ計画は順調だ。
このまま行けば、確実に超生物は暗殺出来るだろう。
『天の矛』と『地の盾』を破る手立てなど、あの超生物は持っていないのだから。
「明日が待ち遠しいな」
そう言って、男はコーヒーを口に含む。
癖になる苦さが口の中に広がっていく。
そんな時だった。
「し、失礼します!!」
バタン! と激しくドアが開く。
そこには息を荒くしてこちらを見る黒いスーツに身を包んだ男が立っていた。
そんな彼を見て、男はただ事ではない何かが起こったのだと察した。
「一体どうした? 何かトラブルでも──」
「──捕らえていた中学生たちが逃走しました!」
バカな、と男は驚愕する。
警備は万全、鍵も厳重に掛けていた。逃げる隙などなかったはずだ。一体どうやって──?
「クソッ……! どうやって逃げ出しかは知らんが、侮り過ぎていたか!」
「どうしますか?」
「……いや、放っておいても構わん。山の外周には大量の警備、そこを抜けられても山中にはホウジョウの部隊がいるからな」
そう、たかが一年間暗殺術を学んだ程度の中学生が、伝説の傭兵率いる部隊を突破出来るはずがない。
「残念だが、君たちが
モニターを見てそう呟く男。
そんな彼の名は────。
☆ ☆ ☆
「──残念な坊や達だ。遊技場と死地の区別を教えようか」
クレイグ・ホウジョウと彼が率いる部隊は、ここに向かっている多数の気配に気がついていた。
「隊長、それでは我々はそれぞれの
「ああ。迅速にな」
ホウジョウからの返事を聞いた瞬間、ホウジョウ以外の全員が一斉に動き出す。それぞれの持ち場に付き、
「……ふむ。やはりだが、『例の少年』は居ないのだな」
気配からE組の人数が1人だけ足りないことを感じ取った。
司令官の男からは、もしも『彼』が来たら、最優先で無力化しろとの命令を受けている。しかし、どうやらこの多数の気配の中に、その『彼』はいないようだった。
(出来れば、一目でも見て置きたかったのだがね……『切り裂きジャック』)
一度だけだが、司令官の男に映像を見せてもらった。
その時、彼は対象の人間を殺すことは出来ていなかったが、それでも彼の殺人鬼としてのポテンシャルはかなり高く、ホウジョウの本能をひしひしと刺激していた。
(真名は潮田渚だったか。……ふふ。あれはまさしく逸材だな)
あれほどの存在なら、確かに司令官の男が無力化を強いたのも無理はない。遠くない未来、彼の才能はもっと最低なものへと開花するだろうから。
どうやら、司令官の男は戦闘能力こそ皆無だったが、観察眼はたいしたものらしい。ただ、己の戦力を過信してしまうのが玉に瑕だが。
「……さて。彼らも我々の狩場に侵入して来たようだ」
部下達も、思いの外苦戦しているようだ。
中々どうして面白い集団だ、E組──暗殺教室の彼らは。
ホウジョウは笑みを浮かべて地面を強く蹴る。その瞬間、彼の体は弾丸の如く飛んで行き、木と木の間を渡って行く。
(──見つけた)
距離にして7メートル。そこに保護色である黒を基調とした戦闘着を着込んでいる集団がいた。
この程度の距離、ホウジョウにとってゼロに等しい。
「! 避けろ!!」
赤髪の少年が叫ぶが、一足遅かった。ホウジョウの強烈な一撃に、1人が錐揉みしながら吹き飛ばされる。
まず──1人。
「……失礼した。君達の力をあまりに低く見積もっていた」
ホウジョウは、不敵に笑って眼鏡に手を伸ばす。
そんな彼を見て、E組の
彼らは察した。
ここからが、正念場だと。
「──これより、本当の私を教授しよう」
伝説の死神と同じ『伝説』を冠する傭兵が牙を剥く。
殺せんせーの暗殺期限まで──あと2時間。
どうだったでしょうか?
今話はあまり面白みはないかもしれませんが、次話から色々と動かします。
重ね重ねになりますが、本当に遅れてすいません。
次話はなるべく早く、投稿したいと思います。
それでは!