上手な上司からの愛されかた   作:はごろもんフース

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久々すぎておかしなところありそう
あったら直します


七話:お茶会

「それじゃ、始めましょうか」

「そうですね」

「ぐぅ」

「……」

 

 華琳の一言に対して三人はそれぞれ異なる反応をした。

稟はキリっとした表情で真面目に、風は何時ものように眠り、千里と言えば眉を顰め無言である。

華琳は国を纏める王で本来であれば目の前で眠ったり、無言で眉を顰めるような態度は許されない。

しかし、当の本人と言えばそんな事を塵にも気にしてないのだろう。

三人の反応に対して優雅に微笑み答えるだけであった。

 

 そんな四人が居る場所は、前回お茶会を開いた場所だ。

前と同じようにお茶とお菓子が用意されており、桂花は居ない。

まさしく前回の焼き増しの様なお茶会であるものの、前回と違う所は千里が追加されたことだろう。

 

「何故、僕までお茶会に」

「常に新鮮な事を取り入れていかないといけないと思ったのよ」

「単に思いついただけだよね?」

「そうとも言うわね」

 

 ここに自分が居る事に対して不満に思い唇を尖らせて千里は華琳に噛み付く、その口調はやはり友人感覚の軽いものであった。

 

「ふふ」

「はぁ……」

 

 しかし、華琳と言えば楽しそうに笑うだけ。

千里はそんな彼女を少しの間ジト目で見た後、追及する事を諦めたのか一息ついてそっぽ向いた。

暫くの間、そんな千里を華琳が楽しむように見つめた。

 

「それで今回のお茶会の議題は?」

「あら、拗ねるのはもうお終い?」

「僕にはそっちの気はないよ。稟の方でも構ってあげなよ」

 

 楽しげな視線を受けてた千里は、一息つくと何事もなかったように正面に向き直りお茶を啜る。

からかわれている事に気づいたのだろう。

落ち着いて軽くかわせば、華琳が残念そうにする。

そんな彼女に先ほどから二人の遣り取りを見て、羨ましそうにしていた稟に会話を渡した。

 

「……ぶはっ」

「おぉ?」

「これがなければ可愛がってあげるのだけど――」

 

 会話を振られた稟と言えば、千里の一言で華琳に構われる自分を想像したのだろう。

直ぐに顔を真っ赤にさせそのまま鼻血を噴出し、背を背けた。

鼻血を噴出するが自分の服と手しか汚さぬあたりに慣れを感じさせる。

 

「あー……またですか、とんとんしましょうねー」

「ふがっ」

「慣れてるというか、よく死なないね」

「不思議よね」

 

 鼻を押さえる稟とそんな彼女の首を後ろから叩いてあげる風。

そんな何時もの光景に華琳だけでなく千里も溜息を付く。

そして、千里は気だるげに視線を外すと華琳の後方にある木へと視線を向けた。

 

「居るし、仕事はどうした」

「んー仕事も捌けた頃合で、余裕が出来たんでしょうね」

 

 視線の方向には木の裏に隠れるつもりもない桂花が睨みを利かせている。

主に新参者である千里にだ。

 

「なんか見られてるよー」

「自分が除けられてるのに何故お前がって所でしょうか?」

「自分自身が撒いた種なのですけどね」

 

 華琳参加のお茶会に筆頭軍師である桂花からの敵意。

並の神経であれば、これだけで胃に穴があくほどのものだ。

 

「あー……もう、さっさと終わらせよう」

「あら、私のお茶会がそんなに嫌なのかしら?」

 

 そんな空間で千里が根を上げて言えば、今度は華琳が攻める。

 

「虐めるの楽しい?」

「物凄く」

 

 華琳は千里の問いに対して満面の笑みで答えた。

そんな彼女を見て、千里は仕える人を間違えたかなっと多少なりとも思った。

無論口にせず、しかし顔に出してわかりやすく教える。

そうすれば察した華琳がからからと笑った。

 

「それで今回の話ってのは?」

「桂花のことね」

「そうですよね」

 

 ある程度己の主君を楽しませた後、千里が改め直し華琳に今回集まった経緯を聞いてみればそう答える。

そもそも前回と同じく桂花を抜いてのお茶会。

話の内容は皆が皆、察しが付いた。

 

「桂花に新しい補佐官を付けて少し経つけど……悪化してないかしら?」

「……」

「ぐぅ」

「あー……」

 

 華琳の言葉に三者三様の反応を示す。

 

「補佐官へのあたりはなくなりましたが」

「ぐー」

「関係ない男性へのあたりがきつくなってるね」

 

 最近の桂花の辺りの様子を思い出し、現状の確認をする。

三人が最近の様子を思い浮かべれば、華琳の言うとおりの状態だとはっきりと判った。

前までいちいち噛み付かなかった相手まで噛み付いている始末であり、前よりも悪化と言っていいだろう。

 

「仕事が貯まっていた事による精神的な疲れとか?」

「怒りやすくなっているかもと思ってましたが……」

「私から見ると、どうも補佐官にあたるのを我慢しているように見えるのよね」

「ふむ」

 

 仕事が貯まれば、怒りやすくもなるだろうと告げてみるも華琳は否と答える。

その答えにそれぞれが考え出す。

三人の中に華琳の目を疑う者はいない。

稟は静かに目を瞑り、千里は顎に手を当て机を見て、風は眠りこけた。

 

「何か弱みを握られていてと言うのはどうでしょうか?」

「桂花が脅されて?」

「稟ちゃん……信頼出来る人物とは一体」

「脅す九十九……あれかな。最近流行りの壁ドン的な?」

 

 最初に話したのは稟だ。

稟は桂花が脅されているのではと言う考えを伝えた。

九十九を桂花に推薦をしたのは稟である。

風は取られた理由を思い出て平然とそんな事を言いのけた事に唖然とし、千里はありだなと考え込んだ。

 

「私の視点ではってこと、風だって全てを知っている訳でもないでしょ?」

「まー……そうですけどね」

「猫被りをしていた可能性もありますしね」

 

 稟はすまし顔でお茶を啜り、そんな事を言う。

風はそんな彼女にじと目で対応し不満ですとばかりに睨み付ければ、軽く微笑んで冗談ですけどねと稟が呟く。

 

 稟とて可能性の話をしただけであって、本気ではなかったのだろう。

その事に風と千里は言わなければいいのにといった目で見た。

 

「どうかしました?」

「不思議に思っただけよ。稟と風に……それに千里までも気に入るなんて、改めてどんな男なのかと」

 

 そんなやり取りを三人でしていれば、何やら興味深そうに眺めている華琳に気付く。

気付いて聞いてみれば、華琳が話せと言った。

実際に華琳が九十九と話すのが手っ取り早いのだが、今の状況が状況だ。

華琳が九十九に会いに行けば自然と桂花に会うことになる。

そんな状況を見た桂花はどう思うだろうか?

 

「そうね。一応稟の言葉もあるし、改めて楊修と言う男を教えて頂戴?」

「はっ、私の知る限りを」

「了解ですよー」

「あー……最初に会ったのは何処でだっけかな?」

 

 故に楊修と言う人物を知るためにお茶会を続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ちなさい、その話は本当なの?」

「うん、この間の飲み会の時に聞いたね」

 

 話は続き、それぞれが『会ったのは書庫で――』『好きな事は――』などなど情報を渡す、もとい思い出話に花を咲かせた。

最初こそ、華琳も楽し気に聞いていたのだが千里が新しい話題を話始めた際に眉を顰めた。

 

 千里が話した内容はこの間の補佐官就任の時の飲み会での話題である。

 

「ふっふっふ、風と稟もこの話は知らなかったでしょ」

「喧嘩売ってます?」

「あっはっはっは」

 

 と言い放つ千里の顔は誰がどう見ても楽しそうな顔で煽っていた。

そんな表情にイラっときた風が千里をバシバシと叩くも千里は楽しそうに笑うだけであった。

二人がじゃれている横で、本当である事を知った華琳は考え込んだ。

 

「華琳様?」

「なるほど、納得したわ(・・・・・)

「うん?」

「何のことです?」

 

 暫く考えて込んでいれば、ふいに顔を上げて一人納得した。

そんな華琳を見て三人は何のことだと不思議そうに見つめる。

 

「ふふふ、思わぬ収穫があったわね」

「いや、そろそろ僕達にも分かるように言って欲しいのだけど」

「今欲しい子が居るのよ」

「はぁ」

「ぐぅ」

「あっ……(察し)」

 

 華琳のにやにやと笑いながら言った言葉に三人は、興味が逸れた。

 

「何度も会いに行ったのだけど、病弱だって言っていい返事をくれなかったの」

「それは何とも脈なしですね」

「えぇ、それでも諦めきれずに通っていたら『そこまで言うなら、儂が求めるヤナギにでも会わせてくれんかのぉ』と言われたのよ」

「なるほど、楊修……(ヤナギ)ですか」

「むぅ」

「持って来いでなく、会いたいねぇ」

 

 華琳の言葉に風の機嫌が悪くなるも、これはばかりはしょうがないことである。

未だに風と九十九は一線を超えていないどころか、付き合ってすらいない。

そんな状況で新たな恋敵らしき人物などもっての他であった。

しかし、華琳が欲しいと言った人物なのだ、有能である事に疑いはない。

そうなると国の事を考えても引き入れた方がよいのだ。

風はそこまで考えてそれ以上は口を閉ざす、ただし眉を顰めることは忘れなかった。

 

「まぁ、欲しい子の事は置いといて。原因が分かったかも、今考えたらこれかなってのがあった」

「へぇ」

 

 不機嫌な風を見てさしもの華琳も少しばかり困り顔となった時だ。

千里が気まずげに言葉を続けた。

 

「うん、思い出したけど荀彧様の妹さんと仲が良いって話もあったんだよね。その……交友関係の中に」

「……」

「はぁ、それが原因ですか」

「決まりね」

 

 最後の言葉がトドメとなる。

風は眠る演技もせず不機嫌顔も忘れて机の上に突っ伏した。

そんな彼女を哀れに思ったのだろう。

両隣に座っていた稟と千里が励ますように背中を擦った。

 

「つまり、桂花が楊修に対して遠慮しているのは妹との関係を気遣ってってことね?」

「現状だとそれかと、桂花殿は長女と聞いております。親からの催促などあっても不思議ではないと考えられます」

「……」

「生贄ってことね。そりゃ、厳しく当たって『こんな人が義姉になるなんて嫌だ』とか言われたら絶望だもんね」

 

 原因と思われることが分かり、さてどうしようと三人は考え込む。

一番手っ取り早いのは、楊修と桂花の妹が婚約することであるが肝心の相手は袁紹の元に居り無理であった。

何より風のやる気にも直結することなので慎重に事を運ばないといけない。

 

「一つ策を練った」

「へぇ……それで千里、どうやるつもりかしら」

「まずは――」

 

 暫く沈黙が続くも、その沈黙を破ったのは千里であった。

千里は先に言われて悔しそうにしている稟を横目に口火を切り、策を一つと指を立て説明をしていく。

その間、風が身じろぎ一つせず、言葉一つ話さなかった。

 


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