それは私にとって、生き甲斐だった。
自分の職業が嫌だった訳では無い、むしろこの荒んだ世界で社畜として働いて居る彼等よりはよっぽど良い位置に居るだろう。声を出すのは好きだ、演じるのが好きだ、だから
だから、自分の職業が嫌だった訳では無い、むしろ好きだった、生き甲斐だった。それがいつからだろうか、金を稼ぐための職、としか思えなくなったのは。
_______________ユグドラシル。
二一二六年に発売された、DMMO-RPGのゲームだ。ユグドラシルと言えば、他のDMMO-RPGと比べても自由度が高く、人気も凄かった。この説明は、有名すぎてしなくても皆知っているだろうが…。
かく言う私も、ユグドラシルをやっていたプレイヤーの1人だった。
そう、やっていた、1人だった。
辞めたいと思って辞めた訳じゃない、辞めたくなど無かった、いや、データは残っているんだ、辞めたわけじゃない。そんな言葉が心の中で繰り返される。仲間を裏切った様な、そんな罪悪感が心の中にずっと残っている。
月額利用料金無料のユグドラシルに、私やギルドの仲間達は、結構な額を注ぎ込んでいた。一番凄かったのは…ギルド長だろうか。懐かしい、課金くじにボーナスを注ぎ込み、ようやくレアデータを手に入れたギルド長、しかし私ともう一人の仲間は、昼飯一回分程度でそのレアデータを当ててしまった。正確には彼女が昼飯一回分、私は昼飯三回分といったところだったが。
懐かしい。
一体、どれくらいの時が経ったのか。
私はユグドラシルの為に働くようになっていたはずなのに。結果的に、ユグドラシルから離れる事になっていた。自分で言うのも何だがこの声は金になる、パトロンまでついた、疚しい事は何も無かったし金には困らないからと喜んでいたのに。
パトロンがついてから仕事は増えた、増え過ぎた、ユグドラシルをやる暇さえ無くなっていた。仕事を終え家に帰れば食事をしてシャワーをして寝る、朝というにはまだ暗い時間に起きて仕事場に向かい、夜まで声を出して、楽しみと言えば仕事仲間と話す事だけだろうか。
たまにユグドラシルをやる時間が取れれば課金、課金、課金、パトロンからの金なんてこの為にあるのだから。
課金して課金して、データが被り要らなければ他の人に譲って、そしてまた暫く仕事のせいで来れなくなって。
そうしているうちに、もうどれくらいの時が経った?
ユグドラシルをやれなくなって、ギルドに行けなくなって、ギルドメンバーが減っていって、きっと私も減った一人だと思われていたのかもしれない。仕方が無い、さみしい、行きたいのに。
そして仕事漬けの毎日。
疲れた。
そんな私に追い打ちをかけるメールが一通。
ギルド長、モモンガさんからの呼び掛け。と同時に、私にとってはユグドラシル終了のお知らせでもあった。
ユグドラシルが、終わる…?私の生き甲斐が無くなってしまう?仕事のせいでユグドラシルから離れていた私はそんな事さえ知らなかった。
行かなくては。モモンガさんにも他の人にも会いたい、せめて最後くらい顔を出して、それで…。
それで?
考えていても仕方が無い、私はマネージャーに体調を崩したと嘘をついて、休みを無理矢理取りユグドラシルへとログインした。
無理矢理休んで良かったと、後から思った。
まさかこんな事になるなんて。
それは、良い意味での驚き、私は心の中で神に感謝していた。