想い 後半
スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持ち、モモンガは
モモンガもhematite。も、他にギルドメンバーが来るならばこの部屋で待機していただろう、しかし来る可能性が無いに等しい事は分かっていた。モモンガは黙って歩き、hematite。もそんなモモンガを見ながら歩く。
このナザリック地下大墳墓は、大きい。説明していると長くなるので割愛しよう。
しばらく歩いて何度か角を曲がると、前方からメイド服を着た女性が歩いてくる。そして二人に近付くと深いお辞儀をした。彼女は所謂NPCで、AI、プログラムによって動いている。モモンガは手を軽く上げ応える。hematite。は…ガウ、と言いたかったが我慢した。変わりにピョコンと笑顔のマークを出す。声は中の…櫻木知恵のものなのだから。
hematite。はメイドをじっと見る。モモンガもしげしげとメイドを眺めている。
「あぁ…そうだった。この頃から『メイド服は
その言葉は漫画家をしているホワイトブリムのものだった。hematite。も思い出し、今描いてる漫画もメイドがヒロインでしたね、と打ち込む。それを読みモモンガは、苦笑する。作り込みのせいでアシスタントの人を泣かせてるようですよ、と。
メイドについても語りたいが、こちらも割愛しよう。モモンガはメイドに仕事、ご苦労と声をかけまた歩き出す。階段を降りていくと最下層についた。周囲は広間になっていて、複数の人影があった。
執事服を着た老人…といってもよぼよぼではない、しっかりした男だ。名前はセバス。その後ろには六人のメイドが居る。彼女達は戦闘メイド、チーム名はプレアデスだ。
モモンガはNPCである彼等に、付き従え、と命令し動かす。hematite。はそれを見つつ、最終日なのだから許されるだろうと考えていた。
…仲間の作った部屋を通り過ぎ、最後に着いたのは、ナザリック地下大墳墓最奥にして最重要箇所、王座の間である。モモンガは思わずため息を漏らし、hematite。もほう、と息を漏らした。モモンガとhematite。は足を踏み出し、王座の横に立つNPCに目を向ける。
彼女の名はアルベド、階層守護者統括という地位を与えられている。モモンガはアルベドを見て何か思うところがあったのだろうが、hematite。も居る手前、言わなかった。
「そこまでで良い」
NPCに声をかける、が、所定の文言でなければ命令を受け付けないため、止まらない。モモンガは待機、と言い直した。王座の前まで行くと、今度はアルベドの設定を見始めた。
hematite。はその横に立ち、モモンガと共に設定を見る、設定厨の仲間が作ったNPC、説明が長い。そして最後の部分に目を向ける。…これは…。
『ちなみにビッチである。』
「…え?なにこれ?」
それは私も思いました、と打とうと思いやめる。アルベドを作ったタブラ・スマラグディナはギャップ萌えだった、だからと言ってこれは酷いが。
モモンガは変更するか、とギルド武器を使い設定をいじる。ビッチという文字が消え、hematite。も罪悪感はあるもののすっきりした。
そこまでは良かった。
『モモンガを愛している。』
「うわ、恥ずかしい」
モモンガは消した部分に新たに付け加えたのだ。それを見た瞬間hematite。はフリーズした。モモンガはその事に気付かず最後くらい良いですよね、許されますよね、等とhematite。に言い訳をしている。勿論聞いていない。もしモモンガがhematite。を女だと知っていたら、果たしてどうなっていたことやら。
…終了の時が近付く。
hematite。も意識が戻り、棒立ちしていたセバスとメイドたちに目を向ける。モモンガはひれ伏せ、と命令し、アルベド、セバス、そして六人のメイドは臣下の礼をとる。
22:55:48
もうそんな時間か。と二人は思う。モモンガは王座の間に座っており、hematite。はその横に、王のペットのように座っている。
「過去の遺物か___」
モモンガの呟きに、悲しくなった。
「俺」
モモンガは骨の指を天井から垂れている大きな旗へと向ける。ギルドメンバーのサインだ。
「たっち・みー」
モモンガを助け、そしてhematite。も助けられた人物。彼が居なければ、今この場にこの二人は居なかったかもしれない。
「死獣天朱雀」
ギルドメンバーの中では最年長者だった、大学教授。彼の話は難しかったが、聞いていても飽きなかった。hematite。にとっては父のような存在だったのかもしれない。
「餡ころもっちもち」
ギルドメンバーの中で三人しかいない女性メンバーの一人。本来は四人なのだが、男だと思われているhematite。は含まれなかった。
「hematite。」
自分の名前を呼ばれ、モモンガへと目を向ける。モモンガは、旗を見ているが。
「ヘロヘロ、ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜、タブラ・スマラグディナ、武人建御雷、ばりあぶる・たりすまん、源次郎…」
四〇人の仲間達全員の名前を読み上げたモモンガ。名前を聞く度に思い出が蘇り、複雑な想いになるhematite。。
楽しかった。
モモンガも同じ気持ちなのだろうか。
仕事がまだそれ程忙しくなかった時はよくここへ来て皆と遊んでいた。この姿という事もあって、女性陣からは可愛がられていたし、男性陣も鬣をよく触っていた。何気ない会話も、他プレイヤーとの戦いも、仲間との勝負も、課金も、全て良い思い出で…それが、今日、失われてしまう。
サーバーの停止は0:00。
今は、23:57。もう殆ど時間は無い。
今日休んでしまった分、明日は何時もより厳しいだろう。でも来れてよかった。
「hematite。さん、最後まで一緒に居てくれてありがとうございました」
モモンガの言葉。hematite。は急いで文字を打つ。
「こちらこそ、またこうしてここに来れて良かったです…モモンガさん、ありがとうございました…。です、か…良かったです、そう思ってくれて」
二人はきっと笑っている。そして、目を閉じる。
サーバーダウンまであと少し。
23:59:58、59…
あぁ、終わりだ…。そう、思っていた。
0:00
1、2、3
「……ん?」
目を開けても、そこは王座の間だった。
ようやくここまで来ましたね、長い。