今から約200年前。
その男は旅行先の日本でその物質を見つけた。一見すると岩の塊。しかし、手で触れると生物のようにトクン、トクンと熱と振動が伝わる。
男は誰にも知られぬように、その物質―――――――鉱石を持ち帰った。そして、その鉱石を解析しようとした。
『電流、変化なし。鉱石だというのに完全な絶縁体』
『音波、反応なし。音響センサーにすら感知されない』
『金属探知機、軍用レーダー、ダウジング、捉えることできず』
『爆破、超音波加工機、ドリル、レーザーカッター、1000度に加熱してからの打撃・・・・・・一切変形せず』
質量すら測れず、加工も出来ず、観測も出来ない。しかし、男は諦めずにその鉱石について研究し続けた。
『体内への摂取から3日。腹痛、眩暈、吐き気、貧血は収まり、今までにないほど、力が沸いてきた』
鉱石を体内に摂取しての実験さえした。
『素手で触れた瞬間、研究所内で火災発生。もう一度触れると、収まった。三度目の接触研究所内が停電、と同時に鉱石が発光を開始』
鉱石を摂取してから再び鉱石に触れると、不思議な現象が起きるようになった。
男はそれを超能力と呼んだ。そして、再び日本へと向かった。
『鉱石塊に触れたあと、鉱石塊が液状になった。そのまま、上空まで吹き上がった』
そしてそれは雲の中で増殖し、地球全体に降り注いだ。
これが全生物遺伝子汚染テロの顛末だった。
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それから数ヶ月後、生き残った人類の大半がΒ波動を放てるようになり、超能力の存在は広まった。しかし、指導者を失った混沌とした世界を、男は嫌った。
未だに生き残っている科学者を男は集め、太平洋に島を建てた。
名をエデン。人類の永久の楽園を築いた。汚染された空気を遮断する装置を作ったエラギという少女は自殺してしまったが、そんなことはどうでもよかった。
『エデン完成から10年。壊獣と呼ばれる生物が人類の脅威になりつつある。防衛設備は十分だが、超能力者の戦力増強のために、島の一つを教育機関にすることにした』
『未だに世間では犯罪組織がまかり通っているらしい。犯罪組織を管理する犯罪組織と市民の安全を守る組織を作らねばならない』
『私の子供たちは順調に育っている。一人しか生れなかったし、妻は私が島を作ったあとに殺してしまっ―――――――』
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日記はここで途絶えていた。
エデン島中央博物館には、エデンを作ったとされる人物の日記が展示されている。そして、その日記の最後のページにはある人物の名前が書かれている。
『アダム』
「中央庁舎郡地下70階第零研究所へと連絡してくれるか?」
白衣を着た老年の男が、サングラスをかけた女性に言った。
「へ、ですが・・・・・・」
「彼女にはこう言えばわかる。『リンゴを食べた罰当たりが帰ってきたぞ』」