ヤマブキシティ。
ここには、ポケモンジムがある。
ヤマブキジムのジムリーダー、エスパー使いのナツメ。
その、自宅でお手伝いとして僕は働いている。
僕の名前はユラン。
実はこの名前はナツメさんに付けてもらったもので本当の名前は知らない。
なぜかというと、僕はナツメさんに拾われる前の記憶が無いのだ。
五年前。
ヤマブキシティの北、ハナダシティとの間の道で僕は裸で倒れていたらしい。
お恥ずかしい話だ。
そんな僕を予知能力で、保護してくれたのがナツメさんだ。
何でも、僕がそこで倒れることは、ずっと昔から分かっていたらしい。
ぶっちゃけ、怖い。
そんなナツメさんは僕を救出した後も、自宅で生活させてくれて、家事手伝いを手伝って二人暮らしをしていた。
ナツメさんとの生活で、僕はやたらエスパータイプのポケモンに詳しくなったけど気にしてはいけない。
ナツメさんがたまに、「ユラン。好きなポケモンは?」と真顔で聞いてきたときは、絶対に「はい!フーディンです!」と言わなくてはいけないのだ。
因みに一回、「フーディンが好きです。でも、スピアーの方がもっと好きです!」と答えたら、丸一日拗ねてしまったことがある。
ジム暮らしというのは、かなり快適で今まで色々なトレーナーたちの観察をしてきた。
よく、ジム戦をするトレーナーさんたちと会話をする機会があったのだが、たいていのトレーナーが
「ナツメさんってどんな戦法を使ってくるの?」
と聞いてくるのだが、大体、教えたところでナツメさんがどこからか超能力で聞いてるので
対策を立てられてぼこぼこにされている。
そんな、ある日の朝食の時間だった。
「ユラン。前から話していたが、ジムトレーナーになる気はないか?」
「ナツメさん。何度も言いますがそんな気はさらさらありません。大体、僕はポケモンを持ってませんし」
「別に、ポケモンぐらい私が何とかしよう。だが、せめてポケモントレーナーになる気はないのか?」
「いや、別に興味が無いんでいいですよ」
「そうか・・・・・・」
なぜか、ナツメさんは僕にトレーナーになることを勧めてくる。
でも、僕はトレーナーに興味はないし、ナツメさんの家で働いた方が楽しいので毎回断っているのだが
今日は少し違った。
「ユランはポケモンが欲しくなったりはしないのか?」
「なりませんね。遠くから眺めるだけで十分満足です」
「エスパータイプのポケモンはカッコよくないか?」
「カッコいいですけど欲しくはありません」
「何でポケモンに興味が無いんだ?」
「逆に何でトレーナーにならなきゃいけないんですか?」
ボムッ(ポケモンをモンスターボールから出した音)
「このポケモンは?」
「フーディンです」
「お前の好きなポケモンは?」
「フーディンです」
「欲しくないか?」
「いりません」
「・・・・・・・・」
「いりません」
「な~ん~で~!!」
「駄々こねても、貰いません!」
「い~い~じゃ~ん~!!ポケモンだよ!君の同世代はみんな持って旅してるんだよ!羨ましくないの?」
「えぇ!全く!!」
「そんなこと言わないでよ~~~!」
「何で、そんなにナツメさんは僕にポケモントレーナーになってほしいんですか?」
「あれっ?ユラン知らないの?」
「・・・・・・何が?」
「君、外でなんて呼ばれてるか」
「知りませんし興味が無いですけど、一応聞いときます」
「『ジムリーダー、ナツメの許嫁』」
ボゥフゥ!!!!!!
「ちょっ!味噌汁、吹き出さないでよ~~」
「いっ、許嫁って!!僕、男ですよ!!」
「それはさ~、ほら、私、外ではクールキャラで売ってるじゃん?だから、そんな感じで見られるんじゃん?」
「とんだ迷惑ですよ。まったく・・・・・・」
「という訳で、ナツメ的には将来のお婿さんは強いポケモントレーナーがいいな~って思うわけ」
「誰が、ナツメさんのお婿さんになるんですか・・・・・」
「あっ、お嫁さんか?」
「そこじゃないです。僕、ナツメさんと結婚なんかしませんよ」
「そんなこと言わないの~。ナツメお姉さんが正式に結婚してもいいって言ってるんだぞ☆」
「正式でも願い下げです。こちらから、お断りします」
「はぁ。分かったよ。もう、お婿さんにならなくてもいいよ・・・・・・」
「そうですか」
「でも、ポケモントレーナーにはなって」
「えぇ、そこは引き下がらないんですか?」
「じゃあ、どうしたらトレーナーになってくれる?」
「どうしてもなりませんよ」
「ポケモンあげます!」
「なりません」
「旅の資金援助!」
「なりません」
「ジムリーダーにコネ!」
「余計なりたくないです」
「ナツメお姉さんの同行!」
「ナツメさん、テレポートし放題じゃないですか」
「よーしっ、ポケモン図鑑も付けちゃおう!!」
「・・・・・・・・・えっ?」
今、この人『ポケモン図鑑』って言った?
嘘だろ?あの、世界的権威、オーキド博士にしか認められたトレーナーしか持つことを許されないあの『ポケモン図鑑』をサクって渡そうとしてるんだよ。この人。
「はぁ。こんなポケモン興味なしの居候にポケモン図鑑なんて貰えるわけないでしょ?」
「あっ!本気にしてないな?」
「えぇ。本気にするわけありません」
「はい。これがポケモン図鑑」
「・・・・・・・・えっ?」
サクって渡してきた。
見た感じ、本物だ。
「オーキド博士から許可は貰ったんですか?」
「ん?なんの?」
「ポケモン図鑑の持ち出しの許可は?」
「もちろん!ちゃんと貰ってきたし、ユランが旅に出るならそのまま渡してもいいって言われたよ」
軽く言ってるけど本気の目だ。一緒に暮らしていたからわかるけど、この目のときは嘘をついたことが無い。
ポケモン図鑑。貰っておいて損はないだろうけど、正直言って荷が重い。
こんな、素晴らしい機械は僕以外にもっと必要としてる人がいるだろうし、
僕なんかが貰うのはかなり気が引けるものがある。
「ビビってる?」
「えぇ、かなり」
「ちなみに、ナツメお姉さんに隠し事は無理だぞ!」
「知っています。どうせ心を読んだんでしょ?」
「うん。むしろ、ここでのぞかない方がつまらない」
「ところで、これはどうやって手に入れたんですか?」
「レッドをボコった」
「現チャンピオンをボコらないでください」
「大丈夫、再起不能にしただけだから」
「十分アウトです。まぁ、レッドさんぐらいなら問題なさそうですけど・・・・・・」
「そうだよ~。昨日、千里眼使ったらピンピンしてた」
「あの人、死んでも死なないですもんね」
「流石にシロガネ山で修行するって言ったときはお墓立てたもんね」
「あの人コミュ障だから山に入ったトレーナーがバトルするとき終始無言で亡霊説出ましたからね」
「本当によく、チャンピオンになったものだよ。感心感心」
「感心してる場合じゃないでしょ?」
「うん!早く、ポケモントレーナーになるって言って」
ここまでで分かった通り、今回はかなり本気だ。ナツメさん。
断ったらさらにめんどくさそうだが、引き受けたくない。
しかし、ここまで来たらやるしかないのだろう。
ポケモントレーナー。
「ナツメさん。ポケモントレーナー、やってもいいですがこちらから条件を出します」
「おぉ!やってくれるのか!条件?何でもいいよ!!」
「まず、ポケモン図鑑は受け取れません!」
「えっ?」
「そんなたいそうなもの荷が重すぎます。もっと必要な人に渡してあげてください」
「りょっ、了解!!」
「次にナツメさんからの支援ですが・・・・・・」
「うん!何が欲しい?」
「ポケモン一匹でいいです」
「おぉ!ポケモンが欲しいの一言が聞けただけでナツメお姉さんはうれしいよ!」
「エスパー以外のポケモンをください」
「は?」
「威圧してもダメです」
「言い忘れてたけど、ナツメお姉さん、とくせい『プレッシャー』だから?」
「それじゃあ、『いえき』かけときますね」
「ぎゃああああ!!!!とくせいが消えるぅぅぅぅぅ!!!!」
「それじゃなきゃ、トレーナーにはなりません」
「うぅん。そんな~」
「ダメですか?」
「分かったよ~。エスパータイプ以外のポケモンが欲しいのね?」
「はい」
「好きなポケモンは?」
「スピアーです」
「ぶ~~」
「膨れてもダメです」
「は~。エスパーポケモン嫌い?」
「いえ、それどころか大好きです」
「お姉さん感動した!!」
「ありがとうございます」
「ちょっと、待ってね~~」
ナツメさんは右手を前にだして念じる。
すると掌にモンスターボールが出てきた。
「はい」
「これは?」
「ユランの初めてのポケモンだよ!」
そっと、ボールを手に取る。
ナツメさんは流れるような手つきでボールを渡してくる。
ボールをのぞき込み、中のポケモンを確認する。
「これは・・・・・・!」
ついに、ポケモンに手を出してしまった。
後悔はしてないけど、絶対、投稿が渋るので長い目で読んでください。