「これは・・・・・・!」
ボールの中に入っていたポケモン。それは・・・・・・
「お望みのエスパータイプじゃないポケモンよ」
「えぇ、ナツメさんもなかなか粋なことができるんですね」
「お姉さん、今ちょっと生意気な口聞いちゃったぞ?」
ある意味、予想していたポケモンの一匹だった。
「『コンパン』。ですね?」
「あったり~!私の大好きなポケモン。コンパンよ!」
「なんとなくそんな気はしてましたけどね。ナツメさんがエスパー以外で使ってるポケモンなんてモルフォンぐらいなんで」
「じゃあ、最初からコンパン頂戴って言えばよかったじゃない?」
「いや、ナツメさんにこんなこと言ったらどんなポケモンくれるのかなって気になったので」
「そう」
「結果、予想どおりでしたが」
「その言い方何よ?」
「あと、エスパーポケモンはどこかで捕まえますよ」
「えっ!!本当?」
「当たり前です。エスパー使いのもとで働く身としてそれぐらいは当然です」
「でも何で私から受け取ろうとしなかったの?」
「単純に最初のエスパーポケモンは自分で捕まえたかったからですけど・・・・・」
「お姉さん、感動した!!!!」
「うわっ、いきなり大声出さないでくださいよ!」
「うぅ、お姉さんうれしくて涙が出てきたよ・・・・・」
「喜んでもらえてよかったです・・・・・・」
「頑張ってね!絶対、ポケモンマスターになるのよ!」
「嫌です。ポケモンマスターにはなりません」
「えっ?」
「えっ?」
おかしい。いつから僕はポケモンマスターになることになっていたのだろう。
トレーナーすら拒否していたのだ。本当はジム巡りすら行きたくない。
ましてや、ポケモンマスターなんてもってのほかだ。ありえない。
「ポケモンマスター、なりたくないの?」
「はい」
「どうして?」
「ポケモンマスターってめんどくさそうじゃないですか?めんどくさいことはやりたくないです」
「はぁ、お姉さん。本音が読めるけど多少は建前で会話してほしいな?」
「今まで散々、フーディン好きって言ってたじゃないですか?」
「うっ・・・・・・」
「何度も言いますが僕はスピアーが好きなんです」
「何だよ。スピアースピアー、コンパンあげたじゃん」
「まぁ、コンパン貰った時点でスピアー育てませんけどね」
「ホント?!」
「虫ポケモン被るんで」
「やった!!」
「そんなにスピアー嫌いなんですか?」
「いいや。虫ポケモン全般が嫌い」
「えっ、じゃあ何でモルフォン使ってるんですか?」
「サイコキネシス使えるから別。あとかわいい」
「そうですか・・・・・・」
「なんでだろうね。コンパンは初めて私に懐いたポケモンなんだ」
「えっ」
「私が小さいころね。私、今でこそ超能力をコントロールしてるけどまだ力が不完全だった頃があるんだ」
「そうだったんですか・・・・・」
「だから、ほとんどのポケモンも人も私を怖がって近づかなかったんだよね」
「そんな・・・・・」
「ありえないと思ってるでしょ?ありえるんだなぁ、これが」
「そんな・・・・・・・」
「でも唯一、近づいてくれたのが私のコンパン、今のモルフォンね」
「そうだったんですか・・・・・」
「実はそのコンパン。私のモルフォンの近くにあった卵から生まれたんだ」
「えっ!」
「私もびっくりしたよ。モルフォンがどこからか卵を持って来たんだから」
「いつ、ふ化したんですか?」
「聞いて驚け!君を見つけた時だよ」
本当に驚いた。ナツメさんはこれをずっと隠していたのか。軽く恐怖を感じる。
「失礼なこと考えたでしょ?」
「はい」
「それでね、私は未来を予知したの。そしたら見えたよ」
「見えた?」
「ユランがたくさんの仲間たちと幸せそうに笑う姿が」
「たくさんの仲間って」
「多分、君のポケモンたちだろうね」
「まさか・・・・・・」
「未来予知ってつまらないよ」
「そうなんですか?」
「だって、未来が分かっちゃうんだもん。宝くじを選ぶ時のドキドキ感をなくす代わりに絶対当たるみたいな」
「それって別に良くないですか?」
「そう思うでしょ?でも、宝くじって当たるかわからないから当たったときうれしいんだよ」
「そんなもんですかねぇ?」
「そんなもんだよ」
「もしかして、その時の未来予知で僕はポケモンマスターになってましたか?」
「そこまでは分からないし、分かっても言わない」
「随分ケチですね」
「それが大人のルール」
「お酒飲めないくせに」
「『じんつうりき』か『しねんのずつき』。どっちがいい?」
「『しねんのずつき』でお願いします」
「くっ。あえて、物理を選んできたな」
僕は頭をナツメさんの手で挟まれると
ゴスッ!!
「~~~~~~~!!!」
「う~~!!!」
「痛い・・・・・・・」
「そんなに強くやるからですよ・・・・・」
「はっ・・・・話を戻そう」
「僕がポケモンマスターにならないって話ですよね」
「なんで?ポケモンマスターだよ。最強だよ」
「もしかして、僕の将来を心配してくれてます?」
「うん。だってユラン、このままだと一生ここで働く気だったでしょう?」
「はい」
「ダメだよ~。世界は広いんだから、もっと視野を広げないと」
「そうは言ってもですね・・・・・」
「でもジム巡りはするんだよね?」
「えぇ、カントー8つのジムバッジを集めてきます」
「それってつまり・・・」
「ちょっと、早めの宣戦布告です」
「大きく出たわね」
「やるなら、やってやりますよ」
「カッコイイ!!やっぱり、ポケモンマスターじゃなくて私のお婿さんにならない」
「それはないです」
「なっ?!」
「8つ集めたら帰ってきます」
「・・・・・・・軽く言ってるけど、8つ集めるって簡単じゃないんだからね?」
「分かってます」
「本当だったら四天王挑戦権を貰って四天王とチャンピオンに勝負して勝ってチャンピオンになるか、セキエイリーグでトーナメント優勝してポケモンマスターになるかなんだよ?」
「でも現在のチャンピオンレッドさんの強さは折り紙付き。先日、四天王を勝ち上がったトレーナーが6体のフルメンバーでHP・PP共に完全な状態で挑んだのにたった一匹のポケモンだけで沈められた話はまだ記憶に新しいですよ」
「ある意味チャンピオンは現実味ないでしょ?」
「だから似たような実力者が集まるセキエイリーグに出ろと?」
「まぁ、ポケモンマスターになったらなったで年に一回ぐらいレッドとバトルすることになるんだけどね」
「それでも、真の最強トレーナーは、超能力を惜しみなく使ったナツメさんなんですけどね」
「もう、そんなに褒めないでよ!!」
「照れないでください。あとナツメさんの超能力は反則ギリギリの戦い方じゃないですか」
「確かに予知は使ったけどレッドも、相手の出す技が分かるよ」
「あの人は異常なんです。大体、『まもる』のシールドを打ち破る『つるのムチ』とか聞いたことありません」
「私だって本気出せば、ワンリキーぐらい倒せます~~」
「相性を踏まえてボコりにかからないでくださいよ」
「でも!ユランならそれぐらいのことができると思うよ!」
「急に話をポケモンマスターに戻さないでください!!」
「よく分かったね~」
「何年、一緒に住んでると思ってるんですか?」
「五年」
「それぐらい一緒に住めば、ナツメさんの考えてることぐらい大体わかります」
「流石」
「そういえば、僕がいなくなったらナツメさんは生活できるんですか?」
「無理」
「でしょうね。あとなんでさっきから熟語で会話するんですか?」
「バレた?」
「バレバレですよ。ふざけないでください!」
「む~。別にふざけてないもん!!」
「ふくれてもダメです」
「まぁ、私の生活に関しては安心して」
「どうしてですか?」
「ユランがくる五年よりも前は立派に生活してたから」
「・・・・・家事は誰がやっていたんですか?」
「フーディン」
「ポケモンに丸投げですか・・・・・・」
「気にしちゃいけない!!」
「どや顔で言わないで下さい」
カタカタ
その瞬間、コンパンの入ったボールが激しく揺れた。
「うわっ。びっくりした」
「どうやら出してほしいみたいだね」
「随分、長話してましたしね」
ボムッ
「コパッ!!」
ボールを開けると中からコンパンが勢いよく飛び出してきた。
「おぉ。すごい元気ですね」
「そりゃ、コンパンだからね」
「・・・・・・意味わかんないです」
「・・・・そーだ。ユラン」
「何ですか?」
「このコンパンの技。当ててみて」
「えっ?はい。えーっと」
視線をコンパンに集中させる。
コンパンと物凄く目が合っているのだが複眼なのでどこから見ても目が合うのは触れないでおこう。
「分かった?」
「『たいあたり』『どくのこな』『きゅうけつ』・・・・・あとは『かなしばり』ですかね?ついでにとくせいは『いろめがね』。性別はメスで今、お腹を空かせてます。ちょっと待ってて、ごはん取って来るから」
「きのみはここにあるから大丈夫よ」
「ありがとうございます。また超能力で出したんですね」
「ふふふ・・・・。褒めたらもっと出るよ」
「ほらコンパン。ごはんだぞ」
「無視しないで!」
「虫だけに?」
「いや、関係ないから!!」
「コパッ!!コパッ!!!」
「ん?おいしかった?よかったよかった。ナツメさん、喜んでますよ」」
「あら、出したかいがあったわ」
「良かったですね」
数時間後
「じゃあ、忘れ物はない?」
「はい。ナツメさん」
「コパッ!」
「コンパンもやる気十分ね」
「ではまず質問を」
「何?」
「何で、移動がテレポートなんですか?」
「えっ?まずはマサラタウンに行ってほしいからだけど?」
「何で、マサラタウンに行かなくちゃいけないんですか?」
「これを返却してきてもらっていい?」
「ポケモン図鑑?」
「一応、これはオーキド博士から預かってることになってるの。ユランが受け取らないっていうからこれは返してきて」
「分かりました」
「本当はオーキド博士も受け取ってもらいたかっただろうね・・・・・・・」
「罪悪感を煽らないでください。受け取らないものは受け取りません」
「そう、じゃあ・・・・・・」
大きく息を吸う。
「行くぞ。コンパン」
「コパァ?」
「マサラタウンにしゅっぱーつっ!!!!」
僕の冒険が始まった。