トキワシティ
この町のビジネスホテルに僕はいる。
日中にグリーンさんに助けてもらった僕は軽く説教を受けてしまった。
原因は僕にトレーナーとしての覚悟がないからだそうだ。
「どうしろっていうんだよ・・・・・・」
「コパッ!」
「ん?どうしたコンパン?」
コンパンが何かを身振り手振りで伝えようとしているが分からない。
もし覚悟を持ったトレーナーならばコンパンのことが少しは分かるのだろうか?
「ごめん。何が何だかさっぱり分からん」
「コパァ~・・・」
「ごめんな。僕がトレーナーとしても人間としても未熟でさ・・・・・」
コンコン
ドアをノックする音が響いた。
「入っていいか?」
「どうぞ」
少し罰が悪そうな顔をしたグリーンさんが入ってきた。
「どうしたんですか?」
「その、すまなかったな。昼間は。少し言い過ぎた」
「別に気にしてないですし、僕も至らなかったところがありますし、こんなホテルのお部屋まで用意してもらって寧ろこっちが申し訳ないです」
「そうか・・・・」
「それに、自分もポケモントレーナーとしてこれからどうしたらいいのか迷っていたところだったんで」
「お前、ポケモンバトルをしたことはあるのか?」
「? いえ、ありませんけど」
「この町の北に『トキワのもり』といううっそうとした森が広がっているのは知っているな?」
「そうなんですか?」
「知らなかったのか?」
「はい!目が覚めてこのかたヤマブキシティから出たことがなかったんで」
「・・・・・・俺のお古でよければこれをやる」
そういうとグリーンさんはポケットから機械を取り出した。
「これは?」
「『タウンマップ』だ。俺が旅に出るとき姉がくれたものだ」
「お姉さんが!?大切なものじゃないですか!」
「いや、もういいんだ。俺はそれを使っていろんなところをまわった。今度はお前に託したい」
「え?」
「いろんなところを見たからな、カントーはもう大体地図が頭の中に入ってるんだ」
「そうなんですか・・・・・・」
「そのタウンマップだってずっとトキワで腐ってるよりもまたカントーをまわりたいと思ってるはずさ」
「なんか・・・・ロマンチックですね」
「変な事言うな」
「それじゃあ、ありがたく貰います。なんだか、貰いっぱなしで申し訳ないです」
「それは明日俺とバトルして返してもらうから問題ない」
「そうですか。なら問題n・・・・・はぁ?」
「言ってなかったか?明日、トキワのもりで俺とバトルしてもらうって」
「聞いてないですよ!何でですか?」
「お前の相棒のコンパンだったらトキワのもりで戦うのが一番力が出ると思ったんだが・・・・」
「なんか気遣ってもらってたんですね。ありがとうございます」
「ま、そういうわけだ。今日はさっさと寝て回復させとけよ」
「はい。おやすみ・・・できねぇよ!ちょっと待ってくださいよ!」
「さっきから何なんだ?文句でもあるのか?」
「ありまくりです!」
「分かった。一つずつ言え」
「何でグリーンさんとバトルするんですか?」
「お前のトレーナーとしての覚悟が見つかるかと思って」
「何で今話したんですか?」
「もう少し早いほうがよかったか?今のほうが良いと思ったんだが」
「まぁ、そうなんですけど・・・・・」
「それにトレーナーとして強くなるなら強いトレーナーと戦うのが一番だからな。戦わなければ強くなれないし、強くなりたいなら戦うしかない」
「別に強くなりたいとは思ってないですけど・・・・」
「ふっ、そうか。じゃあ俺はそろそろ失礼するぞ」
そういうとグリーンさんは部屋のドアに手をかけながら
「九時。トキワのもりの入り口で待っている」
と言って出て行った。
「勝手な約束するなよ・・・・・」
「コパッ?」
翌日
「ん。来たな」
「おはようございます。グリーンさん」
「それじゃあ行くぞ」
「はい!」
トキワのもり。トキワシティとニビシティをつなぐ二番どうろに繋がっている。
ここを抜ければニビシティだがそこにたどり着けるかどうかはトレーナーの腕にかかっている。
「出て来い!ピジョット!」
昨日、ラッタを吹き飛ばしたピジョットがボールから出てくる。
鋭い目をこちらに向けてきた。かなりのレベルだろう。
「こっちコンパンしかいないのに手加減なしですね」
「いや、手加減はする。そうしなければバトルにならないからな」
「あっ、ありがとうございます」
「三つのハンデをやる」
「三つ?」
「あぁ、三つだ」
「一つ目はこの空間だ。森や洞窟といった閉鎖空間は鳥ポケモンのような立体的に戦うポケモンには戦いづらいんだ。だからこれが一つ目のハンデだ」
「閉鎖空間・・・・」
「二つ目はピジョットの技だ。俺のピジョットは今回『ふきとばし』しか使わない。つまり俺はお前のポケモンに直接ダメージを与えることができない。これが二つ目のハンデだ」
「ふきとばし・・・・」
「三つ目はお前の勝利条件だ」
「えっ?ピジョットを倒すんじゃないですか?」
「残念だが力量に差がありすぎておそらくコンパンじゃピジョットを倒せないだろう」
「そうですか・・・」
「だからお前の勝利条件はただ一つ
このトキワのもりを抜けることだ」
「トキワのもりを抜ける!?」
「そうだ」
「グリーンさんと戦いながら?」
「ハンデは今のでいいな?」
「いやちょっと待ってくださいよ!」
「何だ?」
「トキワのもりってそんなに簡単に抜けられるんですか?」
「そんなわけがないだろう。それだったらバトルにならない」
「ですよね」
「もう文句はないな?さっさと始めるぞ」
「えっ・・・・・・・はい。わかりました」
ボムッ!!
「コパッ!」
「行くぞ!コンパン!!」
「コパァ!!」
「それじゃあ、バトル始め!」
グリーンさんの声と共に僕とコンパンは走り始めた。
「ピジョット。追い抜いて『ふきとばし』」
「ピジョッ」
「うわあああああああ」
「コパアアアアアアア」
あっけなかった。
「つっ、強い。なんて強い『ふきとばし』なんだ!」
「コパッ!」
「よしっ!コンパン『どくのこな』!」
「コパアアア!!」
「ピジョット。『ふきとばし』だ」
「ピジョッ」
「しまった!『どくのこな』がこっちに!コンパン、屈め!!」
「コパァ!!」
「ピジョット。更に『ふきとばし』」
「ピジョッ」
「うわああああ!!!かっ、体が浮き上がる!?」
「コパアアアアアア!!!!!」
「コンパン!草をつかんで耐えるんだ!!」
「コォオオパアアア!!!」
「ピジョット。止めろ」
「ピジョッ」
「グフッ!」
「コパッ!」
「急に止めないでくださいよ!鼻を打ったじゃないですか!」
「コパァ!!」
「お前、それじゃあいつまで経ってもこの森を抜けられないぞ」
「うっ・・・・・まぁ、そうですけど・・・・・」
「もっと考えろ、頭を使え。そうすればピジョットの突破口が見えてくるだろう」
「突破口・・・・?」
ピジョットは前方で僕たちの行く手を阻んでいる。
『ふきとばし』を使うために翼を広げているから1.5メートルと言う数字以上の大きさを感じる。
普通に考えて左右に逃げても『ふきとばし』の餌食だろう。
だからと言って正面突破できるほどの力はコンパンにはない。
それ以外の方法。ピジョットを追い抜く方法は・・・・・
ダメだ!さっぱり思いつかねぇ!!!!
「なぁ、コンパン!前も右も左もダメだ!どうしたらいいんだ?」
「・・・・・コパァ?」
「って、お前に聞いてもダメだよな・・・・・」
「それなら、後ろに下がってみてはどうですか?」
「・・・・・下がる?それだぁ!!」
「!・・・・・行動に移したな」
「コンパン!もう一度、突撃!」
「コパッ!」
「何度来ても無駄だ!ピジョット、『ふきとばし』!」
「ピジョッ」
「うわああああ」
「コパアアアア」
僕はコンパンと一緒に後方へゴロゴロ転がりながら吹き飛ばされる。
「まさか!ピジョット、距離を詰めろ!」
「ピッ、ピジョッ?」
なっ!?グリーンさんはもうこっちの意図を察したのか!?
でも肝心のピジョットが動けなかった。チャンスはこれきりだ。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
すかさず森にジャンプ!」
「コパッ!」
「しまった!!」
「ピジョッ!?」
トキワのもり。この森は野生ポケモンの大型生息地であると同時に二番どうろである。
つまり森の内部はトレーナーが通れるように道になっているのだ。
だから僕はあえて道になっていないところ。言うなればわき道、獣道にわざと突っ込んだのである。
トキワのもりは1回道を外れれば大型ポケモンでは立ち入ることができないほどの森林地帯だ。
つまりピジョットが『ふきとばし』をすればその大きな翼が邪魔をすることになる。
一つ目のハンデを利用することによってピジョットの二つ目のハンデを完全に封じることができた。
あとはニビシティに向かって突き進むだけだ。
僕たちの完全勝利が決まったのだった。
遭難した。
いやこれは遭難なのか?
とりあえず、ここがどこなのか分からない。
道に迷ったことは確かだろう。
奇跡的にグリーンさんにも野生ポケモンにも遭遇することなく歩いてきたが全く道が分からない。
そう、トキワのもりは二番どうろなのだ。外れれば道に迷うことは確定だ。
それぐらい考えればよかったものを完全に忘れていた。
しかしどれぐらい迷っているのだろうか?
昨日、グリーンさんから貰ったタウンマップの時計は午前十一時をさしていた。
グリーンさんとのバトルは九時半ごろに始めたはずだから実に一時間半以上バトルをしていた計算になる。
だがもちろん、このままでは勝ちにはならないだろう。何とかしてニビシティにたどり着かなくては。
「コンパン、ここ、さっきも通らなかったか?」
「コパッ!?コパッ、コパッ!!」
「ごめん。へんなこと聞いて。そんな訳ないよな」
いや、きっとそんな訳あるのだろう。
実はコンパンが見てないところで木に傷をつけているのだがさっきから見覚えのある奴が何本も見える。
コンパンが気づいてないのでこれ以上不安を煽らないようにしなければ・・・・・。
「せめて人がいればなぁ」
「コパァ」
「何だよコンパン。落ち込んでるのか?」
「コッコパァ・・・・・」
「気にするなよ。僕がトレーナーとしての判断を誤ったのが原因だ。お前が自分を責める必要はない」
「コパァ?」
「あぁ、だから気にするな」
とは言ったものの、マジでここから出られる自信がない。なんかもう生きて帰れるかどうかさえ怪しくなってきた気分だ。
コンパンが『いとをはく』を使えたら、そこら辺の木に糸を巻きつけて目印にできたんだが残念ながらそれができない。
割ともう絶望的だ。何か言い手はないものか・・・・・。
「コパッ!?」
「ん?どうした、コンパン」
「コパッ!!コパパッ!!」
「そっちに何かあるのか?」
コンパンが急に走り始めた。一体何があるのだろうか?
「なっ、これは・・・・!?」
二番どうろのゲートだ。
しかも、奇跡か偶然か。ニビシティ側の出口である。
「これを抜ければ僕たちの勝利だ。よくやったぞ!コンパン!!」
「コパッ!コパッ!」
ゲートに向かって歩き出した。
完全に勝ちを確信したときだった。
「ピジョット、『ふきとばし』」
「ピジョッ」
「なっ!?」
「コパッ!?」
いきなり目の前にピジョットとピジョットに乗ったグリーンさんが現れたのだ。