第21話 女好きの傭兵
校門前で待っていると、エミリアが駆け寄ってくる
エミリアの戦闘服は、イギリス国旗を象った騎士のような服装で突剣を持っている
エミリア「お待たせしました。空条さん」
ジョエル「大規模侵攻が終わったばかりなのにもう出るのか?」
エミリア「はい、今日はお誘いに受けていただいてありがとうございます。
実は、タイコンテロガを倒したと聞いてみんなの評価が上がっているんですよ。」
ジョエル「あれはまぐれだ、評価されるほどじゃない。」
エミリア「そんな謙遜を、ですから引っ張りだこになる前に一緒に行きたいと思いまして…ところで…」
ジョエル「…ああ、おい起きろ。」
ジョエルが背中に背負っている棒状の金属を叩く
すると徐々に変形し、小人のようなものが現れる
尻尾の先端には針がある
レット「…おうエミリア、おはよー」
エミリア「おはようございます。寝ていたのですか?」
ジョエル「遅くまでテレビを見ているからだ。」
レット「いやーテレビって面白いんだよな
しかも天気が前もって分かるなんて、すごいな!」
ジョエル「科学の進歩って奴だ、これからクエストだから気を引き締めてくれ」
レット「おうよ、任せろ相棒!」
エミリア「今回は洞窟の奥にいるコウモリ…みたいです。
そこまで強くはないようです。お互い転校したばかりだからでしょうね」
ジョエル「…低く見られてるんだな…」
エミリア「まあ、腕試しにちょうどいい相手、と捉えておきましょう。」
レット「じゃあちゃっちゃと済ませてその評価を覆してやろうぜ!」
エミリア「そうですね、行きましょう空条さん」
ジョエル「ああ、了解だ…」
ジョエル達は、古い街並の残る街道を経由し洞窟を目指した
その時、路地の角から魔物が現れる。
それは騎士の甲冑をつけた姿、肩には目玉があり手には突剣を持っている
ジョエル「なんだあれは!?」
レット「あれは討伐対象じゃねえだろ?」
エミリア「……空条さん、レットさん…倒しましょう。」
そう言うとエミリアは突剣を構える
ジョエル「待て、やつは討伐対象外だ!
それにどんな魔物が分からないんだぞ!」
エミリアはジョエルの言葉を無視し攻撃を仕掛ける
エミリアの剣さばきは素早く、魔物に突き刺そうとするが魔物はそれを剣で受け流し、エミリアにカウンターを繰り出す
レット「やべえ!相棒!オイラを投げろ!」
ジョエルがレットを投げると高速で魔物に飛んでいき
針を伸ばして剣を弾く
エミリア「レットさん!?」
レット「焦んな!、相手はけっこう素早いんだぜ!
まずは足を潰すんだ!二足歩行の相手には弱いはずだ!」
ジョエル(咄嗟の判断、それにこの観察力…経験の差か…!)
魔物は不利と感じたのか立ち去ってしまう
エミリアは追いかけようとするがレットが止める
レット「だから落ち着けって!」
エミリア「でも彼は苦しんでいるんです!
助けなければ!」
レット「いや魔物だろ!苦しいとかねえだろ!?」
ジョエル「…なら追うか?」
エミリア「…!はい!」
レット「おいジョエル!」
ジョエル「俺は人類根源説は信じない方だが
確かに魔物は無視はできない。
だから俺は倒した方がいいと思う。」
エミリア「ありがとうございます。この先です!」
そう言うとエミリアは先に進んでいく
レットはこっそり話し掛ける
レット「良いのかほんとに…」
ジョエル「ああ、それにあの人型、成長したらまずいことになるかもしれない
早めに片付けた方がいいだろう」
レット「オイラ生徒じゃないから罰はないといいな…」
先に進むと、魔物を見つける
近付いていくと、異変に気付く
ジョエル「…!しまった!」
周囲を見回すと、左右の細い路地から1体ずつ
後ろの街道から2体の魔物が近付いてくる
レット「囲まれた!?」
ジョエル「こいつら気配を隠していたのか!?」
エミリア「…こんなに…」
ジョエル「ブルームフィールド!前の魔物を頼む!
レット、後ろの奴等を!俺は左右だ!」
エミリア「みなさん!?」
ジョエル「いいか、お前のやり方は1体に集中した方がいい
俺やレットは複数に相手するのが得意な戦法をとる
終わればどちらかにつけばいい」
エミリア「…わかりました。エミリア…行きます!」
そう言いエミリアは魔物に向かっていく
それと同時に、周囲の魔物も迫ってくる
ジョエルは右側の魔物にシャボン液を手に垂らしながら構える
ジョエル「波紋…シャボンランチャー!」
ジョエルが波紋の呼吸をしながら手を開くと泡の膜が現れ
そこから無数のシャボン玉が現れる
魔物はシャボン玉に当たるとすぐさま後退する
ジョエルの放ったシャボン玉からは電流のようなものが流れている
振り返ると、突こうと魔物が攻撃を仕掛ける
ジョエルはそれを避け、腰のホルスターからトンファーを取り出す
ジョエルは突剣を受け流して腹部に数発当て
波紋を流した、悶え苦しむ間も与えず波紋を流し続け
霧散させる。
シャボンランチャーをダメージを負いながら突破した
魔物はジョエルに攻撃をする。しかし、腕が半分破損していて上手く当てられず、ジョエルは手刀を繰り出す
オーバードライブ
ジョエル「波紋疾走!!」
電流のようなものが流れる手刀を受けた魔物は倒れ霧散した。
レットは触手のように体をしならせ1体に取り付き針を刺す、取り付いている間
もう一体の魔物は攻撃しようと突剣で刺すが、それを避け
取り付いている魔物に当たる
レット「そらそら!オイラはそう簡単にはやられねぇぜ!」
取り付いている魔物の目玉を潰し、視界を奪った後
もう片方の魔物を攻撃する
突こうとした突剣を沿って移動し至るところに刺し傷を与える
魔法ダメージを与え、耐えきれなくなった魔物は霧散する。
視界を失った魔物は剣を振り回し、レットの位置を探るがどれも空を切り、レットは腹部に刺し徐々に奥へと刺していき
魔物の内部から数本の針が飛び出し霧散する。
ジョエル「レット、片付けたか!?」
レット「バッチシ!、エミリアは!?」
エミリアを見ると、激しい攻防戦が繰り広げられていた
エミリアの攻撃が受け流され、魔物の攻撃を受け流す
エミリアは勝負を決めようと、前に行く。
魔物の攻撃を僅かな動きで受け流し、強化魔法で脚力を増強する。
強く踏み込んだ突きが深々と魔物の急所に刺さり霧散した。
エミリア「終わりました。」
ジョエル「お疲れ、どうだ?」
エミリア「はい、わがままに付き合っていただいてありがとうございました。
おかげであの騎士も報われるでしょう。」
ジョエル「…!、気を付けろ!あと1体だ!」
ジョエルが指差すと、既に間近まで近づいた魔物がいた
エミリアが構えようとするが、突剣を弾き飛ばされてしまう。
エミリア「…!?剣が!」
レット「相棒!援護を頼むぜ!」
ジョエル「シャボンランチャー!」
シャボンランチャーを放ち、魔物との距離を置かせる
レットはエミリアのもとに向かう
レット「エミリア!オイラを使え!」
エミリア「でも私は棒術は嗜んでいません!」
レットは形を変えていく、丸みを帯びた鍔、先の尖った剣先をもった突剣へと変形する
レット「これで問題なしだろ!?」
エミリア「はい!」
エミリアは手に取ると、レットは持ちやすいよう持ち柄の部分に調整を加える
握り心地を確認すると、構えて魔物の剣を弾き、魔物に傷を与えていく
魔物は間合いを開けるが、強化魔法で急接近して腹部に一撃を与えた
エミリア「これで終わりです!」
エミリアの閃光のような突きが急所に刺さり、魔物に止めをさし霧散させる。
ジョエル「一時はどうなるかと思ったが…」
レット「無事に討伐終了だな!
目的は違うけど…」
エミリア「はい…ありがとうございます。
魔力をお願いできますか?」
ジョエル「ああ」
エミリアに魔力譲渡を行ない、補給を終え
状況を確認する、デバイスには近くの魔物の反応はなく
周囲に魔物はいないと確認できる。
ジョエル「一度戻ろう。流石にコウモリは無理がある。
日を改めて受けるか決めよう」
エミリア「はい、すみません。
でも放ってはおけませんでした。
あの騎士を見ていたら、助けなきゃと…」
レット「まあ、終わったから良いじゃねえか
でも無茶は止してくれよ。それで死んじまったら何にもなんねえかんな?
もう見たくはねえぜ?」
ジョエル「…レット…」
エミリア「はい、では戻りましょう。」
ジョエル達が戻り、生徒会室に入って報告を行う
風子も加わり、討伐対象外の討伐についての処遇を下される
虎千代「…まあ校則違反には変わりはないな…」
ジョエル「クエスト放棄に非討伐対象の討伐は重い違反だと聞いているが…」
虎千代「そうだな、だが二人とも初めての事だ
だから風紀委員長、お手柔らかに」
風子「ええ、分かってますよ。
ではエミリア・ブルームフィールド。」
エミリア「はい」
風子「しばらくはウチらと一緒に校門に立ってもらいます。
朝7時に登校してくだせー」
エミリア「わかりました」
風子「そして、空条ジョエル。
アンタさんも止めようとしなかったので同罪です。
ですがエミリアさんのお願いですからね。
厳重注意で留めておきましょう、氷川とセンセーにたっぷり絞られてくだせー」
ジョエル「了解した」
風子「確かまだ人型の魔物についての講義は受けてませんでしたね?」
エミリア「はい、ですが講義を受けるほどの事でしょうか?
確かに珍しい魔物ではありますが…」
風子「イギリスは人類根源説じゃねーですか。
人から生まれる魔物、そんな考えを持っていたら不思議に思わないでしょーが
グリモアは違いましてね、【武器を持つ魔物】は放っておくべからず、それを討伐したことでこれでも減刑してんですよ?」
エミリア「…はあ、わかりました。人型の魔物についての認識を改めます。」
風子「けっこー、空条さんはイギリス人の方だと聞きましたが?」
ジョエル「俺は人類根源説は信じない方だ
心配は要らない」
風子「そうですか、ですが念のために人型の魔物を改めて理解してくだせー」
ジョエル「ああ、わかった」
レット「ふぃー、良かったな相棒。
そんくらいで済んでよ」
風子「なーに他人事のように言ってんですかね?」
レット「……へ?」
風子「アンタさんも厳重注意です。」
レット「え!?なんで!?」
風子「止めなかったでしょう?同罪です。」
レット「オイラただの棒だよ!?武器だよ!?」
ジョエル「厳重注意で済んで良かったと思え。」
レット「そんなぁーーーー!」
虎千代「ではこれで解散だ、これからは気を付けてくれ」
エミリア「はい」
ジョエル「ああ」
レット「…はい…、」
ジョエル達は部屋を出ていく、風子はため息をつきながら。
報告書を確認する
風子「それにしても、おっかねーですね。
知能を持つ魔物ってゆーのは」
虎千代「もう一度その辺りを注意した方がいいな」
風子「お願いしますよ、また同じような違反が続いたら身が持ちませんよ
新しい転校生の件で忙しいのに…」
虎千代「ああ、また来るんだったな。
確か、傭兵…だったか?」
風子「ええ、何でもエジプトで覚醒して、ここを希望してきたんですよ
わざわざね、めんどーな生徒じゃなければいいんですけどね…」
『風飛街大通り 駅前』
活気が溢れる地方の都会風飛市
あらゆる人でごった返す中一人の男が目立つように立っていた
緑のコートに身を包む黒髪の男は辺りを見回していた
すると、こちらを見ながらヒソヒソと話す少女がいた
千佳とローズブラウンのショートボブヘア、背中にはギターケースを背負っている
ローズの音無律だった
男は二人に歩み寄り、話し掛ける
「やあ、ちょっといいかい?」
律「お、話し掛けてきた」
千佳「はい!なんですか?」
男は優しく微笑みながら話し掛ける、男の顔は中々の顔立ちで千佳は緊張する
「駅前のバスで【私立グリモワール魔法学園】に行きたいんだけど。
どれに乗ればいいのかな?」
千佳「あと1時間くらい後にバスが来るからそれに乗れば行けるよ?」
「そうか、ありがとう。美しいお嬢さん」
千佳「お、お嬢さん!?そんな…急に」
「謙遜しないでいいさ、ネイルだって、丁寧に仕上げたんだろ?」
千佳「わ、分かる!?、やっぱ分かる人は違うよね!?」
律「…なんか、ナンパっぽくなってねぇか?」
その時
「誰かぁ~、ひったくりよぉ!」
誰かに突き飛ばされたのか、その場に倒れこむ女性と
男が持つのに不自然なお洒落なハンドバッグを持って走る男性がいた
千佳「マジ!?、ひったくり!?」
律「千佳!追いかけようぜ!」
「その心配はないさ…」
千佳「…え?」
走っている男をコートの男はゆっくり歩いて追いかける
その時ひったくりは異変に気付く
走っているのに何故か足がゆっくり歩いているかのように動いている
どんなに力を入れても足自体が早くなることはなく
ただゆっくりと進んでいた
やがてコートの男は追い付き、ひったくりからハンドバッグを奪い取ると倒れた女性に歩み寄り、手を取る
「もう大丈夫、取り戻したよ」
「あ…ありがとうございます…」
頬を赤くしながら、女性は差し出された手をつかみ立ち上がる
ひったくりは元の速度に戻ると男に駆け寄りナイフを取り出した
「て、てめぇ!俺に何をしやがった!?」
「あんた…見苦しいぜ?レディの持ち物を盗ろうなんて恥ずかしくはないか?」
「うっせぇ!」
男はナイフを突き刺そうとするが、またもやゆっくりと進む
まるで、自分はスローモーションで演出するスタントマンのように
だが周囲はなんともなく、自分だけが遅くなっていた
コートの男はナイフを取り上げ、手を捻り上げる
捻り上げたと同時に男の速度が元に戻る
「いででででで!」
「まったく、ここの男は女性には優しくできないのか?」
男の勇敢な行動に周囲は歓声を上げる
しばらくして警察官がひったくりを逮捕し事なきを得た
コートの男はその場から立ち去っていった
千佳「なんだったんだろ!スゴくない!?」
律「だよな~、急にひったくりが遅くなったりしたしな」
千佳「そうじゃなくて!、あのレディファーストの精神ってゆーかそーゆうの!
イケメンで優しくて背が高いし完璧じゃん!」
律「そういえばさ、あのひったくりに変なもの着いてなかったか?」
千佳「何が?」
律「よくわかんねーけど、妖精みたいの見えたような…」
千佳「妖精?意味わかんないし、頭でも打ったの?」
律「気のせいだったかな?
確かにいたんだよ、取りついた時に遅くなって…」
千佳「そんなことより、早くしないと映画始まるじゃん!」
律「分かったって!」
数時間後…
『私立グリモワール魔法学園 校門前』
「ふぅ、ようやくついたか。
中々いいところだな…男女比2:8か…
これは期待できそうだな…どんな子に出会えるか楽しみだ」
コートの男の周囲には羽のついた8センチ程の小人が
数匹飛び回っていた……
to be continued……
最後までありがとうございました。
少し時間が出来ましたので徹夜で仕上げておきました。
次回 「男がやって来た!」
お楽しみに!