「山田、お前店の調味料少しずつガメてるだろ。相馬から聞いた」
「山田、卓の片付けやってないだろ!相馬さんから聞いたぞ」
「山田、休憩室の掃除サボっただろ。相馬さんから聞いたぞ」
佐藤さんと小鳥遊と五十嵐が山田の前に立ち、3人はチョップの構えをしている。
「はわわわ……、なんで知ってるんですか相馬さん!!」
もともと小さい山田が、さらに小さくなっていく。
「ごめんね〜。何かあったら言えって3人が言ってたからさ。あ、でもさっきのオーダーミスは言わないようにしとくね!」
「「「山田ァ……!!」」」
「なんなんですかもー!!!」
「それはこっちのセリフだ山田!!」
五十嵐と小鳥遊と佐藤さんの山田への怒りから、今日のバイトは始まるのである。
◇◆◇◆◇
「全く!相馬さんは何でやまだの秘密知ってるんですか!?バレないようにしてたのに!」
「バレないようにする前に普通に仕事しろよ。そうしなきゃいつまで経っても成長しないぞ」
山田の教育係に任命された五十嵐は、山田と倉庫へ行き在庫の確認をしていた。
相変わらず山田は仕事をする気配はなく、相馬さんについてずっと語っていた。
「相馬さんの秘密をやまだが知っていれば相馬さんだってやまだを甘やかしてくれると言うのに……」
「いいから働けよ」
「いがらしさん。やまだを甘やかしてください」
「言ってることがおかしいぞ。相馬さんに甘やかしてもらえよ」
「それが出来ないからいがらしさんに頼んでるんですよ。なんか相馬さんの秘密知りませんか?」
自分の秘密(主に松本さんと一緒にいたこと)を言われたりはしていたのに、相馬さんは自分のことを一切語っていないことに今更気付く。
「………特にないんだけど」
「……つかえないですね」
「それはまさにお前に言ってやりたい言葉なんだが……って、山田が消えた」
「やっぱりいがらしさんはダメです。もっと相馬さんと関わってる人に聞くべきです!」
山田は五十嵐から逃げると、キッチンでは佐藤さんと八千代さんが話していた。
「佐藤さん!八千代さん!相馬さんの良いところってどこですか!?」
「突然なんだ?」
「相馬くんの良いところ?」
2人が考えていると、山田はキラキラとした目で見つめる。
「……少なくとも良いやつではない」
「まぁ…さっきの行動から何となくはわかります」
「さとーくん、何てこというの」
「じゃあ轟は相馬の良いところ知ってんのかよ」
「きょーこさんの良いところならいくらでも……」
八千代さんがいつものように店長話になるのを見越した佐藤さんは、山田を追い払った。
結局相馬さんの良いところを見つけることはできなかった山田は、休憩室で1人、お茶を飲んで相馬さんについて考えていた。
「ますます気になります!相馬さんの良いところ!」
「俺の良いところを探してるんだって?どう?見つかった?」
「相馬さん……かわいそうです」
「……え?」
「いがらしさんには特にないとか言われて、佐藤さんには良い奴じゃないとか言われてるし…」
「うわっ、ひどいな」
「かわいそうな相馬さん……かわい……相馬さん」
「やめてくれるかな……それ」
「かわい相馬さん……」
「繋げないでくれるかな……」
「そんなかわい相馬さんのいうことなら…やまだなんでも聞きます!妹だと思って接してください!!!」
嘘泣きではないマジ泣きで相馬さんと話していると、ガラにもなく相馬さんは焦っている。それもそのはず、今山田が泣いているところを他の人に見られたら……どうなるのかはわかっているからだ。
「とりあえず泣かないで!?こんなところ誰かに見られたら……」
「あっ……ああっ……相馬さんが…葵ちゃんを……泣かせた!!!!!」
見られていた。しかも種島さんに。
種島さんは一目散に逃げてしまい。さらに山田が泣いているので追える状況ではなく、完全に相馬さんの負け。つまり秘密を握られた。
(生まれて初めて人に弱み握られた………どうしよう)
「……とりあえず山田さん、働こうか…」
「はい!相馬さんのいうことはなんでも聞きます!やまだ働くーーー!!」
やまダッシュでホールに向かったのを見た小鳥遊と佐藤さんと五十嵐は力尽きていた相馬さんを休憩室前で見かけた。
「相馬さん、一体山田のどんな弱み言ってあんな働かせたんですか?」
「もうね……なんというか、逆かな」
「は?」
この相馬さんの言葉を理解することは、二度と無かった。
◇◆◇◆◇
数日後、いつもより執拗に相馬さんに絡んでくる山田を見て教育係の五十嵐はふと思ったことがあった。
直接山田本人にいうのはなんか嫌なので、相馬さんに聴いてみることにした。
「相馬さん」
「どうしたの五十嵐くん」
「相馬さんは人の弱みをなんでも知ってるじゃないですか」
「人聞き悪いなぁ」
「そんな相馬さんも、うさんくさい山田の秘密とか知ってるんですか?」
「………はははっ!」
「否定するかなんかをしてくださいよ!」
ますます謎は深まるばかりだった。
いくつか家出した原因を考えたが、結局わからずじまいだった。いくら相馬さんでも、そこまでは考えていないか、と結論づけた。
とりあえず散々迷惑かけている山田の心配をすることが無意味だと感じたのでこの話は無かったことにした。
「いがらしさんいがらしさん!やまだ気になったことがあるんですよ!」
先ほどの話を無かったことにしたかったが、本人がやってきたせいで忘れられなくなってしまった。もうだめだ。そろそろノイローゼになってしまうかもしれない。
「なんだ。仕事についてか?」
「そんなことではないですよ!伊波さんの事です!」
「おい、仕事のことを聞けよ。で?伊波さん?伊波さんがどうした」
「伊波さんっておだやかだと思いませんか?」
「…………は?」
「なんですかその明らかに「違うよ」と言わんばかりの顔は」
あの伊波さんが、おだやか?
少なくともあの性質でおだやかとは言えないような人に思えるが、山田の目は節穴の穴がm単位で空いているのだろうか。
確かに(離れていれば)優しいし、(離れていれば)いい人だ。だが(離れてなければ)男であれば誰であろうと強烈なパンチを複数発出してくる人だ。
そんな人をおだやかとは言えない。決して伊波さんが嫌いだからこんなことを言っているわけではない。殴ってこなければ普通に接している。
だが殴ってくるのなら話は別だ。いい人だとは思うが好きになれない。
「逆に聞くが、どの辺が?」
「見た目はおっとりしてるじゃないですか。そこですよ。やまだの姉候補です」
「お前は家族に何を求めてんだよ。甘やかされればそれでいいのかよ」
「はい」
「あっさり認めんな」
「あ、やまだ掃除途中でした。やまだ掃除してきまーす」
「ほんと何でもアリな奴だな……」
「逆に変だなぁとか思わないかな?」
後ろでは相馬さんが腕を組み悩んでいた。
相馬さんは影が薄いのか、何か言われるまでそこにいるのをわからなかった。
「相馬さん、何を言ってるんですか?」
「最近、山田さんに何を注意してる?」
「オーダミス、掃除をサボってる、卓の片付けサボってる………あれ、最近皿を割ってない気が?」
「そこまでわかれば十分だよ。あとは自分で………ね?」
「は、はぁ……?」
相馬さんは笑顔でキッチンに戻り、佐藤さんに蹴られていた。どうやら仕事をサボっていたらしい。
「皿を割ってないということは、成長してるのか?皿を割らない代わりに他が疎かになってるとなるとなんとなくわかる気がするなぁ…」
「突然何を言ってるんですか五十嵐さん」
小鳥遊がおぼんを脇に抱えながらいうと、珍しく五十嵐が小鳥遊に今のことを相談した。
「なるほど、山田さんが最近皿を割らないんですね?確かに最近破損報告書に山田さんの名前が全くないですね。五十嵐さんの方法が上手く効いたんじゃないですか?」
「全く?全くないのか?」
「え?そうですけど」
「ありがとう。ちょっと山田見てくる」
「あ、はい……?」
五十嵐の頭には最悪の想像が浮かんだ。その想像は山田なら本当にやりかねない。だから山田を探す。
「やーまーだー!!!」
五十嵐は這い寄る魔物の如く吐いた息からは白い煙が出ていた。
「……!?」
魔物、五十嵐が背後から迫ってくると山田は小刻みに震えていた。
「ななななななんですか??やまだ、別に割ったお皿をずっと隠していたなんてそんなことしてないですよ…?」
「ソレヲ、ミセロ」
山田は細い身体なので若干見えているが、五十嵐はあえて言う。
「………逃げるが勝ちです!って、どわっ!」
勢いよく立ち上がり逃げようとするが一歩目で躓き転倒、段ボールに入っていたものが雪崩のように落ちてしまい、山田の悪事が完全にバレた。
「…………ヤマダァ……」
「ひいっ!?」
「なぜ書かなかった!!!」
「やまだ……やまだがお皿割るといがらしさんの家行かなきゃいけないから……それにみんなにも迷惑かけないようにやまだなりに考えたんですよ…」
「山田……
まず皿を割らないような方法を考えろよ!!そっからだろお前は!あと、今日は家に強制招待だ。帰ってからずっと妹たちと遊んでもらうぞ」
「乱暴はイヤです!」
「俺もお前のお世話がイヤだよ!!」
山田は、バイトに来てから全く変わっていない。ミスは日常茶飯事だし、皿は平気で10枚ほど割る。寝る子は育つと言うが、割る子は全く育たない。
そろそろ本格的に指導しないと、店が皿不足かつ食品不足で営業できなくなってしまいそうで怖い。
五十嵐は店の今後を考えながら、山田の皿の処理を手伝わされていた。
なんだかんだで物語進んでますけど、このままじゃ100話とか変えちゃいそうですね。
それはそうと、僕の作品のタグには猫組登場有りとあるんですが、猫組は猫組で新しい作品書いた方がいいですかねぇ?
一応主人公も考えてますし……。
出すならおそらくここに出すので、章で別れてたらあ、猫組のヤツ書くんだなと思ってください。
次回は特に何も決めてないです。原作読んで決めます。
またのご来店、お待ちしております!