Let's WORKING!?   作:invisible

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お久しぶりです。


16品目 ホワイトデーと伊波さん講座

 

バレンタインからちょうど1ヶ月が経った日、世間ではホワイトデーと呼ばれる日である。

小鳥遊と五十嵐は休憩室でぼーっとしていると、常時休憩の店長に呼ばれた。

 

「小鳥遊、五十嵐、知ってるか?」

「店長、先に俺の話を聞いてもらってもいいですか?」

 

小鳥遊が店長に向けて話すことは大体わかっている五十嵐は、とりあえず静観することにした。

「……なんだよ」

「ホワイトデーというのはですね、バレンタインのお返しをする日なんです。従ってチョコをあげてない人にもらう権利はありません。ということで食べ物を要求しないでください。で、話はなんですか?」

「ちっ……」

読まれてたか、と言わんばかりの顔をすると、店長は八千代さんの方へ行ってしまった。

「……俺は一応買ってきたんだよなぁ」

「偉いですね」

「まぁ、いくらアレでも目上の人だし、そういうのはちゃんとしとこうかなって」

 

 

この後五十嵐は店長にチョコを渡すと、次の週休みが2日あったのは、言うまでもないことである。

 

 

◆◇◆◇◆

 

ワグナリア内ではチョコが行き交う中、血もいつもより多めに出ている。

これはチョコを食べたことによる鼻血ではなく、伊波さんに殴られることによる血だ。

男性恐怖症の彼女は、男性とすれ違うだけで拳が飛んでくる。恐怖のアトラクションよりもタチが悪いのだ。

 

 

そんな伊波さんが来るのを予期した相馬さんは、キッチンで倒れたフリをしていた。

「……何してるんですか相馬さん」

「………死んだフリ」

「伊波さんは熊ですか」

「熊じゃないよ!」

 

五十嵐の隣で種島さんが言うが、相馬さんの言っていることはなんとなく正しい。

男であれば無差別に殴って来ると言っても過言ではない伊波さんに近づかない方法は、このくらいしかない。

自分の身体を守るためには、必要なことなのだ。

 

「かたなし君や佐藤さんは割とフツーに対応してるのに…。五十嵐くんは逃げてるような…」

「小鳥遊はもう慣れてるんじゃないですか」

 

「おい相馬、死んだフリは熊には効かないぞ。こっちの方が対策になるぞ。ほれ」

近くに居合わせた佐藤さんは相馬さんに鈴を渡した。

「これって……」

「熊よけ」

 

「だから熊じゃないってば!!!!」

この日2度目の種島さんのツッコミがキッチン中に響いた。

 

「3人とも伊波ちゃんとちゃんと接してあげて!特に相馬さんと五十嵐くん!」

「「「ムリ(です)」」」

 

3人の声がハモると、種島さんはさらに続ける。

「ダメです!ちゃんと努力しなさい!!少しくらい殴られてもいいじゃん!」

「……種島さん、他人事だと思って言ってますけど、結構痛いんですよ!?」

 

「とはいえ、仲良くできるものならこっちだってしてーよ」

「そんな方法があるなら教えてほしいよね」

 

一応、佐藤さんも相馬さんも仲良くしたいと言う思いはあるようだ。

「こうなったら、伊波ちゃんのプロを呼ぶしか……」

 

種島さんの言う伊波ちゃんのプロ。もちろん小鳥遊だ。

「「「「先生」」」」

「やめてください」

 

 

「伊波ちゃんと仲良くなれるコツを教えて!かたなし君!」

「えぇ?」

「いつもどんな気持ちで接してるのか、とかさ」

 

「えーーっと……まず」

 

 

 

「「「……」」」

 

「覚悟します」

 

これを聞いた瞬間、もう被害を喰らうことなく接するという一番平和な方法が消えた。

「仕事ですし、普通に接するくらいはしたいですよね…お互い頑張りましょう」

「……大丈夫?殺されない?」

 

まるで熊に出会った時の対処法を聞いてるみたいになっている。どれだけ相馬さんは伊波さんのことを怖いと思っているのだろう。

「気持ちは痛いくらいわかりますが、相手は一応女の子ですから、伊波さんは……対応を誤らなければ決して怖い生き物ではありません。初心者は軽いふれあいから始めましょうか」

「お前結構ノリノリだな」

「じゃあお菓子でも与えてみましょうかね。そーれ」

 

小鳥遊は近くにいた伊波さんめがけてお菓子を投げる。

しっかりキャッチした後、伊波さんは小鳥遊の方を見て何があったか確認しようとする。

「このように、きちんとできたら褒めてあげてください」

「私は犬なの!?」

「………で、次は」

「無視しないでよー!私は犬じゃないんだから…投げて渡さないでよ…」

「じゃあ……」

 

 

と、小鳥遊はどこから持ってきたかわからないが釣竿にお菓子を付ける。

「いきますよー」

「魚でもないよ!!!!」

けど、ちゃんとお菓子はキャッチする。

 

「このように、なんでも真面目に受け取りますので、安全に気をつけて接してあげてください」

 

「なるほどな」

「すごいねー」

「よくわかったぜ」

 

「お分かりいただけましたか?」

「ああ、伊波はお前に任せておけば問題ないな」

「ですね。小鳥遊に押しつ…任せましょうか」

 

(匙投げた……!!!)

 

 

 

結局、伊波さんを上手に扱えるのは小鳥遊だけだった。

「特別天然記念物だと思ってお前が大事に育てろよな。小鳥遊」

「あああああの……。私は動物でも魚でもないです。人間扱いしてください」

「「「「俺らはサンドバッグじゃないです。人間扱いしてください」」」」

 

伊波さんの発言は特大ブーメランと化してしまった。

 

 

 

 

 

 

「あ、伊波さん!ちょっと待った!」

先ほどの一悶着が終わり、ゴミ捨てに向かおうとしていた伊波さんを小鳥遊が止める。

 

「え?」

「これ、バレンタインのお返しです」

 

普通ならすぐ渡せるはずなのだが、2人の距離は相当離れていた。それもそのはず、近くに行って渡せば、大量に血が出てしまうからだ。

小鳥遊は休憩室からマジックハンドを持ってきて、遠くにいる伊波さんに袋を渡す。

「はい。これで手渡しです。投げて渡そうとも考えましたが、それはあまりに失礼なので、これにしました。中身はヘアピンです。足しにしてくださいね」

「あ……ありがと」

 

 

一方、別の場所では五十嵐が松本さんにチョコレートを渡していた。

「松本さん、これ、バレンタインのお返しです」

「わざわざありがとう。まさか全部自分で作ったの?」

「そうですよ?そっちの方が楽ですし」

「あとこれは妹たちが渡せって言ってたので、どうぞ」

 

大きめの袋には、形がいびつなクッキーが大量に入っている。五十嵐が焼こうとしたのだが、妹たちはそれを拒否し、自分で作ると言って譲らないので仕方なく妹たちに作らせたため、こうなってしまった。

「一応食べてあげてください…。味見をした限り大丈夫だとは思います」

「ありがと。味わって食べるわね」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

ホワイトデーから数日経ち、お返しで今持ってるお金のほとんどを使い切った五十嵐と、バレンタインで姉たちからもらったチョコを3倍返しで返した小鳥遊は、いつにも増してげっそりしていた。

幸運なことに店にはほとんど人がおらず、店員のほとんどが暇していた。

 

「あー、今日は暇だな」

「不安になるくらい暇ですね」

 

 

「お…お疲れ様でーす」

いつもよりコソコソと伊波さんが裏に向かうと、2人は伊波さんの存在に気づく。

「あれ?今日はシフトに入ってなくないですか?働いてきます?暇だけど」

 

「小鳥遊くん……。あの…」

「なんです?」

 

 

 

 

 

「女装に……興味ある?」

 

「帰れ」

一体、伊波さんに何があったのだろうか。

 

 

 





某バンド系音ゲーのイベントが頻繁にあり過ぎてつらい。
休む暇をくださいな…。

次回は女装、女装、からの女装ですね。
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