Let's WORKING!?   作:invisible

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受験とは(哲学)


17品目 少女になる少年

 

一体伊波さんの身に何があったのか知らないが、今わかることは、小鳥遊に女装を求めている伊波さんがいて、それを聞いた小鳥遊は笑顔で拭いていたナイフを伊波さんに向けたということだ。

 

「寝言は寝てから言ってください。さぁ、帰っておやすみなさい!!」

「まぁまぁ、伊波さんにもなんか事情があるんだろ。無けりゃ普通にタチ悪いが……」

 

「その……ホワイトデーのお返しに小鳥遊くんからヘアピンをもらったんだけど……」

「それは結構なことじゃないですか。それに何の問題が?」

「その…うちのお父さんにバレて…」

「……それだけ?」

 

 

「あいや待たれい!」

時代劇風に現れたのは、今日も絶賛皿クラッシャー中の山田だった。

山田は伊波さんと五十嵐の間に入ると、五十嵐の方を見て腕を組む。

「それだけ?じゃないですよ!これだから素人はダメなんですよ…。いいですか?伊波さんのお父さんは伊波さんのことを溺愛してるんです!それはやまだが音尾さんを好きでいるような感覚です!どうです?わかりやすいでしょう?」

 

「お父さんにバレたって…伊波さんのお父さんは家にいないんじゃないんですか?ご病気のせいで」

「え、ちょ、やまだのこと無視しないでくださいよ!」

「お母さんが喋っちゃったみたいなの……」

「伊波さんも!!?」

 

 

 

「あーーーー!!あーーー!きーこーえーなーいーーー!!」

 

小鳥遊は耳を塞ぎ、現実から目を背けている。余程女装するのが嫌なのだろう。

当然五十嵐も女装する気はない。そう言った趣味はお持ちではないし、今後持とうとも思っていない。

 

「聞こえないフリしないで…」

「いや、仕方ないですよ。こればっかりは………こればっかりは…」

「な、何で遠い目で言うの…」

 

「まぁまぁ。で、伊波さん。母が父に男からホワイトデーのお返しを貰ったことをバラしたわけですが、それと小鳥遊が女装するのに何の接点も無いんですが、それは」

「えっと、それで苦し紛れに『小鳥遊さんは女の子』って言っちゃったの…」

「あー、察しました」

 

 

「……伊波さん?」

いつも以上に笑顔な小鳥遊は、マジックハンドでコンコンと伊波さんの頭を叩く。

 

「お願い小鳥遊くん!お父さんに疑われないように女装して!もしバレたら…バイト辞めさせられちゃう……」

「はい!!!!絶っっっっ対に嫌です!」

 

「だろうな」

「力強く拒否しないで!!!」

 

伊波さんは、ものすごく真剣にお願いしている。確かにその内容は真剣さに欠けるが、伊波さんのバイト継続に関わることだ。これも仕方のない事なのだろうか。

伊波さんはもう諦めてしまったのか、走って何処かへ行ってしまった。

そんな姿を見た五十嵐は、小鳥遊に助言をする。

 

「……こればっかりは了承するしかないんじゃないか?小鳥遊よ」

「五十嵐さんまで伊波さん側につくんですか!」

「そういうわけじゃない。俺はいつだって永世中立国並みに中立だ。で、今回の件、俺は全く悪くない……だなんて思ってるかもしれんが、案外そんな訳でもない。よく考えろ。事の発端は誰が何をしたからだと思う?」

「俺が、伊波さんにヘアピンを渡したから?」

「そうだ。『小鳥遊』が『伊波さんにヘアピンを渡したから』だ。多少の責任はあるんじゃないか?それでもやらないなら良いんじゃないか?俺は止めないぞ。本当に伊波さんが辞めてもいいなら、な?」

 

「………」

小鳥遊は黙ったまま考えている。自分が女装するだけで伊波さんがバイトを辞めずに済む。たったそれだけでいいのだが、自分には女装を絶対にしたくない理由がある。

けど、伊波さんが………。

 

「やっ……やりま」

「ほう」

「やっぱちょっと待って!」

「決心グラつくな…別にいいけど」

「いやいや、やるにしても女物のサイズの制服とかないかもしれないじゃないですか」

 

 

「やまだが入った時、制服のサイズいっぱいあるの見ました」

「!?」

ここにきて山田のファインプレーが炸裂する。山田がワグナリアに来て初めて人の役に立った瞬間である。

 

「か、カツラとか……も」

「あります」

山田の快進撃は止まることを知らない。

 

「他にも…」

「メイク道具や変装に使えるアイテムはほとんど持ってます」

「え、偉いなぁ〜山田は」

 

小鳥遊は山田の肩を掴みながら褒めるが、その手は血管がたくさん浮き出ている。確実にイライラしているご様子だ。

「やまだ、初めてたかなしさんに褒められました!」

 

「おい、あとは俺らに任せとけ五十嵐」

「さ、佐藤さんに相馬さん!?」

この女装企画の最高の適任者、相馬さんがいつも以上にニコニコしながらやって来た。

「相馬さん的には伊波さんが辞めることは都合がいいんじゃないんですか?」

 

「失礼な…。確かに苦手だけど、親の勝手で辞めるだなんて可哀想じゃない!それを防ぐには小鳥遊くんが女装するしかないんだし、こんな……こんな面白そうなことほっとけないよ!」

相馬さんはキメ顔でそう言った。

「それが本音ですか。本当にドSだなぁ」

「まぁまぁ小鳥遊くん。悪いようにはしないしないよ……さぁ、やっちゃおうか…」

 

「ぎゃあああああああああああああ!!!」

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

伊波さんは出口の前で1人こじんまりと座り込んでいた。

いくら急用とはいえ、突然年下の男に女装してくださいなんて言ったら、断るのは当たり前のことだ。それは自分でもよくわかっていた。

さらに言えば、過去に女装絡みであまり良い思い出のない小鳥遊に言うのは、ひどいことだと言うこともわかっている。

(どうしよう……もういっそ)

「お父さんを始末するしか…」

 

「な、何を物騒なことを言ってるんですか伊波さん」

「た、小鳥遊く………ん!?」

「………なんとかなったみたいですけど」

そこには、ピンク色の長いカツラ、パッド盛り盛りのためそこそこ大きい胸、タイツで細さを見せている脚、とても男の人とは思えない美女っぷりをみせている小鳥遊がいた。

 

「今回だけですからね…」

伊波さんは小鳥遊の目を見たあと、目線を下にさげ、胸の方をじっと見つめる。

しばらく見ると、そのあと揉みしだく。

「どうしてこんなことに!?!?」

「どうしてでしょうねぇ…あと、ズレるので触らないでもらえます?」

 

 

 

 

「小鳥…ふふっ、小鳥s…ははっ、小鳥遊、くん。くくっ、小鳥遊くん。言い忘れてたことがあるんだ…はははははっ!」

「後で五十嵐さんは痛い目見てもらいましょうかね……!!!」

「女装した理由は伊波さんのお父さんにバレないため。と言うのはもうわかってると思うが、そろそろ伊波さんのお父さんがここに来るらしい。きちんと接客頼みます。とのことだ。もう伊波さんは胸さわさわしてて言いそうにないから俺から言っておくよ」

「あ、ありがとうございます五十嵐さん。それとこれとは別なので、後ほど覚悟しておいてくださいね!」

 

「全力で断る」

 

 

 

こうして、小鳥遊は女装する羽目になり、これからやって来る伊波さんのお父さんの接客をすることになってしまった。

小鳥遊は女装をバレるのか。それとも騙し通すことができるのだろうか。

 

 





気づいたら評価のバーに色がついていました。本当にありがとうございます!これからも頑張ります!

次回は伊波パパ参戦!どうする小鳥遊!

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