「佐藤くん。このサラダ、いつもよりレタスが一口分足らないと思うんだ」
「足りてるよ。うるせーな」
「あと、プチトマトもちょっと小さいような」
「細けーな早くしろ、冷めるだろーが」
キッチンでは佐藤さんと相馬さんがもめていた。それだけなら良いのだが、小鳥遊が相馬さんと話していると、小鳥遊に何かを伝えようとした種島さんが来て厚底の靴を履いてることを暴露され、焦った種島さんが相馬さんの仕事をやっていたらそれを見た八千代さんが相馬さんに注意すると闇討ちしたことを暴露され、誰もいなくなったところで小鳥遊が秘密にしていたことをバラされていた。
どうやら小鳥遊は姉が3人もいるらしい。羨ましすぎて泣けてくる。
皆が秘密をバラされて焦っている時に、五十嵐はひょこっとやって来た。
「相馬さんは人の秘密ばっかり知ってるんですね」
「そうだね。五十嵐君のことも大体わかるよ」
「は、はぁ……それはすごいですね」
「松本さんと同じ高校の後輩で、妹が3人いて、お母さんは虚弱で家事を五十嵐くんに任せっきりだけどそれ以外は完璧で、テストの成績が500点中493点で1位でしょ?」
「そこまで行くと気持ち悪いですね」
相馬さんはハハッ、と笑いながら五十嵐にサラダを渡すと、壁に寄りかかって暇そうにしていた。
「相馬さんは裏の顔が表の顔見たいなもんですね」
「人聞き悪いなぁ」
「全くもって間違ってないじゃないですか。一体どこから情報を得てるんだか……」
「秘密☆」
「でしょうね」
とりあえず、相馬さんに関わると口でねじ伏せられるという事は分かった。
「相馬さん。俺は別に知らされたくない過去とか無いから言いますけど、仕事手伝ってください」
「本当だよねぇ。若干松本さんのことか気になるくらいは何もないからこっちも何かしようがないんだよねぇ。しょうがないから手伝ってあげよう」
「…は?何言ってんですか?俺が松本さんを気になってる?何かの間違いじゃないですか?」
ピッ、と相馬さんは何かを押すと、五十嵐に見せてきた。
「はい。今の発言録音したから、今度後悔しても言い逃れ出来ないようにしたよ」
「ほんとあんた何者だよ」
◇◆◇◆◇
「相馬さんはつかみどころのない人だなぁ…出来れば関わりたくない」
疲れた様子で休憩室に向かい、1人でお茶を飲んでいると、見慣れない人が通り過ぎた。
「…ん?誰だろう」
生まれたての鳥が初めて見たものを親だと認識し、ついていくかのように五十嵐は謎の人についていく。
(誰ですか?なんて聞くのは失礼だし、うーむ、どうするべきか)
「……ん?」
五十嵐の姿に気づいた謎の人はこちらを向いた。
「……お面?」
その人は能面のようなお面をかぶりながら、ぺこりと一礼した。
「ああ、君はもしかして白藤さんが新人って言ってた子かな?」
そう言うと謎の人はお面を外す。
謎の人は見た目は優しいおじさんだが、哀愁さが常人よりもある感じで、悲壮感というかなんというか、生命線が短そうな人だった。
「こんにちは。この店のマネージャーをしてる音尾 兵吾です。ここにいる時間は少ないけど、わからないことがあったら聞いてね」
「ど、どうも、最近バイトを始めた五十嵐 光希です。よろしくお願いします」
見た目通りの優しい人で、人当たりが良い人だった。マネージャーの人は店長よりも偉い人と聞いていたので、もっと怖い人かと思ったが、そんなことはなかった。
2人が話していると、店長が事務室にパフェを持ってやって来た。
「お前は…音尾か。相変わらず妻は見つかってないのか?」
「はい……牛乳を買いに行ったっきり戻って来てないですね」
「まぁそんなことはどうでもいい。例のものは買ってきたんだろうな」
「あ、ああ、お土産です」
なぜだろう。音尾さんの方がポジション的には偉いのに、店長の座り方と言い、店長の方が偉いような気がしてきた。
「あー疲れた。音尾がいなくて疲れたなー。肩揉んでくれ」
「は、はい。本当すいません」
「1つ聞きますけど、本当に音尾さんの方が偉いんですよね」
「一応そうだけど、僕は別にそういうのは気にしてないかな」
「なんつー優しさ…大仏様みたいに見えてきた」
時間は少し戻り、キッチンでは佐藤さんが探し物をしていた。
「なぁちびっ子。砥石知らねーか?」
「ちびっ子じゃないよ!砥石ならキッチンにあるはずだよ!」
「そうは言ってもなちびっ子、それがないからこうして言ってるんだよ」
「だからちびっ子じゃないってば!!」
種島さんがプンスカと怒っていると、ジャーッ!ジャーッ!と何かを削っているような音が聞こえる。
「もしかして……」
佐藤さんがキッチンを出て見てみると、八千代さんの刀を砥石で削っているのが見えた。
「なぁ轟、ちょっと砥石使いたいんだが…」
「あら佐藤くん、包丁持って出歩いちゃダメよ!」
「お前もな」
「なんか八千代さん、時代劇に出てる人みたーい」
「……切らねばならない人がいるわ….」
「わはぁ、それっぽーい!」
「本当にやるんじゃねーぞ……」
なにか、いつもとは違うオーラを纏っている八千代さんは刃を出しっぱなしで事務室まで向かう。
「あいつ……誰を斬る気だ?」
「斬っちゃダメだよ!?」
「それは轟に言え……!!」
時間は事務室にいた音尾さんたちとの会話に戻る。ちなみに店長は休憩室で土産を食べている。
「極度の方向音痴か……そこのスーパーで牛乳買いに行っただけで消えるって警察呼んだ方がいいんじゃないですか?」
「彼女は…そういうの通じないから」
「もしかして音尾さん、妻は2次元とかいうクチですか?」
「に、2次元?」
「知らないんですね。いろんな意味で良かった……」
「よくわからないけど、小鳥遊くんといい、まともな子たちがきて良かったよ…」
今までどれだけまともな人が来なかったのだろう。と五十嵐は思うが一瞬で解決した。
音尾さんの後ろをみると、普段とは違う八千代さんが見えた。しかも刃が出ている刀を持っていた。
「あら…長旅お疲れ様です……お、と、お、さん!!!」
確実に獲物を捕らえる様に刀を振り下ろす。
しかし音尾さんは真剣白刃取りで真っ二つにならないで済んだ。
「とっ、轟さん!?」
「……取られた」
「取った!?僕は何も取ってないよ!?」
「……杏子さんを!」
「白藤さんを!?」
「私はパフェしか作ってあげられないのに……軽い気持ちで物を与えないで!懐いちゃったらどうするの!?」
「え!?あ、ごめんなさい!!」
「これは……とんでもない光景だぞ」
「そんなことより客大丈夫か?注文来てないといいんだが」
「『そんなこと』じゃないでしょうに!音尾さん死んじゃいますよ!?」
「あー……土産食うの飽きたな。八千代ー、パフェ作ってくれ」
と、事件を起こした(?)本人がやってくると、八千代さんはいつもの八千代さんに戻る。
「はぁい!杏子さん!チョコとイチゴ、どっちがいいですか?」
「んー、今日はチョコかな」
「わかりましたぁ!」
そう言って2人はキッチンに向かっていった。
「音尾さん!大丈夫ですか?」
「おっさん、今年何回めだよ。轟に斬られかけたの」
「これで3回目くらいかな…前回は小鳥遊くんがやってきてすぐに斬られかけたから…新しく人が来ると斬られるのかな?」
「……なんでそんな普通にいられるんですか」
「まぁ、彼女だって本気で斬りかかったわけじゃないだろうし、ね?」
「でも殺気はあったじゃないですか」
「五十嵐、それは約2ヶ月前に小鳥遊が言ったことと同じセリフだ」
横にいた佐藤さんがそう言うと、種島さんが焦った様子で事務室に来た。
「五十嵐くん!佐藤さん!お客さんが増えてるから…早く手伝って!!」
「はいはい……わかったよちびっ子」
「ちびっ子じゃないよ!!」
「わかりました……と」
休憩室経由でホールに行こうとすると、なんということでしょう。伊波さんに遭遇したではありませんか。
「きゃぁあああああ!!!」
当然、右ストレートが顔にヒットする。
「ごっ、ごめんなさい!!」
「……謝るなら……殴らない努力をしてくれよ…マジで」
伊波さんが男性恐怖症になってるように、五十嵐も伊波さん恐怖症になりかけそうな1日だった。
評価に必要な文字数を0にしました。ですが、もし評価していただけるならなるべく何か書いてもらえると嬉しいです。
次回は小鳥遊家の事情orオリジナルストーリーですかね
またのご来店、お待ちしております