Before the scarlet 作:a matchless sword
様々な選択の果てに、彼女が選ぶ答えとは?
※この物語における、原作との相違点は伏線であり、原作に帰ってゆく。つまり、僕なりの考察を兼ねた物語という訳です。
あれから三日ほど過ぎた。
レミリアは決断しかねていた。
その一手が家族達の命運を、この世界の命運を分かつのは自明であったからだ。
レミリアは一人、自室の椅子にもたれ、天井を眺めていた。
代わり映えのしない天井を崩れ去る日常の最後の砦の様に感じた。
それなりに長くは生きてはきたが、こんな風に感じるのは初めてであった。この事態に当主になり、皆の幸せを勝ち取ることに希望などを感じていたことを深く、深く恥じた。
その時、ドアが叩かれた。
「失礼します、レミリアお嬢様。」
レットがとある書類を持って入ってきた。
普段は執事の誰よりも執事服を着こなし、完璧と言うに相応しい洗練された男であったが、今日は少し隈が見え、いつものオールバックにも少し跳ねてる所が見受けられた。
そして何よりも煙草の匂いがするところにレミリアは違和感と少しの安堵を覚えた。
「お前が煙草を吸うなんて珍しいじゃないか。で、一体その書類はなんだ?」
レミリアは微笑みながらそう口にした。煙草を吸った訳は聞かない、そんな理由聞くまでもなく分かるからだ。
誰もがこの事態に不安を感じてるのだ。
レットは書類を渡すため、レミリアの机に近づく。
「エルストファー様からです。」
レミリアは直ぐ様、封を開けそれを読んだ。
レミリアの表情は険しくなった。
そして、大きなため息を吐いた後、その書類をレットに見せた。
その後、レットは読み終わると言った。
「これがエルストファー様の決断ですか。実に彼らしくはありますがとても残念です。」
レミリアとレットはこうして、いつも危機を乗り越えていったのである。
レミリアは極秘文書であろうと下らない手紙であろうと全てレットと共有してきた。
そして、レットもその期待に答えるべく、対策を講じ上手く対処してきたのである。
レミリアはレットへ、レットはレミリアへ絶大な信頼を置いているからである。
レミリアが生まれた日、レットはレミリアの執事となった。また、レミリアの母はレミリアを生んで急死してしまい、レミリアの教育はレットがしてきた。
前当主の子供としては生まれるのが遅かった為、ほとんどの愛情は注がれなかった。レットはレミリアが肩を並べるに至るまで様々な仕事をしてきた。中には地べたに頭を触れるまで頭を下げてきた。それでもレミリアには悟らせようとはせず、いつも微笑んで
「レミリアお嬢様、朗報です。」とだけ話してきた。
レミリアもそれを知りつつも、笑顔で「お前が私の執事で良かったよ」と。
だが、今回ばかりは決断の重さが違う、故にレットもあまり口を挟まなかった。
レミリアは席をたち言った。
「少し、一人にさせてくれ。安心しろ決断はする。」
レットは「分かりました」とだけいい、部屋を出ていった。
レミリアは窓辺に立ち、景色を見た。
門の辺りではスチュワートとブレントが柄にも合わず、深妙な顔つきで話し合っている。
人々は変わる、されど皮肉なことに景色はいつものままだ。
暗く、明るいこの不思議な世界が全てを嘲笑っているようにレミリアは感じた。
窓に映る自分を見た。レットのことなど言えないくらい、くっきりと隈が映っている。
悲しいかな、そんな彼女もまた、美しいのである。
大きな瞳は純粋さを失わず、悲しいくらい澄んでいた。鼻は母親ゆづりで高く、口は主張し過ぎず、だか美しい真紅であり、その赤は彼女の白い肌をより引き立てた。純白のドレスは豊満な胸と括れた胴とそのスラッとした長身を飾った。
本来、汚点なはずの隈もその白と絶妙なコントラストの美点へと変換されていった。
その黒は彼女の心中では暗く、深く彼女を引き込んでいた。
『拝啓 レミリア=スカーレット様
この度は親愛なるレミリア様に極秘文書という形で手紙を送らせて頂きました。文書と言うには拙いかもしれませんがお読みになって貰えたら光栄です。
単刀直入に言いますと私はカーマインに降伏します。
レミリア様には大変お世話になりましたので貴女の元に降伏したくはありましたが、それでは双方、デメリットが多いからです。
もし私が貴女に降伏するとなると、私の領地はカーマインとガーネット、貴女の領地はピュースとガーネットと隣り合っています。つまり、貴女は飛び領を持つことになります。これは敵に攻められやすく、また連携が難しくなります。この結果、我々は多くの犠牲を出しますし、民達の生活も厳しいものとなります。
ですから、カーマインに降伏する次第です。
しかし、ご安心を貴女の兵を傷つけないため、我々はカーマインに軍事協力はしない前提で降伏する予定です。向こうも最初からことを荒立てたくないと思いますのでこの条件はきっと飲むでしょう。
ですが今は悔しい思いでいっぱいです。
私が幼い頃、本を読むしかないような閉鎖的な暮らしを送って居たとき、突如、お忍びで貴女とフラン様とスチュワートとブレントが遊びに来てくれたことは今でも覚えています。あの出来事は私に人との交流の素晴らしさを教えてくれました。フラン様がいろいろなゲームを教えてくださり、私や弟はぼこぼこにされたり、ブレントとスチュワートが庭を破壊して爺やに怒られていたのも鮮明に覚えています。ですが特にレミリア様の見せてくれたダンスは特に印象に残っております。
そんな貴女達と共に居ることが出来ないそれが僕に取っては一番悲しいのです。
されど私も領主です、自らのわがままで行動することは出来ません。
私は私の正義の為に決断します。
ですから、レミリア様も自分の意志で決断ください。
再び会う時、笑い会えることはないでしょう。
レミリア様が最後まで勝つことを私は信じています。
御武運を
エルストファー=カプティックより』
レミリアは彼の手紙を思い出していた。
臆病であるが揺るがぬ意志を持つ彼の成長に嬉しい思いと決断出来ない自分への愚かさを
感じていたのであった。
レミリアは考えた、自分の意志とは?
一番最初に脳裏を過ったのは家族であった。
家族への愛、それがレミリアの答えだった。
レミリアはエルストファーの様に降伏は出来ない。
スカーレット家の生い立ち、レミリアの能力これらはレミリアに降伏は許さない。
戦うより、他ないのである。
それでも、勝てる保証がないことをレミリアを追い詰める。
外で怒鳴り声が聞こえた。
「俺はもう決めた、この命潰えようとレミリア様の為に捧げよう! 愛すべき、レミリア様のために!」
スチュワートとブレントの声であった。
窓に映ったレミリアは先程よりもぼやけて見えた。
黒は消えていった。一滴に浄化されて
「レット、どうせそこにいるんでしょう?
今から会議を行う。皆をここに連れてこい。」
「気づかれてましたか、承知しました。では今すぐに」
ドア越しにそう聞こえた。
レミリアは笑った。いつ以来だろうか?こうも心底笑えてきたのは。
To be continued
今回の題名はfranz ferdinandの代表曲Take Me Outです。
歌詞が今回の話にかなりリンクしていて、結末を匂わす感じが出たからです。
franz ferdinandの曲はどれも素晴らしいので聴くことをオススメします。また、題名に使うかもしれませんしね。
後編も間もなく出します。
前編は活動報告から大分遅れてしまったことをお詫び申し上げます!