ある日の夜中ーー
提督は小腹が空いたので食堂に来ていた。
提督「ん?明かり?」
なぜか厨房が明るい。
そっと覗くと鳳翔がいた。
鳳翔「よし!あとはあげるだけですね!」
少し気になり、鳳翔の元へ、厨房の中へと足を進める。
提督「鳳翔、なにをしている?」
鳳翔「へ!?て、提督!?あ!?」
驚いた勢いで油鍋をこかし、熱せられた油が鳳翔の細い体と足に襲いかかる。
提督「!?鳳翔!」
慌てて右足に力を込め、鳳翔を庇うようにタックルを与える。
当然の事だが高温の油が庇った背中と、顔の一部に降りかかる。
提督「うぐっ…!」
歯を食いしばって耐える。
鳳翔「あ…あれ?提督…?」
提督「鳳翔…無事…か?」
慌てて鳳翔がとびおきる。
鳳翔「て、提督!?そ、そんな!私を庇って…!き、傷を見せてください!はやく!」
提督「すまない…少し、動けそうにない」
そう言うと鳳翔が強引に油のかかった制服を脱がし、上着を来ていたおかげで溶けずにすんだカッターを脱がせる。
鳳翔「す、すぐに冷やさないと!」
そう言うと水に濡れたタオルを大量に用意し、火傷面に当て、さらにそれを三重にし、上に保冷剤を乗せて、よく冷やす。
提督「いっ…!」
それもそのはず、皮膚こそただれていないものの、かなりの高温で、上着で冷やされたとはいえ油は油。薄皮が剥がれ、水ぶくれができていたのだ。
鳳翔「ばか…」
提督「?鳳翔?」
鳳翔「ばか!艦娘を庇うなんて…!私たちはこんなのすぐに治りますが、提督はなかなか治らないんですよ!こんな、大火傷…絶対に後が残ります!もっと自分を大切にしてください!」
涙ながらに一心にこちらの目を見つめて、訴えてくる。
提督「鳳翔…。すまなかった。だからもう泣かないでくれるか?だが、いくら艦娘が入渠してすぐ治るからといってこんな大火傷をしてみろ。どれほど痛いか。俺はいくら艦娘が傷をはやく治して、跡も残らないからといって傷つく姿を見過ごしにはできない性分でな」
鳳翔「ですがそれは提督も同じではありませんか!うっ…!グスッ…!」
提督「大丈夫だ。決してお前のせいではないし、急に声をかけた俺も悪かった。これは偶然なったことだ。だからそんなに自分を責めるようなことはしないでくれ」
鳳翔「うわぁぁぁん!」
めったに泣かない鳳翔が初めて目の前で大声をあげて泣き出した。
しかしあいにくの火傷で動くことができず、目の前にある鳳翔の手を握ることしかできなかった。
それからどのくらいたったのか。
鳳翔が泣き止む頃には背中も冷え切り、なんとか動けるようになり医務室へ向かった。
鳳翔にはもう今日は休むようにと伝えた。
医務室ーー
軍医「あー、これはひどいね。ひとまず軽く処置はしないとね。そこの手術台にうつ伏せに寝てくれ。部分麻酔でいくぞ?」
提督「治りそうか?」
軍医「私に任せておけば大丈夫」
そう言って麻酔を打ち、背中の皮膚を薄く切り取り、痛まないように、かつ、すぐに治るようにとガーゼ、包帯、加えて鎮痛剤を点滴で常に投与することとなった。