午後11時
あれから鳳翔も自分を責めたりするのはやめてくれた。
さきに休むように伝え、またいつものように夜にふける。
提督「たまには良いか」
そっと引き出しを開け、日本酒を取り出す。
少々高めのいい酒だ。
以前の資源の輸入の際にこっそりと仕入れた。
小さめのグラスに注ぎ、蓋をして酒を月に照らす。
キラキラと光る酒はまさにダイヤを連想させた。
コンコンッ
榛名「司令、起きてます…か?」
提督「ん?」
沈黙が続き、灰色に近い髪の艦娘、榛名がニコニコとしながら鍵を閉め、じりじりと寄ってくる。
榛名「司令?それはなんですか?」
提督「ただの水だが…?」
榛名「榛名が飲んでも良いですか?」ニコッ
提督「うっ…」
榛名「正直に言っていただけますか?」ニコッ
あの広島では数々の戦闘を乗り越え、恐怖を克服したが、久しぶりに怖いと感じた。
提督「はぁ。酒だ。日本酒だ。久しぶりに一息つきたくてな」
自分に犬の尻尾があればシュンと垂れ落ち、耳も垂れることだろう。
榛名「はぁ…司令はおいくつですか?」
提督「今年で10と2歳…」
榛名「お酒は何歳からかご存知ですよね?」
提督「20歳…」
榛名「ダメですよ?」
提督「しかし最近色々あっただろう。少しは一息つかせてくれても良いと思うのだが」
榛名「ダメです!お酒だって、無害なら榛名は止めません!でも司令のお体に関わるから止めるんです!」
提督「こんな身体、今更壊れたところでなんともないとおもうがな…」
榛名「え…?」
思わず目を丸くし、提督を見つめる。
提督「…」
榛名「し、司令?」
提督「すまない。榛名。変なことを言ってしまったな」
榛名「なにかあったのですか?」
心配そうに隣へ歩み寄り、しゃがんで目を見つめてくる。
なぜだろうか。自然と目線をそらしてしまう。自分の心の底を見られているようで、知られたくない、隠していたいことを見られるのを恐れるように。
提督「大丈夫だ。問題ない」
榛名「なら、なぜ目をそらすのですか?司令はいつも榛名達を真っ直ぐ目を見て話してくださいますよね?それなのに、なぜ今はそらすのですか?」
正直榛名のこの勘の良さには恐れを抱いてしまう。
提督「…」
榛名「榛名では…力不足ですか?」
うつむき、震えた声で訴えてくる。
さすがにこちらも申し訳なくなってくる。
内心を明かすべきなのだろうか。
しかし、部下に自分の弱いところは見られたくない。
提督「…」
榛名「なんで!なぜなにも言ってくれないんですか!?」
突然涙ながらに胸ぐらを掴んでくる。
必死で瞳を見つめ、力になりたいと訴えてくる。
提督「…負けたな。俺の負けだ」
榛名「え?」
提督「話そう。だがこの事はお前の中にしまっていてくれないだろうか?他の奴には弱いところを見せたくないんだ」
榛名「わかりました。それが司令のためになるなら榛名は構いません!」
提督「俺が広島の反乱軍の鎮圧に参加していたのは知っているな?」
榛名「はい」
提督「そこで俺は様々な人間の最後を見てきた。仲間達ら皆国のために、自分たちのために散っていった。だが、やられていく最後を見るのが戦場じゃない。こちらが見届ける最後だってあるんだ」
榛名「それは…殺した相手の最後ですか?」
提督「そうだ…。俺はあの時なぜやめなかったのかわからない。反乱軍の中にはなにも知らず、大人達の言われるがままに参加していた女子供がいたんだ。俺は任務のため民家に突入したんだ。その村の人間は皆抹殺せよとの命令だった。しかし踏み込んだ家には…子供しかいなかった。だが命令には逆らえない。だから…」
榛名「ま、まさか…!」
提督が初めて榛名の前で涙を見せ、一言言った。
提督「怯える…!なにもできない子供を…!殺した…っ!今でも思い出す…あの悲鳴、撃ち抜かれた時に倒れこむ子供の姿、血飛沫、なにもかも…っ!」
次話へ…
会話の途中で申し訳ありません。
少し文字数が多くなるので一旦切ります