ファーストコンタクト~たぶん数年後には合法ロリと呼ばれる少女~
遠山キンジは通学路で自転車を走らせながら思い返す。
俺が何をした、と。
頭のデキはいい方でなく成績は良くて中の下、運動能力は人よりも一応上だが(とあることがなければ)鍛えた人間程度の実力でしかない。
武装探偵、略して武偵なんていうものの学校に通う。いわゆる武偵の卵をしているが転科後のテストじゃDランクといたって普通な成績であり、目立つようなことはしていない。よって恨みとかではないはずだ。
『逆恨みは買ってるかもしれないけどな』
いや確かに武偵なんてものをしているから知らない所で『特に女関係』うるさい。ともかく逆恨みを買うような仕事をしているがこれはないだろう。
「ソノ チャリ ニハ バクダンガ シカケテ ヤガリマス」
セグウェイにスピーカーと一基の自動銃座が載った人を追い回すことに特化したラジコン。それが二機、俺をたまに威嚇射撃をしながら追い回している。そしてサドルの裏には爆弾っぽい箱。プラスチック爆弾だと仮定すると自動車くらいなら粉々になるレベルのサイズ。マジで俺が何をした。
『ボーカロイドのレンの声とは玄人だな』
「いまそれ気にすることか!?」
今絶体絶命の危機だって事理解しているのだろうか?いやこいつは理解したうえで楽しんでいるんだろうが。
「スピード ヲ オトスト バクハツ シ ヤガリマス」
『セグウェイにUZIつけて追い回すとは愉快犯っぽいな。手口も似てるし武偵殺しかね?』
「そうかもしれんがどうやって脱出するのか考えろよ!?」
「ナニ ヒトリデ グダグダ シャベッテ ヤガルンデスカ?」
『やーいw怒られたw』
「うるせえ! 後で覚えてろよこの野郎!」
「スピード ヲ アゲナイト バクハツ サセヤガリマス」
どうやら俺のセリフを聞いてキレたらしい。誰もいない第二グラウンドを金網越しに確認し、そこに突っ込み、言われた通りにスピードを上げる。少なくとも無人のここでなら被害拡大はしないはず。
『でもここ午後まで基本使わねえから二重の意味で墓穴掘ったなw』
「ちっくしょう!何とかしろよギン!」
こうなれば責任の一端であるこいつに何とかしてもらうしかない。ギンならUZIくらいならなんとか出来るはずだ。というか今の俺じゃ無理だし。
だが、言われたギンはあまり乗り気ではないようで。
『ん~?その必要はないみたいだけど?』
それはどういうことか問い詰めようとするがその前にありえないものが視界に入った。今走っている第二グラウンドのの近くの寮ー確か女子寮ーの屋上から飛び降りた女の子の姿が。
「んな!?」
『おい、スピード落とすとドカンだぞ?』
ーッ!驚いて止まった足が俺の意識とは関係なく再稼働する。
「すまん!」
『いいってことよ。それよりなんだあれ?パラグライダー?』
先程、飛び降りた女の子は準備していたのかパラグライダーで滑空し、こっち目掛けて降下してくる!
「バッ、バカ!来るな!この自転車に爆弾がーー」
俺の叫びは間に合わない。少女の速度は思ったよりも速い。
ブランコみたいに体を揺らしてL字に方向転換し、2丁の大型拳銃を抜き放つ。
「そこのバカ!さっさと頭を下げなさいよ!」
頭を下げるより早く問答無用でセグウェイを銃撃した!
『なにこいつ。ムカつくなおいブチ殺そうぜ』
ちょっと黙ってろ。
拳銃の平均交戦距離7mとされてる。しかし、その倍ほどの距離から不安定なパラグライダーからの2丁拳銃の水平射撃でセグウェイをぶっ壊す。
まるで魔法のように吸い込まれていった銃弾を見てただ単に上手いという感想しか出てこなかった。
『あとはもったいないがチャリを乗り捨てすれば完了だな。どこに捨てる?』
そうだな。あんまり被害が出ないようグラウンドの真ん中――に?
「く、来るなって言ってんだろ!この自転車には爆弾が仕掛けられてる!巻き込まれるぞ!」
『近づいてくるから乗り捨てできねえな』
パラグライダーで真上に陣取った少女は脳天を力いっぱい踏みつけてきた。
「武偵憲章第1条にもあるでしょ!『仲間を信じ仲間を助けよ』——いくわよ!」
『いや信じてないのお前だろ。というか邪魔してるだろ』
確かにそうだがそれどころじゃない。パラグライダーに逆さまにぶら下がった少女が真っ正面からまっすぐに突っ込んでくる。
『良かったなキンジ!女の子の胸に顔をうずめても不可抗力で言い訳出来るぞ!』
「いや、そんなのいらなブフッ!」
ギンに文句を言っている最中に俺と少女は上下互い違いに抱き合う体制になった。意識とは別に思いっ切り蹴り飛ばした自転車を気にする間もなく、少女に空へ攫われる。
息苦しいくらいに顔が押し付けられた少女のお腹はクチナシのような甘酸っぱい香りが――
ドガアアアアアアアァァァァァッッッ!!!
閃光と轟音に爆風。
ここからは俺の推測も入るが、木っ端みじんに吹っ飛ばされた俺のチャリを中心にぶっ飛ばされた俺達は咄嗟に女の子が怪我しないように抱きしめグラウンドの片隅にあった体育倉庫の扉に突っ込んでいった。
☆ ★ ☆
・・・・・・
「う・・・・・・っ。痛ってえ・・・・・・」
『・・・・・・おう。僕生きてる』
どこだここは?
狭い箱のような空間に尻もち着いた姿勢で収まっているようだ。額あたるプニプニしたものを爆発の影響からか緩慢に押しのけながら周囲を観察する。
身じろぎするとガタガタ揺れる、よく見ると一定の高さごとに台形の穴が開いている。
『ここは跳び箱の中みてえだな。そして女の子に跨がれて狭い所とか言い訳できねえなw』
「はあ!?」
驚きのあまり、大きく身じろぎするとそれに合わせて――かくん、と動いて、その時になって初めてその顔をしっかり見ることになった。
・・・・・・
『可愛いと見惚れてるとこ悪いが』
「バッ!?」
見惚れてねえよ!?
『この子が起きる前に体勢変えることをお勧めする』
よく現状を認識してみると俺の脇腹を挟んでいるのは太もも、両肩には腕が一本ずつ。女の子を抱っこしている体勢になっている!
これはマズイ。俺の体質的にこの状態はマズイ。早くどかさねえと!?いや起こしてから退いてもらう方がいいか!?
『落ち着け流石の俺でもそれでなったらドン引きだぞ?まだ子供を抱っこしてるだけだぞ?』
そうだこれは子供を抱っこしてるだけだ決してやましいことをして居るわけじゃない!
そう考えると落ち着いてきたな。
『(今の焦りが怪しいんだが追求しない方がいいか)』
なんだギン?
『なんでもねえよ?こいつ起こしたら?』
そうだな。
しかし、揺すっても声をかけても起きることはない。
『体格的に多めに見積もって中等部か?それにしちゃさっきの動きとしては玄人だったな』
こんな小さな子がさっきの救出劇をやってのけたのか?いやそれはともかく体勢が変わったせいかなんか腹部が圧迫されて苦しい。
『息苦しいな。こっちもわりとやばいからどうにかしろ』
そんなこと言われてもな。なんとか姿勢を変えようともがいていると――
『神崎・H・アリア? 変な名前だな』
ふと見上げた場所には四月の間は着用が義務化されてる名札にはそういう名前が書かれていた。
あれ?なんでこんな高い位置に名札が?
『目線下げればわかるぞ?』
嫌だ。下げたくない。お前がそんなに楽しそうなときは大体碌なことじゃないからな。
『人はそれを現実逃避という』
五月蠅い。しかしここからどうしようもないのも事実で嫌々視線を下げていくと。
「————ッ!」
『アリアちゃんブラとかつける年頃なんだなー』
アリアとか言う少女のブラウスがめくれ上がって下着が丸見えになっている!
お、落ち着け。子供が背伸びしてるだけだほほえましい光景だ!?
プッシュアップ・プランジ・ブラなんて「寄せてあげるブラ」でA→Bに偽装しようとするなんて子供らしいじゃないか!
『おいロリコン』
それ真面目にシャレにならないから止めてくれませんかねえ!?
『呼吸が変わったからもうすぐ起きるぞこの子。その言い訳がこの子に通じるといいな』
「え・・・・・・?」
恐る恐るこの子の顔の方を見ると、この子はぼんやりと目を開けてから俺を見て疑問符を出し、ゆっくり自分を見下ろして――――ボッ!
一瞬で顔を真っ赤に染めてキンキンのアニメ声で叫ぶ。
「サ、サイテーーーーーー!!」
『髪はピンクで眼は紅いな。顔も赤いと赤尽くしだなこの子』
ぎぎん!と俺を睨んで、ばっ!とブラウスを下げてからぽかぽこぽかぽこと腕が曲がったままで大して力のこもって無いハンマーパンチを振り下ろしてくる。
「おい!や、やめろ!」
『なんか肩叩き思いだすな。この動き』
「このチカン!恩知らず!」
ぽかぽこぽかぽこぽかぽこぽかぽこぽかぽこぽかぽこ!
命の危機がないからかギンは呑気だがアリアはブラウスをめくり上げたのが俺だと思ってるらしい!
『さっきは捲り上がってなかったのにお前の動きで捲り上がったんだろ?とぼけるの下手か』
「俺はやってねえよ!?」
「犯罪者はいつもそういう!」
駄目だこれもう犯人扱いじゃねえか!?
どうにかして誤魔化すか逃げるかしないと!?
ズガガガガガガンッ!
突然の轟音が、体育倉庫を襲った。
跳び箱の外から何か当たってるのか振動が背中に来る。
『銃撃だな。音からしてさっきのラジコンの銃か?』
「う!まだいたのね!」
アリアは跳び箱の外を睨むと、スカートの中から拳銃をだした。
「いたってさっきのラジコンか!?」
「あの変な二輪『武偵殺し』の玩具よ!あんたも手伝いなさい!」
『何様だこいつ?』
「(ちょっと黙れ)状況は!?」
「UZIが7台!火力負けしてる!手伝いなさい!」
「無茶言うな!?この体勢で手伝えるか!?」
「役立たず!」
そう言って敵に集中したのか睨むように外への銃撃をし始めた。
『まだ馬乗りだもんなこいつ。それよりも代わった方がいいか?』
「ああ、そうd―――!!」
無意識なのか前のめりになりなったアリアがその胸を、俺の顔に押し付けてきた
ババッ!バババッ!
あ、これはダメだ。
小さくてもそこにあった。
小さなふくらみは柔らかくその体温と鼓動を俺に伝えてる。
知らなかったが小さくても柔らかいんだな新しい発見だ。
身体の芯に血流が集まっていく、むくむくと大きくなっていくような感覚が身体の中央からせり上がって!
なってしまった!
ヒステリアモードに
『マジでなったよこいつ。ドン引きだわ』
「(五月蠅いよギン。素敵な女性なんだならない方が失礼だろ?)」
『いろんな意味で手遅れだな』
ズガガガ!ガキン!
弾切れの音を盛大に鳴らした銃のリロードの為に身を屈める。
「―――やったか?」
「少しの間追い払っただけよ!すぐに来るわ!」
「上出来だよ」
「きゃ!?」
「ご褒美に少しの間―――お姫様にしてあげよう」
いきなりお姫様抱っこされたアリアがぼんっと、ネコっぽい犬歯の口を驚いたのかわなわなさせつつ、顔を真っ赤に染めた。
そのまま跳び箱の淵に足をかけてから一足で跳び入り口からは死角になる場所のマットにちょこんと人形のように座らせる。
『あーあ、またフラグが立ったな。で?どうする気?』
「なにすんのよ!?おかしくなったの!?」
その質問に笑って答える。
「簡単さ―――アリアを守る」
これが後に世界中の犯罪者を震え上がらせる鬼武偵、神崎・H・アリアを初めて口説いた遠山キンジのファーストコンタクトである。