運転手さんの精神が持ちそうになかったので武藤に運転を変わらせて要求通りに走らせながら銃撃戦を行っていた。
朝から乗ったバスには爆弾が取り付けられて、ラジコンで追い回されて打つ手なし状態の俺にもようやく運が回ってきたらしい。
『武偵校のヘリだな。警察も動いてるっぽいしなんとかいけるか?』
ああ。救援に来た奴らにどうにかして貰おう。
『弱腰だなあ』
五月蠅い。これが俺の限界なんだよ。
また窓から身体を乗り出し、武偵殺しのラジコンへ牽制射撃をする。たまたまタイヤにあたったのかUZIを乗せたルノーはバランスを崩してスピンしていく。ようやく一台倒せたな。
『同じのがあと三台は追って来てますが』
言うな。
『無駄弾の撃ちすぎでベレッタの弾がもうないじゃないか』
言うなって言ってんだろ!
ジリ貧な事に後輩たちが気づいたらパニックになるかもしれない。余裕があるように見せかけないとやばい。高校から武偵になった人間も多数いるんだそんな奴らにカッコ悪いとこ見せられるか!
『いい感じに武偵っぽくなってるなあ』
なんだよ?
『何でもねえよ。それより援軍が来たみたいだぞ』
援軍?それってd(ゲシィッ
「バカキンジ!居るなら連絡寄こしなさい!」
人の顔面に蹴りを入れながら飛び込んできたアリアに吹っ飛ばされた。気を抜いてたところに攻撃を受けたため不意打ちとして十分に機能している。
つまり気絶してもおかしなことではないのだムキュウ……
「起きなさいバカキンジ!」
ゲフウ!?
「・・・・・・・・荒っぽい目覚ましだな」
「なに気絶してるのよ!」
『お前のせいだろ』
ギンはちょっと黙ってろ。
「悪いちょっと意識が飛んでた。それよりどうやって移ってきたんだ?外にはラジコンがいたはずだが」
「大したことなかったわよ」
「マジかよ」
俺があんなに苦労したってのに。
『いや
そうかもしれないな。
「状況は?」
「よくないわね。あのオモチャを一瞬だけ黙らせてこのバスに乗り移ったけど爆弾は車内には無いってこと以外わかってないわ」
「外を探そうにもあのラジコンが邪魔となってるわけか」
そう言った瞬間にまた射撃が再開される聞いてたのか?
「そういうことよ。それにあまり時間もないわ」
「どういうことだ?」
「このバスの進路からして都心に向かうつもりよ!」
「マジかよ・・・・・・・・」
確かに思い返してもバスの進路は学園島を最短で出て都心へ向かうルートを通ってる。これはマズい。
「武藤!本当にそんな風に誘導されてるのか!?」
「あぁ。もうすぐレインボーブリッジだ!レインボーブリッジを抜けたらどこ行っても人だらけだ!大惨事になるぞ!」
俺より道に詳しい
マズいな爆弾の場所もわかって無いのにこのままだと大惨事になりかねない。どうすれば『大雑把な目安はつけられるけどな』——え?
『二度手間になるし変われ』
あぁ、わかった
「私は車外を探すわ!キンジ
「ちょい待てピンクチビ」
飛び出していこうとしたピンクチビを捕まえる。
「爆弾の場所が大体予想できた」
「それを先に言いなさいよ!」
『いや勝手に飛び出していこうとしたんじゃねーか』
ホントにこいつ勝手だよな。というか
「あのラジコンはバスのタイヤより上しか狙ってない。意図的に当てないようにしている感じだな」
「バスに爆弾を設置するならバスの下か荷物に偽装するのが普通ね。それだけかしら?」
「それぐらいだな。上にないことがわかったんだ探す手間が省けたろ」
「ヘリからと確認したときにそれくらい確認してるわよ!そんな少し考えればわかるでしょバカキンジ!」
『ぐはぁ!?』
なんでこいつダメージ喰らってるんだろうか?
「あとあのラジコン相手にしてたからオレは弾切れ」
「ああそう――ってそっちの方が重要じゃない!」
「話も聞かずに飛び出そうとするからだ。つーわけで援護は難しいな」
これに関して本当にどうしようもない。
銃撃戦で銃の無い武偵は邪魔にならないようにするのが精一杯だ。
「役立たず」
「返す言葉もない」
「遠山先輩!」
「ん?」
振り返ると数人の一年が立っていた。
「何?」
「これ俺達の銃弾です!」
「あん?どうした?」
「ここまで俺達はなんの役に立ってません。俺達にはこれくらいしかできません!お願いします助けて下さい!」
「・・・・・・・・」
そんなこと言われてもねえ。
なんか助ける気失せてきたんだが。
『いや助けてやれよ!?』
そう言われてもなあ。
人から言われたらやる気が失せるじゃん。
親から宿題しろって言われたらやる気失せるじゃんそんな感じ。
『俺達そんな経験ないんだが・・・・・・・・』
例えだ例え。
「あの・・・・・・・・先輩?」
「あぁ、何でもない。助かる」
「よろしくお願いします!」
『素直じゃないな』
じゃあ残りお前がやれ。
『おい、ちょっm』
また勝手に入れ替わりやがった。
あいつ自分勝手すぎるだろ!
「キンジ!一旦あのオモチャを撤退させるわよ!そうすれば下を調べられるわ!」
「わかった。援護する。無線の予備はあるか?」
「これを使いなさい!」
そう言って投げ渡された無線を装着し銃撃戦に再参加する。
〈キンジさん聞こえますか〉
「その声はレキか?」
〈はい〉
銃撃戦のさなかに聞こえた無線に応答するために射撃の手を止める。
レキ・
何を考えてるのかわからないところは困るが任務となると頼りになる。成果で示すタイプだ。
〈あのUZIを破壊しますのでその間に確認してください〉
「わかった。助かる」
〈――私は一発の銃弾〉
ターーン ターーン ターーン
レキの銃撃で三台のラジコンについていた銃を破壊する。
『相変わらずバカげた命中率だ』
そう言うな。助かってるんだからよ。
〈good!〉
銃を壊されたラジコンが撤退するのに合わせてアリアが飛び出し、ぶら下がるように車体の下を除き込む。
〈あったわ!カジンスキーβ型の
その無線を聞いて気が遠くなる。
バスどころか電車すら木っ端微塵になる容量じゃないか!バスだけじゃなくて周りまで吹っ飛ぶぞ。
〈解体を試みるわ!〉
『そろそろレインボーブリッジだぞ。そこでケリつけなかったら大惨事だな』
それを聞いて慌てて車外の風景を確認する。
確かに数分もしないうちにレインボーブリッジに入る。そこで何とかしないと。
『明日の新聞に大失態として貶められんのかなあ?』
おいギン。
――――いい加減にしろ
『おぉ、コワイコワイ。役立たずが怯えるからヤメとけ』
―――ッ!
スマン。
カッとなった
『別に構わねえよ。でもどうすんだ?もうレインボーブリッジに入るぞ』
警察の交通整理のおかげでレインボーブリッジに他の車は無い。そこでケリをつけろと言うことだろう。
最悪、ダメージコントロールの為に殺されるかもしれない。
「アリア!解体できそうか!?」
〈厳しいわね時間が足りないわ〉
「そうか・・・・・・」
クソッ。どうすればいい。俺に爆弾解体のスキルは無いし―――!
「危ないアリア!」
「きゃあ!?」
ズガガガガガッ
ラジコンの新手が現れたことに気づいてアリアを引っ張り上げて回収する。
「助かったわ」
「ああ。状況は悪化したけどな」
この状況だと爆弾解体は難しいし、ラジコンを倒すのに専念したとしてもレインボーブリッジ内で爆弾の向こうかは難しい。
『あー、ちょっといいか?』
なんだギン。
『レキに狙撃させて爆弾を海に落としたらどうだ?』
・・・・・・・・。
「レキ」
〈なんですか?〉
武偵殺しに聞こえないように声を潜めて無線で質問する。
「狙撃で爆弾を海に落とせるか?」
〈わかりました〉
いや、やれとはまだ言ってないんだが。
やってくれるなら話は早い。
「アリア。その間あのラジコンをぶっ壊すぞ!」
「え、えぇ。わかったわ」
〈――私は一発の銃弾〉
武偵校のヘリが並走し、片膝を立てたレキが見える。
〈銃弾は人の心を持たない。故になにも考えない――〉
それに合わせるように身を乗り出し、ラジコンに銃撃して注意を引きつける。
〈――ただ、目的に向かって飛ぶだけ〉
連続して高らかに銃声が響くたびに部品が壊れる音がして、それに気づいたらしいラジコンが銃口をヘリに向けようようとした瞬間。
――――ドオォォォォォォン
爆音とともに大きな揺れと水しぶきが上がり、それに合わせてラジコンがぶっ壊れる。
俺かアリアの弾が直撃したのだろう。
「武藤。爆弾の脅威は無くなったから止めろ」
「了解」
「・・・・・・・・」
物憂げな雰囲気を醸し出すアリアをよそに、遠巻きに観察していたらしい警察や東京武偵局の人間が集まってくる。
こうして武偵殺しのバスジャック事件は終息した。
有能気味のキンジをイメージしました