イナズマイレブンGOスカイハイ   作:吟遊詩人ルナ

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第1章 初めまして、松風天馬くん!
第1話 衝撃!雷門中転校命令!?


「えっ、サッカー部全員、放課後に進路指導室集合だって?」

松風天馬が空野葵から呼び出しのことを聞いたのは、昼休みのことだった。

「なんか重要な発表があるらしいの。今日はサッカー部練習なしだって」

「ええ〜っ⁉︎」

葵の「サッカー部練習なし」の言葉に、天馬が大げさと言えるリアクションを示す。

「ボクたち、進路の先生に呼び出されるようなことしたっけ?」

お弁当のコロッケを口に運びながら、西園信助が不安そうな顔で葵に尋ねる。

「うーん、あたしの知ってる中では特になんともなかったから、別に大丈夫だとは思うけど…でも、それにしてもなんなんだろうね…」

「怖いよ…せめてどんな内容の話かは言って欲しいよ…」

「あ!信助まさか、先生方の購買勝手に使ったりしてないでしょうね⁉︎あんたそれで怒られてたでしょ⁉︎」

「心外だなあ〜!あの後散々怒られて、挙句の果てには廊下の雑巾がけまでさせられたんだからもうしてないよ!ていうか、それどんだけ前の話だと思ってるの!」

「つい先週のことじゃん!」

「あ、あれ…そうだっけ?」

「もう!しっかりしてよ〜!」

ポカンとする信助に憤慨する葵を横目に見ながら、天馬は呼び出しのことで頭がいっぱいだった。

「どうしよう…もしフィフスセクターのときみたいにサッカーが出来ないなんてことになったら…」

「そんなことはないだろう。それこそフィフスセクターの問題が元で、今の世論はサッカーは自由にさせるべきだっていう意見が主流だからな」

天馬の不安に、剣城京介が冷静なフォローを返す。

「そうなの?じゃあ、もう管理サッカーなんてなくなったんだね!」

「あくまでその考えが主流、ってだけだがな」

「剣城は博識だね〜。どうしてそんなこと知ってるの?」

信助が興味深げに尋ねた。

「…お前ら、少しはニュースを見るか新聞を読め。ホーリーロードが終わってから三ヶ月ぐらいその話で持ちきりだったろうが」

「「え〜、覚えてないよ〜」」

「はあ…キャプテンがサッカー知らなくてどうするんだよ…」

目をパチクリさせる天馬と信助に、剣城は小さく肩をすくめる。

「…でも、やっぱりみんなが本当のサッカーをやりたがってるってことなんだよ!きっとサッカーも喜んでる!」

天馬が、目を輝かせる。

「はは、まーたお得意の『サッカーが喜んでる』かよ」

天馬の後ろから、狩屋マサキが呆れたように言った。

「狩屋!だって狩屋もそう思うだろ!みんな本当のサッカーがしたいんだって!」

「はいはい、わかってますよ」

「もーうっ…」

狩屋の中途半端な返事に、今度は天馬が肩をすくめた。

「あはは…まあ天馬くん!僕たち、何か悪いことした心当たりないし、大丈夫だよ!こういうときこそ、なんとかなるさ!でしょ!」

狩屋のとなりから、影山輝がひょっこり顔を出し、力強く天馬を励ます。

「輝…うん!そうだよね!なんとかなるさ!」

それに元気づけられたのか、天馬も笑顔で返した。

「あ、もう直ぐで授業始まるよ!次の授業って体育じゃなかったっけ⁉︎」

「「「やばい!忘れてた‼︎」」」

葵の声に、天馬と信助と影山が真っ先に反応した。大急ぎで教室から飛び出していく。続いて狩屋と剣城が出て行った。

「きっと…大丈夫だよね」

ひとり残された葵が、ポツリとつぶやいた。

 

 

コンコン。

「どうぞ」

「「「失礼しますっ!」」」

放課後。

サッカー部の一同は、進路指導室に集合していた。

「座っていいですよ」

進路指導部長の先生が、面倒そう言った。ロの字に置かれた長テーブルに添えられた丸椅子に腰を下ろす。

「今回皆さんを呼んだのは、ある組織から雷門中に指示が下ったからです」

「!」

天馬と剣城が、目を見合わせた。フィフスセクターのことを経験していた一同に、直ぐに緊張感の糸が張られるのが感じられた。

「ある組織、とは?」

二年生のミッドフィルダー、神童拓人が冷静に尋ねた。

「今回我々が指示を承ったのは、他でもない…『世界教育特殊開発機関』です」

「世界教育特殊開発機関…!?」

神童は驚いたように目を見開いた。

「…世界教育特殊開発機関って、なんですか?」

天馬が、緊張気味の顔で尋ねた。他の者も、怪訝そうに違いの顔を見合わせ合っている。

「そうですね…この機会ですから、みなさんにも簡単に説明しましょう」

先生はそういうと、手近なところにあったホワイトボードを手繰り寄せた。

「世界教育特殊開発機関、通称WESCA(ウェスカ)は、3年ほど前に発足した国際組織です。今までの全世界の教育カリキュラムの見直しや教育による子供の発育の研究などで、人類にとってより効果的で合理的な新しい教育の方針を見出すことを目的としています。そして、この組織は…」

そこで、先生はさもありがた迷惑と言わんばかりに、大きく溜息をついた。

「世界の教育に関わる全ての団体に干渉する権限を持っています」

「!!」

「世界の…全ての教育に関わる団体に…⁉︎」

「まあ、君たちでいう、フィフスセクターの勉強バージョンの世界レベルとでも言えばいいでしょうか」

「フィフスセクターの…勉強バージョンの…世界レベル…」

天馬は身震いした。それが自分たちにどんな指示を下したんだろう。天馬はサッカーは大好きだったが、勉強は大の苦手だった。もし勉強ができないせいでサッカーができなくなったらどうしよう。ふと見ると、信助が腕を組んで、小刻みに震えていた。どうやら彼も同じことを考えていたらしい。

「…それで、WESCAが俺たちにどんな指示を出したんですか?」

神童が緊張の色を滲ませた顔で尋ねた。

「はい…それが非常に厄介な内容で…」

「と、言いますと?」

「実は…

 

 

 

 

 

 

 

 

雷門サッカー部の数名に、雷門中を転校するよう、命令が出ているのです」

 

「え…」

 

「「「「「えええええ〜〜〜!!!!????」」」」」

 

「先生!どういうことですか!?オレたち転校しなきゃいけないってことですか!!??」

「お、落ち着いてください!説明しますから!!」

先生はしばらくの間、呼吸を整えた。

天馬は放心した。雷門中を、転校する?天馬は雷門中が、雷門中のみんなが、雷門中のサッカーが、大好きだった。転校するなんて考えたこともなかった。オレはサッカーをするために雷門中に来たのに、なんで…?

「ごほんごほん…えー…転校というとかなり語弊があるかもしれませんが…ほぼ転校と言っていいほどの内容だったのです。君たちは『世界教育特殊開発機関日本少年サッカー大使』として、あちらの本部がある国に、君たちだけで移住…正確には長期滞在…してもらおうという話です」

「長期滞在?」

天馬は少し希望を持った。長期滞在ということは、ずっと向こうで暮らさなくてはいけないというわけではない。もしかしたらまた雷門中のメンバーでサッカーができる日が来るかもしれない。

「ええ…ですが、日本に戻すかはWESCAが決めるので、まあそうそう帰れないと思った方がいいでしょう」

「…」

天馬は黙り込んだ。天馬の希望は挫けた。

「それで、どうして俺たちが?」

神童が質問を重ねた。

「どうしてかというと…このWESCAは、太平洋のとある島に拠点を構え、そこで研究などが行われているのですが、研究の対象となる人間は、あちらから指示が出されます。指示が下った人間は向こうの島に移住し、向こうの島の学校に移らなくはならない決まりになっているのです」

「では、『世界教育特殊開発機関日本少年サッカー大使』とは?」

「それは、WESCAが移住する命令を出した人間があちらの本部で出される待遇制度です。君たちの場合、移住した後は全ての学費・生活費・寮の維持費などが全額免除されます。君たちはWESCAが帰れというまでまったくお金を払わずに生活できるわけです」

「「「ええ!?」」」

結構な人数の中学生が長く暮らす間のお金を全額免除?天馬は息を呑んだ。もしかしたら、WESCAとは自分が思っているよりも大規模な集団なのかもしれない。

「長期滞在とは、具体的にどれくらいになるんですか?」

神童の親友・霧野蘭丸が質問した。

「そうですね、君たちの態度や行動にもよりますが…君達は向こうで中学を卒業することは確かですね。そのあとは向こうの大学に行くか、留学するかになります。雷門中の人とはその時にいくらでもサッカーできますよ」

天馬は先生の最後の言葉の言い方が気に入らなかった。『今は黙って言うことを聞け』という先生の思いが見え見えだった。

「中学生がお金も払わずに勉強もサッカーもできるんです。移住してくれますね」

先生は半分決めつけるように言った。

「だからって…!せっかくまた雷門中のみんなとサッカーができるって思ったのに!」

天馬が抗議した。彼はグランドセレスタ・ギャラクシーと言う宇宙大会に行っていた。雷門中のメンバーでサッカーができるようになってから、まだ3カ月も経っていなかった。

「だいたい、なんで俺たちがそんな研究の対象にならなきゃいけないんですか」

霧野が先生を睨みつけながら言った。美しい顔の眉間にしわが寄っている。

「その…だから…君達が雷門中の選手だからこそ、選ばれたのです」

「「「えっ?」」」

「雷門中の選手だから選ばれた…?」

「はい…WESCAはより効果的で合理的な教育の開発を目的としているんです。つまり、君たちのような有能なスポーツ選手が、今よりもっと社会で活躍できるようにするための教育の開発も、目的のうちなんです。雷門中の選手は、研究にはうってつけなんだそうですね。君たちはグランドセレスタ・ギャラクシーまで優勝した優秀なプレイヤーですし、それに…フィフスセクターに革命を起こした…あー…とても行動的なサッカー部ですから」

「…それって、誰が転校するんですか?」

天馬が尋ねた。

「そうですねえ…」

先生は薄いバインダーを開いた。

「転校することになってるのは…松風くん、西園くん、剣城くん、神童くん、霧野くん、倉間くん、影山くん、狩屋くん、空野さんですね」

「えっ!?そんなに多くの人が転校するんですか!?」

天馬は驚いたように言った。

「ええ…私は指示を受け、それを伝えるように言われただけなので、なにもわからないんですが…とりあえず、転校するのはこの9人ですね」

先生が淡々と言った。

「そんなにいなくなったら…雷門中のメンバーが足りませんよ!?」

「人数はなんとかなります。雷門中にも、他校から数人をサッカー部員として転校生を受け入れる手筈を整えているそうです。大丈夫、なんとかはできますよ」

先生は面倒そうに言った。

「そんなの嫌です!オレはこの仲間でサッカーやりたいんです!オレはもう一度雷門中のメンバーのサッカーがしたいんです!!」

天馬は叫んだ。

「私に言わないでください!これはWESCAの命令なんです!従わなければ法的な処罰が下るんです!フィフスセクターとは比べ物にならないほどの処罰が!君たちの我儘のせいで、雷門中に世界的な悪評価がついたらどうするつもりですか!?破滅するのは君たちなのですよ!!」

先生も負けじと声を張り上げた。

「とにかく!○月××日までには考えをまとめて、出発する準備をしてください!これは命令です!わかりましたね!問答無用!はい、解散!」

先生は半分やけくそになりながら天馬たちを出した。まるで天馬たちを進路指導室から追い出さんばかりだった。

「ふざけんなよ…!俺たちがいなくなったら誰が雷門サッカーを受け継ぐっていうんだよ!」

「あはは…俺たち終わりましたね…今度は世界レベルでの制裁が下ろうとしてるんです…」

倉間典人が悔しそうに唸り、速水鶴正は絶望的につぶやいた。

「まあ、みんな落ち着くんだ…まずは円堂監督に話を聞きに行こう。多分、この話は監督にも渡っているはずだ」

みんなが不満をぶちまけ合う中、剣城だけはひとりで冷静に提案した。

「…そうだね、円堂監督がどう思うか聞いてみよう。もしかしたら、なにかアドバイスしてくれるかも」

ひとまず落ち着いた天馬もそれに同意した。

「(円堂監督なら…どう思うのかな。やっぱりみんなとサッカーがしたいっていうのかな。それとも…)」

神妙な顔で考えながら、天馬はサッカー棟に向かった。

 

 

 

 




読んでくださった方、ありがとうございました!!!!
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