次の日の練習が終わった後、天馬はメンバー全員に部室に集まってもらうことにした。部室はグラウンドの隅にあった。
「オレ、みんなで聖セバスティアヌス祭に参加したいと思ってるんです」
天馬は全員が集まるなり、そう言った。
「聖セバスティアヌス祭って…ウィスルフレーでも最大のサッカーの祭典にか!?」
因幡山が驚いたように言った。
「うん!オレさ、ウィスルフレーのサッカーってどんなものなのか見てみたいんだ」
天馬は意気揚々と言った。
「聖セバスティアヌスは凄いよ!世界中から有名な中学サッカー選手たちが続々と集まってくるんだから!」
東風谷が興奮気味に言った。
「え、見たことあるの!?」
信助が東風谷の言葉に反応した。
「どんな感じだった?」
天馬が信助に続いた。
「あれは本当に凄い!何万人の観客の前で、有名な中学サッカー選手たちがスーパープレイのオンパレード!最近は天馬たちの活躍でサッカーが爆発的なブームになってるからね。去年の大会なんて、俺感動したよ。天馬たちにも見てもらいたかったなあ〜!」
東風谷が目を輝かせた。
「そんなに凄いサッカーの祭典なんて…行くっきゃないや!」
天馬が続けた。
「世界中のサッカー選手が集まるって…それはFFIV2とは違った世界選手権というわけか?」
霧野が尋ねた。
「はい。聖セバスティアヌスはウィスルフレーの学校に限らず、WESCAが認定した世界中の学校が自由に参加できる大会なんです。毎年、何千という学校が世界から集まるんですよ」
東風谷が答えた。
「新しいチームで、もう一度世界大会…か。悪くない話だな」
神童がうなづいた。
「行きましょうよ!絶対面白いですよ!!」
天馬が興奮気味にまくし立てた。
「あ、さっき練習の時に調べたんですけど、聖セバスティアヌス祭には特別ルールがあるみたいですよ」
天馬たちの会話に、葵が口を挟んだ。
「「特別ルール?」」
「ええ。たしか…」そう言うと、葵は胸ポケットからピンクのメモ帳を取り出し、ページをめくった。
「あった…公式のホームページによると、『必殺技と化身は使用可能、ただし、化身アームド、ミキシトランス、ソウルの使用は禁止』だそうです」
「ソウル禁止…」
天馬がつぶやいた。
ソウル。それは化身とはまた違った、人間の持つ「ケモノの力」のことだ。天馬たちはこのソウルを使い、グランドセレスタ・ギャラクシーで、宇宙の相手に立ち向かったのだ。
「ソウル禁止か…てことは、必殺技と化身だけで勝負しなきゃいけないってわけか」
「え…このメンバーで?」
神原がつぶやいた。
「桜城のメンバーは、誰も化身どころか、必殺技も使えないよ。それなのに、このメンバーで行くの?」
天馬は力強く首を縦に振った。
「もちろん!」
「ええ…?いままで大会どころか練習試合もまともに勝てなかった俺たちだよ…?松風君、本当に勝てると思ってるの…?」
神原が弱々しく天馬に尋ねる。それを聞き、天馬は神原に正面から向き合った。
「大丈夫!自分を信じて一生懸命努力すれば、ゼッタイ強くなれる!オレたちも、神原たちが納得するまでとことん練習につきあう!今は勝てなくても、サッカーが好きなら、サッカーはその気持ちに必ず答えてくれる!」
天馬はにっこりと笑った。
「なんとかなるさ!!」
それを聞くと、神原は納得したのか、
「…そうだね」とつぶやいた。
「天馬!その通りだよ!」
信助が同調した。
「全く…天馬、お前は何があっても変わらないんだな」
神童が呆れ半分、感心半分で言った。
「えへへ。雷門中で円堂監督から教わったサッカーです。そう簡単に忘れませんよ」
天馬の答えに、神童も納得したようにうなづく。彼もまた、あらゆる場面で雷門中のサッカーの力を実感してきた者の1人だった。
「それじゃ、天馬…オレたちが聖セバスティアヌスで勝てるように、指南を頼んでいいっすか?」
因幡山が尋ねた。
「もちろん!とことんまでつきあうよ!」
天馬は自信有り気に答えた。
「じゃ、天馬。キャプテンになるか、もう決めたんすね?」
「あっ」
そういえば、天馬は因幡山から桜城のキャプテンを務めるか決めるように頼まれていたことを、天馬はすっかり忘れていた。
しかし、答えはすぐに決まった。
「…よし、オレ、キャプテンやるよ!」
天馬は堂々と宣言した。
「おおお〜!ありがとうっす!じゃあ、これからは天馬にキャプテンをバトンタッチするっす!」
因幡山は嬉しそうに言うと、腕につけていた、白と黒のバンド_____キャプテンの印_____を外し、天馬に渡した。天馬はそれを大切に受け取った。
「よし!明日から早速、聖セバスティアヌス祭に向けて練習するぞ!!」
「「「おう!!!!」」」
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今日の記録
3年生の男子。過去に事故によって顔に重度な火傷を負い、それが原因で親に捨てられた。過呼吸、人間不信、軽度の精神錯乱の傾向が見受けられた。まだ意識の混濁が見られたが、短時間のうちに回復する見込み。
ところで、私は一体全体どうやってこの技術を開発するに至ったのだろうか。私は何年か前、いきなり寝食を忘れて研究に没頭するようになり、この技術を開発した。飽き性の私はこれほどまでに何かに執着することなどなかったはずだが。何か、特別な力が私を突き動かしているかのようだ。しかし、それは一体なんなのだろうか。その特別な力とは?それに、私はなぜか、その答えを知っている気がする。私はすでに答えを知っていて、私はそれを忘れているだけではないのか?いや、そんなことはどうでもいい。とにかく、私は知りたい。一体何がこんなに私の開発欲を刺激するのか。
とりあえず、今日は今までと何も変化はなかった。それだけでは物足りない気がするが、それだけしかないのだから仕方ない。
今日で251人目だ。後何人残っているだろうか。
読んでくださった方ありがとうございました!!!!
更新が大変遅れて申し訳ありません…見事にストーリーに詰み、必死で考えていました。
次回から第2章に入っていきたいと思います!展開が早いとは思いますが…
第2章は天馬くんとオリキャラ、東風谷と神原中心になるかと思います。苦手な方はご注意願います。
次回もよろしくお願いします!!!!