遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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そうよ、令嬢だからよ

 シティ。ここは身分の高い者のみが住んでおり、贅沢な暮らしをしている。今は夜だというのに灯りは絶えず、辺りをまんべんなく照らしている。そこに2つのDホイールが止まる音が響く。もっとも未だ賑やかな街の騒音にかき消され、聞こえた者は僅かだろう。

 

「どうやら…ついたようだな」

 

「おお…!ここがシティか!俺たちついにやったんだな!」

 

「ああ。…!?そこにいるのは…!」

 

「え?あっ…お前は!」

 

「 「 ジャック! 」 」

 

 2人の視線の先にはかつて遊星のスターダストとDホイールを奪い、仲間を裏切って1人シティへ渡り、そこでキングとして名を馳せているジャック・アトラスの姿があった。

 

「待っていたぞ遊星。それに…コナミか、久しいな」

 

「どうしてお前がここに…」

 

「月を見ていたらお前が来るような気がしてな」

 

「…あれ?俺は!?」

 

 明らかに遊星しか見ていないジャックに対しコナミが異議を申し立てる。

 

「ふん…キングであるこの俺がデュエリストですらない貴様に目をくれる訳もあるまい」

 

「残念だったな!今の俺はデュエリストだ、さっきデュエルにも勝ったんだぜ!」

 

「ほう…お前もデュエリストになったのか。だが、そんなことは今はどうでもいい。今俺が用があるのは遊星、お前だけだ」

 

「そ、そんなこと…」

 

 コナミはジャックの態度にショックを受けるが、ジャックが高圧的なのは昔からなので切り替えるのも早かった。

 

「…俺がここに来た理由。分かっているな?」

 

 遊星の質問に対し、ジャックは1つのカードを取り出す。

 

「分かっている。俺が奪ったスターダストを取り返しに来たのだろう?」

 

「え?そうだったのか」

 

 ジャックはそのカードを遊星へ投げつける。遊星はとっさにそのカードを手に収めた。

 

「キングになった今、そのカードはもはや不要!返してやろう」

 

「お?返してくれるのか、良かったな遊星」

 

「……」

 

 遊星はそのカードを一瞬見た後、すぐにジャックへと投げ返した。

 

「…そのカードはデュエルで取り返す。お前もそのつもりで来たんだろう!」

 

「そう来なくてはな!丁度いい舞台がある、ついて来い!」

 

 ジャックはそのカードを再びデッキに戻し、自らが愛用しているDホイールに乗り込む。ホイール・オブ・フォーチュンと呼ばれる一輪走行で車輪の中に操縦席がある変わったDホイールを操り、ジャックはスタジアムのある方向へ向かう。そして遊星もそれについていった。

 

「…え?2人とも待ってくれー!」

 

 慌ててコナミもついていった。

 この様子を監視カメラを通して見ていたものが3人いた。ジャックの秘書、狭霧御影(さぎりみかげ)。治安維持局調査室長、イェーガー。治安維持局局長、レクス・ゴドウィン。彼らは一部始終を見終えた後、このようなことを話した。

 

「キングは…スタジアムへ向かっているのですか」

 

「どうやらこのサテライト住民とデュエルなさるようです」

 

「アトラス様がサテライトの者とデュエルを…」

 

「如何なさいますか?セキュリティを呼んでデュエルを中止させることもできますが」

 

「いえ…まだいいでしょう。2人のデュエルを見届けましょう」

 

「了解しました。…ところで赤帽子の男は如何なさいましょう?」

 

「興味はないですね。セキュリティに任せます」

 

「分かりました。お任せくださいまし…ヒヒッ!」

 

 ピエロのような男は電話を取り出しセキュリティへと連絡した。

 

 時は少し経ちジャック達はスタジアムへと到着する。先頭のジャックが入り口を通り、続いて遊星もそこを通っていく。さらに続いてコナミが入ろうとした瞬間、入り口のシャッターが急に閉じてしまった。

 

「なっ…何!?」

 

 コナミは慌てて急ブレーキをかけ、衝突を回避する。ホッとしたのも束の間、辺りがライトによって照らされる。

 

「お前がサテライトから侵入したことはイェーガー様からの連絡によって分かっている。不法侵入の罪により貴様を逮捕する!」

 

 手際よくセキュリティ達がコナミの逃げ場を塞ぐ。

 

「もうばれたのかよ!いくらなんでも早すぎだろ…!?」

 

「お前は完全に包囲された!無駄な抵抗はやめろ!」

 

「くっ…諦めてたまるかよ!」

 

 コナミは再びDホイールのアクセルを踏み、壁を作っているセキュリティに突っ込んだ。

 

「な…突っ込んでくるだと!そんなことをしても衝撃でクラッシュをするだけだ!これ以上罪を重ねるな!」

 

「悪いけどこのまま突っ込む気なんてさらさらないぜ!」

 

 コナミはDホイールに体重を偏らせウィリーの状態にし、前輪を宙に浮かせる。そして設置してあるライトの1つを踏み台にすることでDホイールごとセキュリティ達の上を乗り越えた。

 

「クロウに教わった対セキュリティのテクニックがこんなところで生きるとは…!」

 

「しまった…奴を追え!」

 

 こうしてコナミとセキュリティのレースは小1時間ほど続くのであった。

 

「な、なんとかまいたか。慣れてない土地だから苦労したぜ。ここは…どこだ?」

 

 コナミは周りを見渡す。すると1つ大きな建物が目に入った。

 

「ちょっとボロボロだが、これはホテルか。そういや寝る場所どうしようかな…」

 

 そう言いつつコナミはDホイールにセットされているデュエルディスクに貯められたDP(デュエルポイント)を確認した。デュエルディスクはモーメントというエネルギーで動いており、これはデュエルを行うことで発生する。この発生したモーメントはデュエルの勝者にDPという形で委ねられ、お金のように扱うことができる。ただしコナミが持っているDPは先ほどのデュエルでの勝利分のみであり、これではホテルに泊めてもらうのは夢物語である。

 

「どうするか…。いっそのことタダで泊めてくれないかなー」

 

 コナミがそんな戯言を言った瞬間、ホテルから大きな声が聞こえてくる。

 

「んだとコラァ!もう一回言ってみろ!」

 

「うわ!?ごめんなさい冗談で…なんだホテルの中からか」

 

 コナミはとっさに謝るも相手はホテルの中だった。

 

「ふざけんなよテメェ!」

 

「それにしても只事じゃなさそうだな…。一旦中で身を隠したいしDホイールを草陰に隠して入ってみるか」

 

 コナミはDホイールを見えないように隠し、デュエルディスクだけ持ってホテルの中に入る。すると中では予想通り只事ではないことが起こっていた。

 

「ですから、このホテルを買収させて頂くと言ったのですわ。庶民はそんなことも分かりませんの?」

 

「だから!なんでテメェにアタイのホテルを渡さなきゃなんねえんだよ!」

 

 2人の女性がロビーの中心で激しい言い合いを繰り広げていた。コナミはその女性の1人に心当たりがあったようだ。

 

「えっ…?あんたはノーマネーの姉御!?」

 

「ああん?…ってコナミ!?なんでテメェがこんな所にいやがるんだ?」

 

 彼女はノーマネー弥生、サテライトに存在するギャングのボスでよそ者にはとことん厳しい。反面サテライトの仲間には優しく、特に訳ありの人間には人情家な一面も見せる。サティスファクション解散後のコナミを腑抜けた顔をしていると評し、しばらく世話を焼いていた過去を持つ。

 

「そっちこそ!サテライトからいつの間にいなくなったかと思えばこんな所に!」

 

「アタイはサテライトとシティを通る輸送船があるって情報を仕入れてな。ちょっくら忍び込んできたってわけよ」

 

「さすがは姉御…。肝が座ってんなあ」

 

「テメェはどうやってここに?」

 

「俺か?俺はパイプラインのメンテナンスハッチが空いているタイミングで通ってきただけだぜ」

 

「そっちも大概じゃねえか」

 

 2人が話に花を咲かせていると、堪忍袋の緒が切れたと言わんばかりに怒っている女性が話に割り込んできた。

 

「ムキー!庶民風情がこのわたくしを無視しておしゃべりなど…恥を知りなさい!」

 

「えーと?どちら様?」

 

「海野財閥のご令嬢さんだとよ。名前は…覚えたくもねえな。知りたかったらネームプレートでも見てくれ」

 

 コナミは言われるがままネームプレートを見てみる。

 

「む…漢字か。だが俺はカードで漢字を勉強したからちゃんと読めるぜ!ちょっと待ってな…えーと、分かった!海野幸子(うみのさちこ)か、よく分からないけどよろしくな」

 

「さちこ…ですって?」

 

 ただでさえ怒っていた女性がさらに鬼神のように怒り出す。どうやら逆鱗に触れたようだ。後ろにいたお供らしき黒服達も騒ぎだす。

 

「あいつ…お嬢様のタブー中のタブーを!」

 

「あいつら逃げたほうがいいぞ…」

 

「というか俺らも逃げたほうが…」

 

 黒服の1人が逃げようとする前に彼女は黒服達に向かって手を叩き、あるものを要求する。慌てて黒服達は要求されたもの、デュエルディスクとデッキを彼女へと渡す。

 

「そこの庶民…。わたくしが一番気にしていることを軽々しく言った罪はデュエルで払ってもらいますわ」

 

「え?どうゆうことだ?」

 

「わたくし…海野幸子(うみのゆきこ)はこのホテルの存続権をかけて庶民にデュエルを申し込みます。」

 

「ちょっとアンタ!勝手に何を!」

 

「うるさいですわ!そもそもこのホテルのオーナーに買収の許可は貰っています、あなたが口を出すことではありませんわ」

 

「許可を出したっていっても無理やり出させたんじゃねえか…ん、待てよ。おいコナミ」

 

「なんだ姉御?」

 

「このデュエル受けてくれ」

 

「え?ええ!なんで俺が?」

 

「今アタイが経営してるこのホテルはあの財閥に無理やり買収されそうなんだ。だからデュエルで勝たねえと多分買収されちまう。むしろ奴さんの頭に血が上っている今がチャンスだ」

 

「ん…なるほどな。俺としても姉御に借りを返すチャンスだ。このデュエル受けるぜ!」

 

 この時幸子は何か思いついたようで、コナミに意地の悪い笑みを浮かべてくる。

 

「わたくしが勝ちましたら…そうですね。ホテルの買収はもちろん、庶民に何か1つ言うことを聞いてもらいますわ」

 

「ええ?」

 

「こんな貧相で利益も出ないホテルを買い取って海野財閥に貢献させてあげようと言うのです。これくらいのプラスアルファは必要ですわ」

 

「好き勝手言いやがって…いいぜ、こっちが買ったら買収の話は無しにしてもらう」

 

「あ、姉御!?俺の意見は…」

 

「要は勝っちまえばいいんだ。細かいことは気にすんな!」

 

「えー?まあ、そうか。いいぜデュエルだ!」

 

「話はまとまりましたわね。格の差というものを見せつけてあげましょう」

 

 2人は距離を取りデュエルをするのにちょうどいい間を空け、デュエルディスクを展開する。数秒の沈黙の後、互いにデュエルの開始を宣言する。

 

「 「 デュエル! 」 」

 

 




実は幸子の文字がゆきこで一発変換しなかったのでさちこから変換してるのは内緒。
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