遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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確かにこれは希少なカードだけど、僕の趣味じゃなくてね

チームユニコーンとの戦いに勝利した数日後、明日に試合を控えたネオサティスファクションのメンバーは海野財閥のガレージに集まっていた。だが、集まったメンバーの中で1人だけ元気のないメンバーがいた。

 

「…幸子?」

 

「……」

 

「おーい。起きてるかー?」

 

「……」

 

幸子はイスに座ったまま顔を膝にうずめており、あまり反応を示さない。

 

「駄目だこりゃ」

 

「コナミ。幸子はどうしちまったんだ?」

 

「さあ…?」

 

「……ですわ」

 

「ん?」

 

幸子が体を無理やり起こすと、深呼吸をした後にゆっくりと告げる。

 

「この前の試合…ですわ」

 

「この前の試合?」

 

コナミと鬼柳は首を傾げた。この前の試合は苦戦したがなんとか勝利をつかみ取ったので彼らには元気をなくすようなことが思い当たらなかったのだ。しかし、幸子には振り切れないことが1つあった。

 

「忘れましたの?わたくしはわずか3ターンでアンドレにやられてしまったのですわ」

 

「ああ。そういえばそうだったな」

 

「でもあれは仕方ないだろ。だってユニコーンの奴らは俺たちを作戦にはめて対策を取ってきたんだぜ」

 

プラクティクスの時にアンドレのデッキを速攻パワーデッキと思わせることでネオサティスファクションの出走順を意のままに操ったユニコーンは幸子を水属性メタカードによって倒し、鬼柳を手札0にする前に速攻で倒した後、コナミをデッキ破壊によって倒すという作戦をとっていた。

 

「…ですが、鬼柳は自身に仕掛けられた策を逃れたあげく庶民へと用意されていたと思われる策までかわしきった。そして庶民もジャンとの一騎打ちを制しましたわ。それに対しわたくしは…わたくしはぁ!」

 

やるせない気持ちが溢れたのか頭を抱え込み、足をジタバタさせる幸子。イスに乗ったまま暴れたのでそのままイスごと床に落ちてしまう。

 

「ふぎゅ…」

 

「…つまり、この前の試合が原因で落ち込んでんのか?」

 

「そうなのか幸子?」

 

「…まあ、ズバリと言われるとくるものがありますが。大体そうですわ」

 

幸子は服についたホコリを払い、ため息をしながら立ち上がる。

 

「鬼柳…俺たちもサティスファクションの時にこんなことがあったよな」

 

「ああ。ごちそうのカップヌードルをチームスチールに盗まれてメンバー全員が落ち込んだ時のことか」

 

「しかもよくある激辛味じゃなくておしるこヌードルだったしな。ジャックとかすげえ落ち込んでたし」

 

「そんなものと比べないでくださいまし…」

 

トップスの幸子にとってはそんなに手に入れるのに苦労はしないカップヌードルと比べられ、気のせいか先ほどより落ち込んでしまう。

 

「こんな時はあれしかないな!幸子、ついてこい!」

 

「え?わたくし今外に出る気分では…」

 

「落ち込んでる時に引きこもっても立ち直ることは出来ねえよ」

 

「…まあ、一理ありますが」

 

コナミと鬼柳の用意を待った後、一同はある場所に向かっていく。その場所は公園だった。結構広い公園で、キャッチボールをする親子や、砂場で子供を遊ばせながら談笑する母親達、Dホイールの試運転をしている3人組などがいて賑わっていた。

 

「おー、思ったより広いな」

 

「公園で何をしますの…?」

 

「いや、広いスペースが欲しかったんだ。ガレージじゃちょっと狭いしな」

 

「?」

 

「鬼柳、ここらへんが空いているから敷いてくれー!」

 

「おう、ここか。任せとけ!」

 

そう言って鬼柳が取り出したのはブルーシート。人があまり居ない小さな草が所々生えた草原に敷かれ、そこに座っても汚れないようになった。幸子はそれを見て彼らの行動を理解する。

 

(なるほど。この公園は自然が豊かな上に親子が微笑ましく過ごしている様子を見ることが出来ます。そこで優雅にティーを嗜むことでこのわたくしを落ち着かせようとしているのですね。そういったことには疎そうだと思っていましたが彼らへの認識を改めなくてはいけなさそうですわ)

 

幸子は次のコナミの行動を見て後悔することになる。一瞬でも彼らのことを気が効くと思ったことを。

 

「さて、幸子。これを腕にはめてくれ」

 

「いいですわよ。…え、腕ですの?ティーを入れるカップを持つなら手ですわよ?」

 

幸子が腕にはめられたもの…それはデュエルディスクだった。

 

「俺の特製デュエルディスクだ。なんと、デッキが60枚どころか200枚くらい入るようになってるんだぜ!」

 

「…?一体何を?」

 

「そしてこれに俺が拾ってきたカード達を200枚くらい入れてと。準備が完了したぜ!」

 

「…えーと。これではティーは飲めませんわよ?」

 

「ティー?何言ってるんだ、落ち込んだ時にはとにかく無心でドロー練習に決まってるだろ!」

 

「…え?わたくしちょっと言っている意味が…」

 

いつの間にかブルーシートの上に立たされ、200枚のカードに手をかけさせられる。

 

「始め!」

 

「…!ドロー!魔法カード、モウヤンのカレー!…って引いてどうするのですかわたくしは…!」

 

デュエルディスクをつけデッキの上に手をかけさせられれば本能でカードを引いてしまうのも無理はない。だがこの行為はすなわちドロー練習をするのを認めてしまったと言っても過言ではないだろう。

 

「ええい!やってやりますわよ!ドロー!通常モンスター、プチテンシ!ドロー!通常モンスター、マグネッツ1号!ドロー!通常モンスター、はにわ…って通常モンスターカードばかりですわね!?」

 

彼女の手からブルーシートへ落ちていくカードはカードの枠が黄色で彩られたカードばかり。ちなみにカードはブルーシートのおかげで汚れることはないようだ。

 

「当たり前だろ。サテライトに落ちてるカードは大体が通常モンスターだぞ。それより手が止まってるぞ!」

 

「…!ドロー!ドロー!ドローですわ!」

 

彼女のドロー練習は10分ほどかかり、ブルーシートはほぼ黄色のカードで埋められていた。

 

「はあ…はあ…結構体力使いますわね」

 

200枚近くのカードを引ききった幸子は足元のカードをどかしてブルーシートに座り込んだ。

 

「どうだ?まだ落ち込んでるか?」

 

「…なんか悩んでいるのが馬鹿らしくなってきましたわ」

 

「成功だなコナミ!」

 

コナミと鬼柳がハイタッチしているのを見て果たしてこれは成功と言えるのか悩む幸子だったが、これ以上考えるのはやめたようだ。

 

「ふぅ…とりあえずこのカードを拾うとしましょうか」

 

幸子がブルーシートに散らばったカードを回収しようとした時、コナミと鬼柳は1つの小さな事故に気づく。

 

「…!危ねえ!」

 

Dホイールの試運転をしていたところに砂場で遊んでいた子供が母親が気づかないうちに近づいてしまっていた。乗っていたDホイーラーは慌てて避けるが、運悪くスリップしクラッシュしてしまう。

 

「ヨシー!?」

 

「大丈夫か!?」

 

仲間と思わしき2人が近づいていくのを見てコナミ達3人もその場に向かっていく。

 

「だ、大丈夫…。うまく受け身取れたから。だけどDホイールが…」

 

「ああ…大丈夫さ。大破したわけじゃない。きっと直せるさ」

 

「あのガキ…!…っていねえ!」

 

この事態に気づいた母親がとっさに子供を連れて逃げてしまったようだ。

 

「まあ子供のやったことだ。俺たちがあえて文句を言いにいくことはないさ」

 

「だけどよ太郎…」

 

「ジン。それより…まずいかもしれない。Dホイールのここを見てくれ」

 

モーメントのエネルギーを伝えるレギュレーターの代わりをしていた空き缶やY字フックの代わりに使っていたハンガーが歪曲してしまっていた。これではDホイールが機能しなくなってしまう。

 

「く…どうする。予選はもう始まるんだぞ!」

 

「あわわ…な、なんかまた代用品を持ってきてなんとかならないかな?」

 

「…ダメだ。ある程度Dホイールやデュエルディスクに合っている空き缶やハンガーを探すのに3ヶ月もかかっただろ?1日で見つかるとは思えない」

 

「ならどうするんだよ!ここまで来て参加できねえなんて俺は嫌だぜ!」

 

「それはもちろん俺も嫌だ。…だがどうすれば」

 

「おーい、大丈夫かー!?」

 

彼らが悩む中、事態に気づいたコナミ達が近づいていく。

 

「ああ、人の被害はないよ。…でもDホイールが見た通りでね。正直困ってるんだ」

 

「おい、やめとけ太郎。都会の奴らに頼んでもいいことはねえぜ」

 

何歩か遅れてついてきた幸子の服装を見てトップスだと判断したジンは反発しだした。

 

「おい、ジン。失礼だろ!」

 

「あ…あああ〜!あの人は!あの時の人だよジン!」

 

「ああ?…あっ!」

 

ようやく近づいてきた幸子を確認した彼らはかなり驚いているように見える。

 

「…?ああ、あなた達はあの時の」

 

「知り合いなのか?幸子」

 

「ええ、あなたとサテライトで活動していた時に少し…知り合ったのですわ」

 

幸子はチーム太陽と会った時のことを思い出す。あれはサテライトで活動していた幸子がサテライトに仮設置した本部へ帰ろうとしていた時のこと。

 

辺りは暗かったが何だか人の声が騒がしく響いており、注意しようと幸子が踏み込んだところ、ガソリンスタンドにいた4人が不良グループに絡まれていた。

 

3人は裕福な服装をしていたが1人の男性は貧乏そうな格好をしていた。1人の金を持ってそうな青年が2人の青年の仲間を置いてきぼりにし、1人の貧乏そうな男とともにその場を去っていく。

 

だが、仲間を置いていった青年に反発し1人の貧乏そうな男性が戻ってきて不良グループをなだめようと土下座し、青年が不良グループの車にぶつかってしまったことを謝った。だが不良グループはそれで納得せず、貧乏そうな男性に殴りかかろうとしていたため見ていられず幸子はその場へと乱入した。

 

ディスクを展開させデュエルで不良グループを落ち着かせようとする幸子だったが、海野財閥のサテライトへの援助活動は彼らにも伝わっており、下手に危害を加えるのは危険だと判断した不良の団長は部下と共に帰って行った。

 

その後、貧乏そうな男性は近くの茂みで隙を見て助け出そうとしていた同じく貧乏そうな2人組と再会し無事を喜びあっていた。

 

対して先ほど2人を裏切っていった青年が事態が収まったことに気づいてノコノコと帰ってきたところ、2人から激怒されていた。さらにその青年が幸子へ感謝の印ということで1枚のカードをあげたがそのカードは激怒した2人の内の1人の女性からの贈り物だったらしく、火に油を注ぐ結果となったのは言うまでもない。

 

貧乏そうな3人組から礼を受けた幸子はその場で土下座させられている青年を横目に帰っていくのだった。

 

「…まあ。そういうことがあったのですわ」

 

「へぇー。そんなことがあったのか」

 

「あの時庶民はマーサハウスというところで寝泊まりしていましたからね。夜に別れた後だったので知らなくても無理はないでしょう」

 

「なあ、ジン。俺は彼女らなら頼んでもいいと思うんだ。…駄目か?」

 

「…好きにしろ」

 

「ありがとう。それで中がこうなってしまったんだけど…代用できるパーツがなくてね」

 

「空き缶にハンガー…?どういうことですの?確かに空き缶ならモーメントエネルギーを伝えることは出来そうですし分かりますが…」

 

Dホイール製造会社の令嬢である幸子が見てみるも、その異様な部品を見て驚いている。

 

「ハンガーはしなりがあってフィットしやすいからな。俺のDホイールやデュエルディスクにも組み込んであるぜ」

 

「えっ!?君もかい?」

 

「ああ、俺も手作りでDホイールを作ったからな。そうだ!幸子、今お前がつけているデュエルディスクにも入ってるな。ちょうどいいや、貸してくれ」

 

「だがそんなことをすれば君がデュエル出来なくなるんじゃ…」

 

「大丈夫だ、これはドロー特訓用の特別製だからな。…よっと」

 

コナミはディスクのプレートを開き、そこから取り出したハンガーを彼らのDホイールへと組み込んだ。

 

「すごいや!しっかりはまったよ!後は空き缶が何とかなれば…!」

 

「俺も何回か空き缶潰したことあるけど大丈夫だ。空気を中に入れればほとんど元に戻るぜ」

 

「ああ、そうか!慌ててそんなことにも気付かなかったよ。なら空気入れを持って来れば…!」

 

「いや、これくらいの空き缶なら何とかなるだろ。よいしょっと…。…ふっ!」

 

コナミは潰れた空き缶を取り出し、穴が開いたところから空気を入れると潰れていた部分が押し戻され、ほぼ元に戻る。

 

「…庶民。あなたどれだけ肺活量すごいんですの?」

 

「いや、俺も出来るぜ?」

 

「!?」

 

幸子が言葉を失う中、彼らはDホイールを動かしてみる。

 

「やった!動くようになったよ!」

 

「マジか…こんなすぐに直るなんてな」

 

「ありがとう、君たちのおかげだ!」

 

「いいってことよ、お前たちもWRGP出てるんだろ?もし当たったらよろしくな!」

 

だが、彼らはまだ知らなかった。彼らは明日戦うチーム同士だということを。

 




カップラーメンで好きな味は醤油です。
定番ですが美味いですよね。
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