遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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第4章 決戦!アーククレイドル
時を超えた舞台


鬼柳と幸子が命懸けでバトンをコナミに繋ぎ、コナミは3体のシンクロモンスターの力を束ねた真魔獣ガーゼットによってアポリアとの勝負に決着をつけたのだった。

 

「決まったー!WRGP準決勝、チームニューワールド対チームネオサティスファクション。勝利を掴んだのはネオサティスファクションだー!」

 

「すまない…友よ。不甲斐ない私を許してくれ」

 

「あ!ちょっと!」

 

アポリアが腰に差していた剣を取り出し、進行方向へ丸を描くように振った。すると次元の裂け目が現れ、アポリアはDホイールごと裂け目へと入ってしまった。

 

「行っちまった…。本当に俺たちが勝ったらアーククレイドルが消えるのか聞きたかったんだけどな」

 

コナミは空を見上げた。すると空に浮かんでいた居城、アーククレイドルが消えていくのを目にした。

 

「おおっ!?やったのか…」

 

達成感を胸にコナミはピットへと戻っていった。

 

「やりやがったなコナミ!」

 

「やりましたわね」

 

「うおっ!お前ら身体は大丈夫なのか?」

 

「へっ!奴らに勝ったと思うと痛みは吹っ飛んじまったぜ!」

 

「わたくしは…さすがに今回はきつかったですわね。体のあちこちが悲鳴をあげています」

 

幸子のライダースーツは至る所に傷がついており、戦いの激しさを物語っていた。

 

「鍛え方が足りねえな幸子!」

 

「鬼柳の身体の方がおかしいんですわ…」

 

「今度サティスファクションタウンにある鉱山で鬼柳に鍛えてもらったらどうだ?」

 

「断固拒否しますわ!」

 

彼らは勝利の余韻に浸り、喜びを分かち合った。その後、観客席で応援していた5D'sやラグナロクのメンバーとアーククレイドルの消滅によってイリアステルの計画が潰えたことを確認した。

 

「決勝で会おうぜ遊星!」

 

「ああ!俺たちも全力で戦う!」

 

遊星たちと決勝で戦う約束をし、彼らは海野財閥のガレージに戻って来た。そこで3人で決勝進出とニューワールドに勝利したことを祝うささやかな祝賀会を行い、一晩を明かした。

 

そしてその朝、幸子は彼らの中で一番早く目が覚めた。

 

「ん…。もう朝ですのね」

 

ガレージに設置されたベッドから体を起こし、寝ぼけた眼で周りを見回した。

 

「…2人とも床で寝ていますわね。風邪を引いていないといいですが」

 

幸子は呆れながらガレージに光を入れようとカーテンを開け、外の景色を目に入れた。彼女の目には…映るはずのないものが映っていた。

 

「……え?」

 

神の居城、アーククレイドル。それが彼女の目に映っていた。

 

「うーん。眩しい…」

 

そこにコナミが起きてくる。それにつられ鬼柳も目を覚ましたようだ。

 

「何だよ幸子。こんな朝から…」

 

「ふ、2人とも!外を!」

 

「ん?」

 

彼らもそれを目にする。鬼柳は勿論、コナミの目にも精霊の力を使うことなくアーククレイドルが目に映っていた。

 

「な…!?」

 

「アーククレイドル!?」

 

イリアステルの計画ではアーククレイドルはWRGPの決勝でニューワールドが勝利することによってサーキットが完成し、アーククレイドルが出現する予定だった。準決勝でネオサティスファクションに敗北したことで彼らの見通しではアーククレイドルは出現されないはずだった。しかし、サーキットはデュエルのエネルギーによって完成するもの。コナミはアポリアとの戦いのラストターン、2体の精霊と鬼柳が神に与えられたオーガ・ドラグーンの力を束ねたガーゼットによって決着をつけた。それによって生み出されたエネルギーは彼らの見通しを超えるものだったのだ。

 

「幸子…お前が見えているってことは」

 

「アーククレイドルが出現してしまったということですわね…」

 

「く…とりあえず遊星たちに連絡を!」

 

コナミはDホイールの通信機能を使い、遊星たちに連絡を取ろうとする。しかし、Dホイール自体が起動しなかった。

 

「Dホイールが動かねえ!?」

 

「何だと!?」

 

「どうやら…アーククレイドルはそのものがマイナス回転のモーメントのようですね」

 

「エンシェント・ホーリー?」

 

コナミの持つ精霊、エンシェント・ホーリー・ワイバーンがコナミに語りかけてきた。

 

「あの巨大な逆回転のモーメントの影響を受けたことによってDホイールのモーメントは停止してしまったようです。…ですが」

 

エンシェント・ホーリーが翼を広げ、Dホイールを不思議な光で包み込むとコナミのDホイールが稼働しだした。

 

「精霊、またはそれに準じる力を持つものならばマイナス回転のモーメントの影響を受けなくさせることが出来るようです。シグナーやルーンの瞳を持つ彼らも同様のことが出来るでしょう」

 

「さすがエンシェント・ホーリー!早速遊星たちに連絡を…」

 

「…いえ、全ての影響を受けなくさせることは出来ません。走行機能とデュエル機能…この2つの機能が限界です」

 

「う…仕方ねえか」

 

「それとアーククレイドルは徐々に降下しているようです…。このままならば恐らく12時間ほどでネオドミノシティ全体に被害を及ぼすでしょう」

 

「何!?タイムリミットは12時間しかねえのかよ!」

 

「…コナミ!タイムリミットって何のことだ!?」

 

精霊を見ることが出来ない鬼柳と幸子にコナミはエンシェント・ホーリーが告げた内容を伝えた。

 

「…そうか。遊星たちは遊星たちでどうにか動くはずだ。俺たちは俺たちで出来ることをしようぜ」

 

「鬼柳…。そうだな、何とかしてアーククレイドルを止めねえと」

 

「と言いましても…どうやって止めますの!?」

 

「…一つだけ。あのモーメントの中心部にさらに大きな力を持つプラスのモーメントをぶつけられれば。しかし…そのようなモーメントなどこの状況では」

 

「…細かいこと考えても仕方ねえ!直接乗り込んで方法を探ろうぜ!」

 

「だけどアーククレイドルは空に浮かんでるんだぜ?空でも飛ばねえと…」

 

「空を…」

 

鬼柳とコナミの視点が一点で混じり合う。飛ぶことが可能なDホイールは彼らの目の前にあった。

 

「わたくしのDホイール…ですか」

 

「そうだ!幸子のDホイールはモーメントを下に噴射することで飛べるんだったな!」

 

「これに3人で乗って行くか?」

 

「…無理ですわね。これはまだ開発途中の機能。1人の重量を支えるだけで精一杯ですわ」

 

「行けるのは1人だけってことか?」

 

「…いや、そうと決まったわけじゃねえぜ。幸子、どうやって飛行機能を取り付けたかって分かるか?」

 

「え?ええ…分かりますわよ。新たな機能を取り付ける時に社員の作業を見ていましたから」

 

「そっか。なら、決まりだ!鬼柳!幸子のDホイールに乗って先に行ってくれ!」

 

「え?コナミや幸子はどうするんだ?」

 

「俺は今から俺のDホイールに飛行機能を取り付ける!」

 

「そんな無茶な…。専門の技術者でもないと難しいでしょう」

 

「俺はこれでもジャンクパーツからDホイールを組み上げたんだ!何とかしてみせる!ただ…」

 

「…分かっていますわ。残り時間の都合上、改造は一台が限界でしょう。それにわたくしではマイナス回転のモーメントの影響を受けてしまいますわ」

 

「お前ら…。分かった!幸子、Dホイールは借りていくぜ!」

 

鬼柳が地縛神Ccapac Apuが入っているデッキを幸子のDホイールにセットするとDホイールが稼働を始めた。

 

「鬼柳。気をつけていきなさい」

 

「鬼柳!絶対に俺も後から追いつく!」

 

「ああ!俺は先に行って出来ることをやっておく!」

 

鬼柳は幸子のDホイールをガレージから外に出し、乗り込んでDホイールを浮上させる。あらぬ方向へと向かわぬようにバランスをとり、鬼柳はアーククレイドルに向けてDホイールを発進させた。

 

「幸子!Dホイールの改造を始めるぞ!」

 

「分かりましたわ!」

 

コナミと幸子はコナミのDホイールに飛行機能を取り付ける作業を開始した。

 

そして鬼柳は飛行機能のおかげで苦もなくアーククレイドルへと到着していた。

 

「でけえ…。こんなものが落ちてきたらネオドミノシティは終わりだぜ」

 

鬼柳はDホイールをアーククレイドルへと着地させる。周りを見回すも入口らしきものは見当たらなかった。

 

「多分ここにアポリアやアポリアに協力しているイリアステルのメンバーがいるはずだ…。どこにいやがる?」

 

鬼柳が呟くとほぼ同時にアーククレイドルの一部が機械的な音ともに開いた。

 

「…誘ってやがるのか。だが時間がねえ、乗ってやる!」

 

鬼柳はDホイールを走らせ、その中へと突入した。鬼柳が中に入った瞬間、再び機械的な音ともに入り口が閉じていった。

 

「罠か…?いや、誰か居る!」

 

鬼柳はDホイールを減速させ、そこに佇んでいた一人の人物の前でDホイールを止めた。

 

「…来たか、鬼柳京介」

 

そこにいたのは仮面を顔につけた奇妙な人物だった。

 

「誰だお前は!?」

 

「私はイリアステルの滅四星(めっしせい)の一人。逆刹のパラドックス」

 

彼が仮面を取り外すと黄色と紫が入り混じった長髪がその衝撃で跳ね、彼の顔に刻まれた赤いマーカーを鬼柳に見せた。

 

「鬼柳京介。貴様に私達の計画の邪魔をさせるわけにはいかない。ゾーンの命により、貴様をここで倒す!」

 

「ゾーン…?」

 

「貴様に煉獄のドラゴンを託した者だ」

 

「…!?イリアステルがオーガ・ドラグーンを俺に…?」

 

「そうだ。貴様は不動遊星に並びゾーンに希望を抱かせたデュエリストだった」

 

「だった…だと?」

 

「そう。それはもう過去の話だ。残念だが…彼女、いや彼には時間が残されていない」

 

「時間がないって…。どういうことだよ!シンクロ召喚が未来を滅ぼすって話ならこれから俺たちが…!」

 

「残念だが…これからなどと悠長なことを言っている余裕はないのだ」

 

「何…!?」

 

「おしゃべりはここまでだ鬼柳京介。ゾーンの元に進みたければ私を倒すことだな。私の後ろにあるものが見えるな?」

 

「あれは…歯車か?」

 

パラドックスの後ろには金色に輝く巨大な歯車が静かに佇んでいた。

 

「これはゾーンのいる太陽ギアを守る5つの遊星ギアの1つだ。そしてこの遊星ギアを破壊しないとゾーンのいる場所に貴様らは進むことは出来ない。さらにここにある遊星ギアは私のライフと直結している!」

 

「デュエルでお前を倒さねえと先に進めねえってことか…!」

 

「そういうことだ」

 

「なら…やってやるよ!」

 

「ふっ、愚かな。言っておくが私のデッキはあらゆる時代から最強のカードを取り寄せたデッキとなっている。貴様に勝ち目など万に一つもない」

 

「言ってな…。最強なんて俺の満足でぶち壊してやるよ!」

 

「 「 デュエル! 」 」

 

パラドックスと鬼柳のデュエル開始の掛け声が密室となっている空間に響き渡った。

 

「私からいかせてもらう!ドロー!…私は罪深き世界、Sin Worldを発動する!」

 

「いきなりフィールド魔法か…!」

 

彼らのいる空間がプリズムによって反射された虹色の光によって満たされた。

 

「このフィールドこそ私の舞台。ここでこそ私のモンスターの真価が発揮される。私はデッキの究極宝玉神 レインボー・ドラゴンを除外することで手札のSin レインボー・ドラゴンを特殊召喚する!」

 

七色に輝く翼を持つドラゴンがフィールドに飛翔するも、プリズムの光を浴びた部分から色が吸い取られていき、翼が黒く染まってしまった。

 

Sin レインボー・ドラゴン 攻撃力4000

 

「な…!?いきなり攻撃力4000だと!?」

 

「Sinモンスターは対となるモンスターをデッキから除外することで手札より特殊召喚できる。ただし、Sinモンスターはフィールドに1体しか存在させることができず、フィールド魔法がないと破壊されるがな」

 

(強力なモンスターだぜ…!だが、モンスターを守備表示で召喚すれば時間を稼げそうか?)

 

「私は2枚のカードを場に伏せターンを終える。さあ、かかってくるがいい!」

 

パラドックス LP4000

 

フィールド 『Sin レインボー・ドラゴン』(攻撃表示)

 

セット2 『Sin World』

 

手札2

 

「行くぜ!俺のターン、ドロー!」

 

「この瞬間私は永続トラップ、最終突撃命令を発動する!」

 

「何…?」

 

パラドックスの発動したトラップによって時空に歪みが発生した。

 

「このカードが場にある限り、フィールドの表側表示のモンスターは全て攻撃表示となる!貴様が守備を固めようなどという手を企んでいることなど分かっている」

 

「くっ!さすがに気づかれるか。どうする…!」

 

鬼柳は手札の6枚を見つめ、必死に突破の策を探った。

 

「無駄だ。貴様に攻撃力4000を超えるモンスターがいないことはアポリアから伝え聞いている。ましてや1ターン目から突破など出来まい」

 

「俺は…インフェルニティ・ビーストを召喚!」

 

体が黄土色で彩られた犬がフィールドに降り立った。

 

インフェルニティ・ビースト 攻撃力1600

 

「そんなモンスターで何が出来る」

 

「ちっ、2枚のカードを伏せてターンエンドだ!」

 

鬼柳 LP4000

 

フィールド 『インフェルニティ・ビースト』(攻撃表示)

 

セット2

 

手札3

 

「結局何も出来ずか。私のターン!この瞬間Sin Worldの効果を発動する!」

 

「一体何を…!」

 

「このフィールド魔法の効果により私はデッキから3枚Sinと名のつくカードを選び、相手はそこからランダムに1枚選択する!そして選ばれなかったカードはデッキへと戻り、選ばれたカードは私の手札へと加わる!さあ、選択しろ!」

 

パラドックスと鬼柳の間に3枚のカードが出現する。

 

「なら俺から見て右のカードだ!」

 

「良いだろう。そのカードを手札に加える!…ほう?」

 

パラドックスはそのカードを確認するとわずかに口角を上げた。彼の手札に加わったトラップカード、Sin Claw StreamはSinモンスターが場にいる時、相手フィールドのモンスター1体を破壊できる強力なカードだったからだ。しかし、そのカードが伏せられることはなかった。

 

「俺はここでトラップカード、死なばもろともを発動!」

 

「何だと?」

 

「このカードは互いの手札が3枚以上の時それを全て好きな順番でデッキの下に戻し、その後互いに5枚のカードをドローする!そして俺はこの効果でデッキに戻したカードの数×300のライフを失う!」

 

「自らを破滅へと追い込むか…。そのカードの効果によって貴様のライフは1800ポイント失われる。Sin レインボー・ドラゴンがインフェルニティ・ビーストに攻撃すればその時点で貴様のライフはゼロだ。あっけない結末だったな」

 

「まだだ!もう1枚のリバースカードも使うぜ!永続トラップ、ハンドレス・フェイク!俺の場にインフェルニティモンスターがいる時、次の俺のスタンバイフェイズまで手札を全て除外する!」

 

「な…!?」

 

鬼柳の手札が透明になっていき、死なばもろともの効果でやってきたゴブリンの検閲を回避した。

 

「よって俺はデッキにカードを戻さず、5枚のカードをドローする!」

 

「ち…小賢しい真似を!私は3枚のカードを戻し、5枚のカードをドローする!同時に貴様は自身のカードの効果で900のライフを失う!」

 

ゴブリンによってデッキに戻されたパラドックスのカードの怨念が鬼柳を貫いた。

 

「ぐっ…!」

 

鬼柳 LP4000→3100

 

「バトルだ!Sin レインボー・ドラゴンでインフェルニティ・ビーストへ攻撃!」

 

Sin レインボー・ドラゴンの翼から黒いエネルギーが放たれ、エネルギーの奔流にインフェルニティ・ビーストは飲み込まれてしまった。

 

「なっ!」

 

発生した衝撃は実体化していき鬼柳を容赦なく襲った。

 

「うおおおっ!?」

 

とっさに腕で衝撃から身を守るも、体は宙に浮き閉ざされた入り口に背中からぶつかってしまう。

 

鬼柳 LP3100→700

 

「…言い忘れていたがSin Worldでのダメージは実体化する。そしてライフゼロになる時の衝撃は…言わずもがなだ」

 

「くそ…油断したぜ」

 

鬼柳は不屈の闘志で何とか立ち上がるも、身体はぼろぼろになっていた。

 

「私はさらに2枚のカードを伏せターンエンドだ。…アポリアから貴様は諦めることがないと聞いている。だが、この状況でも諦めないというのか?」

 

「当たり前だ!諦めなきゃ…チャンスは来る!」

 

「どうかな…。諦めずに戦っても絶望を迎えることもある」

 

「…?」

 

パラドックス LP4000

 

フィールド 『Sin レインボー・ドラゴン』(攻撃表示)

 

セット3 『最終突撃命令』 『Sin World』

 

手札3

 

「俺のターン、ドロー!このスタンバイフェイズにハンドレスフェイクによって除外されたカードは手札に戻る!」

 

透明になっていた鬼柳の手札が元に戻っていった。

 

「手札…9枚か。だが貴様はハンドレスコンボを扱うと聞いているが…?」

 

「そうだぜ。この手札はハンドレスコンボへの布石だ!おっと…ハンドレス・フェイクは使わねえぜ?」

 

「手札9枚からのハンドレスだと?ありえぬ妄言を…」

 

「ならその目で見てみな!俺は手札を5枚墓地に捨てることで魔法カード、最終戦争を発動する!こいつは手札を5枚捨てることで発動出来る。そして効果で…フィールドのカードを全て破壊する!」

 

「何だと…!?」

 

フィールドに巨大な爆弾が一つ投擲された。爆弾は地面へと着弾し、フィールドのカードを全て破壊出来るほどの衝撃を解き放った。

 

「させぬぞ!リバースカードオープン!カウンタートラップ、デストラクション・ジャマー!手札を1枚捨て、フィールドのモンスターを破壊する効果を含むカードの発動を無効にし、破壊する!」

 

爆弾をバリアが包み込み、爆発の衝撃をバリア内だけですまさせた。

 

「残念だったな。その程度の策は読めている」

 

「残念?いいや、予定通りだ!俺は2枚のカードを伏せ、インフェルニティ・ミラージュを召喚する!」

 

「…!ハンドレス…!」

 

鬼柳のフィールドに藍色のローブに身を包んだ小人の幻影が現れた。

 

インフェルニティ・ミラージュ 攻撃力0

 

「さあ、見せてやるぜ。俺の満足を!インフェルニティ・ミラージュは手札が0枚の時、リリースすることで墓地にある2体のインフェルニティモンスターを特殊召喚できる!蘇れ、インフェルニティ・ネクロマンサー!インフェルニティ・ビートル!」

 

幻影が消えていくと、紫色のローブに身を包んだ霊媒師と体全体が黒く染まったヘラクレスオオカブトが復活した。

 

インフェルニティ・ネクロマンサー 攻撃力0

インフェルニティ・ビートル 攻撃力1200

 

「さらにインフェルニティ・ビートルは手札が0枚の時、リリースすることでデッキから2体のインフェルニティ・ビートルを呼び出す!」

 

「手札が0枚だというのに何という展開力だ…!」

 

ビートルの呼び声に導かれ2体の仲間がフィールドを舞った。

 

インフェルニティ・ビートル×2 攻撃力1200

 

「まだまだ!インフェルニティ・ネクロマンサーは手札が0枚の時、墓地のインフェルニティを復活させられる!戻ってこい、インフェルニティ・デストロイヤー!」

 

強固な肉体を持つ破壊者が地面を突き破り、フィールドに帰還した。

 

インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300

 

「ビートルはチューナーモンスター…行くぜ!俺はレベル6のインフェルニティ・デストロイヤーにレベル2のインフェルニティ・ビートルをチューニング!」

 

「…!シンクロ召喚か」

 

「死者と生者の狭間、その虚ろな魂が混じるとき冥府の闇が舞い降りる!シンクロ召喚、いでよワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」

 

100個の目玉が体に張り付いた奇妙なドラゴンが2人の前に姿を現した。

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000

 

「シンクロモンスターを呼んだか。だが、Sin レインボー・ドラゴンには及ばぬ!」

 

「こいつ1体だけならな。俺は伏せていた永続魔法、インフェルニティ・ガンを発動し、墓地に送る!これによって2体のインフェルニティモンスターを墓地から帰還させることが出来る!」

 

「…驚いたな。まだ展開を続けることが出来るのか」

 

「俺はインフェルニティ・ビーストとインフェルニティ・ビートルを特殊召喚!」

 

地面に向かった銃が放たれ、それによって出来た穴から犬とヘラクレスオオカブトが抜け出してきた。

 

インフェルニティ・ビースト 攻撃力1600

インフェルニティ・ビートル 攻撃力1200

 

「そして俺はレベル3のインフェルニティ・ネクロマンサーとレベル3のインフェルニティ・ビーストにレベル2のインフェルニティ・ビートルをチューニング!」

 

「1ターンで2回のシンクロだと…!?」

 

「死者と生者、ゼロにて交わりしとき、永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚!いでよ、インフェルニティ・デス・ドラゴン!」

 

体が漆黒に染まりしドラゴンが飛翔し、翼を羽ばたかせてフィールドに風圧を走らせた。

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000

 

「仕上げだ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンは1ターンに1度、墓地のレベル6以下の闇属性モンスターを除外することで効果をコピーする!俺はインフェルニティ・ネクロマンサーを除外し、効果を発動する!」

 

「…!?まさか…貴様の狙いは!」

 

「俺は墓地のインフェルニティ・デストロイヤーを特殊召喚し、レベル6のインフェルニティ・デストロイヤーにレベル2のインフェルニティ・ビートルをチューニング!」

 

「3連続シンクロ…!しかもこの力は!」

 

「天国と地獄の(はざま)…煉獄より姿を現せ!煉獄龍 オーガ・ドラグーン!」

 

翼も手足も胴体も赤黒く染まったドラゴンが煉獄より飛翔し、闇に染まった体を2人に見せた。

 

煉獄龍 オーガ・ドラグーン 攻撃力3000

 

「ゾーンの与えしドラゴン…!しかも3体のシンクロドラゴンを手札0から呼び出すとは…なるほど。ゾーンが希望を持ったのも頷ける」

 

「なら、俺たちに未来を託してくれよ!そうすれば…」

 

「…言っただろう。時間がないと。どうしてもというのならば力づくで認めさせるがいい。貴様が呼び出した3体のシンクロモンスターの攻撃力ではSin レインボー・ドラゴンを超えることは出来ないがな!」

 

「攻撃力では…な。インフェルニティ・デス・ドラゴンの効果発動!俺の手札が0枚の時、1ターンに1度相手フィールドのモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを相手に与えることが出来る!」

 

「…!しまった…。デストラクション・ジャマーは最終戦争によって使わされている!」

 

「そうだ!最終戦争はハンドレスとインフェルニティ・デス・ドラゴンへの布石だったのさ!Sin レインボー・ドラゴンを破壊しろ!インフェルニティ・デス・ブレス!」

 

インフェルニティ・デス・ドラゴンから放たれた黒い炎がSin レインボー・ドラゴンの翼を燃やし、破壊した。

 

「ぐおおおっ!」

 

パラドックスはSin Worldによって実体化したダメージによって大きく仰け反った。

 

パラドックス LP4000→2000

 

「よし…!あとはオーガ・ドラグーンのダイレクトアタックで…!」

 

「…一見正しいように見えた今の行動。しかし、それは大いなる間違いだ!」

 

「な、何だ…?」

 

パラドックスはアポリアがDホイールと合体していく時のように自身のパーツを分解していき、新たにフィールドに現れていた何かと合体していた。

 

「なっ…新たなドラゴンが場に出ているだと!?」

 

彼はドラゴンの頭頂部にあたる部分と自らの体を一体化させていた。

 

Sin トゥルース・ドラゴン 攻撃力5000

 

パラドックス LP2000→1000

 

「Sin トゥルース・ドラゴンはSinモンスターが破壊された時、ライフを半分にすることで手札または墓地より特殊召喚することが出来る!」

 

「攻撃力4000を倒したと思ったら今度は攻撃力5000かよ…!?」

 

「さあ、どうする!鬼柳京介!」

 

「…俺はこれでターンエンドだ!」

 

鬼柳 LP700

 

フィールド 『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』(攻撃表示) 『インフェルニティ・デス・ドラゴン』(攻撃表示) 『煉獄龍 オーガ・ドラグーン』(攻撃表示)

 

セット1 『ハンドレス・フェイク』

 

手札0

 

「私のターン!私はこのターン、Sin Worldの効果を発動せず、通常のドローを行う!」

 

パラドックスがドローを行うと一体化しているSin トゥルース・ドラゴンが咆哮をあげた。

 

「さあ…絶望しろ!バトルだ!Sin トゥルース・ドラゴンで煉獄龍 オーガ・ドラグーンへ攻撃する!さらにSin トゥルース・ドラゴンがバトルで相手モンスターを破壊した場合、相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する!まとめて消え去れ!」

 

Sin トゥルース・ドラゴンの周囲に無数の黒い針が発生し、一斉に3体のドラゴンへと向けて射出された。

 

「さらばだ…!わずかな希望をもたらしたデュエリストよ!」

 

「…まだ俺は満足してないぜ!リバースカードオープン、インフェルニティ・ブレイク!」

 

「何!?」

 

「墓地のインフェルニティカード、インフェルニティ・ガンを除外することで相手フィールド上のカードを1枚破壊する!俺が破壊するのは…Sin World!」

 

「し、しまった…!」

 

「確か言ったよな?Sinモンスターはフィールド魔法がないと破壊されるって!お前の方こそ消えな、Sin トゥルース・ドラゴン!」

 

Sin Worldが崩れていき、Sin トゥルース・ドラゴンが苦しみだす。一体化しているパラドックスも痛みを共有しているのかうめき声をあげた。やがてSin トゥルース・ドラゴンは崩れ去った。

 

「はあ…はあ…」

 

「フィールド魔法が消えた以上お前に勝ち目はねえ!俺の勝ちだ!」

 

「…そいつはどうだろうな?」

 

「何?」

 

「言っただろう。私のデッキはありとあらゆる時代から最強カードを取り寄せた最強のデッキだと!私は手札から魔法カード、テラ・フォーミングを発動する!このカードによって私はデッキからフィールド魔法を1枚手札に加える!」

 

パラドックスが天に手を突き出すと光が降り注がれ、1枚のカードがゆっくりと降りてきた。

 

「そうはさせねえ!煉獄龍 オーガ・ドラグーンの効果発動!俺の手札が0枚の時、1ターンに1度魔法か罠カードの発動を無効に出来る!」

 

煉獄のドラゴンが黒炎のブレスを放ち、光を遮断したことでカードはパラドックスの手に収まることはなかった。

 

「…かかったな!」

 

「なっ…!?」

 

「当然私はオーガ・ドラグーンの効果を把握している。本命は既に手札にある!出現せよ、3幻神をも封じ込める力を持つフィールド魔法よ!神縛りの塚、発動!」

 

フィールドの一部が盛り上がり塚が形成されていく。やがて巨大な塚が出来上がると周囲の雰囲気が重くなっていった。

 

「何だこれは…」

 

「私が探し出した神をも縛る力を持つカードだ。このカードで決着をつけてくれよう。私はトラップカード、Sin Selecterを発動する!墓地の2体のSinと名のつくモンスターを除外することでデッキより2枚のSinと名のつくカードを手札に加える。私はデストラクション・ジャマーのコストで墓地へ送っていたSin 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)とSin レインボー・ドラゴンを除外する!」

 

パラドックスのデッキから2枚のカードが飛び出し、パラドックスの手中に収まった。

 

「私が加えたのはSin パラレルギアと…Sin スターダスト・ドラゴン!」

 

「スターダストだと!そいつは遊星の…!」

 

「そう。スターダストと対となるモンスターだ。最も、ペガサスの抹殺に失敗した際にスターダストは取り返されてしまったがな」

 

「ならそいつを呼び出すことは出来ねえじゃねえか!」

 

「ふ…甘いな。私はチューナーモンスター、Sin パラレルギアを召喚する!」

 

刃のついた歯車がフィールドで回転しだした。

 

Sin パラレルギア 攻撃力0

 

「そしてSin パラレルギアは手札のSinモンスターとシンクロ召喚を行うことが出来る!」

 

「…!エキセントリック・ボーイみたいな奴か…!」

 

「私はレベル8のSin スターダスト・ドラゴンにレベル2のSin パラレルギアをチューニング!次元の裂け目より生まれし闇よ、時を超えた舞台に破滅の幕を引け!シンクロ召喚!Sin パラドクス・ドラゴン!」

 

パラレルギアから発せられた黒い輪が黒く染まったスターダストを包み込み、完全に闇に染まったドラゴンを生み出した。さらにそのドラゴンは闇を取り込んでいき、巨大化を続けていった。

 

Sin パラドクス・ドラゴン 攻撃力4000

 

「ここに来て…また攻撃力4000のモンスターを呼びやがったか!」

 

「ふふ…Sin パラドクス・ドラゴンはフィールドにSin Worldが存在しない時、破壊される!」

 

「なっ…一体何を!」

 

Sin パラドクス・ドラゴンは無理に巨大化した影響で崩れ去ろうとした。しかし、塚から放たれた四本の鎖が強引にSin パラドクス・ドラゴンを支えた。

 

「フィールド魔法、神縛りの塚の効果によりフィールドのレベル10以上のモンスターは効果の対象にはならず、また効果では破壊されない!」

 

「何!ならインフェルニティ・デス・ドラゴンの効果も効かねえのか…!?」

 

「そういうことだ!貴様が運命を託したシンクロドラゴンも私を倒すには至らない…!貴様に残っているのは次の私のターンに目の前で為すすべなく自分のモンスターを破壊されてしまうという絶望のみ!」

 

「く…!」

 

「神縛りの塚によって再びダメージも実体化する…。やはりシンクロモンスターは良き未来をもたらさぬようだ。鬼柳京介、これが絶望だ。私はこれでターンエンド」

 

パラドクス LP1000

 

フィールド 『Sin パラドクス・ドラゴン』(攻撃表示)

 

セット1 『最終突撃命令』 『Sin World』

 

手札0

 

「…絶望。確かに今の俺のシンクロモンスターたちじゃお前を倒すことは出来ねえ」

 

「そうだ。貴様に希望はない」

 

「いや、希望は他力本願で手に入るもんじゃねえ!俺はこのドローで希望を掴み取ってみせる!俺のシンクロモンスターの力はまだこんなもんじゃねえ…!」

 

「人は絶望しかなくともシンクロモンスターに縋ることしか出来ない。破滅の未来へと歩みを進めるがいい!」

 

「…俺のターン。このカードにかけるぜ。コナミがシンクロモンスターの力を束ねたように俺も…こいつらを束ねる為の力を!…ドロオォォー!」

 

鬼柳は腕をクロスさせ、左手で右腕につけているデュエルディスクからカードを引き抜き、鋭い軌跡を描いた。

 

「どうだ?やはり貴様にもたらされたのは絶望だろう?」

 

「…俺はワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果を発動し、インフェルニティ・ビーストの効果をコピーする!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの目が一つ見開き、インフェルニティ・ビーストのデータを読み込んだ。

 

「悪あがきか。見苦しいぞ」

 

「どうかな…。満足させてやるぜ、お前を!」

 

「ふっ…Sin パラドクス・ドラゴンは神縛りの塚により効果の対象とならず、カード効果で破壊されない。今更何をするというのだ?」

 

「俺はこのカードに全てを託すぜ。手札から魔法カード、クロス・アタックを発動!こいつは俺の場に同じ攻撃力の攻撃表示モンスターがいる時に発動できる…!」

 

3体のドラゴンからエネルギーが溢れ出ていく。

 

「貴様の場のモンスターの攻撃力は全て3000…!」

 

「そして俺は同じ攻撃力を持つモンスターの内、1体を選択する!そして選択したモンスターは…このターン、相手にダイレクトアタックすることができる!」

 

「…馬鹿な!?この局面でダイレクトアタックを可能にするカードを引き当てたというのか!?」

 

「そうだ!諦めなければ…必ず活路は開ける!俺はそれを信じている!俺が選択するのは…ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」

 

インフェルニティ・デス・ドラゴンと煉獄龍 オーガ・ドラグーンのエネルギーがワンハンドレッド・アイ・ドラゴンへと集約されていった。

 

「これでワンハンドレッド・アイ・ドラゴンはダイレクトアタックが出来る!行くぜ…バトルだ!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンでパラドックスに直接攻撃!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンは100個の目でパラドックスを捉え、3体のドラゴンのエネルギーを合わせた力を解き放とうとした。

 

「やられるものか…!私はゾーンのために何としてもこの戦いに勝たなくてはならない!リバースカードオープン!カウンタートラップ、攻撃の無力化!相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを強制的に終了させる!」

 

「…!」

 

「このカードにはオーガ・ドラグーンの効果も発動することは出来ない!一歩及ばなかったな鬼柳京介!」

 

パラドックスのフィールドに渦が発生していき、パラドックスを守るように取り囲んでいく。

 

「…それはどうかな?」

 

「ここに来てまだそんな減らず口を…!貴様はこの絶望から何を変えられるというのだ!」

 

「変えてやるよ…!俺のシンクロモンスターの可能性をお前に見せてやる!ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンがコピーしたインフェルニティ・ビーストの効果!このモンスターが攻撃する時、俺の手札が0枚の場合…相手は魔法・罠カードを発動出来ない!」

 

「なん…だと…!?」

 

パラドックスの周りに発生しようとした渦は収まっていき、パラドックスは無防備になってしまう。

 

「何故だ…。私を待つ未来は絶望しかないのか!?」

 

「…いや、違うな。お前は絶望なんかしてねえ」

 

「何だと?貴様に何が分かるというのだ…!」

 

「さっきお前が言ってただろ?何としてもゾーンのために勝たなくてはならないって。つまりお前はゾーンに希望を抱いてるってことだ!そして人は希望がある限り…絶望はしねえ!」

 

「…!私がゾーンに希望を…?私は絶望をしていないというのか?」

 

「ああ。絶望をしている人間が希望を抱くことはねえ」

 

鬼柳はクラッシュタウンで希望を抱くことなくただ死の順番を待っていた時のことを思い出す。人は絶望をしている時は希望を抱かない。しかし彼は遊星やコナミ、ニコやウエストに希望を与えられた。死神の生き様を見せるという希望を抱いてからは挫けることはあれど、絶望することはなかった。

 

「…ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンでパラドックスに直接攻撃!インフェルニティ・サイト・ストリーム!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンから放たれた闇のエネルギーがパラドックスを包み込んでいく。パラドックスは闇に包まれながらも、まるで光に包み込まれているかのように感じていた。

 

「…そうか。この胸に抱いている感情。これは絶望ではない、希望なのだな」

 

パラドックス LP1000→0

 

こうして遊星ギアは破壊され、ゾーンへと一つ近づいたのだった。

 

 




ワンターンスリィマンゾクリュウ…
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