遊戯王5D'sタッグフォース 満足の意志を継ぐ者   作:ゾネサー

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明けましておめでとうございます。


もう一つの戦い

コナミはDホイールをフルスピードで走らせて選んだ道を突き進み、やがて一つの部屋にたどり着いた。

 

「アポリアはいるか…!?」

 

コナミは部屋を見渡す。しかしその部屋に人はおらず、あるのは部屋の一部が崩壊したことにより出来上がったガレキのみ。

 

「外れか…!」

 

コナミは引き返そうとDホイールを反転させる。その時ガレキが崩れ落ち、コナミは振り返った。彼の目に映ったのは体の節々から火花を走らせたアポリアだった。

 

「…コナミか。何故貴様がここにいる?」

 

アポリアはガレキを払いのけ、コナミに近づいていった。

 

「…!ゾーン…いや、レイン恵を倒したか」

 

アポリアはコナミのDホイールに乗せられたレイン恵に気づき、彼がここに来た目的を探った。

 

「貴様は他の遊星ギアを破壊しに来たのか?だが、見ての通り私は敗れた。パラドックスもアンチノミーもシェリーも敗れたらしい。ならば既にゾーンへ繋がる道は開かれたはずだ」

 

アポリアは自身を倒した3人のシグナーが通ったであろう太陽ギアへと繋がる道を指差した。

 

「俺がここに来た理由はそんなのじゃねえ。恵を…助けるためにここに来たんだ!」

 

「…何だと?」

 

アポリアは訳がわからないといった顔でコナミを見つめる。

 

「貴様は自分が何を言っているのか理解しているのか?」

 

「…ああ。俺はレイン恵という人間を救いたい。それだけだ」

 

コナミはアポリアの目を真っ直ぐに見つめ返した。

 

「本当に貴様らは訳が分からん。3人のシグナーは絶望を乗り越えるだけでなく敵であるはずの私に希望を与え、挙げ句の果てに貴様は敵であるレイン恵を救おうとしている。それは何故だ?」

 

「決まってるだろ。お前達は本当は敵じゃないからだ」

 

「…何を言っている。私達はアーククレイドルを墜落させることでネオ童実野シティを消滅させようとしているのだぞ」

 

「それはお前達が未来を救うためにやってることだろ?未来を救おうとするのは別に間違ったことじゃねえ。お前達が間違えたのは…やり方だけだ」

 

「……」

 

アポリアはルチアーノ、プラシド、そしてホセとして破滅の未来を防ぐためにこの時代で活動してきた。アーククレイドルを出現させるためのサーキットと呼ばれる回路を完成させるために動いたのも彼だった。しかし…サーキットを起動させ、この時代のモーメントを消滅させるのは最終手段のはずだった。アポリアはゾーンが不動遊星や鬼柳京介に希望を抱いていたのを知っていた。だがアポリアはゾーンの寿命が残り少ないという事実を知らされぬままゾーンが急にアーククレイドルの墜落を決定したため、どうしてもこのやり方に不信感を拭いきれないでいた。

 

「それより時間がねえんだ!どうしたら恵を救える?」

 

「…私達は未来のモーメントによって動いている。この時代のモーメントでは動かすことが出来ない。よって普通の方法ならば彼女を救うことは出来ない」

 

「何か特別な方法なら救えるのか!?」

 

「…ああ。一つだけある。だが、それには二つの条件を満たさなくてはならない」

 

「一体何をすればいいんだ?」

 

「その一つはサイコパワーを使える者がいることだ」

 

「サイコパワー…!?確かアキが使えるって遊星が言ってたけど…どうしてサイコパワーなんだ?」

 

「彼女はサイコパワーを破壊に用いていたようだが本来サイコパワーとは傷ついた者を癒す力。この力ならあるいは彼女のモーメントを復元させることが出来るかもしれない」

 

「なるほどな…。なら早速アキがいるところに!」

 

「待て。問題はもう一つの条件だ。レイン恵のモーメントは残りわずか。これを元通りにするにはさらにサイコパワーによって扱うカードをライフ回復系のカードとしなくてはならない。回復系のカードには衰弱したものを蘇らせる力があるからだ」

 

「安心しろ!回復系のカードなら俺のデッキに何枚かある!」

 

「いや、貴様の言うカードは恐らく自分のライフを回復するカードだろう。だがサイコパワーによって相手に力を与えたい場合は相手に干渉することの出来るカードでなくてはならない。つまり……」

 

「…相手のライフを回復させることの出来るカードじゃないと駄目ってことか?」

 

「その通りだ」

 

コナミは自分のデッキを取り出し、相手のライフを回復させることの出来るカードを探す。しかし、通常のデュエルにおいて相手のライフを回復させることにメリットはない。コナミのデッキも例に漏れず相手のライフを回復させることの出来るカードは入っていなかった。

 

「言っておくが私のデッキにもそのようなカードはない」

 

「ど、どうすれば…!」

 

「…やはり諦めるのだ。彼女も停止するのを承知でデュエルを行なったはずだ」

 

「そんなのは諦める理由にはならねえよ!俺はあいつを救ってやりたいんだ…!」

 

コナミは胸元のポケットに手を伸ばす。デッキにいれずとも彼は緊急時に備えて何枚かカードを持ち歩いていた。彼はそのカードに希望を託した。

 

「だが、相手のライフを回復出来るカードなどこの世に僅かだ。貴様がそのようなカードを持っている確率などゼロに近い」

 

コナミは諦めずカードを手に取る。そして彼は一枚のカードに気がついた。かつてそのカードの持つ可能性を体感し、お守りのように常に持ち歩くことにしていたそのカードに。

 

「——それはどうかな?」

 

「モウヤンのカレー…だと?」

 

コナミがアポリアに見せたのはモウヤンのカレーというマジックカード。効果はライフポイントを200回復させるだけ、しかしコナミが求めていた数少ない相手のライフを回復させることの出来るカードだった。

 

「これなら恵を救えるよな?」

 

「あ、ああ…」

 

「よし!じゃあ行ってくるぜ!」

 

「…十六夜アキとクロウ・ホーガンはここから入り口に戻り、右側の道を通った部屋にいるはずだ。だが、遊星ギアを破壊した今そこにいるとは限らないが…」

 

「そう思い込んですれ違っちまうのが一番怖え。恵に残された時間はあまり長くない…だろ?」

 

「確かにな…。彼女に残された時間はそう長くはないだろう。サイコパワーはあくまで衰弱したものを蘇らせるだけだ。停止を迎えたものを蘇らせることは…当然できない」

 

「なら急がせてもらうぜ!」

 

「…コナミ」

 

「ん?」

 

「今更私が言うには差し出がましい願いだが…。どうか彼女を救ってやって欲しい。過去のゾ(彼女)ーンも…私にとっては親友なのだ」

 

「…ああ!絶対に救ってやる!」

 

そう答えるとコナミはDホイールを走らせ、アキの元へと向かっていった。

 

「…奴は奴のやるべきことをやりに行った。ならば私も私のやるべきことをやりに行こう」

 

アポリアは傷ついた体を動かし、ゾーンのいる太陽ギアへと続く道へと向かっていった。

 

 

一方、鬼柳は太陽ギアの入り口でチーム5D'sのメンバーと合流していた。

 

「…なるほどな。お前は俺達とは別ルートでアーククレイドルに突入したと言うわけか」

 

「そうだぜジャック。にしてもこんなガキまで命懸けの戦いをしなきゃならねえとはな」

 

「ガキじゃないやい!俺はシグナーとして龍可を守るんだ!」

 

「龍亞……」

 

彼の右腕にある心臓の形をした痣。それが彼が勇気を持って戦い抜いた証として刻まれていた。

 

「勇姿を見せてやりたかったぞ。こいつがいなければ俺達は勝てなかった」

 

「ジャック……!」

 

仲間を待ちながら情報を交換する彼らの元に一人の人物がたどり着いた。

 

「遊星!」

 

「鬼柳…」

 

勝負に勝ち、ここまで進んできた遊星。しかし、彼の声に覇気は感じられなかった。遊星はその理由を彼らに告げた。

 

「ブルーノが…俺達の敵だったというのか?」

 

「…いや、違う!確かに俺とブルーノは戦わなくてはならなかった。だが、あいつは俺を信じてくれた。そして俺を助けるためにあいつは……」

 

彼らチーム5D'sのメンバーの一人が敵であったこと。しかし、本当は遊星に希望を持っていたこと。そして遊星を助けるために彼が犠牲になってしまい、自分の仲間を失ってしまったことを遊星は引きずってしまっていた。だが、ジャックにだからこそブルーノの犠牲を無駄にしてはいけないと言われ、遊星はブルーノのためにもゾーンを止めることを決意した。

 

「…行こう!」

 

遊星は混乱していた自分の気持ちをまとめ、太陽ギアへと踏み出そうとした。

 

「ま、待って!遊星!」

 

「アキさんとクロウがまだ来てないの…」

 

「アキとクロウが…?」

 

「太陽ギアへの道が開かれてから随分時間が経っているぞ!あいつらは何をやっているのだ!」

 

「…でも遊星ギアが破壊されてるってことはあいつらも勝ったってことだろ?なら先に進んでもいずれ追いついて来るんじゃねえか?」

 

「…アーククレイドルが墜落するまでの時間は残り少ない。アキとクロウを信じてここは進もう」

 

遊星はアキとクロウを心配しながらも彼らを信じて仲間と共に太陽ギアへと進んでいった。

 

時を同じくしてコナミはクロウとアキが戦っていた部屋に到着していた。

 

「ここも部屋の一部が崩れてガレキになってやがる…。ん?あのガレキの近くに誰か倒れてねえか!?」

 

コナミは慌ててガレキへと近づいていく。そこに倒れていたのは金髪の見知らぬ女性とクロウだった。

 

「クロウ!?何で倒れて…」

 

コナミの視界は完全に倒れた二人に向いていた。その死角から放たれた何かがコナミに向かっていくのに気付くことは出来なかった。

 

「危ない!」

 

「…!?」

 

コナミはとっさにDホイールを宙に浮かせた。するとその真下を炎の玉が通過していった。

 

「ちっ!余計なことを……」

 

「なっ…!?」

 

コナミは炎の玉が放たれた方向に目を向ける。そこにいたのは鎖によって身動きを封じられたアキと顔の右半分に大きな傷を負った見覚えのある男だった。

 

「ふふ…久しぶりだな。まさかこんなところで貴様にも会えるとは思わなかった。歓迎しよう…盛大にな!ファイヤー・ボール!」

 

その男は炎の玉を何発かコナミに向けて放った。コナミはDホイールの飛行機能を生かし、何とかかわすことに成功する。

 

「何でお前がこんなところにいるんだよ…!?ディヴァイン!」

 

その男の正体はダークシグナーとシグナーの戦いの際、コナミに敗れ収容所送りとなっていたアルカディア・ムーブメント総師、ディヴァインだった。

 

「おっと…貴様は知らなかったか。元々アルカディア・ムーブメントはイリアステルに対するレジスタンス組織なのだよ」

 

「そうなのか…!?いや、お前はそもそも捕まってたはずじゃ…?」

 

「今、街はアーククレイドルが墜落する非常事態。囚人も他の収容所への移動となった。その隙をついてデュエルディスクを奪い、サイコパワーでその場を離れるなど容易だ。馬鹿な奴らだ…目先の恐怖に怯えサイコデュエリストである私の警戒を怠るとはな」

 

「ディヴァイン…」

 

そんな彼を横から動きを封じられたアキが訴えるように見つめる。

 

「アキ…そこで少しの間我慢してるんだよ」

 

しかしディヴァインは一切気にせず、コナミへとゆっくり近づいていく。

 

「その妙なDホイールのせいで私のサイコパワーは通用しないようだな。なら…これならどうだ?」

 

そう言ってディヴァインはディスクを構える。

 

「貴様には拭いがたい屈辱を味わったからな。サイコデュエルで貴様に復讐してやろう…!」

 

(恵のモーメントはいつまで持つか分からねえのに…!早い事アキを解放しねえと…)

 

「アキが気になるか?私に勝てばアキを封じるこの鎖は解ける…。勝てたらの話だがな」

 

「…!やるしかねえのか…!」

 

コナミはサイコパワーに備えDホイールに乗ったままデュエルの体勢に入った。その時、ディヴァインがコナミの後ろに乗っている恵の存在に気が付いた。

 

「その小娘は…。どうやら貴様が倒してくれたみたいだな。感謝するぞ。ははは!」

 

「どうゆうことだよ!」

 

「そいつは我々の計画をことごとく邪魔してくる厄介な存在だった。この前も私の脱獄を計画した可愛い部下達を無力化してくれたからな。貴様を倒した後はたっぷり礼をしてやらないとな」

 

ディヴァインは下卑た笑みを浮かべる。

 

「させるかよ…!俺はお前を絶対に倒す!そして……」

 

コナミは後ろに乗る恵を見る。

 

(俺に希望を持ってくれた恵を助けてみせる!いや…助ける!)

 

そして互いに向かい合い、しばしの沈黙の後に開始の合図が部屋に響く。

 

「「 デュエル!」」

 

様々な想いが交錯しながら、戦いの幕が切って落とされた。

 

 




海外の遊戯王5D'sのアニメではディヴァインはアポリアを倒してイリアステルを消滅させた英雄となっているらしいです。
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