艦これ〜鴛鴦のコンツェルト〜   作:自由主義国家カメルーン

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初めまして。

ツイッターで日常ものを! という声を聞いたので書いてみた。後悔はしていない。
何度も念押しするが完全オリジナルキャラクターだ、いいね?

それではいざ。




第1話 朝の陽射し

トントン、という音で帆立は目が覚めた。セミダブルベットの隣が空になっているところを見ると、彼女は先に起きていたようだ。

彼の名前は帆立(ほだち)正一(しょういち)。元海軍軍人にして、今は隠遁生活を送る者だ。

もうしばらくこのまどろみに身を委ねていたい誘惑に駆られるが、彼女が起きている中で自分だけ寝ているわけにもいかない。柔らかな毛布を退けて立ち上がると軽く髪を整えてパジャマ姿のまま台所に向かう。

 

「あら、起きたの? もう少し寝ててもよかったのに」

 

「十分寝させてもらったさ。とりあえずおはよう、叢雲」

 

「ええ。おはよう、あんた」

 

おたまを片手にエプロンを着た叢雲が微笑む。味噌汁を作っているらしい。馴染んだ匂いがふわりと鼻をくすぐる。朝食は和食だ。叢雲と帆立は味の好みが似ているため、先に起きた方が朝食を作ることが彼らの間に結ばれたルールである。

 

「とりあえず着替えてきなさいよ。いつまでその格好でいるつもり?」

 

「っとと。そうだな。んじゃ、着替えてくるわ」

 

洗面所で冷水を手に溜めて顔を洗うと、ぼんやりとしていた意識が覚醒する。鏡を見て、身だしなみをざっくりと確認すると、紺色のTシャツと七部丈のズボンを穿く。そして何気なく左手の薬指に目をやった。赤いルビーのはめ込まれた結婚指輪(エンゲージリング)が朝日を反射してきらりと光る。

 

「もうどれだけ経ったっけなあ……」

 

帆立がしみじみと呟く。退役という形をとったあの頃が懐かしい。それにしてもよく叢雲は退役してまで自分についてきてくれたものだ。そう思うと改めてありがたく感じると共に、嬉しさも感じる。

 

現役の頃からそういった感情を彼女に対して抱いていた帆立は指輪を急いで用意するとプロポーズした。顔を真っ赤にしつつも、はにかみながらOKの返事をしてくれた叢雲の顔を帆立は生涯忘れることはないだろう。

 

「さてと、そろそろ出来上がってる頃合いだろうし、配膳くらいは手伝わにゃな」

 

誰ともなくそう呟いて、台所に向かう。予想通りと言うべきか、叢雲は茶碗に炊飯器から米をよそっているところだった。

 

「運ぶよ」

 

「ん、よろしく」

 

するりと台所に体を滑り込ませると、よそいおわった茶碗を持ってテーブルに運ぶ。本日のメニューは鯵の開きと白米、白菜の浅漬け、ほうれん草のおひたしに大根と油揚げの味噌汁だった。なんとも王道なラインを突いてきたなと思いながら、テーブルに食器を並べていく。二人分の朝食が並び、椅子にかけて待っているとエプロンをはずした叢雲が対面の位置に座った。

 

「「いただきます」」

 

手を合わせて唱和。箸を手に取り、味噌汁の入ったお碗を左手で持ち上げて一口啜る。味噌を薄めに溶いて、出汁の香りを殺さないように作られた味噌汁の味を楽しむと箸は鯵の開きへ。

鯵を咀嚼しながら目線を上げると、叢雲が食べるのには邪魔だった、前に垂れた髪を耳にかける。その左手の薬指には、蒼いサファイヤのはまった指輪が煌めく。自分が薬指にはめているものと、宝石だけが違う特注品(オーダーメイド)の指輪。

 

「……? 何笑ってるのよ? 何か楽しいことでもあった?」

 

「いや、なんでもない」

 

口元が緩んでいたようだ。今更こいつの前で取り繕う必要はないが、理由を話すのも照れくさいため誤魔化した。

 

その後も何度か箸と皿の当たる音が鳴ると、小さな朝食はすぐに2人の胃に収まった。シンクの流しに空になった食器を運び、スポンジに洗剤を含ませる。

 

「私がやったのに」

 

「朝作ってもらってるからな。こんくらいはやるって。皿だけ拭いてくれ」

 

「了解よ」

 

洗い終わった皿を水切りに置くと、叢雲がそれを取って布巾で拭く。たった2人分の食器や、小さな鍋はさして手間取ることもなく洗い終わり、やることもなくリビングでお茶を飲みながら特に見るつもりもないテレビをつける。

 

「なんだか嘘みたいね」

 

「何がだ?」

 

「こんな生活、深海棲艦と戦ってる頃には想像もできなかった」

 

「そりゃ俺も同じだよ」

 

帆立は苦笑した。事実、前線にいた頃に叢雲とこうなるなんて微塵にも思っていなかった。自分が彼女に惹かれていたと気づいたのも本当に退役直前だ。あれよあれよとここまで来たわけだが、思えば遠く来たもんだ。

 

「ねえ、ホタテー」

 

「叢雲、俺の名前はほだちだ。ほ·だ·ち!」

 

「醤油かけたら美味しいかしら?」

 

「知るかよ! てかなに? 俺に醤油かけるつもりなの?」

 

成人男性に醤油をかける女性ってどんな絵だよ。誰得もここ極まれりだ。

 

「今度試してみようかしら? 夜、あんたに醤油かけて一発────」

「やめい! これR-18タグついてないから! そしてそれをやらされる俺の身にもなれ!」

 

「メタいわね」

 

「誰のせいじゃコラ」

 

帆立がジト目でイタズラっぽく笑っている叢雲を睨む。昔はこんなこと言うようなキャラじゃなかった気がするんだが……時は移ろい、人は変わるということなのだろうか。

 

「ねえ、今日はどうする?」

 

「そうだなぁ……」

 

いろいろあった現役時代のせいで、2人の貯金は今後働かなくとも充分に生きていけるだけある。つまるところ無職なわけだが、別にそれでもいいと思っている。いずれは何かやってもいいかもしれないが、今はまだ、もう少しだけこのままで。

 

「ま、家でのんびりしてるのもいいんじゃねえか?」

 

「発想が完全にボケる前のおじいちゃんのそれね」

 

「おいおい、勘弁してくれ。そこまで年食ったつもりはねえぞ?」

 

「ならなんか考えなさいよ。ホントにボケるわよ?」

 

帆立が顎に手を当てて思案顔になる。正直、まだボケが来るのはパスしたいところだ。

 

「昼過ぎてからどっか行こう」

 

「なんで昼なのよ?」

 

「それまでお互いに考えとくってことで」

 

「適当ね」

 

「毎度の話だろ?」

 

「ええ。こっちも馴れたもんよ。伊達に長年あんたの秘書艦やってないっての」

 

得意げに叢雲が胸を張る。本当に初期の初期から付き合わせっぱなしだ。

 

「ねえ、やっぱり何かいいことあったの?」

 

「どうして?」

 

「今朝からあんた楽しそうだったから」

 

そんなに表情に出ていただろうか。いや、叢雲だからバレただけかもしれないが。

 

「ちょっと、な」

 

「ちょっと、なによ?」

 

「ちょっと昔を思い出してただけさ。楽しい思い出をな」

 

そう言うと叢雲が目をぱちくりさせる。そして口元に手を当てて、控えめに笑った。

 

「ふふっ。変なの」

 

窓から爽やかな風がリビングに吹き込んだ。

 

 




彼らの組曲(カルメン)の一部である協奏曲(コンツェルト)、いかがでしたか?

こんな感じの謎テンションで唐突に投稿していきます。
そして正直なところ、既にネタ切れ感がヤバい。どんな手段でもいいので、こんな話みたい! という方は遠慮なくどうぞ。ただし、採用されるとは限りませんとだけ事前に言っておきます。

Twitter→@regurus32701

感想、評価などお待ちしております。それでは!
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