機龍~revival・wars~   作:西郷ゆとり

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war.5 太古の猛者たち

 一時間ほど飛行を続けた。炎龍の電力量は九十八パーセントを切ろうともしない。三式機龍は二時間でそのエネルギーを使い果たすほど燃費が悪かったが、炎龍に関しては、そんなことはないようだ。十年の間に、ここまでの技術的変革があったのだと思うと、少し不気味なくらいだった。

 そういう要因もあって、一時間も経つと、僕の気も緩んできた。自動パイロットモードに入った炎龍のコックピットに深く身体を沈め、目を閉じる。仮眠は取るようにと言われていたから、その言葉に従うことにする。

 が、直後、発泡スチロールが擦れ合う音のような、それでいて、動物の唸り声のような音が響いた。僕は慌てて飛び起きる。

 モニターを確認すると、飛行船がふらふらと落下していくのに気付いた。炎龍のオートパイロットを解除して、機体を走らせた。左右に大きく傾けながら海に落下していく飛行船を、を柔らかく受け止める。酷く危なっかしい動作だと自覚できた。飛行船の外装が少しばかりへこんだのが分かった。

 何事かが起きた――怪獣が現れた、のを悟って、センサーで広範囲を索敵する。

 上空を、黒い影が飛んでいた……。

「あれは?」

『MUTO……、ペルム紀の地球を牛耳った覇者、あれも、X星人に操られているようね』

 僕の質問に、エミーさんはすぐさま応えてくれた。どこで見ているのか無性に気になったが、今はそんな場合ではないと考え直す――ムートー、聞いたことがある。雌雄があって、雄は空を飛ぶ。つまり、あれは雄だということだ。他にも、電磁パルスを放つ習性があるという。飛行機が制御を失ったのは、そのせいだろう……。

 どうして、炎龍に電磁パルスが利かなかったのかは不思議だったけれど、僕は空を飛ぶ黒い飛行体をどうにかすることを優先した。四方の海原と、闇が遠近感を狂わせるが、炎龍のセンサーは、はっきりとムートーを捉えている。

 二本の高周波ブレードが唸った。飛行船を海の上に浮かべ、その上空を守るように、構えを取る。星々の下で、赤い機体が光を放ちながら――太陽のように、佇む。僕には、それが見えた。

 もちろん、本当に見える訳はないのだけれど、僕の第六感は、今、この場所をはっきりと俯瞰していた。炎龍の助けもあるのだろう。この暗闇の中、ムートーを超感覚的に追うことが出来ていた。

 背後から襲い掛かる敵を高周波ブレードで叩き返そうとする。その直前、ムートーは大きく舵を切って垂直に飛びあがった。巨大な金属の塊が空振りする。

 僕は、ただちにフォノンメーザーの狙いを付けた。中条青年が推してきたその兵器の威力如何なるや――そんなふうに思いながら、操縦桿の赤いボタンを押した。

 口を開ける感覚、そして、口から熱線が噴き出す感覚。炎龍と一体化した僕は、それを感じた。

 フォノンメーザーはムートーの翼を掠めた。おぞましい声と共に、均一な羽ばたきが乱れる気配。遥か遠くで赤い光が瞬いた。炎龍は突撃を開始しようとしたが、僕はそれを押しとどめた。ここは、飛行機を守らねばならない。

 僕は気付いた。AⅠの暴走だなんて、便利なものがあるけれどいつまでもこれに頼りっきりでは行けない。これから、敵と戦う中で本能に任せて攻撃する、では、守れないものもある。攻めるばかりが戦でない、ということだろう。

 敵を追いかけまわすだけでは、為せないこともある。

 だが、今はAⅠの暴走を極力抑えた戦いをするしかないだろう。

 僕が考えていると、耳に高い金属の反響音らしきものを捉える。慌てて左右に意識を張り巡らせると、右側から真紅の翼竜が音速を遥かに超えたスピードで襲い来るのに気付いた。

 身構えた時にはもう遅かった。腕が弾かれ、高周波ブレードの片方が海に埋没する。

 炎龍が怒りの声を上げた。僕もその怒りに同調しかけたが、すぐに首を振る――結果的に意識を振り払うことには成功したが、その仕草が要因であるかは分からない。

 真紅の翼竜は頭上に陣取り、大きく旋回した。ムートーも、息を合わせたように空中を闊歩する。発泡スチロールの擦れるような音、それでいて、動物の鳴き声のような音、そして、金属が細かく振動する特有の音が混ざって、聴覚がおかしくなり始めているような気がした。

 炎龍の聴覚が良すぎるのか、向こうの音がうるさいのかは分からないが、これでは、戦いようがない。ただでさえ、向こうは二匹で、こちらは一匹、数の利を取られているというのに。

「いや、違うな。僕たちは二人、向こうは二匹だ!」

 前向きに考えることにする。

 それに呼応するかのように、炎龍は大きく咆哮を上げた。

「嬉しいんだね? 分かるよ。僕もそうだから」

 四式機龍、そして、僕は敵を強く睨み付けた。

 歓喜に心臓を戦慄かせながら……。

 

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