説明するリリアは実に楽しそうだ。
「まじかよ……、今までの会話も態度も全部嘘だったってことだろ?」
「ん~?そんなことないよ、だって揚げパンは本当に食べたかったんだもん」
自分の言ったことにツボったのか、ケタケタと腹を抱えて笑っている。
俺は平静を装ってはいるが、実際は、もうどうにかなってしまいそうだ。
父が警察で、リリアが密猟監視官で、もう何がどうなのか理解できない。
「まいったな……、じゃあ、あのエルフ2匹は君の親じゃないってことか?」
「そうだよ~、あれはね、餌なんだよ、密猟者を釣るためのね。あの2匹はね、罪付きのエルフだったんだ。人間に反逆し、罪を犯したエルフ。罪付きのエルフは食用にはできない決まりだから、ああゆう風に有効活用するんだよ」
リリアの表情が少し曇った。同じエルフとしてあまり気分がいいものではないのだろう。
「なるほど、でもわざわざ演技してまで無知なエルフの少女をふるまい続けたのはなんでだ? 普通にその場で俺を殺すなり、捕まえるなりすればよかったんじゃ?」
「あのね?あんな深い森の奥から人間一人持ち帰るのはすごい大変なんだよ。それにレイ君がどこに肉を密売するのか知りたかったから、レイ君自身に歩いてもらったって訳」
驚いた、自分の足で自らを持ち運ばされていたのはリリアではなく俺だったとは。
「じゃあ昨日の夜、俺が偵察から帰ってきた時、宿にいなかったのは?」
「当然尾行していたからよ」
リリアは何の躊躇いもなく答える。
「エルフのくせに異様に足が速かったのは?」
「監視官だから」
「俺のベッドに潜り込んできたのは!」
半ばヤケクソだった。
「あはは、キャラ作りに決まってるじゃない、ドキドキした?」
「お前は最低だな」
「レイ君にだけは言われたくないです」
ぐぅ正論。
「あっ、お前、俺の涙返せよ。これでも俺は心苦しかったんだぞ!」
どうだ、少しは心にくるものがあるんじゃないのか?俺は、良心と常に戦っていたんだよ。
俺は悲しそうな顔を装いつつリリアのッ上に訴える。
「冗談よしてよ~。だってあれは、外でこっそりレイ君と私のやりとりを聞いていたロメリちゃんにアピールしてただけなんでしょ?」
……正解だ。何故なら俺はロメリのことが、その、……好きだからだ。
こんな腐れエルフなんかより100倍可愛い。動物的な可愛さで言ったらリリアも悪くはないと思うが、やはり人間が一番だ。
ちなみに、リリアが幼く振舞っていたのは、俺が騙しやすいように配慮してくれていたのだという。今世紀最大のありがた迷惑だ。
確かに幼気な口調に俺は完全に油断していた。全く何て老獪な女だ。
「じゃあね、レイ君。密猟なんてしようと思うからこうなるんだよ。今度から気をつけようね。って、今度なんてないのか、あははは」
リリアはひとしきり逆転した立場を楽しんでから去っていった