俺は思わず耳を疑った。人間じゃない? 俺が? 比喩か何かだろうか。もしくは、俺のしてきた行いが非人道的であるということを言いたいのか?
「どういうことだ? まさかそのままの意味だと言うんじゃないだろうな?」
俺は訝しみながら聞き返す。
「まさかだぜェ、レイ君。そのままの意味に決まってんだろォ」
むしろ、俺が何を言っているんだ、といった口調でアインは答える。
「あははは、そうか、俺は人間じゃないのかぁ、じゃあ俺は一体何だって言うんだ? エルフだとでも言うつもりか? 耳、伸びてねぇーぞー」
俺はアインを煽るように言う。アインは所詮養殖場で育ったエルフだ。どうやって言語を習得できたのかは知らないが、知能指数は人間の半分、いやそれ以下しかないのだろう。現にアインは目の前にいる俺が人間かそうでないかすらも判別できていない。
この程度ならば脱出も割と簡単にできるかも知れない。そう考えると、少しだけ楽観することがきる。俺は次第に心に落ち着きを取り戻していった。
「違えな、エルフでもねぇ。正解はハーフエルフだ。忌まわしき、人間とエルフの息子。禁断の愛ってヤツだなぁ、ガハハハァ」
アインはそう言って下卑た笑みを浮かべる。的外れなことを言っているとは分かっていても腹は立つ。エルフ如きが俺を笑うな!
「へぇ、じゃあ証拠はあんのかよ、証拠は! えぇ? オイ」
俺は高圧的にアインを睨む。下から見上げている形になるが、位置的に仕方がない。
「お前の話によるとよォ、ロメリはお前の村の戸籍が老人と五歳児しかいなかったと言っていたよなァ? あの五歳児はお前だ。お前はまだ五年ちょいしか生きていねぇんだよ」
何を言っているのか理解できない。俺が五歳? 俺は今年で二十一歳だぞ。もうアインの知能が過ぎて話にならないのか。俺は露骨に呆れた表情をする。アインが意に介する様子はない。
「なぁ、レイよォ、一年は何か月だ?」
今度はいきなりどうしたんだ、まあいい。呆れついでに答えてやろう。
「はぁ……全く、そんなことも知らないのか。人間と話がしたいなら、このくらい勉強してきてくれよ。あのな、一年は三か月でな、春の年、夏の年、秋の年、冬の年の四ヶ年があるんだ。それをな、四節周期というんだよ、分かったかなーアイン君」
俺は馬鹿にするような口調で言う。アインはそれを見てフッと笑う。それには明らかな侮蔑の色が混ざっていた。
「あのなァ、一年はな、十二か月あるんだよォ。春夏秋冬はセットでな、一年に全部含まれてんだなぁ、これが。四季って言ってな、てか、一年ごとに季節が変わる訳ねーだろォ。毎年変化してったら『年』でくくる意味ないだろーがよォ、馬鹿かおメェ」
そんな馬鹿な! 幼い頃にみんな習う常識のハズだ、それともエルフは『年』の概念が違うのだろうか? アインは続ける。
「お前の村の住人は優しい人ばっかりだったんだろうなァ、あくまで人間と同じように育てようとしてくれたんだからなァ!」