連れの彼女は高級食材   作:今井舞馬

22 / 27
真相 3 リリアの正体

 こんなみっともない俺をアインはどうせ笑って……パァン。叩かれた。

 アインは先程までの侮蔑的な表情から打って変わって、怒りと悲しみを孕んだ真剣な眼差しで俺のことを睨んだ。

「おい、レイ。それだけはマジで洒落になんねぇぞ。いくら現実から目を逸らそうと、それだけは俺が許さねぇ」 

 もう、ダァとか、よぉとかアインは言っていなかった。ただでさえ惨めな気分だったのに余計に情けない気分になる。

 叩かれた頬が熱を帯びてジンジンと痛んだ。

「なんだってんだよぅ。あ、あんだけおれのことばかにしてぇ、こんどはぼーりょくかよぉっ! ズズッ……死ねよぉぅ……ううぅ」

 俺は涙で歪む視界をぐりぐりと擦りながら、しねしねと連呼する、さながら幼児のように、喚き泣き散らす。

「なあ、レイ、お前、曲がりなりにも一緒に旅してきたんだろ? リリアに森で会って、カラトスの街に着くまで、片時も離れずに行動していたじゃないか。なら、何故お前は気付かない? リリアに会ってからリリアはお前のことを何と呼んでいた? 命果てようとするまさにその時、お前のことを何と呼だんだ! 答えろ、レイッッッ!!」

俺は何がどうだか分からないまま、リリアと会った日の記憶をもう一度呼び起こす。リリアが俺を何と呼んだ?

 

あのね、パパとママが見当たらないの、お兄ちゃん、知らない?

 

お、お兄ちゃんはデリカシーがないね。

 

お兄ちゃん、あったかい。

 

リリア、もう大丈夫だから、お兄ちゃんは、い……

 お兄ちゃん。お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん、あれぇ?

「リリアは、お前の妹だ」

 アインは、ただ、呟くようにそう言った。

「違う」

 まず俺の口をついて出てきたのはその言葉だった。

「違う、違う違う、違う違う違う違う違うッ! だって、あいつは密猟監視官で、俺を騙して貶めてそれで俺は処刑されそうになって、それなのにあいつが俺の妹な訳ねぇーだろっ!」

「密猟監視官は密猟者を逮捕したりなどしない。その場で殺すのが規則だ。だがお前は生きている。リリアがその気なら、お前は既に死んでいるんだよ。だがリリアはお前を殺さなかった。これがどういうことか分かるか?」

 アインは毅然と俺を見つめて言う。閉口した俺に、アインは続ける。

「いいか、真相はこうだ。お前がまだ幼い頃、リリアは義理の父親の手によって、密猟監視官に仕立て上げられた。それは義理の父親であり、レイの実父でもある彼が、リリアを人間に殺されたくないと望んだからだ」

 俺とリリアは、母が同じで父が違うらしい。母がエルフで、父が人間なのが俺。父がエルフなのがリリアなのだそうだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。