「マジで、言ってるの? じゃあ俺はずっとここで……」
俺は懇願するような眼差しでアインを見詰める。
「ロメリに……もう、会えないのォ?」
俺はアインにしがみ付こうとする。しかし無情にも繋がれた鉄の首輪によって引き戻されてしまう。
「あぁー、うん、しょうがねぇなぁ、じゃあ、10体、10体産まれるまでハーフエルフを作り続たら、ここから解放してやんよ!」
アインは指でグッドポーズを作る。笑顔が眩しい。
やった! 出られるの? ここから? 俺はにわかに高揚した。
そういうことなら仕方ない。さっさとハーフエルフを10体、横のエルフに作らせて、こっから俺はおさらばだ。
俺はアインに言われた通り、日課をこなすことにした。
◆
朝、与えられた餌を食べ、セックス。昼にまた餌、セックス。そして夜になるまで交尾を続け、ゆっくりと眠りに就く。
二日目も同じ、ご飯、セックス、ご飯、セックス、寝る。
三日目。ご飯、セックス、寝る。
その次の日もその次の日も、ご飯、セックス、寝る、ご飯、セックス、寝る。
三か月経った。一人目が生まれた。うれしいなぁ。
さて、もう一回だぁ……、おいしい、うん、あーきもちぃー、おやすみ。
おいしい……きもちぃーおやすみぃ。
えはぁ……あぱぁ……ん……ごごごぉ……。
えほ……おぽ……あ。
やばい、しこうがとまるるるる。りりあぁ……ろめりィ……。
あいたい……よぉぉぉ……。
牧歌的な村の、のどかな風景の中に、パァンパァンという交尾の音だけが、長く、虚しくこだましていた。
エピローグ
「ねえ、お兄ちゃん、ちゃんとハーフエルフの世話してよぉー」
森林北部のエルフ自治区、ビリニュクス山のほとりにある盆地のハーフエルフ生産工場(仮)に、活発なエルフの少年の声が響いた。
すると、遠くで薪を割っていたエルフの大男が手を振って少年の声に応じる。
「おうおう、坊主、様子はどうだー?」
重量感のある体躯でズンズンと歩み寄るこの男の名はアイン。ハーフエルフによる社会構築を目的とした組織、『理想郷』のリーダーだ。
ここ、フェノス村では、近年の大規模改革により、新たに二つ、ハーフエルフ生産工場が建築された。
理想に向けての道のりはすこぶる快調だ。
アインは、自分がまだ若かった頃出会ったハーフエルフの青年のことを思い出していた。
村を守らんと志し、だが、何もかも空回りして惨めな運命を辿った男。
だが、あの男に出会っていなければ、こんな道には進んでいなかっただろう。
醜く、汚く、でも懸命に生きたあの一匹のハーフエルフ。
アインは不意に胸をついた郷愁の念から逃れるかのように、雲ひとつ無い大空を仰いだ。
この先に待ち受けるだろうユートピアを目指して。俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ!
アインは理想の未来に向けて、強く気高く大地を蹴った。
村を一望できる見晴らしの良い丘に、ハーフエルフの墓地がある。
『レイ・フリークス 享年11歳』そう刻まれた墓石の下に、小さな花が植えられていた。
アインがレイの死を悼み、添えたものだ。
その花の横に、いつの間に咲いたものか、綺麗な白い花が鎮座していた。
まるで寄り添う兄妹のように、一緒に風に身を任せながら、かすかに淡く、揺らめいていた。
END
最後までお読みくだっさった皆さん、本当にありがとうございました。感想、評価お待ちしております。
いつになるかはわかりませんが、続編も書いていく予定なので、その時はまたよろしくお願いします。 では。