拘束
「動くな!」
鉄扉の外には3人の警官がいた。真ん中の偉そうな奴が書状を突き出し、両側の二人が俺に向けて銃を構えている。
真ん中の奴、どこかで……。
「警察が俺に何か用でも?」
俺は冷や汗をかきながら、何とか笑顔を向ける。
「監視官から報告があった。エルフの密猟、及び密売の罪でお前を法的に拘束する」
ベレー帽と灰色のコートがよく似合う真ん中は、これまた偉そうに、サイドの二人に向けてあごで示す。
サイドの二人は手際よく俺の腕を後ろに回すと、縄できつく縛った。
「ちょっと待って、どこにそんな証拠が!」
俺は焦っていた。もし本当にバレたのだとすれば死刑は免れない。村に養殖場を作ることなんて不可能になる。
村に残されているのは、コツコツ節約し、保存していたエルフの干し肉、約一か月分。それが尽きれば全員死亡た。
「証拠か?ほれ」
真ん中のお偉いさんが指パッチンをすると、養殖場の裏から2人の憲兵が現れた。俺のリュックを持っている。くそ! 宿に置いてきたのがいけなかったか。
「リュックの中にはエルフの血痕があった。そしてお前がこのリュックを背負っているのを街人たちは目撃している」
何故そんなに捜査が早いんだ?俺はこの街に昨日の夜着いたばかりだぞ!
「やめろ! 来るな! ドントタッチミー!」
俺の叫びもむなしく、俺は引きずられるようにして監獄へと連れていかれる。
!! そして俺は気付いた。気付いてしまった。あの、やけに見覚えのある偉そうなおっさんの正体に。
「……父さん? 父さん! 父さんだろ!? ねぇ! こっち向いてよ! なんでこんな所にいるんだ?」
そう、あれは俺の父親だ。あの深淵を見据えるような眼、ごつごつした拳、独特なリズムの息遣い。全部、思い出した。いくつもの感情が同時に込み上がってくるのを感じる。飽和した胸中を抑え、俺は叫ぶ。
「なんで俺を捕まえるんだ!? 俺はあんたの息子じゃないかッ、なぁ、聞きたいことが山ほどあるんだ! 言いたいことが山ほどあるんだ、こたえてくれよぉっ! なんで、なんで、なんで、なんでッ! 村を捨てて出て行っちゃっただよぉぉっ!」
父親と呼ばれたその男は、部下に任せ、去ろうとしていた足を止める。
ゆっくりと振り返り、哀愁漂う目でこちらを眺めるとポツリと一言だけ、呟く。
「お前を作ったのは……間違いだった……」
「え? ……あ、がぁ……」
それはたった一言。たった一言で父に存在を否定された無残な息子の言葉だった。ただ、それだけしか感情を音声に変換できなかったのだ。そして俺は、抵抗をあきらめた。