連れの彼女は高級食材   作:今井舞馬

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監視官

 ガチャン、という無機質な音が、薄暗い監獄に響き渡った。

牢の中には、小汚い便器と固い寝台が備え付けられているだけだ。地下牢だからなのか、ピチョンピチョンと上から水滴が垂れている。

俺はその水滴の落下を無気力に眺めながら、小さくため息をついた。

看守は俺に、辞世の句でも考えな、とか言ってどっかに言ってしまった。

口うるさい看守が消えたので今は静かだ。

地下牢を控えめに照らすローソクの灯はよわよわしくゆらめいている。とろとろと蝋が溶け、短くなっていく様は、俺の余生の短さを暗示しているかのようだった。

 

しかし、何故俺はあんなにも簡単に密猟がばれてしまったのだろうか。

俺が密猟を行っていたのは警察の組織とはかけ離れた森の中だ。密漁監視官には十分に警戒を払っていた。

しかし警察は俺の密猟を暴き、俺が通ったルートも、行く先の街がどこなのかも、更には泊まった宿がどこなのかすらも特定してみせた。こんなの警察のなせる業ではない。

そう、こんなことは不可能なのだ。常に、俺の行動、一挙一動を逐一把握していない限り。ハハ、馬鹿な話だ。

……ん? 監視……。

!いや待てよ、俺がもし常に監視されていたとすれば?

密猟の現場から、エルフの密売を行うに至るまで、常に監視を行っていた存在がいたとしたら?そんなことが出来るのは……。いや、まさかそんな筈は……。

「看守さん、お疲れさま~」

ふいに、上で聞き覚えのある声が聞こえた。カツカツと地下に向けて階段を下る足音

が鳴る。

その人物は機嫌よさげに鼻歌を歌いながら近づいてくる。

そして俺の牢の前で立ち止まるとにっこりと笑った。

豊かな銀髪を腰まで垂らし、白のローブで身を包んだその女の名は―――。

「リリア……ウソ……だろ?」

 俺は反射的にその名を口に出した。どくどくと鼓動が早くなるのを感じる。

「ちょっとぶりだねレイくん」

リリアは中腰になって、垂れた髪の毛を耳にかけ、鉄格子越しに俺に視線を合わせて来た。

 口調が今までと全然違う。

「お前……さっきまでロメリの養殖場にいただろ、どうしてこんな所にいるんだ?」

 まだ頭の整理がつかない。だが目の前にいるのはまごうことなきリリアだ。やはり俺の仮説は正しかったのだろうか。

「えへへへ、なんでだと思う?」

 リリアはいたずらな笑みを浮かべる。その笑みは今まで俺に見せたものと何ら変わらず、俺は逆にそれが怖かった。

「俺のピンチを悟って駆け付けてくれたんだよな?」

 我ながら何て白々しいのだろう。先ほどまであれだけリリアを罵倒しておいて。

「あはは。面白いねレイ君は。そんな訳ないよ。君の醜態を笑いに来たんだからさ」

 わかってはいても、リリアにそんな訳ないとか言われるとは。結構ショックだ。だってあのリリアだぜ?

「じゃあやっぱりお前が……」

「そうだよ、私が密猟監視官。まあ、まさかエルフがそうだとは思わないよね」

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