この素晴らしい世界に妖精が! 作:妖精さん
意識を失った私は、気が付いたら豪華な椅子に座っていた。
綺麗な銀髪と美貌を持つ女性が話しかけてきた。
落ち着きもあり上品、最初に会った天照様のように豆腐メンタルで精神薬と栄養剤片手に頑張る日本のサラリーマンの様な日々に疲れたかわいそうな女神ではなかった。
この女神さまなら一目で女神さまとわかる。そう思わせる程の神聖さと慈悲のオーラをまとっている。絵に書いたようなオーソドックスな女神さまがいた。
「私はこの世界の女神エリス。通常なら、ようこそ死後の世界へと言うところなのですが・・・。あなたは以前の特典で不死の特典を手に入れているようですね。おそらく今のあなたは仮死状態なのでしょうね。」
「ならなんで、ここに来てしまったんですか?」
私は目の前の女神さまに疑問をぶつけてみる。
「それは、あなたの前世が人間でしたので、あなたの人間としての精神が死を認識してこちらに引っ張られてしまったのでしょう。じきに妖精の精神が現世にあなたを戻すと思いますよ。」
「人間の精神と妖精の精神?私は私だよ?」
「これは何と説明したらよいのか?精神は肉体に引っ張られるものなのです。ですから、貴方の人間としての精神は、妖精の体になじむために妖精としての精神を作り出し混ざりあって調整しようとするのです。あなたの前世は男性でしたが、今の思考は女の子の物になってたりしませんか?他にも子供じみたことをすることに抵抗がなくなったなんてことはありませんか?」
言われてみればそんな気が・・・
「はい、そんな気がします。あの、私はここで何をしていればいいのですか?」
いつの間にかすぐ横に白いテーブルとティーセットが置かれエリス様はやさしく笑みを浮かべて紅茶を入れてくれた。
「時間が経てば、自然と元の体にもどりますから、しばらくわたしとお話でもしていってください。」
私はエリス様が促す通りエリス様の座る対面の席に腰掛ける。
妖精の体ゆえに椅子に座るときはエリス様に持ち上げてもらった。当たり前だが足も地面には届かなかった。
そんな私を見てエリス様は「くすくす」と笑っていた。馬鹿にするような嘲笑の類ではないから悪い気はしないが、やっぱり恥ずかしい。顔がだんだん熱くなってくる。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいですよ。ここには私とあなたしかいないのですから」
妖精の村でも皆によくしてくもらったが、エリス様のやさしさもその神々しさと相まってか、すごく身に染みる。なんというか、このまま成仏してしまいそうだ・・・
あ、そういえば、私がここに来てから他のみんなはどうなってしまったのだろうか。
「あの、エリス様・・・みんなは、あの後、みんなはどうなってしまったんですか?ルナは?サニーは?スターは?それにリリーさんたちやパニラちゃんにシャロンちゃん、あとマロンちゃん達も!?」
口に出したらなんだか余計に気になって、心配になって・・・思い出してみたら私の死に方ってかなり残酷な死に方だった気が・・・あんな死に方はして欲しくない!!
「やっぱり、今すぐ生き返らせて!!ちがう、そうじゃない!!私の命も特典もエリス様に返すから!!今すぐみんなを助けて!!」
村の事を考えたら居ても立ってもいられなくなってきた。涙も止まらない、自分の命と引き換えなんて言ってしまって「はいわかりました」なんて言われたらと思って急に怖くなる。でも、ルナやサニーやスター達を助けたいと思っているのもホントだ。
そう思ったら椅子の上に立ち上がりテーブルで体を支えながらエリス様の方に身を乗り出していた。
するとエリス様が私の髪をなでながら穏やかな声で教えてくれた。
「今あなたが名前を呼んだ方々は皆さん無事です。怪我をしている方もいますが軽症ですよ。村を襲った野菜ですがあの後すぐに旅の冒険者が来て討伐されましたから安心してください。」
「そうですか、よかったです。・・・あの、大声出してごめんささい。」
「大丈夫ですよ、気にしてませんから。そういう素直なところはいいと思いますよ。」
そう言って、中身が減ってきた私の紅茶にお代わりを継ぎ足してくれた。
ティーポットを置いたエリス様はおもむろに手をポンと叩き私に話しかけてきた。
「えーと、そういえば、あなた、コニファーさんの前世は確か天照様の日本から来たんですよね?その体も特典も天照様が用意したものですよね?もしよろしければ、私に見せていただけますか?あの原点地球世界の日本の神様が御創りになったものなんて、なかなか見られませんから。」
私の体が見たい・・・なんかすごいことを言われた。でも、エリス様はきっとやさしいかただしひどいことはしないよね。
そう思って、私は洋服のボタンを外しはじめた。
「え、ちょっと?コニファーさん!?なにを・・・!?あ、ち、違うんです。私はただあなたのステータスを確認したくって!!服は脱がないで!!。」
誤解に気が付いた私は慌ててボタンを留めなおした。
お互いに顔が赤くなってしまっている。はずかしい
「あの、お菓子もらいますね。」
「どうぞ」
私はテーブルの上に用意されていたクッキーを手に取り下を向いて食べ始めた。
「あの、じゃあステータスを見せてもらいますね。ただ座っていてくれればいいので・・・」
「はい」
私は下向いたまま、エリス様にこたえた。
下を向いたまま聞き耳を立てていると
「この世界には不死って転生特典としては持ち込めないはずなんだけど・・・。なるほど、細部設定で寿命や病気は差し引いてスキルのポイントを削ってる。こんなやり方があるのね。
それにいくつかバッドスキルを副作用として付けることでも下げてるのね。あら、チャームのスキルが付与されてるわ。どうやって組み入れたのかしら、すごい・・・複雑。流石日本の神様ね芸が細かい。うわ・・・このバッドステータスは・・・えぐいわ。だから、これだけの付与効果があったのね。」
エリス様が私のステータスを興味深く観察しているうちに元雄の世界に戻る時間が来たようだ徐々に眠くなってくる。
「あなたのステータスを見せてくれたお礼にいいものを授けましょう。さすがに二人の女神から特典を差し上げるわけにはいきませんから、この私の加護を込めたこのロザリオを差し上げましょう。大切にしてくださいよ。」
エリス様はやさしい笑みを見せてから私の瞼をそっと閉じた。
私はそのまま眠りに落ちた。
ガタゴトガタゴト
私が目が覚めた時、私は幌馬車の上にいた。
荷台の上に直接寝ていたこともあって全身が痛い。
少し揺れるがなんとか立ち上がり、幌の隙間から外を見る村はすでに見えなかった。
周辺はただ広いだけの草原。離れたところに森が見えるが見覚えは全くない。
といっても昨日今日でこの世界に来たのだから土地勘もくそもないが・・・
「あら、コニファー起きたの?あなた、自己回復のスキルを持ってたのね。私は途中からだったけど、あなた、スライムみたいにそれはもう破れたお腹が再生してってびっくりしたわよ。それと、明日ルナにお礼を言っておきなさい。もう遅いし、貴方のけがもまだ治りきってないんだから今日は寝なさい。」
スターはそう言って毛布に身をくるんで再び眠りについた。
ルナもサニーも馬車の壁に寄り添って眠っていた。その周りには他の妖精達が同様に眠っている。
周りを見回すと向かいに人間の美少女二人に挟まれた金髪イケメンがいた。
御者台にはツヴァイが座っている。
後方の荷台には鍋を兜代わりに被った妖精の兵士がしゃがみ込んだまま眠っている。
今度は幌馬車から顔を出し周りを見回すと騎乗した人間の冒険者数人と他の幌馬車が3台ほど並走してキャラバンを形成していた。
詳しいことは明日聞くとして、もう寝よう。