この素晴らしい世界に妖精が! 作:妖精さん
ジャイアント・トード討伐クエストを達成してから数日私たちは採集クエストをしながら過ごした。またジャイアント・トード討伐のクエストをしたかったけど人気クエストで取れなかった。
それより上の稼ぎの大きいクエストは難易度的にもさすがに私達だけでは不安が残る。
リリー姉妹もアクセルより儲けのあるクエストを求めて他の街に行ってしまった。
クリスさんも他のパーティとダンジョンに潜ってから戻ってきたという話を聞かない。
ダストさん達もゴブリンの巣の討伐に出かけてしばらくは戻らないという話だ。
だから、しばらくは採集クエストばかりやっていた。
そんなある日のことだ。
倉庫に仮設した村長室にわたし達は呼び出された。
そこで待っていたのはスターとシャロン、それに農業組のリーダーマロンちゃんだ。
普段は大人しいマロンちゃんがギルド依頼書をもって興奮気味に話し始める。
「見て!この冬牛夏草の依頼書!!」
『冬牛夏草討伐のもしくは農場の開放依頼。
30匹ほどの冬牛夏草が牧場の牛、馬、山羊、豚に寄生し牧場を占拠しています。
期間は2週間。成功報酬は30000エリス~』
「この説明書きの下だよ!!見て下の方!!」
マロンが指差した個所に注目する。
『なお、冬牛夏草討伐後はこの農場は売地となりますので極力農場施設は破壊しないように願います』
「それじゃない!その下!」
『30匹分の討伐報酬と引き換えに農場を買い取ることも可能。』
「そう!冬牛夏草を追い払えば農場が手に入るんだよ!!」
「正確には30匹すべてを討伐しての報酬分と交換です。」
マロンの言葉をシャロンが訂正する。
「だけど、私達には厳しすぎるわ。冬牛夏草はレベルが10以上ないと難しいって他の冒険者が言ってたわ。」
ルナが不安そうに答える。それに対しサニーは
「大丈夫!わたし達ももうレベル7だしなんとかなるよ!」
確かに危険はありそうだけど、多対一にならなければ大丈夫そうな気がするよ。
「まあ、待って、別にあなた達だけで行ってきてほしいとは言ってないわ。」
スターがそう言って討伐を受ける方向に話が傾いていた私たちに横槍を入れる
「さすがに貴方たちだけじゃ大変でしょ?でも、他の冒険者と共同だと農場が手に入らないかも?だから、妖精のみんなと一緒に討伐に行ってきて?」
スターの言葉を聞いたルナが不安そうに口を開く
「でも、そんなことしてもいいのかしら?」
「大丈夫よ、私たちは農場の購入予定者としてついて行くだけですもの。それがたまたま、冒険者とモンスターの戦闘に巻き込まれて自衛のために戦闘したことにすればいいだけだし。」
「それじゃあ、まるっきし嘘じゃない?それに冒険者でもないのにそんな前に出て戦うなんて!」
これにはサニーも反対する。
「スター・・・モンスターと戦うのは危ないんだよ?」
わたしやサニーの言葉を聞いたスターはさらにこう言い返す
「あら、隊商の護衛クエストやウルフ系モンスターからの農場の防衛クエストとかで商人の護衛や農夫が直接戦闘に加わることは珍しくはないと思うわよ?」
「でも・・・」
ルナが言いよどむ。わたしもサニーも賛成はできない。
だけど、マロンが大きな声で言う
「もう、いやなの!倉庫の裏の花壇で小さな菜園じゃあ!ちゃんとした畑を作りたいの!!それに、村から連れてきた安楽少女達もいつまでも花壇に入れておくわけにもいかないわ!ちゃんと村の時みたいに厩舎に入れてあげたいのよ!お願いよ!」
マロンちゃんは本当に土いじりが好きな子だから、農場が手に入るチャンスに居ても立っても居られないのだろう・・・それはわかるけど・・・
「みなさんはお忘れかもしれませんが、妖精の村の妖精達は一応自警団程度ではありましたが賦役を皆経験しているのですよ。少しくらいなら皆戦えますよ。もちろん私もそのつもりです。それに、わたしは宿屋時代に冒険者の人から戦い方の手ほどきを受けたこともありますので並の子達より強いはずですよ。」
シャロンがそう言ってクエストを引き受けたいと訴える。
さらにスターも
「正直、妖精の村でも野菜は結構出来が良かったから儲けが大きかったのよ。今は蓄えもだいぶ減ってきてるし、ちょっとお財布事情がだんだんつらくなってきてるの・・・あなたたちの稼ぎも結構あるけど・・・それだけじゃ、村の復興もめどが立たないし・・・この際、その農場を買い取って新しい村を作り始めるのもありかなって思ったのよ。」
などと言い始めた。
そこまで言われちゃ、断れないよね。
だから、わたし達は冬牛夏草討伐のクエストを受けることにした。
次の日、私たちは冬牛夏草討伐クエストを受けるためにギルドの受付に依頼書をもっていくと、受付のお姉さんに
「今回は受理しますけど、次からはこういうことはしないでくださいね。」
と怒られてしまった。バレない様にこっそりと集まるはずだったんだけど、なんでバレたのかな?
わたしたちは受付のお姉さんに謝ってから皆が待っている門のところに向かった。
するとそこにはこの街にいる妖精全員が鍋の兜となめし皮の鎧をつけて槍や剣を持って、6台ほどの荷馬車に乗って待っていたのだ。
さらに、別の荷馬車にはアイン達が倉庫から連れてきた安楽少女達を乗せているところだった。
「あら、みんな遅かったわね?」
そう言って馬車の荷台からスターが顔をのぞかせていた。
あ、こりゃバレるな。
「村長代行、門の通過許可が取れました。」
シャロンがスターに伝えるとスターは立ち上がって
「よし!みんな!!冬牛夏草討伐に出陣よ!!」
と叫び、他の妖精達も
「「「「「おおおおおおお!!!!」」」」」
こぶしを振り上げた。
スターもみんなも全然隠す気なんてなかったよ・・・