この素晴らしい世界に妖精が! 作:妖精さん
農場が見えるところについた私たちは、スターの指示で農場を囲い込むように柵を作ることになった。
「みんなー。農場の周りを柵で囲むのよ!」
「もともと区画分けのための柵があるから、それの修繕と通路とかになってるところを柵で塞いでね。出入口は1つあれば十分だから。」
スターの言葉にかぶせる形でマロンちゃんが補足する。
農場自体かなり広く、放牧用地だけでなく、何かの農園もやっていたようで土を耕した形跡がある。
井戸やその他小屋など壊れている施設も少ない、モンスターが住み着いているなんて嘘の様だ。
トンテンカンとカナヅチで材木をたたく音が聞こえる。これからモンスターを討伐するとは思えないのどかな雰囲気になってしまっている。
他の妖精達が柵を作っている一方でルナとサニーとわたしの3人は厩舎の方にたむろしている冬牛夏草たちの監視だ。
もともと、広い範囲を移動するモンスターじゃないけど、万が一にも作業中のみんなのところに行ってしまったら大変だ。
冬牛夏草はグロテスクな猿のような見た目で時々「ゲタゲタ」と鳴いている。
農場のすべての家畜に寄生しているようだ。
牛に馬、山羊に豚、そして鶏。・・・・鶏!?
山羊や豚だって冬牛夏草の大きさ的にギリギリなのに鶏って宿主より寄生体が大きいから倒れたまま動かない、時々「ゲタゲタ」言っているから生きてはいるのだろう。
馬鹿だ、モンスターにもああいった馬鹿な個体がいるようだ。
「くすくす、あいつなんで鶏なんかに寄生したんだろうね。」
「冬牛夏草って本能に忠実なのね。あんまり頭の良いモンスターじゃないわね。だから、初心者枠なのよ。」
なるほど、それもそうか。
でも寄生モンスターなら倒した瞬間にわたしを寄生しようと襲ってこないかな・・・
あんなのに寄生されたらと思うと少し震えて来る。
「心配しなくて大丈夫よ。あなたのことは私とサニーで守るわ。だからあなたも私やサニーが危なくなったらたすけてね。」
そう言ってルナがわたしを抱きしめてくれた。
ルナの体温が私に伝わってくる。この暖かさをわたしも守りたい・・・
「ふたりともイチャイチャするなら後でやりなよ。討伐し終えたらそこの小屋とか空いてるんだし・・・」
サニーの言葉にわたしとルナは恥ずかしくて顔を赤くして頭を伏せる。
「もう、二人とも仲がいいんだから」
わたし達が偵察を追えて農場の柵のあたりまで戻ると柵の修繕を終えた他の妖精達がお昼ご飯の簡単なスープを作り終えていた。
わたし達もそれをもらってから腰掛けられそうな石を見つけてそこに座る。
わたし達が食事をしていると農業組のアインが寄ってきて頭を下げて来る。
「今回は無理言ったのを引き受けてくれてありがとう。マロンも他のみんなもやっぱり農業の仕事が好きだから、あの依頼書を見てついわがままを言っちゃって・・・もちろん私もなんだけど。なんかちゃんとお礼を言いたくて・・・今度ちゃんとお礼するから・・・これ、倉庫の裏の花壇で採れたイチゴだよ。みんなで食べてね。」
ちいさな籠にいっぱいのイチゴを私たちにくれた。
わたし達がそのイチゴを食べ終わったころ。
他の妖精達も準備を終えていた。
スターが荷車に積まれている木箱によじ登り魔力で動く拡声器を片手に
「みんなで牧場を取り囲むのよ!少しづつ包囲を狭めて冬牛夏草を追い詰めるのよ!」
ついに妖精たちの集団戦がはじまった。
妖精達が各々武器をもって牧場を包囲したままじりじりと包むこむように包囲を狭めていく。
わたし達は少し突出した位置で攻撃してくる多少凶暴な冬牛夏草たちを受け持つことに。
「ゲタゲタゲタゲタ!!ブモォオオオオ!!」
大柄な牛に寄生した冬牛夏草達がこちらに突撃してくる。
「うわああ!?来た?!」「ひぃいいい!?」
妖精達が浮足立つ。
「「ファイアーボール!!」」
わたしとルナの魔法を受けて牛に寄生した冬牛夏草が前のめりに崩れてしまった。
勢いよく転倒したためか牛の足が完全にボキリといってしまっているのに無理やり立ち上がろうと四苦八苦している。
「はぁ!」
わたしはそんな冬牛夏草にスモールソードを脳天に突き刺した。
「ゲタゲタ」鳴いていた冬牛夏草の生皮を剥いだ猿みたいな見た目の寄生体部分がくぐもった声で鳴き、ビタビタと嫌な音を立てて死んだ。生理的な嫌悪感をもたらす嫌なモンスターだ・・・早く終わらせたい。
サニーの方を見ると、サニーは爆砕斧で冬牛夏草の寄生体頭部を破壊しているところだった。
さらに2匹、後方からわたし目がけて突進してくる牛に寄生した冬牛夏草。
うち1匹を旋風剣で足止めし、もう一匹をすれ違いざまにスモールソードで横薙ぎにすると、うまく冬牛夏草を真っ二つにできた。だいぶ、わたしも冒険者らしくなってきたような気がするよ。
そして、残る1匹はルナがファイアーボールで寄生体を焼き払ったところだった。
「いくよ!」
牛に寄生した冬牛夏草を正面からバトルアクスでカチ割ったサニーの掛け声で私たちは一斉に厩舎前にいた馬や山羊に寄生した冬牛夏草に切り込んだ。
動きが遅い豚に寄生した冬牛夏草達は厩舎の多くへ逃げようとしているがその多くに逃げ道はないので後回しだ。
「こっちだ!」「くらえ!!」「えい!やあ!」「来た!?構えなきゃ!」
「ゲタゲタ」「ゲタゲタ」「ゲタゲタ」「ゲタゲタ」
あちらこちらで乱戦になってきている。
難易度高い牛に寄生した冬牛夏草は倒したので、残るのはさほど強くない宿主の冬牛夏草だけだ。
その中でも不安が残る馬に寄生した冬牛夏草は私たちが相手にしている。
馬に寄生した冬牛夏草、私たちを踏みつぶそうとするが飛べる私たちにはまず当たらない。
このころには戦いに慣れてきたので瞬影刃で馬の胴体ごと叩き切ってみたり、サニーのを真似て正面から脳天に切りつけてみたりと倒し方を試したりもした。
「我が剣さばきを見よ!なんてね!・・・どうかな?ルナ?」
「コニファー、凛としててかっこいいと思うわよ」
こんなことを言い合う余裕も出てきた。
「二人とも!見て!回転切り!」
サニーがそう言うといつの間にか厩舎の屋根くらいまで飛んでいたサニーが回転しながら馬に寄生した冬牛夏草を馬の体ごと縦に真っ二つに切り裂いた。
馬に寄生した冬牛夏草を全滅させた頃には山羊に寄生した冬牛夏草も他の妖精達があらかた倒してしまっていて、厩舎に逃げ込んだ豚に寄生した冬牛夏草を虐殺している最中だった。
わたし達は殺し切れていない冬牛夏草を見つけてとどめを刺して回った。ちなみに鶏に寄生していた冬牛夏草は冬牛夏草の部分がずりずりと動いていたがほとんど動くこともできなかったのでみんな無視してきたようなので私たちでブスリと殺しておいた。
途中から余裕が出てきたこともあり結構楽しいと思ってしまったのは事実だが、厩舎の豚に寄生した冬牛夏草を虐殺しているアインら他の妖精達を見て
「きゃはは!死ね!」「くたばれ!寄生虫が!」「おまえらに生きる価値なんてないんだよ!あきゃきゃ!」
等と叫びながら虐殺してるのを見ていると、戦闘でハイになるってのは良くないことなんだねと思った。
「敵将の首獲ったり―――!!」「「「「「「おおおおおおお!!!!」」」」」」
サニーが誇らしげに牛の首を掲げ、他の妖精達が勝ち鬨をあげていた。
なんだかすごく蛮族っぽい。
エリス様に会いたくなった。