この素晴らしい世界に妖精が! 作:妖精さん
わーい、今日も溺れかけてるモンスターの脳天に刃物を差し込むだけの簡単な作業を継続中だ。わたしたちは、あの後も主にウルフやヤクトウルフを中心にあの嵌め技を使い続け、稀にオーガのような上位種が掛かり、かれこれ10レベルを超えた。サニーが13レベル、ルナが12レベル、わたしが12レベルとなって、わたしたちもついに中堅冒険者の仲間入りだ。まだ有名ではないがウルフスレイヤーなんて異名も囁やかれているようだ。
今ではウルフ狩りに他の妖精達も同行するようになった。
最初は皮剥ぎ係として同行していたが、わたしたちがあまりにも簡単に仕留めるものだから自分達もと言った感じで妖精達の間ではちょっとした冒険者ブームだった。と言っても、つい最近まで市井の妖精として生きてきた者達に冒険者の適性があるものなどそう多くなく大半は最弱職の冒険者しか適性を持たないものばかりで、ブームはすぐに下火になったが、一部の妖精は適性があったようで、アーマーナイト(重騎士)、ランサー(槍術士)・ウィザードの適性を持つも者が数人いた様だ。
そんな日々を過ごしていると、ある日、スターに呼びだされる。
木製の少しばかりいい材木を使っているであろう机を境にスターが木製の椅子に座って、その横にシャロンが控えていた。
「ルナ、サニー、コニファー。あなたたちも私が村の復興のための資金集めとして商会を運営してるのは、みんな知ってるわね。」
わたしたちはスターがあまりにも真剣な表情で話しかけて来るので、わたしたちも普段のような妖精的なお気楽な空気を排して、静かに頷いた。
「わたしたちユグドラシル商会は香辛料、木材、食料、武具に装飾品に贅沢品、かなり手広く商売しているわ。あなたたちも薄々、勘付いていただろうけど、わたしたちの商会は少しばかり人には言えないような商法や商売もしているわ。」
スターの顔が悪女顔になってるよ・・・
「だからって、なんで私たちにそれを話すの?正直わたしたちには関わり合いのない話よ」
最近になってわたしたちのパーティのリーダー的な存在となりつつあるルナが心底嫌そうに尋ねる。
「それは、この商売の原案はコニファー・・・あなたの考えだからよ。」
それを聞いたルナとサニーがわたしの方を見て来る。心なしか視線が厳しい。
わ、わたし知らない!?なに!?その話!?
「ぁ・・・・あぅ・・・し、しらない・・・わたし、知らないよ・・・」
わたしの動揺を推し量ってか、スターが仲裁に入る。
「まあ、待まちなさいな。コニファーが覚えてないのは当然よ。この話は酒の席でこの子が話してたことだもの。最近はみんな忘れてるみたいだけど、前世が人間だってこと。」
二人はハッとした表情になる。スターは「やっぱりね」と言った顔で続ける
「あなたたち忘れてたわね。確かにコニファーはちょっと抜けてるところがあるから忘れがちになる気持ちはわからなくはないけどね。っと、それは置いといて・・・。この子ってたまに突拍子もない事を考え付いたりして、すごい発想力豊かでしょう?結構色んなことを考え付くのよ。」
「だからって、わたしたちを巻き込む理由にはならないはずよ。」
「そうよ!」
ルナとサニーはわたしを庇う様に間に立ち警戒感をあらわにする。
「たしかに、巻き込まないでほしいという気持ちもわかる。でもね、わたしには村の再建と言う重要な役目があるの。こういった方法を考え付いたコニファーはもちろん。そして、冒険者としての名声を上げているあなた達3人には反対して欲しくないの。」
「だからって、そんなことに巻き込んでほしくないわ。」
そう言ってわたしたちを説得しようとするスターとそれに反対するルナ。
「ルナ、あなたも分かってるでしょう。村のあったころは妖精も今よりたくさんいたから組織としてこの国を振り向かせる事が出来た。でも、今は村の住人の半数以上がいなくなって組織どころか種族としても滅びが見えてきたわ。世界の趨勢は魔王軍に有利、力もないし特別頭が切れる訳でもない、種族として幻惑魔法が使えると言っても魔力があるわけでもない。せいぜい、野菜作りがうまいだけ・・・。国はわたしたちに価値を見出していない、だから援助も望めない。だったら、復興資金は自分でどうにかするしかないわ。」
わたしたちはスターの言葉にどう答えるべきか。わからなかった。
「そして、リリー姉妹についで冒険者として名声を手に入れたあなたたち・・・。他の妖精からの憧憬の的なのよ。そんなあなたたちに、万が一にでもわたしのやり方について表立って反対されたら困るのよ。だから、わたしに協力してちょうだい。」
わたしたちはひとしきり悩んだ後。
→スターに協力することを決めた。
スターの話を断った。
「ようやっと、話を進められるわ。と言うわけであなたたちには、積み荷の護衛をお願いしたいの。思いのほか商売がうまく行き過ぎたから、人が足りなくてね。」
「で、積み荷はなに?」
サニーの質問にスターがちいさめの革袋を取り出し紐をほどく。
その中には白い粉が入っていた。
「これは、わたしたちの羽からとれる妖精の粉よ。この粉は直接摂取することで楽しい幻覚と多幸感が得られる癒しのお薬よ。」
スターの言葉を聞いたわたしは思わず。声を出す
「でも、それって麻薬なんじゃ・・・、体にもよくないよ。」
スターは心底驚いたという表情でこちらを見て来る。ルナやサニーも妖精の粉に対しては思うところがないようで、わたしに対して不思議そうにしている。
「コニファー、あなたまで王都の石頭と同じようなことを言うの?妖精の粉は健康を損なうものじゃないのよ?」
スターはシャロンに出された紅茶を一口飲んで続ける。
「夜のギルド酒場や他の大衆食堂を思い出してみなさい。酔っ払いが奇声を上げ、所構わず嘔吐し、そこら中に寝転がり、通行人を妨げ、嫌がるウェイトレスに絡み、果ては喧嘩になり、警察の御厄介になる、あの惨状を」
前者二つにおいては私が知っている青髪のプリーストアクアさんで脳内再生された。他の内容もおおむね見たことがある光景だ。
「酒の飲みすぎで健康を損ない、煙草の吸いすぎが喉を荒らす程度には妖精の粉も体に悪いだろうね。でもね、それは限度を変えた量を扱うからなのよ?彼ら全員が健康を損なっているの?このアクセルでも自制心のない馬鹿が酒や煙草に溺れ、健康を損なうことはあるわ。でも、大多数は程ほどに嗜み、快活な生活を送っているでしょう。妖精の粉を嗜むそのほとんどが、適度に楽しみ、健康を損ねてはいないのよ。勿論、何処の世界にもやりすぎるお馬鹿さんはいるわ。でも、それは王都でもアルカンレティアでもドリスでもここアクセルでも変わらないわ。でも、それは個人の資質の問題であって、妖精の粉だけの問題ではないはずよ?」
スターが席を立ちわたしの瞳をのぞき込んでくる。
「妖精の粉はそうかもしれないけど・・・でも麻薬は体に良くないよ。他の麻薬もあるんだし・・・」
わたしはスターにそう反論する。スターは予測していたようでこう切り返す。
「でも、他の粗悪な麻薬は市場に流通している。どうして我々が売ってはいけないのかしら?しかもよ、ケーシィの実やターマの葉で作られるような他の麻薬は妖精の粉に比べて粗悪な上に高いのよ!品質が良く、あれらより安い妖精の粉は、彼らにとって無くてはならない物なのよ!今では王都の貴族様にから採石場や伐採場の様な重労働者の日々のささやかな楽しみとして人々の生活には欠かせない友なのよ!」
スターの話を聞いているといちいちもっともな内容だ。
「コニファー、あなたは麻薬が体に悪いと言うわ。でもね、それは妖精の粉以外の粗悪品のことであって、妖精の粉のことではないわ。わたしたちの妖精の粉は致死性なんて全くないし、依存性だって酒や煙草と同程度。そんなみんなにやさしい心のお薬を否定するの?」
たしかに、副作用がないわけだし・・・忘れかけてたけどここは異世界、地球の倫理を持ってくることの方が間違ってたんだ。
「そうだね・・・わたし、まちがってたよ・・・」
スターがパッ明るい笑顔でわたしを抱きしめる
「そう、わかってくれて私、とってもうれしいわ!だから、わたしたちはこの心のお薬を広めて、粗悪な偽物を市場から追い出さなきゃいけないわ!だから、コニファーも協力してくれるかしら?」
でも、確かに地球の様な副作用がある麻薬もたくさんある。だから、みんなにこの妖精の粉を使ってもらって粗悪な粉は打倒しなきゃいけないんだ。
「うん、わかったよ」
主人公、洗脳される