この素晴らしい世界に妖精が! 作:妖精さん
串刺しにされたり、生き埋めにされたりとひどい目に遭った気はするけど、なんだかんだで魔王軍幹部ベルディアの討伐に成功して、アクセルの町のみんなの懐事情は潤って冒険者の皆さんはギルドの酒場や街の食堂や居酒屋などでダラダラ過ごしています。季節も冬と言うこともあって金があるのに寒いなかクエストを引き受けようと言う人はめったにいないわけなんだけど。
そんな中、わたしたちはユグドラシ商会の会議室と言っても空きのある倉庫の一室に長椅子と長机を並べた簡易的な物なのだけど。
そこに集められた妖精の中でもそれなりの役職を持つみんなが集まられていた。その中にはわたしたちも含まれているわけで…
わたしの両隣にルナとサニーが座っている。みんな何事だろうとスターを見ている。
シャロンちゃんが黒板に売上表らしきものを張っている。前世ではよく見ていたのでなんとなくわかるが前世の記憶が抜けてきているのですぐにピンとくるものでもなかった。
「赤字です!大赤字です!この前の新大塩砲弐式改の費用で大赤字です!ミツルギさんの剣の転売やコニファーたちのギルド報酬やみんなの給金の天引きでも足りません!!」
スターが黒板を手で叩きながら主張する。
スター・・・あの剣ミツルギさんのだってわかってやったんだ・・・。っと言うかわたしたちのギルド報酬天引きしてたの!?言われてみれば少なかったような…
「なので!みんな!お金がないのはわかっているの!だから、わたしに!商会に!労働力を頂戴!!」
「何勝手に天引きしてるのよ!」「横領だあー!横暴だあー!」「金返せ!」と大ブーイングだ。
でも、スターはそんなのどこ吹く風でテーブルを叩いて叫ぶ。
「おだまり!!小娘ども!!生娘みたいにピーピー喚くな!」
ひぃぃスター・・・キャラが違うよぉ
ドスの利いたロリボイス(矛盾した何か)がその場を支配した。
「しかたないでしょ!あの時は新規事業に手を出したばかりでもともと赤字気味だったのよ!でも事業は軌道に乗ってるから時期に大きな利益が見込めるわ!でも、今はお金がないの!だからその場しのぎの金を用意しなきゃいけないのよ!」
スターの演説の横でシャロンがギルドの依頼書を張り解説する。
「雪精の討伐。1匹10万エリスの高額クエストです。」
「つまり!コニファーたちを呼んだのは他でもなくこの雪精討伐のクエストを受けてきてもらいたいの!仮に100匹狩れば1000万エリス!ここは冒険者資格を持っている妖精のみんなを総動員して雪精狩りにいくのよ!」
「お、お~?」
スターはそう言って拳を振り上げた。わたしたちも納得は出来ていないけどとりあえず拳を振り上げた。
そんなわけでわたしたちと言うよりほとんどの妖精たちが各々武器を持って雪精のいる山まで行くことになった。
スターは数匹のロバに牽かせている簡素な櫓を取り付けた小型の荷馬車の櫓に上って全体の指揮を執っている。その横にはいつものようにメイド服のシャロンちゃんが控えている。
銅の軽装鎧で身を固めハーフランスやショーソードを装備している兵士な妖精たち彼女達は一応冒険者登録を済ませており主にソードマンやランサーの職にあたる。ただ、軍人としての職業と兼任だと総じてソルジャーと言うらしい。
そしてその先頭を歩いている重装鎧を着て普通の槍を装備している赤髪ロングテイルの子はアイビスと言うらしい。彼女は妖精村出身の子でスターたちとはぐれていて最近合流したらしい。まだ話したことはないけどなかよくなれるといいな。
あと、スターの思い付きで新設された騎兵隊だけど馬の代わりにロバなのは少々かっこが悪いと思う。スターは見た目が大事と言っていたけど見た目もじゅうぶん悪いと思う。
それ以外にも冒険者の職を持つ子たちがクワやフォーク後は鉈を持って続く。彼女達は川漁師、皮剥ぎ職人、採石工、粉挽き人、百姓、事務職と言った子たちで雪精相手ならと昨日今日慌てて冒険者登録した子たちだ。
そして最後にバリスタを他の妖精の子たちといっしょに運ぶパニラちゃんだ。普段は細工師として最近は技師としても活躍するパニラちゃんだが砲術士(カノーネス)と言うレア職業の冒険者だ。ただ彼女の本来の武器である手持ち式の魔道砲は1発5万エリスと言う金食い虫でそのおかげでめったに冒険者活動はしていないらしい。とは言え砲術士の役職は兵器全般に適性があるのでバリスタでも可と言うことでこう言った形で参加することになった。
ながながと説明したけど。とにかく早朝に出発して日の出の頃には雪精のいる山の開けたところに出ることが出来た。
途中スノーウルフの襲撃があったけどわたしとサニーとルナの活躍で撃退することが出来た。ボトムレススワンプって本当に便利だね。
さて、肝心の雪精狩りだけど・・・。
「あっちに行った!」「やぁ!」「やっつけろー!」「1匹くらい捕まえちゃえ!」「えい!」
それはもうウハウハだった!50人以上人数を動員しているのだから当然と言えば当然だよね一人1匹は狩ってるから500万エリスは固いね。それでも雪精はまだまだたくさんいる。
まさに入れ食い状態だった。おいしいです。
朝ごはんの時間になりひとまず休憩と言うことで持ってきた野菜とかでスープを作ってみんなで食べることに…おいしい。
朝ごはん休憩を挟んで雪精狩りを再開しようとした時。
「あら!コニファーじゃない!?それにほかの妖精の子たちも!?」
アクアさん達だ。そう言えばアクアさん達も金欠だって言ってたなぁ・・・。
「あら、アクアさん。それにカズマさん達もベルディア討伐の報酬は使い切っちゃたんですか?」
ルナがカズマさん達に話しかける。
「実はこいつが破壊した外壁の修繕費にクエスト報酬の殆どが天引きされててな。とっとと返済しようってことで雪精討伐の報酬を受けたってわけさ。」
給料の天引き…どっかで聞いたような。ちらり
スターは視線をそらした。
「でも、困ったな。ここがこのあたりじゃあ一番雪精が出るポイントだったのに・・・。」
カズマさんは困った様に頭をかいた後地図を開いてこのあたりのポイントを探し始める。
おなじ地球出身者だし、ここは一緒に・・・・・・さそってみよう。
「よかったら…いっしょにやる?」
「いいのか。ここはお前たちが先に確保した場所だろ?」
ダクネスさんが私たちに気をつかって他の場所に行こうかと提案してくる。
「いいよ。ダクネスさんやアクアさま、それにめぐみんさんといっしょにできるときっと楽しいから・・・みんなもいいよね。」
「そうね。いいんじゃないかしら?ねぇスター?」
「いいわよ。わたしはかまわないわ。カズマさん達が加わっても予定の数を越られるだろうし・・・」
ルナの言葉にスターも同意してくれた。やったね
「もちろん!」「いいよー」「わーい」
他の妖精の子たちも賛成してくれたみたい。
そんなこんなでカズマさん達といっしょに雪精狩りをすることに。
お昼ごはんはカズマさんたちといっしょに食べたよ。
お昼ごはんのかたづけを済ませるとスターたちが帰り支度を始める。
「さて、わたしたちはもう帰るから。ほら、もう疲れちゃった子たちもいるしね。」
そういってスターは疲れて木陰で休んでいる子たちを指さす。
その中にはパニラちゃんもいた。
「いやぁ。バリスタって装填とか狙いつけるだけでもかなり疲れるから・・・」
たしかにそうかもしれないね。先に帰ってゆっくり休んでね。
「うん。先に帰って休むことにするよ。」
そういってスターにシャロンちゃんとパニラちゃん、それと一般組の妖精たちとロバがへばって来たので騎兵組の子たちは帰っていった。残ったのはわたしたちとアイビスちゃんたち兵隊組の子たちだ。あとカズマさん達・・・
「ねえ、アクアさんはなんで虫取り網なの?」
「ん?これ?」
サニーの質問にアクアさまは腰に掛けたケースを開けて小瓶を取り出す。
「そのまま一緒に飲み物と入れておけばいつでもキンキンのシュワシュワが飲めるって考えよ!」
「なるほど~」
「カズマ殿!そっちに行ったであります!」「おう!任せとけ!」
アイビスちゃんとカズマさんは雪精たちをとりかこんでやっつけるつもりの様だ。
と言うかアイビスちゃんてそんな喋り方なんだ。
「みてみて!みんな!大漁よ!」
虫取り網にたくさん捕まった雪精を見せびらかすアクアさま。女神さまだけあって笑顔がまぶしいな。
「爆裂魔法で辺り一面ぶっ飛ばしていいですか?」
「雪崩が起きるかもしれんからやめとけ!」
「むぅ、仕方ありませんね。」
めぐみんさんは残念そうだけどしかたないよね。
残ったわたしたちで雪精狩りを続けていると奴が来た。
「それにしてもなんで雪精討伐って何で誰もやらないんだろう?」
わたしは何の気なしにそうつぶやいた。
するとアクアさまがわたしの横に立って話し出す。
「なぜ冒険者が雪精討伐を請けないのかその理由を教えてあげるわ。そういえばコニファーあなたって一応元日本人らしいわね。」
「え、そうだったの?」
カズマさんが意外そうにわたしを見る。そんなに見られると少し恥ずかしいかな。
「あなたもカズマも日本に住んでいたんだし天気予報やニュースで名前くらいは聞いた事あるでしょう?雪精達の主にして冬の風物詩とも言われている…そう、冬将軍の到来よ。」
辺りが急に暗くなり、少し吹雪いてくる。
これが冬将軍の出現の前触れなのかな。少し怖い・・・
「国から高額賞金をかけられている特別指定モンスターの一体!」
ダクネスさんが身構える。
「これはただじゃすみませんよ!」
そう言ってめぐみんさんも杖を構える。
「ひ、姫様をお守りしろであります!」
アイビスちゃんたちがわたしの周りに集まってくる。
「来るわよ!」
「やってやるんだから!」
サニーとルナもわたしの横につく。
「そう!冬しょう・・・ぐ・・・ん・・・よ?あれ?」
決め台詞を決めようとしたアクアさまでしたが途中から言葉が途切れて目が点になってしまった。
ギュム!ギュム!ギュム!
「ずいぶんとボクの手下を弄んでくれたようですね。」
地球の知識があるならあの姿を見て絶望を感じずにいられるだろうか。
「アクア。今は冬将軍とは言わずにこう言うんだ冬の帝王と。」
ダクネスさんがアクアの説明に訂正を入れる。
カズマさんとアクアさま、そしてわたしは同時に大声で叫んでしまった。
「「「ふ、フリーザ様ぁあああああああああああああ!!!」」」
そして、わたしは消え入りそうなかすれた声で言葉を吐き出す。
「お、おしまいだぁ・・・。勝てるわけがない・・・」