『神童・・・もうお前は俺のものだ。絶対に離さない』
腰を抱え、神童を引き寄せる。トップクラスのサッカープレイヤーとは思えない細い腰は、俺の片腕にすっぽりと納まった。
『や・・やめっ、井吹・・・まだ・・・心の準備が・・・』
神童が俺の腕から抜け出ようともがく。だが、その力はあまりに弱い、本当に逃げ出す気があるのかと思うほどに。
『ふっ・・・期待しているのか。さっきから心臓の鼓動が伝わってくるぞ』
『・・・っ。そんなことっ・・・!』
神童の服をめくる、健康的な白い肌が空気に触れ光る。俺は神童の腹部に自分の舌を這わせみた。
『~~~っ!!!・・・っ!・・っ!・・・』
声が漏れるのを気にしているのか、口を押さえ声を押し殺している。そんな神童を見て気持ちを抑えられるわけもなく、俺はその更に下方向に向かって手を――――――――
「うわぁああああああぁーーーーーーっ!!!!!!!」
神童は俺が渡した紙に書いてある文章に発狂し、乱暴に破り捨てる。
「何故破った神童。せっかく書いたというのに」
「おぞましいからだ!お前の妄想の集大成が!!!」
肩を上下させながら息を切らしている神童。結構自信作だったのだが、お気に召さなかったようだ。
「それはお前が最後まで読んでないからだ。待ってろ、まだこっちに続編があるからそっちを見ればきっと」
「取り出すな今すぐその六法全書並に分厚い紙の束を置け」
「仕方ない、置いておくから後で読めよ」
「分かった。後で焼却処分しておく」
素直じゃない神童の態度に呆れながら、出された茶を啜る。
「で、ひとつ聞こう。何故これを書いて俺のところに持ってきた」
「あれはFFIV2の日本代表メンバー選考の日、俺と神童が出会い」
「どれだけ遡る気だ。もっと端折れ」
「愛故に」
「もういい喋るな変態がっ・・・!」
自分から説明しろといったのに変な奴だ。むしろ5文字でまとめたことを褒めてもらいたい。
「いいから井吹・・・もう帰ってくれ・・・2日前のレースの疲れがまだ抜けてないから今日は一日ゆっくりしたいんだ。体に加えて心まで疲れるのはごめんだ」
「そうか、なら邪魔しちゃ悪いな。今日はゆっくり休め」
もともとこれを見せるために今日は来ただけだ、焼却処分とか何とか言って俺の前で見るのが恥ずかしいんだろう。なら俺はすぐ部屋をでてやるのが神童のためというものだ。
「あぁ、ありがとう井吹・・・・っておい、お前ポケットから何か落ち・・・井吹帰るんじゃないそこに座れ」
さっさと家に帰ろうと取っ手を掴むと、神童から静止の声がかかったので振り返る。そこには靴下を手に怖いと言える笑顔を浮かべる神童がいた。
「これが今お前のポケットから落ちたんだが、これは俺がレースの時になくしたものじゃないのか?ん?」
「あぁそうだ、それは俺がお前の生足を堪能した時についでに貰っておいたものだ。わざわざ拾ってくれてすまんん。じゃまたな」
「さらっと取って帰ろうとするな!お前懲りずに人のもの何回も盗むのは止めろ!とにかくコレは返してもらうからな!!!」
神童が怒鳴りながら靴下をしまう。それに対し俺はなんの抵抗もしない、なぜなら俺の左ポケットには、今日部屋に入った時に拝借した、靴下よりレアアイテムである神童のトランクスが入っているからだ。それに比べれば靴下の一足や二足どうってことも・・・
「あと異様に膨らんでる左ポケットを見せろ、絶対何か隠してるだろ」
「駄目だ、このトランクスだけは返すわけには行かない」
「やっぱり何か盗んでたな!返せ井吹!」
「くっ!なら交換だ!俺を満足させられるものとコレを交換するのなら返そう!」
「平等な取引に思えるが俺に何一つ得がなく害しかない辺り不平等すぎないか!?」
世の中には等価交換というものがある。お互いがお互いを求めるものを提示しなければならない、俺は神童のトランクス、そして俺が神童に求めるのは、神童の使用した類のものだ。
「さぁ神童、これと何を交換する?俺を納得させられるモノだろうな」
「くっ・・・!このや――――っ。そうだ、井吹、お前は何か勘違いをしていないか?」
「なに?」
神童がさっきまでの慌てようが嘘のように落ち着き払って俺に問いかける。
「実はそれはつい最近買ったもの、まだ着用はしてない。つまりお前はそれを手に入れたところで意味などないのさ」
「なっ・・・なんだと・・・!くそ・・・しくじった・・・!使用済みと未使用の違いに気づかなかったとは・・・」
「(これで騙し通せればかえってくるはずだ・・・さぁさっさと返してもらおうか・・・!)」
なんたる失態、俺としたことが・・・だが・・・俺はそれでも・・・
「いや、神童の持ち物ってだけで俺には十分な価値がある!これを軽々と手放すわけにはいかない!」
「くっ・・・だったらこれと交換でどうだ」
そういって神童が取り出したのは、机に置かれていたハンドタオルだった。
「これは俺が部活で使っているハンドタオルだ。その新品のものよりだいぶ使い込んでる。この際だ、タオルくらいならくれてやる」
「ふむ・・・悪くないな・・・」
使い込まれたものであるならあるほど価値は高い、未使用よりよっぽどいいだろう。俺はこの交換に応じることにし、トランクスを手放し、神童のハンドタオルを手に入れた。
「これでいいな。じゃもう帰れ・・・今日は疲れた・・・・」
そういって神童は半ば強引に俺を部屋から押し出した。俺としてはこうしてタオルも手に入ったので、満足げに階段を降り、神童邸を後にした。
「やっと帰ったか井吹の奴・・・・・・すまない天馬・・・間違えてお前の持って帰ってしまって、井吹のエサにしてしまって・・・」
【『神童(?)のハンドタオル』を手に入れた!】【『神童のトランクス』を失った・・・】
~~~~~~~~~~~~~
神童のハンドタオルを手に、俺はぶらぶらと散歩する。目的もなく歩いているだけだが、今の俺にはこの神童のタオルに染み付いた匂いがあ・・・・・
「っ!?この匂いは神童のじゃない!これは・・・・天馬だ!!!」
くそっ!騙されたのか!神童の愛用タオルを手に入れた幸せにおぼれてその場で違いに気づけなかった・・・!またしても不覚・・・!
「こうなれば今すぐ戻って盗み取るしかないか・・・・」
「あ、井吹じゃないか。どうしたんだこんな所で」
そんな決意を固めていると、不意に後ろから声をかけられた。
「?。天馬じゃないか、お前こそ何しに?」
そこにいたのは俺達のキャプテン、天馬だ。今日は練習がないはずだが、何故かユニフォームを着ている。
「俺?俺は今から信助と河川敷でサッカーの練習だよ。井吹もやる?」
「いや、今日はちょっと用事があるから遠慮しておこう・・・っとそうだコレ、天馬のだろ。ほら」
「あっ!これ俺がなくしたと思ってたタオル!拾っててくれたの?ありがとう井吹!」
俺が持ってても意味のないものだし、本人がいるなら本人に返すほうがいいだろう。
「秋ねぇからのプレゼントだから無くなった時は焦ったけど、見つかってよかった・・・、そうだ!お礼にこれ上げるよ!信助と食べようと持ってきたんだけど、まだ家にあるからいつでも食べれるしね」
そういって天馬が鞄から取り出したのは、最近雷雷軒でお土産用に発売されたという「雷雷まん」だった。おいしいと評判高く、少し嬉しい。
「ありがとう天馬、味わって食べさせてもらう」
2つの雷雷まんを貰い、天馬に別れを告げ足を進めた。
【『雷雷まん』を手に入れた!】【『天馬のハンドタオル』を失った・・・】
~~~~~~~~~~~~~~
「(モグモグ)しかしこれ、わらしべ長者みたいだな(モグモグ)となると次に会う人間はこの雷雷まんを欲しがってる人間ってことか(モグモグ)」
貰った雷雷まんを一個食べながら町を歩く。しかしいるのだろうか、人が持っている食べ物を欲しがるほど食い意地の張ってる知り合いなんて・・・あ、いるか。
「はっ!井吹!その手に持っているおいしそうな物は何やんね!」
うわさをすればという奴だろうか。黄名子が俺と会ったとたんに、俺の手にある雷雷まんに狙いをつけている。
「ほら、これ欲しいんだろ、やるよ。さっき天馬にタオルを届けた礼にもらったんだ。うまいぞ」
「いいのー!?ありがとやんねー!でもそれってなんだかわらしべ長者みたいやんねー、だったらうちも何か上げたほうがいいかな?」
そういって黄名子が自分のポケットを漁る。別に俺は何か欲しいわけでもないから普通に貰えばいいのにな。
「上げられそうな物~・・・んー・・・・」
「別に欲しいわけじゃないからいい。ほら、早く食べ」
「ーー・・・あっ!そうだ!はい井吹ー、手出してー」
黄名子が何か見つけたらしいので、言われたとおり、黄名子に手を向ける。
「んーっ!はい!どうぞーやんね!」
「・・・?見た感じ何もないようだが?」
俺には、黄名子が俺の手の平に手を重ねただけにしか見えなかった。近くで見ないと見えなくくらい小さいものか?
「違うよー?それがうちからの贈り物!うちの手の平の『ぬくもり』やんね!」
【『黄名子のぬくもり』を手に入れた!】【『雷雷まん』を失った・・・】
~~~~~~~~~~~~
さっき貰った黄名子のぬくもりを手に歩く。明らかに雷雷まんの方が良かった気がするが、交換したものは仕方ない。この黄名子のぬくもりを欲しがる人間と会うしか、方法はないだろう。
「しかし黄名子のぬくもりか・・・これを欲しがる人間・・・いるのか・・・・あっ、そうだ。あいつなら交換してくれるかも知れないな」
そこから8分ほど歩いて、黄名子のぬくもりを欲しがっていそうな人間の家の前にたどり着いた。
「剣城ならきっと喜んでもらってくれるはずだな」
剣城の家のインターホンを押して少し待つと、玄関が空いて中から剣城が出てきた。
「井吹か、なんの用だ?」
「『黄名子のぬくもり』をやるから何かくれ。お前ならきっと欲しがると思ってな、俺が持ってるとお前が怒るかもだし、いいだろ?」
「言ってることがよく分からんが、俺をイラつかせに来たってことでいいんだよな?」
剣城が何故か拳を固めて近づいてくる。何故だ、もしかして俺が手にすること自体気に入らなかったのかのだろうか、よっぽど黄名子の事が好きなのだろう。
「まぁそう怒るな。俺だってお前の幸せを邪魔したりなんかしないさ」
「前に河川敷で邪魔したのお前だよな?幸せ阻害しまくってたよな?」
そんな事は忘れた
「とにかく手を出せ、で、何かくれ」
「お前なぁ・・・まぁいい、何か渡せば帰ってくれるんだな。だったら待ってろ」
そういって剣城がいったん家に入り持ってきたのは、茶?
「梅昆布茶だ、作ってみたから持って行くといい」
「結構いい物くれるんだな、黄名子のぬくもりがお前の中でそれほどいい物なんだろうな」
「黙れ、ほら、さっさと家に持って帰って冷やしとけ」
「あぁ、サンキュー剣城」
【『梅昆布茶』を手に入れた!】【『黄名子のぬくもり』を譲った】
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神童のトランクスが最終的に梅昆布茶に変わった。中々楽しかったな、また暇があればやるか。今日はもう家に帰って、剣城から貰った茶で一服しよう。
「ただいまー、ばあちゃん今帰った」
「おぉお帰り正宗、暑かったでしょう、お茶淹れてあげるよ」
「あぁいや、梅昆布茶あるから、これ飲もう。俺が注ぐよ」
剣城から貰った茶をコップに注ぎばあちゃんと飲む。なかなか美味い。
「おいしいねぇこれ、ありがと井吹。そうだ、さっき近所の方から福引券もらったんだけど、井吹引いておいで。はいこれ3枚」
と、まだわらしべ長者は続いているのか、今度は福引券。
ん・・・?たしか福引の景品にペアチケットあったはずだよな・・・つまりこれって・・・これでチケットを当てて神童とデートしてこいという神の導きか!
「ありがとばあちゃん!ちょっと行ってくる!」
「いってらっしゃい、車には気をつけなさいね」
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商店街の福引会場についた、見た感じ人は並んでいないのですぐに回せそうだ。
「すいません、これお願いします」
「あいよー、じゃどうぞー」
おじさんに券を渡し、カラカラの取っ手を掴む。これでペアチケットをあて・・・神童とデートを!
「ちょっと待った君!これ、1枚足りないよ」
「えっ?」
と、気合を入れて回そうとしたとき、おじさんに1枚足りないと言われ、カラカラから手を離した
「あれ?3枚あると思うんですけど」
「いや、確かに内2枚は福引券だけど、この1枚が違うチケットだね」
そういっておじさんが俺に見せた紙には、こう書いてあった。
『イナズマランドパーク ペアチケット』
【『梅昆布茶』を失った・・・】【『ペアチケット』を手に入れた!】
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