イナズマランドパーク【京黄】   作:あっさりぽん酢

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イナイレ京黄、宗拓モノです。それではどうぞ


3話

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雲ひとつない空は青一色。夏の香りとでも言うのだろうか、稲妻町では味わった事のない風を体全体で感じる。

 

周りは人でごったがえし騒ぎ声が四方八方から聞こえる、雑音と騒音だらけなのに不快感がないのが実に不思議だ。

 

「やっぱり人気なだけあって人も多いな、電車の混み具合で大体予想できたが。黄名子大丈夫か?疲れたなら菓子あるからやるぞ」

 

隣で一緒に列が動くのを待つ黄名子に話しかける。暑い中、たった10分程度と言えどこうして立ち続けていたわけだし、少しは体も疲れるだろう。鞄に入れておいた菓子を取り出す。

 

「もー、うちは大丈夫、さっき休んだばっかりやんね。剣城ったらほんと心配性なんだからー」

 

「あー・・・そうだったな、だが夏は普通にしてても熱中症になるから気を抜くなって兄さんが言ってたんだ」

 

「うちはそんな簡単に病気になんかならないやんね!・・・なんで剣城お菓子しまうの?ちょーだい!」

 

「お前って奴はなぁ・・・お、列が動いた。そろそろ入場するから行くぞ」

 

「えぇー!お菓子ー!」

 

「はいはい、後でやるから今は動け」

 

菓子への未練を引きずる黄名子を宥め、列の動きに合わせ前へ進む。人の流れは途中で止まることなく、もうすぐ入場ゲート付近だ。

 

「ねぇ剣城、うちらチケット使うならカップルになるやんね」

 

「っ。そ、そうだな、一応そんなフリして入るつもりだ」

 

まだカップルという言葉に抵抗を感じているのか、黄名子の質問に対し声が詰まる。だがカップルのフリといっても、係員は俺達のことを何も知らないわけだし、男女で並んでいるのさえ見れば何でもカップルに見えるだろう、特別な事は何もする必要はないわけだ。

 

『イナズマランドパークへようこそ!チケットはお持ちですか?』

 

入場ゲートに着いた俺達に係員が話しかけてくる。俺は財布からペアチケットを取り出し提示する。

 

『こちらカップル用のチケットとなっておりますが、よろしいでしょうか?』

 

「あぁ、はい、それで―――――――」

 

「問題ないやんね!うちらカップルだから!ねー剣・・・ダーリン!」

 

「っ!?」

 

チケットを提示して確認が済めばそれで終わりだというのに、黄名子がいきなり俺の腕に自分の腕を絡ませ、そんなことを言い出した。俺はすぐさま、係員にバレないように、後ろを向き小さな声で黄名子に話しかける。

 

「(何やってるんだお前!)」

 

「(何ってカップルの真似やんね!何事も形から入るのは基本やんね!)」

 

「(今時ダーリンとかいう奴なんてレアものだぞ!?何もしなければそれで終ってたのに何故そこで突風を起こすんだお前は!)」

 

「(やっちゃったものは仕方ないやんね!うちは気にしないから気に病むことないよ剣城!)」

 

「(何故俺が悪いみたいになってるんだ!?お前だからな!)」

 

「(だったらこのまま押し通すやんね!)」

 

黄名子の言うとおり確かにこのままでは疑われる、別に男女ペアで来ている以上問題はないだろうが、カップルといった手前バレるのも恥ずかしい。仕方なく黄名子の意見を即実行する。

 

「あ、あぁそうだなハニー!俺達はカップルだから問題ないよな!」

 

「そうやんねダーリン!さぁ早くいこー!」

 

『あっ・・・はい、ではごゆっくりお楽しみください』

 

係員が困惑しながらも通してくれたので、俺はすぐにその場から立ち去ろうと黄名子を連れ、早足でゲートから遠ざかった。

 

今思えば、バレるより恥ずかしい行為をしていたと、終ってから後悔した。

 

「黄名子・・・いつまで腕組んでるんだ・・・」

 

「んー?なんとなく気に入ったからもう少しこのままでいい?」

 

「もう好きにしてくれ・・・」

 

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「さて神童、そろそろ入場ゲートだぞ」

 

「はは、見てみろ井吹。女装した変態が彼女を装いカップルチケットを使って遊園地に入場する貴重な瞬間だぞ」

 

「あぁこりゃ駄目だ、壊れてる。ほら正気に戻れ(バシッ」

 

「ぶっ・・・はっ!俺は一体何を・・・」

 

後頭部に走る衝撃で目が覚める。顔を上げると入場ゲートがすぐ近くに迫っていた、ただ今の俺にとってはゲートは地獄への門、係員は俺を冥界へと誘う死神に見える。

 

「井吹、頼むから不用意に俺の名前を呼ぶなよ」

 

「勿論だ拓美ちゃん」

 

「・・・・・(ガスッ!ガスッ!ガスッ!)」

 

「悪かった神童、だから無言で蹴るな。結構痛い」

 

こいつは本当に悪かったという気持ちがあるのだろうか、痛いという割には顔色一つ変えないことにもイラっとくる。ちなみに拓美と言うのは、こいつが勝手に付けた俺の偽名だ。本名を呼ばれると回りにバレる可能性も否めないので、仕方なくその提案に乗っかっている。

 

『イナズマランドパークへようこそ!チケットはお持ちですか?』

 

そうしている間に入場ゲートに到着。チケットの有無を問われたので、井吹がポケットから取り出したチケットを係員に差し出した。

 

『こちらカップル用のチケットとなっておりますが、よろしいでしょうか?』

 

「ぐふぅっ・・・」

 

「あぁ、それで構わない。行くぞ拓美」

 

「だから名前を呼ぶな・・・っ!」

 

カップルという単語に異常反応する体を必死で抑える。ここで動揺することで不審がられる可能性がある以上、どんな僅かでも危険は排除する、それが俺が取るべき最善の行動、目標達成の為に。

 

・・・・何故潜入スパイのような行動と言動をしているのか、俺にももう訳が分からない・・・。

 

『それでは、お二人で素敵な一日をお過ごしください』

 

「ぐはぁっ・・・!」

 

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「剣城早く早く!あれ乗るやんねあれ!」

 

「分かったから落ち着け、走ると転ぶぞ」

 

「剣城ってうちの事同級生として見てない気がするやんね」

 

「普段のお前を見てれば当然だと思うけどな・・・」

 

遊園地の定番とも言えようジェットコースター目指して走り出す黄名子を追う。ようやく楽しみだった場所にこれたのだ、多少ハメを外すのは仕方ない。そんな黄名子を見て、少し和む。

 

「所でお前、身長制限とか大丈夫なのか?」

 

「流石に規定値は超えてるやんね!」

 

「規定値・・・120cmなら大丈夫か。お前145cmくらいだろ」

 

「145.3cm!」

 

「そこは誤差の範囲で受け取っておけよ」

 

低身長の人間は1cm以下だろうと違いを許さないというのは本当なのかもしれない。

 

「それよりほら並ぶぞ、時間かかりそうだから」

 

「うん!」

 

黄名子と最後尾に並ぶ、待ち時間は30分程度といったところだろうか。また黄名子に餌付けでもして暇を潰すとしよう。

 

「ほら、入場前にやろうと思った菓子だ」

 

「うわーい!」

 

鞄から母さんから貰ったポッキーを取り出し黄名子に渡すと、すぐさま袋を空け食べ始めた、チョコが溶けていないか心配だったが大丈夫そうだな。しかし何故母さんがポッキーをチョイスしたのかは知らない、観覧車で楽しめと俺に告げた意図もさっぱり分からない、分かりたくない。

 

「剣城も食べる?」

 

「一本貰う」

 

それから20分ほど待って、ついに俺達の番がやってきた。

 

係員の誘導に従いコースターに乗り込み、その隣に黄名子が座る。そうして安全バーを下ろした後にふと思い出した、自分がジェットコースターに乗ったことがないことを。

 

「なぁ黄名子、実際にはこのアトラクションはどんな感じなんだ」

 

「?どんな感じって、ジェットコースターはジェットコースターやんね」

 

「いやそれは分かるんだが、実際には乗ったことなくてな」

 

知識はある、スピードがあるスリル満点な物だということは常識として知っている。ただそれは知識として知っているだけなので、体感的にどのようなものなのかは分からないのだ。

 

「んーと、とにかくすごい早くて楽しい乗り物やんね!」

 

「あー・・・うん、そうだな」

 

黄名子の説明で何か分かるとは元から思ってなかったのでさほど気にならない。そもそも遊園地の乗り物程度に何を深く考える必要がある、たかだかアトラクションだ。気にせずに人生で初めてのジェットコースターを体験しよう。

 

ガタゴトと音を立てて高く登るコースター。ただなんなんだ、この不安は。体が斜めになっている感覚が気持ち悪い、そうして頂点に達したコースターは、ゆっくりと下を向き、次の瞬間。

 

「―――――ぐぉっ・・・!?」

 

予想以上のスピード、異常な程の体への圧力、体が飛ばされるかもと思える浮遊感、その全てが塊となって押し寄せてきた。

 

「ぐあぁっ・・・ちょ・・・速っ・・・重っ・・・!」

 

「あははははーーー!おぉーーーー!わはーーーー!」

 

隣で黄名子が騒ぐ中、俺は味わったことの無い感覚の恐ろしさに耐え続けた。

 

何時までの時間が流れたのかは分からないが、スピードを緩めゴールへと辿り着いたコースターからフラフラの状態で降りた俺と、先ほどのアレを楽しかったといい、ピンピンしたままの黄名子は、近くのベンチでまた休憩をとった。

 

「はぁー・・・なんだよアレ・・・速いし・・・気持ち悪い・・・」

 

「剣城ジェットコースター苦手なんやねー、楽しいのに」

 

隣に座っている黄名子が不思議そうに言う。

 

「アレを楽しいって言えるのは相当な奴だな・・・」

 

しかし単なる娯楽施設のアトラクションであるジェットコースターがあれほどの物とは・・・舐めてかかっていた。

 

「剣城は大袈裟やんね、あんなの誰でも乗れるよ?」

 

「バカいうな、俺達の前を歩いてたカップルもフラフラだっただろ。苦手な奴だっている」

 

「あれは彼女さんの方だけだったやんね、彼氏さん普通だったよ?」

 

「そう言われると俺が不甲斐ないみたいだな・・・」

 

「人間誰でも苦手なものはあるやんね!うちだってあるよ!だから気にしなくていいんよ剣城!」

 

黄名子に励ましと少しの休憩で体力を取り戻した俺は、座ったままパンフレットを開く。隣で黄名子が覗き込んでくるので見やすいように目の前に寄せてやる。

 

そうして黄名子が次の目的地として指差したのは、コーヒーカップだった。

 

~~~~~~~~~~~~

 

『だから俺は乗りたくなかったんだ・・・ジェットコースターなんて・・・』

 

『神童があんなに叫ぶなんてな、苦手なのか?』

 

『あぁ・・・絶叫系全般は苦手だ・・・あんなのに乗って平気でいられる奴の気がしれない・・・なのに・・・苦手だと伝えたのに何故お前は嬉々としてこれに乗り込んだんだ・・・』

 

『可愛い神童が見れる気がしたんだ』

 

『やっぱり動機はそれか・・・!』

 

『結局は神童も自分から乗ったんだしいいだろ』

 

『お前が「拓美早く行くぞー」と大声で叫ぶから仕方なく乗るしかなかったんだよ!』

 

『次はコーヒーカップにでも乗るか、行こう拓美ちゃん、なんなら俺と腕を組んで』

 

『いい加減に人の話を聞け・・・!』

 

~~~~~~~~~~~~~

 




2つのカップリングを書いていると字数がすぐに多くなってしまうので、話数が長くなるかもしれません、申し訳御座いません。これからも更新は続きますので、どうかよろしくお願いします。
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