今は立ち止まり歩く道筋を照らせ
今が分からなければ
先に到達することなぞ不可能だ
カルデア大使館に戻ると、俺の赴任パーティが行われた
そこでレオダニスや義経、弁慶と出会った
情報交換をしつつ楽しく飲んだり食べたりした
そして………
「では、第1回円卓会議を始めたいと思う」
「先輩!?」
パーティが終わり、1階の空き部屋に丸いテーブルがあったのでそれを使って会議を始めることにした
「円卓会議かぁ………懐かしいな」
「集まったのは僕とマーリン、シドゥリにアナ、マシュと聖だね」
エルキドゥは順に指をさしながら出席者の名前を言う
エルキドゥが途中からパーティに参加したので、1度話し合いたいと申し出たら快く受け入れてくれた
「カルデア陣営は分からないことだらけだと思うから、1度情報を整理していこう」
「そうだね。まず、何を聞きたいかな?」
「順を追って説明してほしい。今のウルクの状況やマーリンたちのこと、そして」
「あの黒いエンムルクさんの事ですね、先輩」
マシュの言葉に頷く
マーリンは顎に手をやって少し考えて
「じゃあ、説明するね。事件が起こったのは半年前の事だ。ギルガメッシュ王がウルクの危機を察知してサーヴァントを召喚したんだ。それが僕、マーリンさんだ」
「えと、つまりマーリンは特異点の抑止力ではなく、ギルガメッシュ王によって召喚されたってこと?」
《いや、ちょっと待てよ。何でサーヴァントとして顕現しているんだ?マーリンはアヴァロンにいるはずだろ?》
「フォウフォーウ‼」
そうだそうだと言わんばかりにマーリンに噛みつくフォウ君
放せと手を振り回す姿は何故か微笑ましく思えた
「そういえばそうですね。マーリンさんは何故サーヴァントでいれるのですか?まだ生きてるというのに」
「痛い痛い、放せ!……えっと?何故僕がサーヴァントとしていられるかって?痛いから!簡単だよ。僕は"この時代は生きてないからね"」
「そうか、つまりマーリンが生きていない時代だから"死んでる扱い"になるんだ」
「頭が良いマスターは嫌いじゃないよ。で、聖杯戦争の話をしたら"我も7基召喚するぞ"とか言い出して」
「その後、義経、弁慶、レオダニスを召喚したんだけど………」
ここで一旦話が止まる
何かあったのだろうか
「マーリンがこう言ったんだよ。"ねえ、エンムルクを召喚したらかなり戦力補強にならないかい?"てね。あの時の僕たちは迅速だったよ。数秒で僕はムルクの遺品を持ってきて、ギルはかなり魔力を込めて召喚にうって出たよ。結果、彼女は召喚された。でも、僕たちの予想を裏切る形でね」
「あの黒いエンムルクが現れたと」
「………………」
友と敵対するなんてどんな気持ちなのだろう………俺の場合はマシュと敵対するのと同等……嫌だ、絶対に嫌だ
「それだけなら良かったんだけどね」
《おいおい、まさかまだ何かやらかしてるのか?》
「酷い飯草だなロマン。僕は何もやってないよ」
《"は"って何だよ。"は"って》
「やらかしたのはエンムルクだもの。召喚されてすぐにギルガメッシュ王の持つ聖杯を奪い、そのままサーヴァントを2基召喚したのだから」
「しかも召喚に必要な魔力をギルに払わせて、マスターは自分にするというちょっとした離れ技をしたしね。流石魔術に関してはチートだね」
「だからですか。ギルガメッシュ王が戦線に立たずにジグラットにいるのは」
「それもあるけど王の責務もあるからね」
半年前にしたとはいえ、7基ものサーヴァントを生身で召喚したのだ
傷は癒えてないのだろう
「それで、エンムルクが召喚したサーヴァントが何なのか分かりますか?」
「僕は分からないな……マーリンは?」
「うーん………1人は知らないけど、もう1人は知り合いに似ていたな」
「本当ですか!」
「うん、彼女は多分アルトリア・ペンドラゴン……アーサー王だね」
「…………え?ホント?」
空気が凍る
エルキドゥは知らないから?マークが頭に浮かんでるような顔をしている
「うん。でも、多分だよ。だって、僕の顔を見ても何知らぬ顔だったもの」
「平行世界のアーサー王………アルトリア顔………うっ、頭が」
何故だろう……嫌な予感しかしない
マーリンを知らないアーサー王とか地雷臭しかしない
「そ、それでもう片方はどんな感じでした?もしかしたら私たちが知ってる方かもしれませんので」
「んー………君たちの言う魔法少女かな?」
「ま、魔法少女?」
マーリンが壊れた?
いや、でもふざけてる顔ではない……本気で言ってる?
「うん、魔法少女。召喚されたときの服は学校とやらの制服だったね。今は黒を基調とした衣装を着てるよ」
「…………………」
魔法少女?会ったことあったかな?
今はないけどこれから会いそうな予感はする
「分からないですね。多分私たちは会ってないと思います………」
「話を続けよう。エンムルクは召喚したサーヴァントを引き連れて立ち去った。その翌日にウルクのジグラットに現れ、こう宣言した。"これから我等'三黒同盟'と'三女神同盟'は人類を1人残らず抹殺する事を今ここで宣言する。貴方たちがどう足掻こうと、この世界はもう終わっている"と」
「そこからは君たちの見た通りだ。いくつもの城塞都市が滅び、今や2割りも満たない数しか残っていない。それが今の現状だ」
「……あの、三黒同盟はエンムルクと別世界のアルトリアさんと魔法少女なのは"我等"言っていたので分かるけど、三女神同盟は初めて聞くんだが」
「ああ、言ってなかったね。三女神同盟は文字通り3人の女神によって構成された同盟だね」
「女神…………島………悪魔………うっ、頭が」
《聖君、思い出すな。被害者友の会会長としてそこは言わせてもらう。思い出すな》
「おや、君たちは女神と出会ったのかい?」
「えっと、はい。しかし、神と言ってもランクダウンによる現界でしたので権能を使用することはできませんでしたが」
悪魔の他にも狩人オリオンやアルテミスと出会ったが、権能とやらを使ってるところを見たことはなかった
もし使ってたらオケアノスの際、エンムルクに負けていなかったかもしれない
「そうか………残念ながら、今この世界を脅かしている神々は権能を持った状態で顕現している」
「で、実質この世界を滅ぼそうとしているのは三黒同盟ではなく三女神同盟なんだよ」
「え!?ちょっと待って下さい!何故神が世界を滅ぼそうとしているのですか?神は人々の味方なのでは」
確かに、何故人を愛する神々が人間を滅ぼそうとするのだろうか
おかしいと思うのだが
「ん?神が人々に味方をしたことなんてないよ?ここメソポタミアの神は自分達の代わりに人間を置いたと思ってるのだし、さらに言えば神は人を愛してないよ。愛してるのは主神やイシュタルといったバグだよ?」
「バグって………」
エルキドゥにとってイシュタルはエンムルクの仇に近い
嫌っていて当然か
「まあまあ、神様談義はここまでにしよう。話が進まない。ここまでが君たちが来る前の話だ。分かったかな?」
マーリンが立ち上がって俺たちに質問がないか聞いてくる
整理しよう
・半年前にウルクが滅ぶとギルガメッシュ王が察知
・対策としてサーヴァントを7基召喚
・そのうち3基が離反
・翌日エンムルクによる人類の抹殺宣言
・3基のサーヴァントの他に、3体の神も人類の抹殺に荷担する事が判明
分からないことといえば
「あの、襲ってくる神がどんな神か分かりますか?」
「うん、神は大きく分けて2つの地域で活動している。1つの神は北で魔獣を産み出して殺戮している。見ただろう?あの魔獣の群れを」
「はい、壁に向かってたくさんの魔獣が襲っていました。それを兵士たちが素晴らしい防衛をしているのも」
「もう1つは南で何かをしてる」
「な、何かって」
マーリンは手をあげてお手上げポーズをとる
「分からないんだよね。偵察に行かせた兵士も帰ってこない。戻ってきたと思ったら道中にエンムルクと遭遇したとかで森にまで到達できなかったりで」
「牛若丸や弁慶を偵察に行かせたら?」
「それは僕も思って言ったんだけど、ギルは"戦力を削いだらそれこそ終わりだ。お前ややつらを偵察に行かせたいと思ったが、思いの外魔獣どもが煩わしいのでな。今は後回しだ"と言って以降、特に指示無しでね。今は保留って感じだ」
動の神と静の神………あれ?もう1つは?
「最後の1つはイシュタルだよ。空を飛んで至るところをむやみやたらに攻撃して高笑いしながら去っていく。本当に生きてて恥ずかしくないの?」
エルキドゥが額に手をやってため息をつく
本当に嫌いなんだね
「よし、これで大体説明したかな?不備があればその時聞いてくれ。では、シドゥリ頼んだ」
「はい。ではカルデアの皆様には明日から仕事をし――――
「ふぅ……」
「おい、あんちゃん。次はこっちを頼む!」
「はい!」
俺たちはシドゥリさんに言われた通り、仕事をしている
内容はウルクで困っている人を助けるといったものだった
マシュはそれに疑問を感じ、魔獣と闘わなくていいのかと聞いたら、兵士がいるから大丈夫だとか
で、街のこと、ウルクのことを本当に理解していないのでは王の間に謁見することすら許されないと言われた
だから俺は
「ふん!」
ひたすら土を掘ってます
今日の依頼は新しく家を建てるからその手伝いをしてほしいとのこと
「先輩!その土持っていきます!」
「分かった!それにしてもこのシャベル使いやすいな」
マシュが大量の土を運ぶのを眺めながらシャベルを軽く回した
《そうだね。現代のシャベルとそう変わりないな。この時代にはないはずの代物なのだが、これは………》
「ああ、それはエンムルク様が考案したものだ」
「エンムルクが?」
農業に携わってたと書いていたけど本当だったのか
「まあ、エンムルク様が考案してはいたが書類に書いていただけらしい。遺品を整理していた祭祀様が見つけて職人に作らせたんだ」
「へえ………」
「他にも土を運ぶあの回る足のついたあれとかもエンムルク様が考案してたものだ」
まさかだが、エンムルクは千里眼を使って未来を見て書き留めたのだろうか?
それとも賢者だからポンポンとこういったものを編み出せたのだろうか?
謎が深まるばかりである
「それじゃあ、そこに木をさし込むからな?」
「分かりました!」
「いくぞ、せーの!―――――
「ぷはぁ………疲れた」
「お疲れ様です、先輩」
「フォフォウ!」
カルデアからの支給品のサンソン特製栄養ドリンクを飲みながら椅子の背もたれに背中を預けた
あの後木材を立てるために穴を掘ってたら、そこからわらわらとゾンビが這い出てきてすごく驚いた
急いでマシュと撃退することに成功したが、建築は一旦中止となった
まだゾンビが出てくるかもしれないってことで兵士たちが今は監視している
「穴を掘ってたらゾンビが出てくるって一種のホラーだね」
《ちゃんとモニターしてたのにいきなり敵性反応が出てきたのはこちらも驚きだよ》
報告しに行ったらギルガメッシュ王曰く、あそこは元々墓地で、その墓地を違う場所に1ヶ所にまとめたらしい
だけど、墓地の死体は移動し忘れてそのままにしてしまってたとのこと
結果ゾンビ軍団の出来上がり
「しかもあのゾンビ軍団、出てきたのは良いけど日に当たって自滅してたな」
「ここのアンデット系は日の光に弱いのですね」
出た来たらギャーギャー騒いで悶えていた
倒すのも何かかわいそうな気分になった
「ふぅ………こういう依頼が毎日来るのかな?」
「そうでしたらとても楽しい毎日になりますね」
「フォウ!」
しかし、この後予想もしていなかった事が起きたのだった
「あの、すみません。カルデアのマスターで間違いありませんか?」
この一言で俺の小宇宙が弾けるなんて、誰も予想していなかった
そういえば、新宿のアーチャーさんっていますよね
例えば、ローマの特異点を攻略してるマスターさんがいたとしよう
いきなり「どうも、新宿のアーチャーです!」とか言うおじさんが英霊召喚に現れたらどう思うのだろうか
どう見ても海外の方なのに"新宿"のアーチャーとか言ったら混乱が起きるんじゃね?
つかこんな事言ってるお前こそ頭混乱してんじゃね?