白銀の王   作:うたまる♪

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慈悲なき殺戮

 戦争が始まった。

 

 

 戦争の始まりは静かではなく、荒らしいものだった。

 

 

 開戦して早々最前線の部隊、魔王ベルゼブブの軍勢から悲報と吉報が次々と告げられる。

 

 

「フェニックス部隊天使、堕天使に挟撃され、被害甚大!援軍を要請します!」

 

 

「バアル、べリアル様の部隊がシャムシャネル、アスファエルを打ち取りました!」

 

 

「前線部隊の左翼崩壊!」

 

 

 魔王レヴィアタンは次々と告げられる報告を聞き、指示を出していく。

 

 

「フェニックス部隊の救援としてファルビウム、アジュカの部隊が向かいなさい!ジオティクスはバアルとべリアルが後方から挟撃を受けないように後詰をしなさい!」

 

 

 そこで一度区切り考え出す。悩みどころだろう。前線の左翼が崩壊しているのだ。中途半端な援軍を出しても返り討ちになっては元も子もない。だからと言って大軍を援軍として差し向ければ中盤のレヴィアタンの軍勢は手薄となる。手薄になったここを狙われれば、前線部隊と後方部隊が分断される可能性がある。それ故に戦闘慣れしている手練れを集めた少数精鋭の部隊を援軍に出さなければいけない。

 

 

「レヴィアタン様、私が行きましょうか?」

 

 

 イースレイは魔王レヴィアタンに進言する。魔王レヴィアタンはその言葉に悩む。イースレイが進言したことはすぐに考え付いた。しかし、イースレイは中央部隊の要であり、こちらの切り札と言っても過言ではない。魔王レヴィアタンはイースレイは自分たち魔王と肩を並べるほどの実力を持っていると思っている。だからこそ、この重要な中央部隊の最高戦力の一つをこうも容易に前線に送り出してもいいものかと思案する。左翼の部隊は崩壊していると言っていた。そうなれば必然と敵は多くなることを予想される。そんな不利な状況の中イースレイを送り出すことは少し躊躇いを覚える。しかし、イースレイ以外に適任者がいないのも事実だった。

 

 

 魔王レヴィアタンは腹をくくり、イースレイに指示を出す。

 

 

「イースレイ!自身の部隊を率い左翼部隊の戦線を立て直し、戦線を盛り返しなさい!」

 

 

「了解」

 

 

 イースレイは指示を受けると自身の部隊を率い前線に向かう。

 

 

「皆の者!私が先陣をきる!皆は私に続き、私が撃ち漏らした敵を各個撃破せよ!左翼部隊を回収し、戦線維持を行う!」

 

 

「「「「おおぉぉぉぉぉ!」」」」

 

 

「グレイフィア、私が先陣をきり敵を攪乱する。部隊の指示は君が頼む」

 

 

「かしこまりました。ですが、イースレイ……敵は」

 

 

 グレイフィアは言葉を紡ぐことを躊躇うような眼をイースレイに見せるが、イースレイはそんなグレイフィアの不安を取り除く一言を答える。

 

 

「勿論、殺す気で行く」

 

 

 その一言にグレイフィアは安心する。その言葉にはイースレイ自身にも言い聞かせるような言葉だった。

 

 

「後は任せたグレイフィア」

 

 

 イースレイはグレイフィアに部隊の指揮を任せ、自身は加速し戦闘が起きている前線に躍り出る。左翼部隊は報告通り、いや、それ以上に壊滅的な損害を受け散り散りとなっている。その戦況を見て苦々しい表情になるが、すぐに行動に移る。

 

 

「アイスメイク―――――――」

 

 

 イースレイは両手を使い造形魔法を放つ準備に取り掛かる。戦場で久方ぶりに使うイースレイの本当の造形魔法。その威力は言葉通り、戦場の流れを変えた。

 

 

槍騎兵(ランス)!」

 

 

 イースレイの両手から百の氷の槍が天使、堕天使に襲い掛かる。一つ一つの槍が天使、堕天使を貫き命を奪い去っていく。

 

 

「アイスメイク大鎌(デスサイズ)!」

 

 

 次は氷の大鎌を造形し、次々と敵の首をはねていく。その姿はさながら魂を刈り取る死神のようだった。その姿は命を尊ぶ時いつもの飄々とした姿は見られず、さながら冷徹に命を刈り取るキラーマシンを彷彿させる。

 

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ!」

 

 

 イースレイは大鎌を消し、新たな武器を造形する。

 

 

「アイスメイク大槌兵(ハンマー)!」

 

 

 天使の軍勢に巨大な大槌を落とし、天使たちを押しつぶす。そこから無駄のない流れるような動作で攻撃を続ける。両手を素早く動かし、造形を開始する。

 

 

「リメイク」

 

 

 すると巨大な大槌が姿を変え、剣山に速変わりする。そしてイースレイは目に映るすべての敵をロックオンし、狙いを定める。

 

 

「造形固定!照準固定!一勢乱舞!」

 

 

 剣山から剣が掃射され、天使、堕天使に襲い掛かる。剣山から放たれた剣は次々と敵を貫き、ハリネズミのような姿に変わっていく。イースレイの怒涛の攻撃により、天使、堕天使軍勢は陣形を崩され、浮足立ち始める。イースレイを知る天使、堕天使たちは驚愕と恐怖により愕然としていた。今までイースレイと闘ったことがある天使、堕天使たちは皆こう思った。

 

 

『何だこのバケモノは?!今まで戦っていた時とは別人だ!』

 

 

 彼らは恐怖を感じていた。一撃一撃が重症になりうるほどの攻撃がこうも立て続けに放たれることがどれだけ恐ろしい事か。しかも、その一撃は寸分たがわず急所に狙いを定められている。イースレイの攻撃をどうにか相殺した者も周りの光景を見て戦慄する。イースレイが現れて数分もたたずに周囲が同胞の血によって血の海に速変わりしたのだ。戦争に慣れている者でも逃げ出したくなるような惨状だ。

 

 

「イースレイ!」

 

 

 そんな絶望的な状況の中、イースレイに襲い掛かる者がいた。その者は光の槍を数十も展開し、イースレイに狙いを定め放つ。イースレイは両手に氷剣を造形する。しかも、その氷剣は先程掃射した物とは比べもにならないほどの魔力を使い造形されている。

 

 

「アイスメイク氷魔剣(アイスブリンガー)!」

 

 

 イースレイは襲い来る光の槍を両手の氷魔剣を使い次々と弾き飛ばす。イースレイが光の槍の対応している間にの背後に近づく影があった。

 

 

「もらいました!」

 

 

 その者は光の剣を横に薙ぎ払いイースレイの首を斬り落とす。殺った!そう思ったが胴体から切り離された生首は地面に落ちると同時にパキンと音を立てて砕け散る。それと同時に目の前のイースレイの胴体を見直す。それはイースレイがダミーとして造形した氷でできた精巧な人形だった。

 それを見てしまったと思うが少し遅かった。

 

 

「不意打ちとは天使らしくないね、ミカエル」

 

 

 皮肉の聞いた声が聞こえた方向に振り向く。そこにいたのは氷の弓を引き絞り、ミカエルを穿たんとしているイースレイの姿だった。

 

 

「氷魔零の破弓!」

 

 

 その場から少し離れた場所から氷の矢が放たれる。ミカエルは急いで光の障壁を展開する。氷の矢は光の障壁に衝突し、勢いが弱まるが、この一撃はイースレイが使う攻撃の中で特殊な技の一つ、それで止まるほど柔な威力はしてなかった。氷の矢は光の障壁により軌道が乱れ、ミカエルの心臓を穿たんとしていた矢は腹部を穿つ。

 

 

「うっ!」

 

 

 ミカエルは余りの威力に気を失いかけるが、それは傷口から伝わる異様な冷たさにより引き戻される。ミカエルは傷口を確かめるとその傷口を見て驚愕する。穿たれた腹部の傷口は余りの冷たさに傷口が凍結していたのだ。それ故にミカエルは出血せずに済んだのがその傷は決して浅くない。少なくとも今の一撃は運良く躱せたに過ぎない。次も生きているとは限らない。ミカエルは急いで戦線を離脱していく。

 イースレイは逃がさんと言うように再び狙いを定めるが、ミカエルを打ち取らせまいと天使たちが光の槍を投擲し襲い掛かる。

 

 

「氷魔零の破弓―――――流星霜――――――」

 

 

 イースレイの氷の弓から秒間10本の氷の矢が放たれる。天使達から投擲された光の槍はイースレイから放たれた氷の矢に砕かれる。得物を破壊された天使たちは動揺し、未だ放たれ続ける矢を回避することができず、その身に何本もの氷の矢が貫き絶命する。

 

 

 イースレイはミカエルの姿を探すがその姿は既に戦場から消えていた。イースレイはそれを確認し、残存部隊に指示を出していく。

 

 

「残存部隊は中央部隊と合流し、態勢を整え、レヴィアタン様から指示を仰げ!我が部隊は戦線維持、深追いはするなよ!」

 

 

「「「「了解!」」」」

 

 

 イースレイの部隊によって救われた残存部隊はイースレイの指示に従い中央部隊に合流していく。天使、堕天使の部隊もそれなりの被害を受けたのだろう、両勢力とも撤退していく姿が見られる。その姿を見てイースレイは警戒レベルを一つ下げる。

 

 

 暫くすると魔王レヴィアタンから後退するように指示が出される。

 

 

 こうしてイースレイの一度目の戦闘は終了した。

 

 

 

 

 




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