あの会議から数日が経過した。それまでは各勢力は部隊の編制、今後の方針の伝達、参加しない者の戦場からの隔離、二天龍を分断するために用いる広域型転移魔法陣の作成、戦争によって疲弊した者の回復。自身らがやれるであろうことをすべてやり終え、 三大勢力は選りすぐりの精鋭と共に二天龍が戦う戦場に赴く。
作戦の内容は初めに後期型転移魔法陣を使い二天龍の片割れ赤龍帝ドライグとイースレイの転移を行い、連合軍は白龍皇アルビオンをできる限り速やかに討伐、または撃退する。イースレイが赤龍帝ドライグを相手する理由としては赤龍帝ドライグの火力が理由となった。赤龍帝ドライグの大きな特性として挙がる倍加、無上限に上がる攻撃力は大軍を率いる連合軍に大きな打撃を与えることを危惧され、1人で戦うイースレイに任せることになった。一人で戦うのなら周りに気を使うことなく、回避しやすいという事を考えられての作戦だった。
「ふっ~~~………」
イースレイはこれから始める苛烈極まりない戦闘に緊張しながら大きく深呼吸をする。イースレイの魔力はここ数日間の休息によって大半を回復させることができた。しかし、それでも万全とは言えなかった。それほど、イースレイの魔力は今までの戦争によって大きく削られていたのだ。ここで無いものをねだってもどうにもならない。今あるものでどうにかするしかないのだ。
「それでは作戦を開始する。イースレイ、準備はいいか?」
魔王ルシファーの言葉にイースレイは頷く。この作戦はイースレイが生命線と言っても過言ではない。イースレイの働き次第で、大局は大きく変わる。
「ええ、問題ないですよ。何時でも行けます」
「ふん、貴様の潔いところは私も好きだ。だからこそ、私も最後に一つ魔王として命令をしよう…………死ぬことは許さん」
魔王ルシファーのらしくない激励にイースレイは自然と笑みが取れる。今まで緊張し、重たくなっていた身体が軽くなる。
「座標固定完了、転移先マーキング終了、いつでも転移できます」
その言葉と共にイースレイは魔法陣の中に入る。
「これから予定された場所に赤龍帝と共に強制転移させます。準備はよろしいですか?」
「ああ、いつでも構わない」
イースレイは魔力を身体から充満させ、準備を整える。
「わかりました。では、転移開始します!」
そして、イースレイの視界が真っ白に染まっていく。視界は予定通りの場所に変わる。瞬間、強大な龍のオーラがその場に充満する。それに反応し、いち早く魔法陣を描き始める。複雑な魔法陣が瞬時に構築されていく。
『なっ?!ここはどこだ?!白いのはどこに行った?!』
突然の出来事に困惑を示す赤龍帝ドライグ。そんな、相手を気にすることなく魔法陣を完成させるイースレイ。魔法陣が完成し、魔法陣が輝く。それと同時に強大な魔力が漏れ出す。その魔力に反応する赤龍帝ドライグ。
『な、何だこの魔力は!?貴様――――――』
「
カッっと光った瞬間、大きな爆発が戦場を覆う。おそよ、個人に使う威力ではないが、相手は彼の二天龍赤龍帝ドライグだ。これでも足りない。だが、手傷を負わせるには十分足りうる威力だと言う手応えはあった。
『ぬぅぅぅぅ!何者だ!俺が赤龍帝ドライグと知っての事か!』
案の定、ドライグには大きな手傷は与えられなかったが、鱗の所々が裂け、血が流れている。だが、それも一部だけだ。致命傷には程遠く、戦闘に影響すらないだろう。
「赤龍帝ドライグ、私達が生き残るために貴方をここで倒させてもらう」
イースレイは予め用意していた術式を解放する。これこそ、イースレイが用意した対龍迎撃魔法。その魔法は龍の鱗を砕き、龍の肝を潰し、龍の魂すらも刈り取る。
イースレイの身体から尋常ならぬ魔力が迸る。イースレイの銀髪はより白く染まっていき、その瞳も普段より力強く、鋭くなっていく。
『その魔力、その近寄りがたい波動、貴様悪魔にもかかわらず、
「その問いに答えるつもりはない。私の守るべきものの為に私はお前を殺す!」
イースレイは尋常ならぬ魔力を拳に纏わせゆっくりと拳を引く。
「氷結龍の崩拳!」
イースレイの一撃がドライグの胴を打ち抜く。その一撃は鱗を砕き、ドライグの肉を潰す。ドライグは龍殺しの一撃を受け、その脅威を身をもって実感させられる。それと同時に目の前の悪魔を倒すべき敵に認識を置き換える。
ドライグは痛みを堪えながら巨大な体を回転させ、イースレイを振り払い、尻尾を鞭のようにしならせ、イースレイを弾き飛ばそうとする。イースレイは回避できないことを悟るや否、迎撃態勢を整え、その一撃に打って出る。
「氷結龍の冷却!」
イースレイは両手を重ね小型の吹雪を発生させ、尻尾を凍結させようとするが
『BoostBoostBoost!』
一瞬のうちに威力が跳ね上がった一撃に有無を言わさず弾き飛ばされる。イースレイの一撃が瞬く間に消しとばされ、猛威を振るう。
「ぐっ、やはり元のスペックが違うだけある。私にその力があってもこうはいかないだろう」
イースレイの言う通り、龍と悪魔とでは基本的なスペックが違う。悪魔は人間よりも頑丈にでき、魔力を使うことができるが、龍の様に強靭な鱗を持っている訳でもなく、ブレスを吐くための頑丈な肺を持っているわけでもなく、鋭利な爪、強靭な牙も腕力もない。イースレイの肉体は並の悪魔より強靭ではあるだろうが、それはドラゴンにとっては脆弱でしかないだろう。事実、イースレイは肉体を魔法で強化することによって、スペックを底上げしている。それに対して、ドライグは生まれ持った力は魔法で強化したイースレイと同等かそれよりも上を行っている。それにドライグの特性である倍加が加われば、イースレイが放つ一撃の数十倍の威力すらもたやすく出すことができるだろう。それを補うための滅龍魔法とドラゴンフォースなのだが、これでは微弱のアドバンテージしかない。
先程の一撃はかき消されはしたが、ダメージはそれほど多くはない。肉体が強化されていたのもあるが、それ以上にイースレイの一撃が威力を減衰させたのが大きかった。一瞬でかき消されたとはいえ、滅龍魔法。龍に対しての特効作用が働き、攻撃を防ぐにも一役買っていた。
「氷結龍の逆鱗!」
イースレイの口から巨大な吹雪が放たれる。それと同時にイースレイはその場から
『ぬ、悪魔が口からブレスを吐き出すとは龍の真似事か?だが、威力は我らと遜色ない、面白い!』
ドライグもそれに応えるように大きく息を吸い込みブレスを放つ準備を行う。
『
赤龍帝ドライグの絶技の一つ、
ドライグの一撃とイースレイの一撃が衝突し、強烈な衝撃波がその場に弾ける。互いの一撃は初めこそ拮抗していたが、イースレイの一撃は徐々に押されていき、ドライグの炎に飲み込まれる。そして、イースレイがいた場所に大きな火柱を昇らせる。
「はあ!滅龍奥義、
イースレイはドライグが大きな力を使った反動で倍加が解けた瞬間を狙い、自身の最高の一撃を放つ。イースレイから放たれた一点に力を凝縮された白刃の一太刀がドライグを襲いその片腕を根元から断ち切る。
『ぬ、がぁぁぁぁぁぁぁ?!き、貴様ぁぁぁぁぁ!たかが悪魔風情がこの俺の腕を斬ったな!許さん、許さんぞ!』
そのことに怒り狂うドライグ、そこには今までのような好奇な視線や油断、傲りは一切なく、唯目の前の敵を葬り去らんとする一体の龍が、その身から禍々しいほどの龍のオーラを溢れ出しながら眼前の敵を睨め付けていた。
「さて、奴さんもようやく本気になった……ここからが本当の死闘だな」
ここから先はイースレイもやすやすと攻撃を受けるわけにはいかなくなった。これから放たれる攻撃は先程までの優しい攻撃ではなく、生半可な防御など破壊し尽くす本当の龍の一撃が飛んでくるだろう。イースレイにとって、その一撃は掠るだけでもただでは済まない。仮に直撃でもしたら言葉通り消し飛ぶかもしれない。
此処からは文字通り、精神をすり削って行われる命を賭けた戦い、死闘だ。生半可な覚悟、判断は一瞬で命を散らすこととなるだろう。
イースレイはヤハウェと闘っていた時以上に精神を研ぎ澄まし、自身の余分な思考を排除していく。
「生き残ってあいつに謝るまで、私は死ねない、死ぬわけにはいかないからね」
まだ教えていないこともたくさんあるしっと笑いを浮かべ、イースレイは再びドライグに向かって攻撃を始める。
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