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本当にありがとうございます!
今回は少し短めです。
これを機に物語を一気に進めていきたいと思います!
ですが更新は気まぐれですのでご了承ください。
彼女は嫌気がさしていた。
何をしても認められず、実績を収めても当然、できて当たり前、何をしても二番煎じ、
そんな周囲の目が嫌で嫌で仕方がなかった。
優秀な兄、数少ない最上級悪魔に歳若くして昇進した自慢の兄、小さい頃から自分に魔法を教えてくれた博識な兄、自分の我儘に付き合いいろんなことをしてくれた優しい兄。
いつからだろう、そんな兄が疎ましく感じるようになったのは?
いつからだろう、そんな兄が自分にとって邪魔な存在になったのは?
苦悩を抱える彼女はある日こんなことを考えた。
何故私はこんなにも苦労しているの?
何故こんなにも認めてもらえないの?
何故できて当たり前っていわれるの?
何故あの人と比較されなきゃいけないの?
何故私自身を見てくれないの?
そんな思いが胸の内を占めていた。何をしても認めてくれない周囲、どんな時でもついて回る比較対象の兄、自分個人を見てくれない周囲の目、全てに嫌気がさしていた。
そんな彼女はある日、何故か家には自分と兄の二人だけの時があった。
その時は来るべくして来たのかもしれない。
その時、何がきっかけだったかはわからない。たわいのない日常的な話だったかもしれない。魔法の話だったかも知れない。仕事の話だったかもしれない。大きなきっかけはなかった。しかし、なるべくしてなったのかもしれない。
彼女の言葉によって無情にも崩壊の時は訪れた。
平和な日常が壊れた瞬間だった。
「私は何をやってもあんたのようにはできない!なのになんであんた達は私にそんなに期待するの!私はあんたじゃない!私も精いっぱい頑張ってるのに!」
それが始まりだった。彼女は感情の高ぶりに思考がついて行かなくなった。考えた言葉ではなく、自身が今まで思っていた言葉が際限なく溢れ出していく。まるで崩壊したダムの様に今まで我慢してきた感情が溢れ出してくる。すでに彼女は自分の意思では感情をコントロールすることができなかった。今まで言われてきた、今まで我慢してきた感情が噴き出してくる。それは次々と彼女の口からとめどなく溢れ出す。
「なのに皆はあんたができるからできて当たり前だとか、あんたの妹だからこれくらいできてないと困るだとか、もううんざり!私はあんたの妹セラフォルーじゃない!私はセラフォルー・シトリー!私は私個人として見てもらいたいのになんでみんな私とあんたを比較するのよ!」
そしてここから歯車が狂い始めた。
「私はあんたなんかいらない!兄なんかいらない!あんたなんか嫌い!どこかに消えてよ!」
セラフォルーは嗚咽交じりに自分の言いたいことを言い大粒の涙を流しながら走り去っていく。その時、イースレイはセラフォルーを追いかけることができなかった。何故なら今イースレイが追いかけてもどうしようもないからだ。セラフォルーが傷ついている理由はイースレイ自身にあるのだ。それがイースレイが意図していなかったとしてもセラフォルーを傷つけてしまったことには変わりない。
『私はあんたなんかいらない!兄なんかいらない!あんたなんか嫌い!どこかに消えてよ!』
あの言葉には衝撃を受けた。流石のイースレイも自分の妹がここまで参っているとは思っていなかった。心の優しいセラフォルーが涙を流しながらも言った心の叫びだ。イースレイは自分が優秀だと思ったことはない。唯他の悪魔と違い少し異質なだけなのだ。イースレイは他の悪魔とは違う感性を持っており、それ故に幼少の頃は魔力を上手く扱うことができず苦い思いをしたこともあった。ちょっとしたきっかけが偶然にもイースレイにとってプラスに働き自身を高めることに成功しただけだ。その過程により様々な魔法を生み出し実績を積み重ねていった。それはあくまでイースレイにとって副産物でしかない。周りに評価してもらうためにしたことではない。イースレイは自分に定着する魔法を探した結果できたものなのだから。
実績だけ言えば大したものだがイースレイの日常は酷いものだ。仕事は期限ギリギリまでやらない。1日12時間以上寝るのは基本、それでも暇さえあれば二度寝三度寝をする。時間に縛られることを嫌い基本的に時刻に関係するものは持たずフラフラとしていることも多い。人種にこだわりがなく多種族と交友関係が広い。無断で堕天使領に侵入。挙げればきりがない。
それでもイースレイは家族を大事にし、自身を生み、ここまで育ててくれた父と母には感謝し、自分を慕ってくれる妹に愛情をもって接していた。
それにも関わらずイースレイは妹を真に理解することはできなかった。彼女をここまで苦しめていたのは自分だという事を知らなかった。彼女の事を知っていたつもりだった。理解していたつもりだった。良き兄であったつもりだった。全てはイースレイの勘違いだった。その事実がイースレイを苦しめる。
「わかっていたつもりだったんだけどな…………」
イースレイは普段通りの飄々とした表情ではははっと乾いた笑いを浮かべる。イースレイは何とも言えない心を抉り取られるような気持ちになる。ぶつけようのない気持ちをどうすることもできずその両手を握りしめる。泣きたい気持ちを抑え力強く握りしめる。
その両手からは赤い液体が滲み出る。
「情けない………黙って聞いている事しかできなかった…………」
イースレイは此処で泣くわけにはいかなかった。本当に辛く泣いているのは自分の妹、セラフォルーなのだから。セラフォルーを傷つけた本人である自分が泣くわけにはいかない。
ポタリと地面に滴が落ちる。それはイースレイの拳から落ちた血だった。まるで涙を流す代わりに流すようにとめどなく両拳から血が流れ落ちていく。
これを機にイースレイはシトリー邸から自身の領土に本格的に移り住むことになった。
まるで目の前の現実から逃げ出すかのように。
こうして二人の運命の歯車は狂い始めた。
どうだったでしょうか?
今回は少しシリアスな感じにしてみました。
これからイースレイとセラフォルーはどうなってしまうのか?!
感想、評価お待ちしております。