白銀の王   作:うたまる♪

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現在の投票数は
グレイフィアが断トツのトップ!
次点に
黒歌
白音
オーフィス
セラフォルー
と言う結果になっております!

引き続き投票を続けていきたいと思います!


初めての眷属3/3

 イースレイは現在高度500m程の空域を高速移動していた。流星(ミーティア)、イースレイが開発した魔法の一つ。その中でも特殊な魔法の一つである天体魔法の基礎魔法だ。その名の通り、流星の如き高速移動することを可能にする魔法だ。その魔法により、イースレイはグレイフィアを連れて現在戦闘が行われている戦場に向かっている。ただしこの天体魔法はイースレイには完全にマッチングせず、良くて70%ほどの出力でしか扱うことができず、氷の造形魔法を使うよりも多くの魔力を消費することになる。多いと言っても流星(ミーティア)の魔力消費量はそこまで多くはないので、そこまで疲弊することはない。

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

 イースレイは右腕に抱きかかえるようにして連れているグレイフィアを気に掛ける。

 

 

「いえ、もう慣れました………」

 

 

 グレイフィアは半ば悟りを開いたかのような表情でイースレイに返答する。イースレイはそんなグレイフィアを見て気分が悪いのかなっと考える。勿論、グレイフィアは気分が悪いのではなくイースレイの規格外さ、予想の斜め上を行く行動に半ば慣れ始めている自分に悲しんでいるだけなのだが。

 

 

 そしてとうとう戦場に到着する。

 

 

 端から見ているだけでも悪魔陣営が劣勢なのがわかる。グレイフィアは初めて見る戦場に少し恐怖を感じながら戦場を観察する。この時イースレイの脳内ではすでに何通りかの手が浮かび上がっている。イースレイはその中でもどれが適切な手かさらに絞り込みをする。そしてイースレイの頭の中ではカチリと歯車がかみ合う音がした。

 

 

「グレイフィア、私が牽制を放つと同時に君は負傷者を回収、その後私の後方支援に回ってくれ」

 

 

 それを言い終えると同時にグレイフィアの返答を聞かず右腕を前方に掲げる。

 

 

「アイスメイク槍騎兵(ランス)!」

 

 

 イースレイの右腕からゆうに百を超える氷の槍が天使の軍勢に襲い掛かる。

 

 

「ぐあっ!」

 

 

「うっ!」

 

 

 牽制攻撃は天使の軍勢を怯ませ、負傷者を量産する。その間にイースレイとグレイフィアは戦場に乱入し、イースレイは前線に立ち、グレイフィアは負傷者の回収を行う。

 

 

「イースレイさんだ!白銀の王が来たぞ!」

 

 

「イースレイさんが来てくれたのか?!」

 

 

「白銀の王が来たのか?今のうちに戦線を立て直せ!」

 

 

 イースレイが援軍として参戦すると同時に先程まで敗色濃色だった悪魔陣営の士気が急上昇する。通常、たった一人の悪魔が参戦するだけではここまで士気が上昇するのは異常だ。それこそ、魔王が参戦した時に士気が上がるのはわかるだろう。しかし、一介の悪魔でしかないイースレイが戦場に現れるだけでここまで士気が上がるのは普通ではありえない。だが、それにはあるジンクスが関係していた。

 

 

「イースレイだと?!」

 

 

「白銀の悪魔が出てきたと言うのか?!」

 

 

「無敗の悪魔が出てきたのか?!」

 

 

 そう、今天使陣営が騒いでいる様にイースレイは戦場に出てから一度たりとも戦で負けたことがないのだ。それこそ、冥界では戦えば必ず勝利を齎す者とまで言われている。それだけにイースレイの参戦は悪魔達にとって大きなことなのだ。

 

 

「指揮を執っている者は?」

 

 

 イースレイの問いかけに一人の悪魔が声を上げる。

 

 

「はっ!現在指揮を執っているのはファルビウムです!」

 

 

 その答えにイースレイは眉を顰める。

 

 

「どういうことだ?上級悪魔の彼が指揮を執っているだと?指揮を執っていた最上級悪魔は?」

 

 

 そう、一つの小隊ならいざ知らず、軍勢を上級悪魔が指揮するなど普通はない。イースレイは最初の報告で薄々わかってはいたが念のために聞いてみる。そして、案の定イースレイの最悪の予想は的中していた。

 報告をする悪魔は悔しそうにしながら答える。

 

 

「指揮を執っていた魔王アスモデウス様は………我々を庇いミカエル、ウリエル、ラファエルの足止めをし、戦死………されました」

 

 

 その言葉にい不覚にもイースレイは呆気にとられた。イースレイも指揮をしていた最上級悪魔が戦死したであろうことは予測していたが、まさか、指揮をしていたのが魔王であり、その魔王が戦死したという可能性は考えていなかった。それと同時にイースレイは自身がやるべきことを導き出す。

 

 

「了解した。皆聞け!」

 

 

 イースレイは珍しく大きな声を上げ指示を出す。

 悪魔達はイースレイが指揮を執ることに期待をし指示を待つ。しかし、その期待は悲しくも彼らが望んでいたものではなかった。

 

 

「今すぐ戦場より離脱し撤退しろ!殿は私がとる!ファルビウムの指揮の元、速やかに撤退しろ!」

 

 

 まさかの撤退だった。しかし、これは仕方のない事だった。しかし、この判断を下したイースレイは英断と言うほかにない。仮にこの乱れた戦線を立て直し、反撃したとしても悪魔陣営には現在負傷者が多く、勝つことができたとしてもこちらも壊滅に近い被害を受けることになることは避けられない。ただでさえ負傷者が多いのだ。このまま継続して戦う事になれば、まずその負傷者から死ぬことになる。一時のプライドの為に多くの命を投げ捨てることは愚か者のすることだ。指揮者とは如何に最小限の力で、最高の戦果を挙げるかだ。そして引き際を見極めることも必要なことだ。第一、魔王の一人が死に浮足立った状態では戦いにならないだろう。頭では理解していたとしても精神的な動揺は計り知れない。故に此処で退却の指示を出したイースレイは正しいだろう。

 

 

「何故ですか?!」

 

 

「我々はまだ戦えます!」

 

 

「憎き天使共に目にもの見せてやります!」

 

 

 勿論、それを受け入れられるほど、悪魔達のプライドは低くない。トップがやられて黙っていられるほど、彼らも忠誠心がないわけではない。それにここまで壊滅的被害を受けて尚、未だ戦列を保つことができたのはファルビウムの手腕によるものが大きいだろう。出なければ悪魔陣営は早々に崩壊し、散り散りとなっていたっとしてもおかしくはないのだ。

 

 

「最上級悪魔命令だ!全軍撤退!命を無駄にするな!」

 

 

 イースレイの命令に歯を食いしばりながらイースレイの指示に従い撤退を開始していく。天使たちはそれを好機と捉え追撃を開始しようとするが、そんなことはイースレイが許さない。

 

 

「アイスメイク戦斧(バトルアックス)!」

 

 

 イースレイは追撃を開始する天使たちを巨大な氷の斧で薙ぎ払う。その間に悪魔達は次々と撤退をしていく。

 

 

「アイスメイク城壁(ランパード)!」

 

 

 巨大な氷の城壁がイースレイの背後に作られていく。その高さはゆうに500mを越え、長さは1kmにも渡る長さだ。

 

 

「ふぅ………これで追撃される心配はないね」

 

 

 イースレイはこう言っているが、第三者からしたらイースレイのしたことは正気の沙汰ではない。イースレイは自らの退路を自らの意思で閉ざしたのだ。これではイースレイは天使達を全て相手することになる。魔王ですら殺される相手を自身1人で食い止めるのだ。無茶を通り越して無謀としか言いようがない。

 

 

「私以外誰も居なくなった………これで私は―――――――――」

 

 

 

―――――全力で戦える―――――

 

 

 イースレイは一人呟くように言葉を続ける。そしてこれが白銀の王、イースレイが出す初めての本気だった。

 

 

第二魔法源(セカンドオリジン)解放!」

 

 

 この瞬間、今まで使わず封じていた第二の魔力貯蔵庫それを解放する。それと同時に戦場の空気が急激に低下する。

 

 

「アイスメイク限界突破(アンリミテッド)!」

 

 

 イースレイは自身の周囲を取り巻くかのように氷が生み出されそれが武器へと変貌していく。それは一秒ごとに数十の武器を造形していく。

 

 

「殺す気はない。死なないでくれよ?」

 

 

――――――一勢乱舞―――――

 

 

 その瞬間数百の造形された武器が掃射されていく。それらは全て天使たちに向かって放たれる。

 

 

「回避しろぉ!」

 

 

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 

 

「ごふっ!」

 

 

 一応イースレイは殺さないように力を抑えた。それが災いになったのか天使たちはすぐさま態勢を整え直し次々とイースレイに襲い掛かり光の槍を投擲する。

 

 

流星(ミーティア)!」

 

 

 イースレイは流星となり、高速移動し全ての攻撃を回避する。しかし、イースレイの回避行動先を予想していた思わぬ伏兵が現れる。

 

 

「いただきます!」

 

 

「もらった!」

 

 

 ミカエルとウリエルだ。二人はイースレイの回避行動先を予見し、先回りし強襲を仕掛ける。それに対しイースレイは冷静に余裕をもって防御態勢に入る。

 

 

「アイスメイク(シールド)!」

 

 

 凍りの盾を造形し二人の光の剣を防ぐが、あまりの威力に盾は破壊され、衝撃破によって吹き飛ばされる。追い打ちをかけようとするが、イースレイの表情を見てその動きはピタリと止まる。イースレイは微笑を浮かべていたのだ。そしてミカエルとウリエルは知っていた。イースレイのああいった表情は毎回自身の計算がうまくいったときの表情だという事を。それを裏付けるように上空に立体魔法陣が浮かび上がる。

 

 

「上空に魔法陣が?!」

 

 

「いつの間に?!」

 

 

 勿論、光の槍を回避しながら描いた術式だ。その猛威は戦場全てに降り注ぐ。

 

 

「七つの星に裁かれよ―――――七星剣(グランシャリオ)―――――」

 

 

 七つの立体魔法陣から隕石にも匹敵する衝撃波が放たれる。予期せぬ攻撃に天使たちは防御態勢を整える間もなく衝撃波をもろに受ける。

 

 

「くっ、なんて魔法を?!」

 

 

「ミカエル様!先程の攻撃で戦力の半分が深刻なダメージを負いました!これ以上の戦闘は……」

 

 

「やむをえませんか………」

 

 

 ミカエルは口惜しい気持ちを抑え退却の指示を出す。流石にミカエルやウリエル、ラファエルは無事だが、部下の天使たちはそうとはいかない。このまま戦えばイースレイを仕留めることはできても被害は目も当てられなくなるだろう。それを見越しての撤退だった。ミカエルはイースレイを倒す千載一遇のチャンスを逃したことに歯がみするが、魔王の一角を落としたのだ。これ以上もない戦果だ。今回はこれ以上の戦闘は無駄だろうと判断した。

 

 

 ミカエルたち天使が撤退していくのを見て安堵する。それと同時に背後にそびえたつ氷の城壁が崩れ去る。

 

 

「まずいな、先程の天体魔法で魔力を消費し過ぎた」

 

 

 天体魔法を加え、広大な大地に巨大な氷の城壁を展開し続ける。その両方を並行して行うことがどれほど魔力消費が高い事か。現魔王でもできないだろう。だが、その甲斐あってイースレイは見事殿を果たすことができたのだ。これ以上の戦果はない。

 

 

「私も帰るとするか」

 

 

 イースレイが背後を振り返るとそこには自分の眷属、グレイフィアがその場にいた。そのことにイースレイは驚愕する。イースレイも彼女は一緒に撤退していたと思っていたのだ。それが今もこうしてここに残っているのだ。イースレイは訝しげな視線をグレイフィアに送る。そんなイースレイを気にすることなくグレイフィアはねぎらいの言葉をかける。

 

 

「お疲れさまです。無事で何よりです」

 

 

 そんなグレイフィアに驚きながらも返事を返す。

 

 

「やあ、何でまだここにいるんだい?」

 

 

 イースレイの純粋な疑問をグレイフィアは自身の正論を返す。

 

 

「私は貴方の従者です。従者が主を置いて逃げるわけにはいかないでしょう。それに貴方は後方支援をしろと言いました。最も貴方の使った魔法のせいで加勢に駆けつけることもできませんでしたが」

 

 

 グレイフィアの皮肉に近い言葉に笑いを浮かべるイースレイ。そう言えば後方支援を頼むとか言ったなと思いだす。そしてグレイフィアの次の言葉にイースレイの表情は固まった。

 

 

「何故敵を一人も殺さなかったんですか?」

 

 

 イースレイの笑いはピタリと止まった。そしてグレイフィアになぜばれたのかと考えるが、それはすぐにわかった。

 

 

「あれだけの攻撃を行い一人も死傷者が出ていない時点で気が付きます。それより何故ですか?」

 

 

 イースレイはグレイフィアに見られたことを後悔した。最上級悪魔でありながら敵を一人も殺さない。そんなことがばれたら上層部に何を言われる溜まったものじゃない。始末書どころか、最悪罪に問われるかもしれない。そう考えながらイースレイは溜息を吐く。今日は厄日だと。

 

 

「グレイフィアさん、私はね、全ての命は尊いものだと思っているんだ。そしてその命をこんなくだらない戦争で散らせるのは無駄だと思わないかい?それに敵とはいえ、殺しは極力したくない。最もこれは私の唯のエゴだけどね」

 

 

 事実、今回もイースレイは造形魔法は片手でしか行わなかった。それは一重に相手を殺したくないと言うイースレイの意思表示だ。これだけはイースレイにも譲れない自身の矜持だ。

 

 

「そうですか……たとえ戦争をしている相手だとしても殺したくはないと?随分と自分勝手で甘い考えですね。その甘さが味方を殺しますよ?」

 

 

 グレイフィアのいう事は最もだ。これはグレイフィアに嫌悪されても仕方がないだろう。イースレイはだから眷属は持ちたくなかったんだと心の中で思うがすでに時すでに遅しだ。イースレイはこの後に起こるであろうことを予想し、自身の甘さに反吐が出そうだった。

 

 

 しかし、グレイフィアがイースレイに掛けた言葉はイースレイの予想外の物だった。

 

 

「でも、そう言った優しい心を持つ悪魔が一人くらいいてもいいと思いますよ?」

 

 

「はっ?」

 

 

 イースレイは一瞬グレイフィアが何を言っているのか理解できなかった。まさか自分の考えを否定するわけではなく、肯定してくれるとは思わなかったのだ。まさかの出来事にイースレイは笑いを禁じ得なかった。

 

 

「ぷっ…ははははははははは!」

 

 

「な、何で笑うんですか?!」

 

 

 グレイフィアは私はおかしなことを言いましたかと言いたそうな表情を見て笑いを止める。

 

 

「い、いや、何でもないよ。悪かったね、笑ったりなんかして」

 

 

 これがイースレイがグレイフィア・ルキフグスを正式な眷属に迎え入れた瞬間だった。

 

 

 




書き終えて読み直すと何だコレ……ってなった作者です。


今回は長くなった分駄作になりました。


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