アイドル ルッコ
イッシュで有名なアイドル。ライブキャスターで話すのが好き。ポケモンはノーマルタイプが好み。代表曲は『ライブキャスターラブ』。目標にしてる人がいるらしい。趣味は散歩。
家族構成は両親に加え、弟と妹がいる。弟のハハコモリに勝てなくて困ってるらしい。妹はまだポケモンを持ってない。
手持ち
トゲキッス
ヒメグマ
ニャース
ヒウンシティジム
「ス、ストップ! ストップだよ!」
ヒウンシティジムにはアーティのアトリエがある。芸術家である彼が仕事をするスペースだが、時たまシッポウのアトリエへ出掛けたりして滅多に使われない。エンブレムの試練を受ける時はこのアトリエを借りる。
試練の内容は心の内面を絵に描くこと。シンジは芸術的感性が無いと自分で思ってるため、挑戦はしなかった。
アッシュが挑戦したのだが、珍しく慌てたアーティに止められてしまった。
「これは無理もないな」
ポカブのマインはアッシュの絵を見て理由を知る。ひたすら黒いクレヨンで画用紙を塗り潰すだけのものだった。
「内面に浮かんだものだけど?」
「お前の内面が非常にダーティーなのはよくわかった」
どうやらアッシュの内面は真っ暗闇らしい。実の息子を人質に使う様な人間が母親なら、それも仕方ないだろう。
アッシュは数日ポケモンセンターで休んでいくことになった。そして、退院したので試練を受けてる最中だ。その結果がこれである。
「あー、また来なよ。今度来た時は多分変わってると思うから」
「はい、わかりました」
あんまりな内容だったので、アーティも試練を保留にした。アッシュとマインはジムを出る。ジムの近くには巨大なモニターがくっついたビルがあり、何やら色濃い連中が集まっていた。どうやらアイドルのファンクラブらしい。
アッシュはその中から、見知った人物の姿を見つけた。エルトだ。街中でも構うことなくフードを被る人間は彼くらいだろう。
「エルトさん」
「お、アッシュか。今から重大な発表があるぞ!」
「重大な発表?」
「これを見てくれ」
集団に交じるエルトを見つけたアッシュは話し掛けてみる。エルトは重大発表があるというが、アッシュにはわからない。そこでエルトは一冊の本を見せる。
「何々……」
「『トゲキッスと王女の冒険』って読むんだ」
アッシュは漢字が読めず、マインに読んでもらった。ファンタジー小説の様だ。作者はシキミという人物らしい。
「四天王のシキミさんが書いたファンタジー小説だ。トゲキッスを連れた王女が国中を冒険して悪党をぶちのめす、正統派勧善懲悪モノなんだ。存在自体のモデルはサルビア王女なんだけど、性格や外見はルッコちゃんがモデルだ」
「それが今度映画化するんだ」
エルトが説明していると、1匹のルカリオが顔を出す。アッシュはそのルカリオに見覚えがあった。
「アリスさんのルカリオ?」
「あいつには秘密にしてくれ。女にうつつを抜かすと怒られる」
アリスのルカリオだった。彼もまた、ルッコか小説のファンなのだろう。物言いから推測するに、ルッコのファンだ。ハッピを着て鉢巻きまで巻いて、気合い十分。
「それで、映画化の主役は当然モデルのルッコちゃんだろうってなってな。ファンでルッコちゃん初の主演を祝うことになったんだ。シキミさんもそれを望んだ」
ルカリオが解説を変わる。ふとアッシュが道端を見ると、本を読むシンジとハツネがいた。もちろんトゲキッスと王女の冒険を読んでいる。チョロネコのマチルダは興味なさそうに傍で寝ていた。
「おい、映画見るには何処まで読んだらいいんだ?」
「5巻じゃないかな? 一応、アフロの炎使いとはそこで決着だし」
彼らも彼らなりに映画を楽しみにしていたのだ。クールで大人びたシンジにも年相応の部分があるらしい。
「じゃ、こいつにも見せてやろう。出てこい、イージス!」
エルトがボールを投げ、中からトゲキッスを出す。エルトはトゲキッスを育てたことがあるらしい。
「もうすぐ発表だぞ」
「結果は決まり切っている」
モニターがニュース番組を映す。誰がどんな映画の主演になるといった情報はニュースでなく広告に近いのだが、ブルジョワ財閥がスポンサーの番組なら仕方ない。
『四天王シキミさんの小説「トゲキッスと王女の冒険」の映画化が決まりました。主役の王女役を勤めるのは人気女優のカタリンナさんです』
情報を聞いた瞬間、アッシュとシンジ以外が盛大にずっこけた。2人は先日のペンドライダーの撮影を思い出す。
「大丈夫かな?」
「この映画は爆死だな。原作面白いのに残念だ」
一抹の不安を感じる2人に対し、ファンは怒り浸透だ。特にルカリオ。
「ぐぬぬ……ブルジョワ財閥の仕業か、ゆ゛る゛さ゛ん゛!」
『王女のポケモン役はカタリンナさんのワシボンです』
「トゲキッスですらないとは、ゆ゛る゛さ゛ん゛!」
トゲキッスすら出ないとわかりエルトも怒り浸透。ファンの皆さんも同様に怒り浸透。最早原作無視というレベルじゃない。
「ポケウッドならこんなミスキャストやらかさんぞ!」
「抗議だ、断固抗議する!」
ファンは全員で何処かへ向かう。恐らく、カタリンナのいる事務所だろう。ヒウンシティは大都会だから芸能事務所くらいある。
「ルカリオ?」
「悪の匂いを嗅ぎ付けた」
しかし、ルカリオのみがファンの隊列を外れる。アッシュはそれについていく。アリスのルカリオだからか、悪に敏感だ。アッシュは一旦、マインとマチルダをボールに戻す。
ルカリオとアッシュが着いたのは古びた事務所。その前に怪しげな男達がいた。
悪の匂いとやらはこいつらからしてるらしく、ルカリオが足を止める。彼らはリベレート団のバッチを付けていた。
「フヒヒ。作戦は成功だ」
「事務所を脅して仕事を受けれなくしてやったぜ」
どうやら、事務所を脅して仕事を奪った様だ。リベレート団はブルジョワ伯爵の配下。ブルジョワ財閥が持つ芸能事務所が儲かる為に駆り出されてもおかしくはない。
「リベレート団!」
「やはりこいつらか」
ルカリオは問答無用ではどうだんを放つ。リベレート団は吹き飛ばされた。
「捕まえた!」
あっという間にリベレート団を拘束。ファンを怒らせると怖い。その騒ぎを聞き付け、事務所の人が外に出てきた。ルッコと思わしき人物も一緒だ。
「この騒ぎは……」
「こいつら、事務所を脅してた奴だ!」
「ふざけんな死にさらせ!」
事務所の人達は捕まったリベレート団をボコボコにしてウサ晴らししていた。映画の主演を奪われた恨みは大きい。
「君が捕まえたのか?」
「ルカリオが捕まえたんです」
アッシュは事務所の人に事の顛末を語る。詳しい話を、特にアッシュがペンドライダーでリアルな人質役を演じた件について話すため事務所の中へ。
「今日は弟からハハコモリを借りて事務所の掃除を手伝ってもらったんです」
「ハハコモリ……」
ルッコからハハコモリの話を聞き、アッシュは親代わりだったハハコモリを思い出す。事務所の応接室にあるソファーに座り、アッシュは話をする。
「ゲストだったシンジのドタイトスがボクを人質に抜擢しまして」
「お茶入りましたよー」
「あ、お構いな……」
普通に受け答えようとしてアッシュが固まる。お茶を汲んできたのはルッコが弟から借りたハハコモリだが、そのハハコモリまで固まっている。
「アッシュ……」
「ハハコモリ!」
「え、知り合い?」
なんと、そのハハコモリこそがアッシュを育てたハハコモリだった。ルッコは弟の言葉を思い出す。
「弟が野性のハハコモリを珍しく見たから捕まえたって言ってて、しかもどうやら前のトレーナーに捨てられたって……」
「前のトレーナーはボクのお母さんです」
「そうなの」
アッシュはハハコモリとの話をルッコにする。親代わりだったハハコモリとレントラーを探すことが旅の目的だ。
「よかったじゃないか」
「これで目的は半分達成ですわね」
マインとマチルダもボールから出て再会を祝福する。あとはレントラーを探すのみ。
「会いたかったよ……」
アッシュはハハコモリに抱き着き、泣いていた。心のよりどころであったハハコモリとレントラーを失った2年がいかに辛かったか、想像に難くない。
「あ、ライブキャスターです」
その感動を打ち破る様にルッコのライブキャスターが鳴る。せめてこれ以上感動を壊さない様にルッコは給湯室まで行ってから話をする。
『もしもし? ルッコちゃん? トゲキッスは元気?』
「あ、エルトさん。お久しぶりです」
ライブキャスターの相手はエルト。彼がルッコにひかりのいしとトゲキッスの育成法をまとめたレポートを郵送で渡した際、ライブキャスターの番号も渡していた。かつて一度、ルッコのトゲキッスが羽を怪我した時にリハビリの仕方をエルトに聞いたのだ。だからエルトもルッコの番号を知っている。
『怪しく思ってカタリンナの事務所、ブルジョワ芸能だな、そこに行ったんだ。そしたら案の定やましいことしてましたぜ。それを追及したらあいつらルッコちゃんの事務所襲うって! 今から行くけど迎撃態勢整えて! トゲキッスならできる!』
「え? ええ?」
エルトの突然な話にルッコは驚きつつ、事務所の窓から空を見た。すると、大量のポッポがワシボンに率いられて事務所の上空を飛んでいた。
「見つけました! 私の仕事を数の暴力で奪う卑怯者!」
「汚い金使ったテメーが言うなボケ!」
事務所の前にカタリンナがいた。ルカリオが言い返したのだが、アッシュ以外には何を言ってるかわからない。
「さあワシボン! やっておしまい!」
「お願い、トゲキッス!」
ルッコがトゲキッスを出して迎撃する。彼女はエルトのレポートにあったトゲキッスの戦い方を頭で反芻する。彼女のトゲキッスはとくせいが相手の急所に当たり易くなる『きょううん』。『てんのめぐみ』と違ってエアスラッシュによる怯み効果が期待できず、『はりきり』の様に高い破壊力も無い。トゲキッスの決して低くない力を活かしたオーソドックスな戦いを展開するのがベストだ。
「まずはでんじはで相手を麻痺に!」
でんじはを使えるトゲキッスはまず、相手を麻痺させることがポイント。トゲキッスが放つ電磁波でポッポ達が落ちる。
「そのままはかいこうせん!」
落ちたポッポに向け、トゲキッスがはかいこうせんを薙ぎ払う。ポッポは全滅した。
「よくも! こうなったらワシボン、つつく!」
カタリンナがワシボンに技の指示をする。つつくしかチョイスできないのが悲しくある。さらにいえば、つつくで接近してる間にトゲキッスがはかいこうせんの反動から立ち直ってしまった。そのくらい攻撃が遅い。
「トゲキッス、かわして!」
ルッコの指示でトゲキッスがつつくをかわす。トゲキッスは8の字に飛んでいるだけだが、何故か繰り返してワシボンが仕掛ける攻撃が当たらない。
「なんで当たらないの!」
「それはただ8の字に飛んでるだけに見せ掛けて、途中でスピードを微妙に変えてるからだよ」
慌てふためくカタリンナの隣に、いつの間にかエルトが現れる。アッシュ達も事務所の前までやって来た。
「エルトさんが教えたんですか? この避け方」
「これはルッコちゃん自身が考えたみたいだね」
ルッコが考案した回避方法でワシボンはあっちへこっちへの大騒ぎだった。特定のルートを飛行してる様に見せ掛け、地味にスピードを変えることで攻撃タイミングを崩しているのだ。
「そのままエアスラッシュ!」
ルッコはトゲキッスにエアスラッシュを撃たせる。怯み効果が期待できないといえ、威力は充分だ。エアスラッシュはワシボンの急所に当たり、ワシボンは倒れた。
「ポッと出のアイドルの癖に!」
『お前が言うな』
「こうなったら、ゴーゴート!」
全員一致のツッコミを受けつつ、カタリンナはゴーゴートなるポケモンを繰り出す。見覚えのないポケモンだが、ケンタロスやバッフロンに近いものを感じる。
「見た目草タイプみたいだね。マイン!」
アッシュは見た目で相手のタイプを割り出し、炎タイプのマインを出した。ハハコモリも臨戦態勢だ。草タイプは虫タイプにも弱い。
「マイン、オーバーヒート! ハハコモリはシザークロス!」
マインがオーバーヒートを放ち、ゴーゴートに大ダメージを与える。そして、ハハコモリがシザークロスで追撃する。
「ふざけんなー!」
あまりにお粗末な出され方をされたゴーゴートは怒り狂い、カタリンナに突進した。カタリンナは吹き飛ばされ、ゴーゴートのボールはゴーゴート自身によって踏み砕かれた。
「マズイ、ゴーゴートはこの地方にいないポケモンなのに……。こんなところで野性化したら大変!」
ルッコはゴーゴートについてある程度知ってるようで、彼の心配をした。アッシュはモンスターボールを取り出し、ゴーゴートに向かって投げる。
「ボクと来る?」
その声にゴーゴートは驚いた。そのままボールに入り、ゴーゴートはゲットされる。アッシュはボールを拾い、中からゴーゴートを出して確認する。
「これで大丈夫」
「お前なら安心だな」
エルトもアッシュがポケモンを大事にすることを知っているので安心した。ルッコも心配が晴れ、笑顔を見せる。
「アッシュ、成長したねぇ」
ハハコモリはアッシュの精神的成長をシミジミと感じる。ハハコモリが見て来たアッシュは、彼女が紹介したポケモンとトモダチになるだけだった。オマケにゲットするということはしなかった。だが、今のアッシュはポケモンを自らゲットした。
「マチルダの時もそうやってゲットすりゃよかったんだよ」
「ゴーゴートはイッシュで野性だといろいろマズイみたいだからね。レントラーを見つけたらボクが住家に送り届けるよ」
アッシュはゴーゴートの頭を撫でながら、マインに答える。ゴーゴートを元の住家へ戻す為に連れていくことにしたららしい。
「君、名前は?」
「名前?」
アッシュがゴーゴートに名前を聞くも、その概念そのものにゴーゴートが対応出来てなかった。マインやマチルダの様に、ポケモンがみんな名前を持ってるわけじゃない。
「ほら、あたしらみたいに名前を持ってないんだよ。お前が付けてやれよ」
「そうなんだ。えーと、トーゴなんてどうかな?」
アッシュが即座に名前を決める。ゴートをひっくり返しただけだが、なかなか様になっていた。
「トーゴか、いいな。アッシュとか言ったな、これから頼むぞ!」
「うん。よろしくね、トーゴ!」
アッシュはハハコモリと再会し、新しい仲間を手に入れた。ゴーゴートのトーゴ、まだ謎の多いポケモンだが、アッシュの力となるだろう。
「アッシュ、私もついて行きたいが……」
「わかってる。新しいトレーナーさん、いい人なんでしょ? 大丈夫、ボクにはたくさんトモダチが出来たから、ハハコモリは自分がしたいことしてよ」
アッシュはハハコモリの言葉を止める。マイン達と出会う前の彼なら、全力でハハコモリを引き止めただろう。だけど、アッシュにはたくさんのトモダチがいた。
アッシュはもう、ひとりぼっちじゃないのだ。
原作プレイバック ルッコ
原作『ポケットモンスターBW2』ではテレビによく出演してるアイドルとして登場。男主人公を選択したなら彼女と話す機会が得られる。
手持ちは話す機会を得た人ならお分かりいただける構成に。バトルはあまりしなさそうであるが、ポケモンは懐いてるだろうし進化に必要なアイテムをくれるファンもいそうなので、それを考慮して切り札はトゲキッスになった。
テンプレートに見えがちな構成の中にも、はかいこうせんのチョイスなどバトルをあまりしないなりに考えたチョイスが光る。
アッシュの親代わりをしたハハコモリのモデルとなったハハコモリは、彼女の言葉からその存在を知ることができる。しかしながら弟がハハコモリをどうやって育てたかは不明。原作ではクルミルから育てた可能性もある。