ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 トレーナーカード
 ギタリスト ティナ
 通称ヒウン番長。下水道からしか行けない場所で仲間達とたむろしている。仲間にベルモンドがいるが、悪魔城とは関係ない。
 手持ち
 ワルビル
 レパルダス
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11.ヤンチャムの挑戦状!

 ブルジョワ芸能事務所 ヒウンビル

 

 ブルジョワ財閥は芸能事務所も所有する。高い広告費をテレビ局に納めることで、ここ2年の間に芸能界を席巻した。テレビ局の大半が運営をブルジョワ財閥からの広告費に頼っており、財閥の指示に従わなければ広告費を打ち切られて苦境に陥る。

 そんな状態だからこそ原作者の意向を無視したキャスティングを『トゲキッスと王女の冒険』でやれたのだが、ファンの力を舐めていた。ブルジョワ芸能所属のタレント達は毎日の様にテレビに出演し、知名度は高い。しかし彼らのファンは『有名みたいだから流行りに乗り遅れない様にファンやっとこう』程度の人間が大半。

 反面、ブルジョワ財閥の影響で出演の減ったルッコを今も応援し続けるのは『地獄の果てまでついていく』熱狂的なファン。ブルジョワ芸能も所属タレントの人気が熱狂的である様に見せ掛けるため、グッズをわざと少なめに生産して売り切れ続出を装ったり、イベントの参加人数を水増ししたりした。

 しかし、本物の熱狂には敵わなかった。その結果が、ヒウンビルの壊滅である。このビルはプラズマ団が使用していたビルで、組織が活動停止に追い込まれた彼らの救済を兼ねて高値で買い取ったのだ。ブルジョワ芸能のタレントが他のタレントを押しのけ、人気でなく金でだから尚更それで人々の怒りを買い、映画の主演騒動で暴動を起こされ破壊された。

 「私の事務所が……」

 その事務所を経営していたのが何を隠そう、アッシュの母親であるシラコだ。ボロボロにされた事務所を見て、彼女は落胆する。

 「この事務所のタレントが人気を得たらポケモンの解放を訴えさせて、プラズマ団の理念を実現させる私の計画が!」

 この芸能事務所の運営も、リベレート団の活動であった。ガックリ肩を落としながら、シラコは外の空気を吸いにビルを出る。

 「あのルカリオ……」

 ビルから出たシラコは、名状しがたい叫び声を上げながら形容できない走り方で疾走するルカリオを見た。何故か鉢巻きを巻いてハッピを着ている。

 「いっ!」

 ルカリオが走ってきた方をシラコが見ると、カタリンナのものであるはずのゴーゴートに鎧姿の可憐な少女とシンジが乗って爆走するのが見えた。

 「女にうつつを抜かすなど、鍛え方が足りん! ……人だ、トーゴ、避けて」

 「構わん。轢け」

 少女がゴーゴートに回避を命じたが、シンジはそれを無視させた。ゴーゴートが接近するにつれ、少女の顔をシラコはしっかり見ることができた。

 「お前はお元気になるキノコぶはあっ!」

 その少女がお元気になるキノコ取引を阻止したアリスであると気付いた時には、既にシラコは空を飛んでいた。さすが、シンジは容赦が無い。

 「シンジ、民間人が轢かれたが……?」

 「あいつはアッシュを虐待していた母親だ。あれくらいしてようやくおあいこだ」

 「なら仕方ないな」

 アリスもシンジから事情を聞いて納得する。ゴーゴートも躊躇い無くシラコを轢いたため、カタリンナといた頃はシラコに何かされたのかもしれない。実の息子を虐待する様な人間なので、それもありえる可能性だ。

 「しかし、私の特訓に付き合ってくれるとはな。愛想の無い御仁だと思ったが……」

 「勘違いするな。ゴーゴートに乗りたかっただけだ。せっかくなら全速力のをな。昨日はちょっと跨がっただけだ」

 シンジはアリスの特訓に付き合ったのではなく、ただゴーゴートに乗りたかっただけらしい。しかし、シンジは乗ってる最中もある問題に頭を悩ませていた。

 「タチワキ行きの船が使えないとはな。あそこはポケモンの波乗りじゃ行けんぞ?」

 「一体どうしたことだろうな。リベレート団が関わってるとは思うが」

 なんと、ヒウンとタチワキを行き来する船がないのだ。突然何の予告も無くパッタリ途切れたのだと町の人はいう。

 「空を飛べるポケモンをアッシュが捕まえる必要がある。そんなポケモンがいそうな場所はないか?」

 「確か、いずれの日にか4番道路に飛んでくるウォーグルやバルジーナの話を聞いたな。だが、4番道路への道は奇妙な岩が塞いでるそうだ」

 シンジは空を飛ぶポケモンに活路を見出だしたが、結局アリスの情報によりそれが無理だと知る。

 「他の場所に行く船はどうだ? それに行ってもらえれば」

 「どうやら最近、海賊がでるらしいから無理だな」

 オマケに海賊が出るとか。これではどこも船を出せない。困った2人がゴーゴートに乗って走っていると、港に着いた。

 「じゃ、あの人に頼むのはどうだ?」

 シンジはそこで、キャモメを連れた老人を見つける。ホウエンを旅したことのあるシンジはその老人のことを知っていた。

 ヒウンシティ 噴水広場

 

 ヒウンシティの真ん中には噴水広場がある。ゴーゴートに轢かれたシラコは吹き飛ばされ、その噴水に墜落した。

 「……」

 そこで、アッシュと出会った。アッシュは怯えた表情でシラコを見る。ポカブのマインとレパルダスのマチルダがシラコを睨みつけていた。

 「ふふ、ようやく見付けたわよ。さ、お家に帰……」

 「ヤヤコマ! ニトロチャージ!」

 シラコがアッシュににじり寄ると、突然横から燃える鳥が突撃してくる。シラコはまたも吹き飛ばされ、噴水に落ちる。

 「熱い!」

 「見付けたぞアッシュ!」

 金縛りが解けたアッシュは声とヤヤコマの主を探す。辺りを見渡すと、エレキギターを持った少女がいる。やけにパンクな服装である。

 「あ、ティナ」

 「マチルダの知ってる人?」

 マチルダは彼女を知っているみたいだ。ティナはギターを掻き鳴らし、アッシュに向かって叫ぶ。

 「お前がマチルダを捕まえたトレーナーか。なら話は早い、マチルダを賭けて勝負だ!」

 「?」

 いきなり賭けを申し込まれ、アッシュは首を傾げる。ティナはマチルダと何か関係のある人物なのだろうか。

 「どういうこと?」

 「ワタクシに名前をくれたのがあのトレーナーなのです」

 つまり、ティナはアッシュによるマチルダのゲットを認めてないとのこと。アッシュからしたら、マチルダが自分からゲットされたのだから今更文句を言われてもどうしようもない。

 「マチルダが自分からゲットされたんですよ」

 「んなこと滅多にあるか! ならお前がそれ程のトレーナーか試させてもらうよ!」

 事情を説明してもこの調子。これではもうバトルするしかない。アッシュは諦めてバトルをすることにした。

 「ルールはタイマン。こちらから行かせてもらう! 行け、ヤンチャム!」

 「任せたよ、マイン!」

 ティナが草をくわえたパンダの様なポケモン、ヤンチャムを繰り出した。アッシュはマインを戦闘に出す。

 「消えろ、ぶっ飛ばされんうちにな」

 「凄んでも怖かねーべ!」

 ヤンチャムの捨て台詞に対し、マインも睨みつける。両者の睨み合いが続く。

 「バトルスタート! ヤンチャム、たいあたり!」

 戦端を開いたのはティナ。ギターのリズムに合わせ、ヤンチャムが仕掛ける。マインも回避するが、リズムに乗ってしまいギリギリの回避となる。

 「リズムでこっちの調子を狂わせてるんだね。それなら!」

 アッシュは相手の作戦に対抗し、相手のリズムを崩すべく歌を歌ってみる。

 「うわああ!」

 物凄い音痴だったため、ヤンチャムのリズムを崩すことに成功。ヤンチャムは体勢を崩す。

 「ニトロチャージだ!」

 マインがその隙にニトロチャージ。アッシュは歌で全力を使い果たして指示どころでなく、マインが自らの判断で技を出した。

 「させるか!」

 ヤンチャムはギリギリで体勢を整えてニトロチャージを避ける。ヤンチャムが反撃に出るもそこをマインがひのこで牽制し、阻止した。

 「チッ、なかなかやるじゃねぇか!」

 「減らず口を!」

 互いに一歩も引かない戦いが続く。マインがトドメとばかりにオーバーヒートを使おうとするも、ティナがギターの演奏をやめて驚いた表情でマインの後方を指差すのでやめた。

 「なんだ……?」

 マインが後ろを見ると、なんとシラコがアッシュをさらっていたのだ。マインとヤンチャムは驚愕して戦闘をやめる。

 「……」

 「こいつさえいなければ!」

 アッシュは母親へのトラウマから完全に固まり、声も上げることができない。

 「追うぞ!」

 「乗りな!」

 マインにヤンチャムが乗り、シラコを追うべく走り出す。しかし、なかなか距離は詰められない。そこでマインはニトロチャージを使う。燃え盛るマインがヒウンの町を駆け抜けた。

 「ニトロチャージ!」

 「熱いぃい!」

 しかし、ヤンチャムまで燃えてしまう。それでも構わずマインは突き進む。

 「待て!」

 「させるか! ガントル!」

 追うマインに対して、シラコはボールから大量のガントルを出す。明らかにトレーナーが一度に連れて歩ける量を越えている。

 「ちっ、岩タイプに炎は不利だ!」

 「構うな、突っ込め!」

 「よっしゃああっ!」

 ヤンチャムの指示でマインは相性を無視し、そのままガントル軍団に突撃する。ガントルがスクラムを組み、すり抜ける隙もない。万事休すか。

 「おおっ!」

 その時、マインの体が光る。光が晴れると、マインはポカブからチャオブーに進化していた。かくとうタイプも付き、ガントルに有効なダメージを与えられる。

 「喰らいな!」

 マインが右手を突き出してつっぱり。ガントル達が吹き飛ばされる。だが、シラコは余裕の表情だ。

 「ガントルはがんじょうのとくせいがあるから、どう頑張っても一撃じゃ……」

 しかし、つっぱりは一撃で終わらない。体勢を立て直したガントルを左手のつっぱりで張り倒す。

 「なっ!」

 「これで、トドメだ!」

 飛んできたガントルが目の前に落ちて、シラコは足を止める。その瞬間にマインが急接近する。

 「任せな!」

 マインに乗っていたヤンチャムが、シラコに飛び付きアッシュを解放する。アッシュを抱えていた手を蹴り飛ばしたのだ。

 「ヒートスタンプだ!」

 そこへマインの両手を突き出したヒートスタンプが直撃。シラコは空高く飛んで星になった。

 「……、あれ?」

 「おー、気が付いたか」

 マインに揺さ振られ、アッシュは意識を取り戻す。進化した彼女を見て、アッシュは驚いていた。

 「マイン、進化したんだね!」

 「待ちに待ったってわけよ!」

 マイン本人も待望の進化。これでアッシュの手持ちもさらに強化された。

 「おい! 警察呼んで来たぞ!」

 そこへバイクでティナとジュンサーさんが到着。ティナとマチルダは白バイのサイドカーに乗っていた。

 「あれ? あのおばさんは?」

 「マインがどこかへ飛ばしちゃったんです」

 ティナが辺りを見てもシラコの姿はない。それもそのはず、マインがヒートスタンプで空へ打ち上げたのだから。

 「あの広場には監視カメラがあるから、それを調べたら犯人の顔がわかるわ。指名手配しましょう」

 ジュンサーさんが早速シラコを指名手配。彼女の人生はどうなることやら。自業自得なのだから仕方ない。

 「なかなか根性あるじゃねーか」

 「お前こそ土壇場で進化するなんてな」

 マインとヤンチャムは互いに認め合っていた。ティナもその様子を見て、何やら決めたみたいだ。

 「全く、お前には参ったよ。お前ならマチルダを任せられるや」

 「へ?」

 アッシュをマチルダのトレーナーとして認めた。だが、誘拐されただけのアッシュには何が何だかサッパリだ。ティナはトレーナーの為に進化したマインを見て、マチルダを任せることにしたのだ。

 「おい。何があった」

 そこにシンジもトーゴと合流。騒ぎを聞き付けて、アリスを降ろして駆け付けたのだ。

 「誘拐事件があったの。監視カメラの映像からして、犯人はブルジョワ芸能の社長、シラコです」

 「そうですか。ちゃんと仕留めておくべきでした。が」

 ジュンサーさんから事情を聞いたシンジは、ポケモンセンター襲撃の際にしっかり息の根を止めるべきだったと後悔する。そして、進化したマインを見据える。

 「今のお前なら任せられそうだ。主の為に進化出来るお前ならな」

 「どういうことだ?」

 マインがシンジの言葉に首を傾げる。彼はバツが悪そうに、頭を掻いて話を進める。

 「どういうことだと言いたげだな。俺の兄貴がシンオウのトバリで育て屋をしてる。そこをリベレート団のメンバー、『不動産王のクロスケ』が狙ってる。流石に引退した兄貴一人じゃ頼りないから、俺が行かねばならん」

 「うん。そうしてよ。お兄さんなんでしょ?」

 アッシュはシンジの背中を押す。肉親もあの調子で、独りっ子のアッシュには兄弟のことはよくわからない。それでも、トモダチ以上の何かであることは理解していた。

 「トーゴから聞いたよ。ボクを人質役に選んだ責任を感じて、ボクと旅してるんでしょ? ボクなら大丈夫! それに、そのクロスケって人はボクのお父さんだから、結局責任は果たせるよ」

 アッシュはトーゴから全てを聞いていた。ゴーゴートは乗った人間の気持ちを読み取る。これを利用してシンジの心情を読み取ったのだ。

 「お前、余計なことを……」

 「たまには正直にならんとダメだぞ、ムッツリめ」

 トーゴの言葉はシンジに聞こえない。彼もそれを意識して言ったのだろう。

 「じゃ、俺は行くぞ。あと、港にハギ老人という船乗りがいる。その人がタチワチまで船を出してくれるそうだ」

 「最後までありがと。お兄さん、助けてきてよ」

 シンジはそれだけ言うと、アッシュに別れを告げて出発した。アッシュとシンジ、2人は一旦離れ離れになるが、シンジの戦う相手からして運命まで切り離れたわけではなさそうだ。

 

 ライモンシティ 某所

 

 「いてて……あのガキめ」

 シラコが飛ばされたのは、ライモンシティだった。海に落ちないだけマシな結果となった。ヒウンの中心部からライモンに飛ぶだけの飛距離なら、海に落ちた場合は大海原のど真ん中に落ちる。まず助からない。

 「おいそこの女。どうした?」

 シラコに話かけたのは、明らかに昔な巨漢の不良。不良はシラコの顔を見ると、手元のビラを見て何かを確認した。

 「どうしましたかタマゲダケ先輩?」

 舎弟の1人が不良、タマゲダケ先輩に聞いた。タマゲダケ先輩は舎弟に一言言い放つ。

 「お前ら、今夜はご馳走だ。目の前にガキをさらおうとした阿婆擦れがおる。指名手配されてるから賞金も出る」

 シラコは早速危険を感じて逃げ出す。しかし、ヒールではスピードが出ない。アッシュをさらった時と違い、片方だけ折れてる。それが歩行を阻害していた。

 「待たんかいわれ!」

 「ひぃぃぃ!」

 しかし巨漢に見合わずタマゲダケ先輩は早い。シラコは必死になり、ヒールを脱ぎ捨ててまで逃げる。そんな小細工で距離を離せるほどタマゲダケ先輩は甘くない。

 「さすがタマゲダケ先輩! ローブシンの群れを一人で潰しただけはある!」

 「どうやら指名手配犯が出たみたいですよクダリ。市民に被害が出ないうちに取り押さえましょう」

 「指差し確認! 準備OK!」

 「目指すは勝利! 出発進行!」

 タマゲダケ先輩のレジェンドぶりに興奮する舎弟の脇を、サブウェイマスターのノボリとクダリが走り抜ける。町の治安維持にも、サブウェイマスターは協力する。

 「なんだこれは? 花道?」

 シラコは街中に花道があるのに気付く。ファッションショーでよく使われる、通路みたいなステージである。それを駆けると、目の前にスクリーンがあるステージが見えた。

 「なにこれ?」

 スポットライトが照らすステージにいたのは、なんとカミツレ。

 「カミツレさん。クール過ぎてからみつれー」

 「うわっ……」

 そしていきなりの駄洒落。これにはシラコも足を止めてしまう。横からバイクに乗った男も現れた。

 「賞金はこの恋する男チャールズが貰った!」

 「バイクなら!」

 シラコは慌てて地下鉄の駅に逃げ込む。ここならバイクが追ってこれないと思ったのだ。シラコは適当な地下鉄に乗って移動する。

 しかしながら、しばらく路線を乗り変えたりして逃げるうちに地下鉄は止まってしまう。どうやら、たまたま乗った地下鉄が本数調整の為に車庫がある駅に止まってしまったらしい。諦めてホームに降りるも、次の地下鉄はなかなか来ない。

 「フフフ、見つけましたよ」

 「何っ!」

 シラコの目の前にデントがいた。適当な地下鉄に乗った彼女が突くだろう駅を特定したとでもいうのだろうか。

 「乗った駅、撹乱に最適な乗り換え、全てを考慮すれば貴女の居場所はわかります。メトロソムリエの僕なら、イッツサブウェイタイムでね!」

 「わけがわからん!」

 シラコが飛ばされたのは、光り輝く娯楽の町ライモン。しかし、そこは同時に変態の町でもあった。




 原作プレイバック ティナ

 ヒウン下水道に波乗りでしか行けない場所がある。そこからヒウンシティに出れば彼女と仲間達がいる場所へ出れる。バトルに勝利すればメダルが貰える。
 もちろんカロス地方のポケモンは使ってこない。ヤンチャム達をゲスト出演させる際、本当ならオリキャラの園児を出す予定だったがこれ以上増やすのもアレなので彼女にヤヤコマとヤンチャムを使ってもらった。
 ティナはカロス地方に行ったことないが、どうやってヤンチャムとヤヤコマを手に入れたかは後々明らかに。本当はワルビルとレパルダスを使う。
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