ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 トレーナーカード
 ポケモンコーディネーター ヒカリ
 シンオウで有名なコーディネーター。詳しくは原作プレイバックにて。
 手持ち
 ポッチャマ
 ミミロル
 マグマラシ
 パチリス
 マンムー
 トゲキッス


12.海峡の海賊団

 ヒウンシティ 港

 

 「ここが港かぁ……」

 アッシュはシンジの紹介で港へ来た。タチワチ行きの船を出してくれるハギ老人なる人はここにいるとのこと。その人はキャモメを連れてるとか。

 「あの人かな?」

 キャモメを連れてる老人を見つけ、アッシュは近付いてみる。老人もアッシュを見つけ、話し掛けてきた。

 「おや、君がシンジ君の言ってたモノズ頭の……」

 「はい、そうです。よろしくお願いします」

 どうやら、この老人こそがハギ老人らしい。シンジは的確にアッシュの特徴を彼に伝えていた。そんなわけで、アッシュは早速船に乗り込む。小さな年季の入った船だ。

 船は出発し、ヒウンを離れる。

 「ここは最近、海賊が出るそうじゃが、ワシにかかればそんなもん屁の河童じゃ!」

 ハギ老人がガンガン船を飛ばす中、アッシュの顔色は徐々に悪くなる。

 「うっ……なんだか気分が…」

 「船酔いか」

 ハギ老人は気にせず船を進めた。船というのは、酔う人間はどうしても酔ってしまうのだ。なのでどうしようもない。

 「今回は船が小さくてスピードも早いから、なりやすいかのぅ」

 ハギ老人が前方を見ると、ちょっと大きめの船がいた。避けようとするが、船から人が出てきて声をかける。

 「すみません! 積み荷を確認させて下さい!」

 「お元気になるキノコの輸入を取り締まってます!」

 「ワシの船に積み荷はないわい!」

 見た目警察ではないとこから、どうやら自警団のようだ。お元気になるキノコを水際で食い止めようと活動していた。ブルジョワ財閥のこと、この手のものを港で取り締まれない様に圧力をかけてるのだろう。

 「お元気になるキノコ? あ、前にトラックでたくさん運んでたアレか」

 アッシュもキノコを思い出した。中毒者に襲われたこともあり、キノコの危険性は重々承知していた。

 「キャプテン! どうやら積み荷が無いようです!」

 「うむ、大丈夫、くるしゅうない」

 屈強そうな船乗りに呼ばれて出て来たのは、アッシュと同い年くらいの少女だった。横にはポッチャマもいる。その特徴から、アッシュはシンジの話を思い出す。服装は海賊の船長みたいになってるが、ドレスアップ自体コーディネーターの彼女にはよくあることだ。

 「あ、あの人。シンジが言ってた『大丈夫って言ってる時ほど大丈夫じゃない人』だ!」

 「どんな教え方したのよ!」

 少女、ヒカリは友人の教え方に憤慨する。シンジのことだから、ロクな教え方はしないだろう。

 「いろいろ聞きたいけど、船酔いが…」

 「ていうか、シンジの知り合い?」

 アッシュはまだ船酔いで苦しんでいた。ヒカリの問い掛けにもまともに答えられない。そこで、チャオブーのマインがボールから出て答える。

 「シンジと旅をしてたんだ。シンジは兄の育て屋がピンチって聞いて帰ったけど」

 それをポッチャマがヒカリに伝える。チャオブー語がわからなくても、ヒカリはポッチャマ語なら長年のパートナーなのでわかる。

 「なるほど、じゃあ私も助太刀にいくわ!」

 「キャプテン! お元気になるキノコの警戒はどうするんですか!」

 「大丈夫大丈夫。なんとかなるって!」

 船乗りはヒカリに大丈夫と言われ、一抹の不安を感じていた。本人としては何もしてないので自分がいなくてもやっていけると思ってたが、船乗り達はヒカリをキャプテンに立てることで士気を上げていた。彼らはヒカリのファンなのだ。

 「しょーがないでしょ! 元々あんたらが『キャプテンがいないと不安』って言ったから付き合ってるだけだから」

 「うーむ、確かに」

 「大丈夫、私は船を離れてもずっとキャプテンでいるから」

 自分が付き合わせたので船乗りはヒカリを引き止めるのを諦める。シンジの進路一つで事態が大きく変わったものだ。

 「キャプテン! 巨大な船が接近してます!」

 「え?」

 船乗りの一人がレーダーを確認して報告する。船はあまりの巨大さから、離れていても肉眼で見えるくらいだ。

 「この匂い、お元気になるキノコか」

 マインは匂いで船の積み荷を確認する。船は巨大なタンカーで、タンカーというのは船そのものが石油のタンクになってるのだが、船の上にキノコがぎっしり入ったコンテナが置いてある。

 「あのタンカーの中身全部なのか?」

 「有り得るのう」

 ハギ老人は船の不自然な浮き沈みから、タンカーの中身が液体以外の何かだと気づく。船が近付くと、その大きさがよくわかる。タンカーにはリベレート団のマークが

 「フハハ! これからタチワチにキノコをばらまくのだ! 帰りにコンビナートの石油も戴く!」

 「そうはさせない!」

 明らかに海賊の船長みたいな人物がタンカーから顔を見せる。ヒカリがいきり立ち、マンムーをボールから出す。

 「やめて下さいキャプテン!」

 「沈んでしまいます!」

 しかし、自分の乗る船が沈みかけたので慌てて戻す。マインがタンカーに穴を空けようとヒートスタンプを撃つが、びくともしない。

 「そんな小船ではタンカーを壊せるポケモンは出せまい!」

 「ぐぬぬ……」

 ヒカリは最大パワーを誇るマンムーを出せずに悔しがった。マンムーならタンカーごとき穴を空けられるのだが、船の上では出せない。

 「パワーなら、トーゴ!」

 アッシュはゴーゴートのトーゴを出す。しかし、ハギ老人の船はトーゴの体重にも耐えられずに傾く。

 「しまった!」

 慌ててトーゴを引っ込める。タンカーを破れるポケモンにはパワーが必要だが、どうしてもそうしたポケモンは船の上に出せない。

 「なら、マチルダ!」

 アッシュはマチルダを出し、バークアウトでタンカーを攻撃させる。物理技なら大きなポケモンが必要だが、特殊技ならその限りではない。

 「その手があったわね! ポッチャマ、うずしお! ミミロルは冷凍ビーム! パチリス、10万ボルト! マグマラシ、かえんほうしゃ!」

 ヒカリはありったけのポケモンを出して攻撃させる。どれも小さいので船が転覆する心配はない。

 「マイン、オーバーヒート!」

 アッシュもヒカリと同じ一カ所を集中して攻撃する。しかし、なかなか壊れない。タンカーだけあって、特に炎には強い。どちらも主力がマグマラシにチャオブーと炎タイプなので厳しい。

 「どうしよう……」

 「今度ばかりはだいじょばないね」

 タンカーは相変わらず穴が空く気配はない。異様に頑丈なタンカーである。海に住むポケモンの脅威を考えれば当たり前な硬さだが、今回はそれが仇になっている。

 「どうしたの?」

 「あ、アーシェさん。船酔いはいいんですか?」

 ヒカリ達の船から女性が一人出て来た。艶やかな黒髪を海風になびかせ、黒いコートを纏っている。厚手なはずのコート越しからも抜群のスタイルが見てとれる。

 アッシュはカタリンナやそこらの女優より綺麗だと素直に感じた。男性陣全員が息を呑む。アーシェという女性は圧倒的に美しい。

 「うっ、船酔い!」

 突然、アーシェは船酔いに見舞われた。その様子を見てアッシュも船酔いを再発。先程までの美しさが台なしだ。

 「大丈夫ですか?」

 「だいじょばない」

 ヒカリが心配するレベルで吐いていた。この人は黙ってれば絶世の美女なのに、なんかいろいろ残念だ。

 「あのタンカー壊したいの? なら、プロト!」

 アーシェはボールを投げ、中からアバゴーラを出す。出て来たアバゴーラのプロトは酔ってるアーシェを心配していた。

 「アーシェ、また酔ったのか」

 「こればかりは仕方な……うっ、しばらく話し掛けないで。タンカー潰しておいて」

 アーシェはプロトに指示を出し、タンカーに向かわせる。アッシュは図鑑を開いてアバゴーラのデータを確認する。

 『アバゴーラ。』

 「でもあのタンカー硬いよ?」

 図鑑ではアバゴーラは張り手でタンカーに穴を開けれるとあるが、アッシュ達が相手にしてるタンカーは恐ろしく硬いのだ。プロトは張り手をタンカーに繰り出す。

 「うわああ!」

 すると、タンカーは穴どころか転覆した。プロトのパワーは普通のアバゴーラより強いのだろうか。図鑑で記述されてるタンカーとはポケモン出現以前の人類が使用したやわなものではなく、まさにポケモン対策を施したこのタンカーのことだった。

 「凄い!」

 「中身が石油なら穴で済んだじゃろうな」

 ハギ老人は中身が原因で転覆したとみた。お元気になるキノコはぎっしり積んでも石油より軽いのだ。

 「お元気になるキノコが!」

 「やった! あれは塩水に浸かると成分も残さず全部溶けて無くなっちゃうのよ!」

 ヒカリが言う通り、タンカーからこぼれたキノコは海水に落ちると溶けて無くなる。これなら海のポケモンが間違って食べる心配も無い。

 「クッソー! リベレート団の高尚なる資金調達を邪魔しよって!」

 「マンムー! こおりのつぶて!」

 船長が悔しがってる間に、タンカーという足場を得たヒカリがマンムーでトドメとばかりに吹き飛ばす。落ちるのは方向からすればライモンシティの東か

 「ぎゃあああ!」

 船長は空高く飛んでいく。これはまた捕まえるのが大変だとアッシュは思った。

 

 船はそのままタチワチへ到着。ヒカリ達も同じ港へ船を接岸した。

 「ワシを船長から引きずり下ろした奴もリベレート団じゃった。いやー、スカッとした」

 ハギ老人は船の船長だったらしいが、リベレート団に辞めさせられたらしい。ヒカリにリベレート団がメタメタに倒され、気分爽快だった。

 「ふぅ、やっと船酔いから解放されたよ。ボクって昔から船弱くて」

 アーシェはホッとした様子で船を降りる。一人称はアッシュと同じく『ボク』。美女ではあるが変わり者でもあるらしい。

 「じゃあ、私はトバリに行ってレイジさん助けて来るから」

 「待って」

 ヒカリが早速シンジの兄、レイジを助けようとするので、アーシェが止めた。

 「君はこれからコンテストじゃないのか?」

 「グランドフェスティバルに関わらないコンテストなら大丈夫!」

 「いや、君はコンテストに出るべきだよ。レイジさんなら私が助けに行く」

 ヒカリもアーシェも引かないので、議論は平行線を辿る。アーシェはヒカリに来られると都合でも悪いのだろうか。

 「アッシュ君。次のエンブレムはタチワチジムのトキシックエンブレム。つまりヒカリが参加するコンテストで獲得出来る。しかもそのコンテストがタッグでの出場だから、有名なコーディネーターを味方に出来るチャンスだよ?」

 アーシェはアッシュに話を振る。自分達で話が終わらないから、アッシュを利用しようというのだ。

 「え? でもなんでボクがイッシュラリーしてるって……」

 「うっ。勘だよ、勘。女の勘は鋭いくちばしなのさ」

 アッシュはエンブレムの話、つまりイッシュラリーの話をアーシェが持ち出したことに疑問を抱く。アッシュとアーシェは初対面、船でも互いに酔ってて話をしていない。

 見かねたプロトが海から上がってアーシェのフォローをする。

 「ほ、ほら。この時期のトレーナーっていったらイッシュラリーだろ?」

 「あれ? ボクが君と話せること知ってるの?」

 「……ギクリ」

 だが何故かこれまた初対面のプロトが、アッシュがポケモンと話せることを知ってるかの様に話す。アッシュは経験上、ポケモンは自分に言葉が通じることを知らないものだとわかっていた。

 「ともかく、大人のお姉さんなボクにはミステリアスな秘密があるのさ」

 アーシェはしゃがんでアッシュと同じ高さに目線を合わせ、唇に人差し指を当てた。髪が揺れると花の様ないい香がした。薄い桃色の唇にスラリと伸びた指。喋ると残念な部分が露呈するだけに、こうした一つひとつの何気ない仕草が色っぽい。

 「というわけでヒカリ、若いトレーナーの育成頑張ってくれたまえ。これ以上女が増えても、ボクがレイジさんと二人きりになるチャンスが無くなるだけなの」

 「あ、待って!」

 アーシェはそそくさと船に乗り込む。彼女達と共にしばらく自警団をした船乗りはアーシェの気持ちを察し、間髪入れずに出港した。

 「レイジさんにはボクからよろしく言っておくよー!」

 「こらー! 待ちなさーい!」

 ヒカリは完全に置いてけぼり。これではコンテストに出場せざるを得ない。

 「まったくあの人は……。だったら、トキシックエンブレムをゲットして合流してやる!」

 「じゃあ、ペアになってくれるんですね?」

 「うん。よろしくね!」

 ヒカリはアッシュとペアを組んでコンテストに参加することを決めた。新たな仲間を得て、アッシュの旅はまだまだ続く。

 

 迷いの森

 

 一方、吹っ飛ばされた船長は迷いの森に墜落した。木に落ちたため無事だったが、目の前には恐るべきポケモンがいた。

 「なんでこんなとこにジュカインが?」

 目の前には野性でイッシュに存在しないはずのジュカインが。人間に恨みでもあるのか、船長を睨んでいる。何を隠そう、このジュカインはリベレート団の活動でトレーナーに捨てられたのだ。

 「助けてぇえ!」

 リーフブレードを構えて、ジュカインが船長を追う。自業自得であった。




 原作プレイバック ヒカリ

 シンオウ出身のコーディネーター。初めこそ成績がパッとしないものの、グランドフェスティバルに出場するなど後半に実力を発揮。サルビア王女とは瓜二つ。
 口癖は『大丈夫』だが、そう言ってる時ほど大丈夫じゃないと有名。
 パートナーのポッチャマは進化を『がまん』で拒んだりする辺り、ハルカのアチャモとは違った印象を持つ。ハルカはコンテストだとOPも含めアチャモよりアゲハントの印象強いし。
 サルビア王女のトゲキッスの癖をすぐに見抜いて息を合わせるなど、トレーナーとしての実力も高い。
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