ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 行って損する! 世界がっかり観光地!
 その1 シンオウの時計台
 話だけなら有名。しかし、そのがっかり度は底知れない。何せ、シンオウ出身の人はそのがっかりさ故に寄り付かない。サトシが行かなかったのもヒカリに止められたかららしい。そのくらい行ってがっかりする。想像より小さいぞ! どの町にあるかはがっかりさ故に定かじゃない!

 その2 ザンギの時計
 理由は同上。しかし、シンオウほど元々観光地じゃないので被害は少なめ。

 その3 発掘されたマーライオン
 太古の遺跡より発掘されたマーライオンなる遺物。世界中が注目して展示を誘致したが、口から水を出すだけなのでがっかりする人多数。ポケモン出現以前の動物を模ったもののため、資料価値は高いが、観光資源にはならず。


14.流浪のルリリ!

 ザンギタウン

 

 アッシュとヒカリはザンギタウンに到着した。ポケモンセンターで一休みする2人は、トキシックリボンを眺めていた。

 「このタチワキリボンはどのグランドフェスティバルでも使えるけど、それは1回切りなのね」

 「ヒカリさんの力で手に入れたリボンで何度も出たら申し訳無いよ」

 タチワキリボンはミクリが与えたリボンであるが、タッグを組む大会の特殊性からグランドフェスティバルの使用が1回に限られる。イッシュのコーディネーターにグランドフェスティバルを経験させる手段に過ぎないのだ。

 「大会はイッシュで3ヶ所、タチワキ、ヒウン、ライモンで開催されるの。そこのコンテストでも同じ様なリボンが貰えるのね」

 「そのリボンを全部手に出来たら、グランドフェスティバルが近づくね」

 しかし、イッシュラリーの一環で開催されるコンテストに全て優勝すればリボンが3つ。あと2回優勝すればグランドフェスティバルに出場できるのだ。

 「おう。そこの若いの」

 アッシュとヒカリに声をかける人がいた。炎みたいな髪型をしている初老の男だ。傍にはウルガモスを連れている。

 「わしはアデクというものだ。そちらのお嬢ちゃんはなかなか出来ると見受ける。で、まだそっちの坊主はルーキーみたいだな」

 アデクは一目でヒカリを実力者、アッシュを新人と見抜いた。この人物は何者なのだろうか。

 「とりあえず、手持ちのポケモンを見せてくれんか?」

 「わかりました」

 アデクに言われ、アッシュは手持ちのポケモンを全て出す。チャオブーのマイン、レパルダスのマチルダ、そしてゴーゴートのトーゴだ。

 「おお、カロス地方のポケモンを持っているのか。だが、もっと仲間が欲しいとは思わんか?」

 「エッーと、ボクはボクに着いて行きたいトモダチだけを連れていきます」

 「なるほど」

 アッシュは6匹揃えてないが、それには理由がある。アッシュが普通のトレーナーの様に、ポケモンを弱らせて捕まえることをしないからだ。

 「では、お嬢ちゃんも見せてくれ」

 「みんな、出て来て!」

 ヒカリも手持ちを全て出す。ポッチャマ、ミミロル、パチリス、マグマラシ、マンムーだ。

 「この前までトゲキッスがいたんですけど、『グランドフェスティバルに連れていく』約束を果たしたので持ち主に返しました」

 「……もしかして、サルビア王女?」

 アッシュはトゲキッスとヒカリの外見から、ある人物を思い出す。そういえばエルトが持ってた『トゲキッスと王女の冒険』の本には、『サルビア王女も大絶賛!』と本人の写真が載った帯が付いていた。

 「そうそう! トゲキッス、元気かなー?」

 「サルビア王女ならホドモエでコンテストを開くそうだ」

 アデクが情報をもたらす。ヒカリがデビューする前からコンテストに関心のあったサルビア王女は、イッシュのコンテスト普及にも精力的だ。

 「開催まで時間があるから、イッシュラリーをしながらホドモエを目指すとよい。そうだ、ヒオウギに行ってみたか? チェレンがジムリーダーになったから、挑戦者を待っておるぞ」

 「アデクさん大変です!」

 アデクがアッシュとヒカリにいろいろ教えてると、町の人が慌ててポケモンセンターに入る。かなり切迫した状況と見受けられる。

 「どうした?」

 「大変なんです! 町がとんでもないことに!」

 町の人が慌てていて、よく状況がわからないのでポケモンセンターを出て状況を確認することに。

 すると、町の中がポケモンだらけになっていた。ただのポケモンだらけではない。ザンギ周辺に棲息しないポケモンがたくさんいる。

 「3番道路を思い出すな」

 「そういえばそうだね」

 マインとアッシュは、リベレート団が大量にポケモンを逃がした3番道路を思い出す。今回も同じ原因なのか。アッシュはポケモン達の声に耳を澄ませる。

 「ザンギ名物の時計ってどっちだ?」

 「あっちか?」

 「あのチャオブーに聞こう」

 ワンリキー、マクノシタ、ドッコラーがマインに道を聞いた。ザンギ名物の時計を見に来たらしい。

 「すいません、時計ってどっちですか?」

 「それなら見たよ、あっち」

 「助かります」

 アッシュが普通に道を教えたので、ワンリキー達は時計の方へ足を向ける。しかし、もう一度アッシュを見直した。普通にアッシュがポケモンと言葉を交わしたのでビックリしたのだ。

 「ポケモンの言葉わかるんですか?」

 「あ、確かに珍しいよね、これ」

 アッシュもポケモンと話す能力が特別なものであることをすっかり忘れていた。アッシュはこれも何かの縁と、ワンリキー達と時計を目指した。ヒカリとアデクもついていく。

 「ここが時計か……」

 「イッシュがっかり観光地のな」

 「シンオウの時計台見ちゃったらあまりがっかりしないな」

 どうやら旅ポケモンの間でザンギの時計はがっかり観光地として有名らしい。それでもわざわざ来た彼らは変わり者なのか。

 「がっかり観光地だったんだ……」

 「そっちの方が人にゲットされる危険が無いからね」

 「ゲットされるスリルもいいけどね」

 アッシュががっかり観光地の時計を眺める。ワンリキーとドッコラーによると、敢えてがっかり観光地を巡るのは、人間の観光客にゲットされるのを防ぐためだとか。

 「誰がゲットされたくて、誰がそうじゃないのか、みんながわかればいいのに」

 「まったく話の流れが掴めんが、初めはゲットされたくなかったとしてもトレーナーが愛情を持って接すれば心を開くさ」

 アデクは話の流れがわからないながら、綺麗にまとめた。アッシュは事態の成り行きをアデクとヒカリに伝えた。

 「なるほど、このポケモン達は観光客だったのか」

 アデクも納得した。ザンギタウンという観光地でない場所にポケモンが集まる理由も納得だ。観光地では逆に都合が悪い。

 「ここなら仲間を集められるだろう。旅をするのにトレーナーといた方が都合のよいと考える奴がいたりしてな」

 アデクのアドバイスを貰い、アッシュは仲間探しを始める。ゲットされる危険性が無く、イッシュを旅できることを望むポケモンがいるかもしれない。

 「誰かー、ボクと旅しない?」

 「なんだ?」

 「人間?」

 「俺達の言葉がわかるのか?」

 しかし、むしろアッシュがポケモンの言葉を理解できることに驚くポケモンが多数だった。

 「お、なんかNみたいな奴がいるな」

 その中で、傘を被ったルリリがアッシュに近寄る。どうやら、Nの知り合いみたいだ。だからアッシュの言葉にも驚かなかった。

 「君、名前は?」

 「僕はシャルルっていうもんでい」

 ルリリはシャルルと名乗る。名前を持ってるポケモンは珍しいみたいだが、トーゴを除いてアッシュの手持ちは名前を始めから持っているので珍しさを感じない。

 「シャルル、ボクと旅する?」

 「ちょうど人間の力が無いと行けない場所にも行きたかったんだ」

 アッシュがボールを出し、シャルルはそれを尻尾で叩く。ボールが開き、シャルルがゲットされた。

 「じゃあ早速、シャルル!」

 アッシュはシャルルをボールから出す。ゲットを確認した。アッシュに新たな仲間が加わることになる。

 「トレーナーらしく弱らせて捕まえればいいのに」

 「ポケモンの言葉がわからなかったらそうしただろうね」

 マインに皮肉られるが、アッシュはポケモンの言葉がわかるせいでそれが出来ない。ポケモンの意思を知ることができるから、彼らの意思を尊重する。

 「大変ですアデクさん!」

 「今度は何?」

 また町の人がアデクを呼ぶ。ヒカリはまたかと呆れていた。アデクに頼らずとも、多少の問題は解決してほしい。

 「変な奴らが街頭で演説を!」

 「プラズマ団か?」

 変な奴らと聞き、真っ先にアデクはプラズマ団を思い出す。一行は演説が行われている場所へと向かう。

 「我々はポケモンを利用し続けている。それはいいことか? いや、良くない!」

 「なんだブルジョワ伯爵か」

 「正確な階級は男爵だがな」

 ビールケースの上に立って演説してるのはブルジョワ伯爵。アデク曰く正確な階級は男爵。貴族の階級制度では一番ランクが低い。

 「なんだとはなんだ! この私のありがたい演説だぞ!」

 「帰れー!」

 「お呼びじゃねーよ!」

 アッシュ達があまりにボロクソに言うので、ブルジョワ伯爵は怒った。つるぎのまいを舞ったニューラとマニューラが黒い鉄球を投げ付けた。

 「ぐぼあっ!」

 「せっかくの観光地が台なしじゃぬーか!」

 「このデブ!」

 「お前が言うな」

 ワンリキーとマクノシタ、ドッコラーがブルジョワ伯爵に追い撃ちをかける。伯爵は観光客のポケモンに倒された。

 「何故私がこんな目に……」

 「それはあなたがブルジョワ伯爵だからです」

 ヒカリは自問した伯爵にサラリと酷いことを言う。確かに間違ってないのだが。

 「こうなったら、アッシュ! 貴様私とバトルしろ!」

 「嫌です」

 「えっー!」

 ブルジョワ伯爵は八つ当たりとばかりにアッシュとバトルしようとしたが、キッパリと断られる。

 「なんでだよ!」

 「なんか面倒なので」

 「ぐぬぬ……」

 しかもその理由が面倒とのこと。あまり敵としても見られてないみたいだ。

 「とにかくバトルだ! 行け、ナットレイ!」

 「マイン! ニトロチャージ!」

 伯爵が繰り出したナットレイはマインのニトロチャージで倒された。リベンジならず。

 「なら、金で勝った最強のポケモンを見せてやろう! ラムパルド、あのガキを粉砕しろ!」

 「トーゴ、ウッドホーン!」

 意気揚々とラムパルドを繰り出したが、トーゴのウッドホーンで大ダメージを受けた。しかし、ラムパルドは倒れない。

 「え?」

 「フハハのハ! きあいのタスキだ! 体力が満タンなら耐えるぞ!」

 きあいのタスキの力だった。このアイテムは持たせたポケモンの体力が満タンの時、一度だけ耐えることが可能になる代物。

 「シャルル! あわ!」

 しかしシャルルのあわでトドメを刺される。耐えてもギリギリである。経験値稼ぎに利用された形となった。

 「ならば……ランクルスだ!」

 「マチルダ! ねこだましからのバークアウト!」

 伯爵が次に繰り出したのはランクルス。しかし、マチルダのコンボで瞬殺。

 「もう手持ちが無い!」

 「なら伯爵の負けだな。賞金を渡すとよい。所持金の半分」

 手持ちを失った伯爵に、アデクが賞金の支払いを奨める。本来ならバトルで生計を立てる連中のルールだが、アッシュがあまりお金を持ってそうになかったので、この際路銀を稼がせたかった。

 「賞金だと……クレジットカードしかない」

 ブルジョワ伯爵の財布にはカードしかないという。そこでアデクが更なる提案をした。

 「なら金目のものを半分……」

 「あんた本当に元チャンピオンか?」

 人で無し全開の対応に伯爵が嘆く。しかし負けたなら仕方ない。伯爵が金目のものを渡そうと探すが、マチルダが財布を引ったくる。

 「現金ありましたわ」

 「賞金支払いにルール違反が生じたら全額没収だな」

 アデクがルール違反を見つけ、全額を没収する。ついでにシャルルが伯爵をボコボコにして金目の貴金属をむしり取る。

 「手際がよいですわね」

 「悪そうな金持ちを襲って路銀を稼いだもので」

 口だけしか使えないにも関わらず、シャルルはマチルダが驚くほど手際よく指輪などを強奪した。

 「凄いなぁ、こんなに宝石が大きな指輪を10個以上も」

 「重くない?」

 素直に驚くアッシュだが、その計算では指1つにつき1個以上付けてる計算になる。ヒカリは重量を予想して、指が痛む。

 「時計もあるよ」

 「こんなにたくさん?」

 また、時計も6個ほど持ってた。この数の時計を何に使うのだろうか。状況に合わせて付け換えるのだろうか?

 「服だけは残してやる。せめてもの情けだと思え」

 「酷いや……」

 アデクは伯爵がプラズマ団の関係者と知ってるからこそ、この辛辣な対応なのだ。この前もザンギ牧場を無理矢理安値で買い叩こうとしていたので、二度とこの町に来れないようにする必要があった。

 そのおかげでアッシュの所持金はかなり潤沢に。貴金属や時計などの現物資産については未成年のアッシュは換金できないが、それでも十分な量だった。

 「どれも貴重な宝石の指輪ね。これが『こんごうだま』、こっちは『しらたま』、これは『はっきんだま』で、これって『こころのしずく』じゃない? この指輪はルビーとサファイア、伝説で語られる『べにいろのたま』と『あいいろのたま』の材料なの」

 ヒカリが鑑定すると、どれも貴重なものだった。とにかくとんでもないものを身につけていたのだ。

 「これがチャンピオンのすることか!」

 「まあまあ、固いこと言うな」

 「言うよ!」

 アデクになだめられながらも、伯爵は納得出来なかった。払う賞金が無いと嘘を言った自分が悪いので仕方ないね。

 「お札が凄い数」

 「何枚あったの?」

 「10より上は数えらんない」

 アッシュは伯爵から強奪したお札を数え切れず、ヒカリに渡した。ヒカリが数えると、軽く30枚を越えていた。

 「30万円ね……」

 「それって多いの?」

 「多いよ」

 具体的な額が解っても、アッシュには実感が湧かない。まだ10歳の子供には、そんなお金のことなどわからないだろう。

 「貴様! 金を返さんか!」

 「シャルル! みずてっぽう!」

 ブルジョワ伯爵が返還要求をしたら、容赦無くアッシュがみずてっぽうをシャルルに撃たせる。ブルジョワ伯爵は空へ飛んで行く。リベレート団に情けは無用。犯罪を犯すということは周りの人間から石を投げられても文句は言えない。

 「よし、仲間と路銀も得たことだ。早速ヒオウギに行っておいで。あそこにはイッシュラリーのエンブレムもある」

 「はい、行ってきます」

 アデクが言うに、ヒオウギにはエンブレムがあるとのこと。ヒカリはブルジョワ伯爵が飛んだ空を見ていた。

 「ロケット団の方がよく飛んだなぁ」

 もっとよく飛ぶ人がいるらしい。所詮、プラズマ団の建前を本気にする組織では越えられない壁である。

 リベレート団を懲らしめ、アッシュ達の旅はまだまだ続く。




 次回予告

 唐突にもらった「平手打ち」、予想外の「肘」、体重の乗ったグーパン。
 特に理由のない暴力がブルジョワ伯爵を襲う――!!

 ヴァイオラ「何があった」
 アッシュ「奥さんと娘に浮気がバレたみたいです」
 ティナ「理由あるじゃねぇか」
 エルト「幸い、マスコミにはバレてない」
 ヒカリ「なら大丈夫!」
 シンジ「何がだ!」
 ハツネ「ヒカリの大丈夫は大丈夫じゃないからね」
 アリス「浮気などするからだ不誠実者」

 ブルジョワ伯爵、その華麗なる家族構成
 ブルジョワ伯爵には数え切れないくらい愛人がいる。だが、妻もいる。この妻、仮にブルジョワ夫人としよう、彼女は金を得るためにブルジョワ伯爵と結婚した。
 娘は両親に預け、多量の生活費を送ってるとのこと。伯爵から出来る限り富を独占するため、浮気については厳しい。
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