ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 シッポウシティ タウンガイド
 かつては列車が通り、倉庫街として賑わった。現在、その倉庫は芸術家達のアトリエになっている。ヒウンシティジムリーダー、アーティも倉庫をアトリエにしてる。
 博物館があり、化石をポケモンに復元できる。そこはジムも兼ねており、ジムリーダーは博物館館長のアロエ。専門はノーマルタイプ。バッチはベーシックバッチ。しかし、今は博物館の仕事が忙しくてベーシックバッチはヒオウギシティのチェレンに譲った。


1.シッポウ博物館の激闘

 シッポウシティ ポケモンセンター

 

 ポケモンセンターは旅をするトレーナーの支援を行う施設である。ポケモンリーグへの挑戦には8個のリーグバッチが必要となり、それの取得には長期間の旅が欠かせない。

 しかしポケモンリーグを夢見るトレーナーに、残酷にも立ちはだかるのが『旅費』という経済的な壁だ。この為、一時はポケモンリーグが金持ちの道楽と成り果てた時期がある。これを重く見たセキエイ高原にあるポケモンリーグ本部は経済的な壁を撤廃する為にポケモンセンターを各地に設置した。

 ポケモンセンターではポケモンの治療、トレーナーの宿泊、ポケモンフーズ等必要最低限の道具の支給が行われる。

 この施設は旅をしないトレーナーにも傷付いたポケモンの治療でお世話になる場所だ。しかしバトルで傷付くのはポケモンばかりではない。ポケモンの技にトレーナーが巻き込まれて負傷することもたまにあるので、人間を治療する設備もあるのだ。

 「……あれ?」

 その設備にお世話になった人間が目を覚ました。まだ幼い子供であり、伸びた髪で目元が隠れている。黒髪であることから、さながらポケモンのモノズに髪型が似ていた。

 子供は起き上がらずに天井をや周囲を眺める。辺りに清潔感の漂う部屋で、複数ベッドがあったが、どれも空だ。着ていた服もパジャマに着替えさせられ、身体の至る所にあった傷が手当てされていた。

 「あ、目が覚めたのねえ。よかったあ」

 何処からかのんびりした声が聞こえたので、子供はそちらを向く。彼が寝るベッドの隣に、パイプ椅子を出して座る人物がいた。年頃の少女で、活動的な服装をしている。金髪が特徴的だ。

 少女は赤い淵の眼鏡を直して子供を見る。彼は突然の事態に混乱したのか、目をキョロキョロと動かす。

 「私、ベルっていうんだよお。あなたのお名前は?」

 少女はベルと名乗った。子供は名前を聞かれたので、素直に答える。

 「…アッシュ」

 「アッシュくんね。よろしくねえ」

 妙に間延びした受け答えなので、アッシュと名乗る子供はリズムを崩されている様だ。「よろしく」と言われた時の答え方がわからないので、アッシュは黙ってしまう。その時、助け舟でも出すかの様に彼のお腹が鳴った。

 「……」

 「ゴメンねえ。お腹減ってるんだったね。今、何か持ってくるよお」

 それを聞いたベルは立ち上がり、部屋を出る。しかし、彼女の言い回しはまるでアッシュがお腹減ってることを既に知っていたかの様なものだった。当のアッシュはそんなこと気にしてなどいなかったが。

 ベルと入れ代わりに、一匹のポケモンが部屋に入って来た。小さな豚のポケモン、ポカブだ。ポケモンリーグが公式で『初心者向けポケモン』としているので、野生の個体を見掛ける機会が少ない割に有名だ。

 ポカブはベッドの上に乗り、アッシュを見つめる。アッシュも起き上がって、ポカブと目線を合わせる。

 「あんたも難儀ね。サブウェイで倒れてたんだって?」

 「地下鉄に乗ってたんだけど、いつの間にかここにいたんだ」

 ポカブが話し掛けて来たので、アッシュはベルとの会話以上にスラスラと返答する。他の人間から見れば、ただアッシュがポカブに独り言を言ってるだけにしか見えないだろう。だが、アッシュはポケモンと話すことが出来る。

 他の人間には、ポケモンの言葉などただの鳴き声にしか聞こえない。しかしアッシュはそれを聞いて、何が言いたいか知ることが出来る。

 「で、君は誰かのポケモン?」

 「ああ。さっきいただろ。ベルのポケモンなのさ」

 アッシュは口調からこのポカブが雌であると判断した。研究者は身体的な特徴から性別を判別するが、アッシュは口調やポケモンの趣味趣向から性別を見抜く。

 「あんた、髪切ったら?」

 「と、言われても……」

 「あ、その子と仲良くなったんだねえ」

 しばらく話していると、ベルが戻って来た。手にしたトレーにはおにぎりがいくつか乗せられている。

 アッシュはトレーを渡されると、即座にそれを口に詰め込んだ。よほどお腹が空いていたのだろうか、ポカブも若干引くくらいの食らい付き様だった。パジャマの裾から覗く手首は異様に細かった。

 「まあそんなこったろうと思ったよ」

 アッシュが喉に詰まらせたので、ポカブはすぐにおいしい水が入ったボトルを渡す。それを飲み干したアッシュは息をつく。

 「ふぅ」

 「慌て過ぎだよ。もうちょっとゆっくり食べな」

 「あ、ゴメン」

 ポカブに諭され、アッシュは謝る。自然に会話をしたが、それはベルに聞かれていた。端から見ればポカブの鳴き声に反応して独り言を言ってる様にしか見えない。

 「ポケモンと喋れるの? 凄いねえ!」

 そして彼女はそれを受け入れた。ポケモンと話すことが出来るという事実は、前例でも目撃しない限り受け入れ難いものだ。どんなベテラントレーナーでも、ポケモンの気持ちを完璧に理解することは難しい。

 「え? しゃ、喋ってないですよ!」

 アッシュは冷や汗を垂らし、首を全力で振って否定する。ポケモンと喋れることがバレたらマズイのだろう。そんなアッシュの気持ちをベルは察する。

 「大丈夫だよお。私、前にポケモンと話せる人に会ったことあるから」

 「え? それって、もしかしてNって人?」

 アッシュはベルの言葉に反応する。ベルの言う『ポケモンと話せる人』とは正にそのNのことだが、やはり心当たりがあるのだろうか。

 『全身に痣があるから、多分虐待かと』

 ベルはポケモンセンターに常駐する医者の言葉を思い出した。たまたま地下鉄に住み着いたポケモンの研究でシッポウシティを訪れていたベルは、そこでアッシュを運ぶノボリと出会う。仕事のあるノボリの代わりにアッシュを看病していたのだが、その時医者にそう告げられたのだ。

 ベルもまさか、この少年がポケモンと話せるとは全て信じたわけではない。だがNという前例もあり、アッシュの精神状態からも信じてあげた方がいいと判断したのだ。

 Nという人物は『ポケモンの解放』を訴えるプラズマ団のカリスマだった。プラズマ団自体がカルト宗教の様なもので、Nの持つ魅力に思考を奪われた人々は喜んでポケモンを手放した。

 人と切っても切れない関係を持つポケモン。それを人に手放させるだけのカリスマを持つNなら、彼と同じくポケモンと話せるアッシュに何らかの影響を与えてるはずだ。

 そう考えたベルは、何やらうなされていたアッシュの夢を手持ちのムシャーナに食わせていた。ムシャーナは食べた夢を額から出る煙で実態化させる力がある。

 そこで確認出来たのは、医者の想像通り両親に虐待されるアッシュの姿だった。

 「お母さんとお父さんが相手してくれなかったから、ポケモンと話してた。それでポケモンと話せる様になったんだねえ」

 「どうして…わかるの?」

 アッシュがポケモンと喋れる様になった理由も、同じ夢が教えてくれた。事情を見抜かれたアッシュは戸惑う。ベルは黙って、モンスターボールからムシャーナを出した。ピンク色のポケモンで、アッシュも初めて見るポケモンだ。

 「この子が教えてくれたんだよお」

 ムシャーナはベルの膝の上で寝ていた。額から出て来る煙の中には、屈強そうなポケモン達を蹴散らして山積みにし、その頂上で誇らしげに立ち上がるポカブの姿が見えた。

 「あんたいつの間にあたしの夢食べたのよ」

 夢を食べられた本人であるポカブは呆れていた。とにかく、ベルは何故自分のことがわかったのか、そのカラクリを知ったアッシュは彼女に少し心を許す。ベルのポケモン、ムシャーナやポカブの様子からして、少なくとも悪い人でないのはわかった。

 「うん。お母さんとお父さんはいつも仕事でいないの。休みの日もプラズマ団ってとこの集会に行っちゃって、だからポケモンと遊んでたんだ。家にはお母さんのハハコモリとお父さんのレントラーがいたから。ハハコモリとレントラーは大事なトモダチだったんだ」

 アッシュは事情をベルに打ち明けた。彼の両親は仕事で帰ってこない挙げ句、休みもカルト宗教の集会で家を開けていた。ベルは過保護な父親を一時期は鬱陶しくも思っていたが、それは凄く幸せなことだったのだと再認識した。

 「気付いたら、ポケモンと話せる様になってたんだ。でもそれを二人に言ったら、殴られた。ポケモンと話せるのはN様だけだ、って」

 アッシュは俯き、毛布を強く握りしめて続きを話す。両親の気を引こうとしたら逆効果になってしまったらしい。小さな子供が受け止めるにはあまりに残酷な現実だ。

 「ハハコモリとレントラーもいなくなっちゃったから、2年間寂しかった。プラズマ団が解散してから、お父さんもお母さんもおかしくなっちゃったし。ソウリュウシティには全然ポケモンいないし、だからハハコモリとレントラーを探しに地下鉄に乗ったんだ」

 「そうなのお」

 ベルはアッシュの前髪をかき上げ、驚いた。額の生え際近くに、いくつも火傷の後がある。タバコか何かを押し付けられたのだろう。姿を現した紫色の瞳には涙が貯まっていた。しかし、左の瞳は涙が出ていない。若干、目も開いてない気がする。

 「左目、どうしたの?」

 「へ? そういえば顔殴られてからうまく開かないんだ」

 どうやら、アッシュの左目は殴られた時に潰れてしまったらしい。発見された時は気を失ってたから、医者もこれには気づかなかったらしい。

 事情はこれでだいたいわかった。アッシュは両親がプラズマ団に唆かれて逃がしたポケモンを探して地下鉄に乗ったが、そこで寝てしまったのだ。お腹を空かせてたことから、栄養失調で気を失っていた可能性もある。

 「そうねえ。ハハコモリとレントラーを探したいの?」

 「うん」

 「じゃあ、ポケモントレーナーになろうよお!」

 ベルがいきなり突拍子も無いことを言ったのでアッシュは困惑した。そして彼女はアッシュが状況を整理する前に様々な必要事項を聞いてきた。

 「……?」

 「諦めな。ベルは天然な上にズボラで強引なとこがあるからさ。まあ、質問を答えていこうじゃないさ」

 ポカブはアッシュを諭し、質問に答えさせた。

 「あなた人より小さいから一応確認するけど、10歳以上?」

 「えっと…2年前にハハコモリとレントラーが8歳の誕生日を祝ってくれたから、10歳」

 ベルは最初、アッシュを10歳より年下だと思っていた。だが、どうやら栄養失調で体格に恵まれてないだけみたいだ。

 「出身地は?」

 「ソウリュウシティ」

 「うん、これでトレーナー登録できるね。後は博士に最初のポケモンを貰わないとね」

 色々聞かれ、とりあえず登録はできるようだ。アッシュはとりあえず、ベルに聞いておかなければならないことがあった。

 「……ポケモントレーナーって?」

 「ポケモンを育てる人のことだよお。トレーナーになればポケモンセンターから支援を受けられるから、ポケモンも探しやすくなるよお!」

 とにかく、アッシュはハハコモリとレントラーが探し易くなるという点だけは理解した。それなら成らない手は無い。

 「探しやすく? だったら、なる! ボクがハハコモリとレントラーを見つけてあげるんだ!」

 「決まったねえ。じゃあ、ポケモンセンターのカウンターで出来るから早速しようよお」

 決心を決めたアッシュは、ベルと共に部屋を出て、ポケモンセンターのカウンターに向かう。ポカブは歩いて、まだ寝てるムシャーナはベルに抱かれて移動した。

 ポケモンセンターのエントランスに着いた2人と2匹は物々しい雰囲気を感じた。辺りは夕暮れで、アッシュは眠っていた時間の長さを実感した。

 しかし、外が騒がしい。2人はポケモンセンターから出て、シッポウシティの町並みを確認した。シッポウシティは倉庫が並ぶ町だが、博物館があることでも有名だ。騒ぎはその博物館の方から聞こえてくる。

 喧騒の大元、博物館にアッシュとベルは向かう。すると、怪しげな集団に博物館は囲まれていた。スーツを着た男達が博物館を包囲する。

 「くっ、アロエも研修に来た大学生も留守のタイミングを狙うなんて!」

 博物館の入口には白衣を着た男性、学芸員のキダチがいた。どうやら館長のアロエを初めとする実力者がいないせいで、博物館の防衛はスカスカになっていたらしい。

 「ふはは! 化石になったポケモンを無理矢理復元しようなど許されたことではないのだよ! さあ、復元マシーンを渡したまえ!」

 その集団の中でも、一際老齢な男性が博物館に近付く。ベルはその男性に見覚えがあった。研究者見習いとして日々新聞をチェックするうち、いつの間にか顔を覚えてしまった。特にポケモン研究の予算を削ろうとしてる為だ。

 「あれは……ブルジョワ財閥の会長、ブルジョワ男爵!」

 「ブルジョワ財閥?」

 アッシュは新聞など読まないので、ブルジョワ財閥もブルジョワ伯爵も知らなかった。下手をすれば『財閥』も知らない。しかしブルジョワ伯爵、見れば見るほど太っていて品が無い。太ってるだけならまだ、それが外見を穏やかにして気品を備えた人間もいるのだが。

 「ブルジョワ伯爵ねぇ。あたしも知らないんだ」

 「ならこの説明は私が」

 ポカブもブルジョワ伯爵を知らないのだが、騒ぎに目を覚ましたムシャーナが解説する。

 「ブルジョワ財閥とは、イッシュ最大の財閥です。財閥というのはいくつもの会社が纏まった様なものですね。ブルジョワ伯爵はそこの一番偉い人です。そのブルジョワ伯爵はプラズマ団の理念『ポケモンの解放』に賛成してました」

 「なるほど」

 アッシュが納得してるのを聞いて、ベルはアッシュがポケモンから説明を受けたのだと理解する。だんだん、ベルも半分程度信じてた『ポケモンと喋れる』ということが確証に近付く。

 「さあ、渡さないと博物館に火を付けるぞ! 死んだポケモンを埋葬もせずに飾るなど許されたことではない!」

 スーツの男達は一斉にボールからギャロップとポニータ達を出す。火を纏う馬に攻撃されては、博物館は一たまりも無い。

 「炎タイプか! 水タイプ持ってこい!」

 キダチが敵のタイプを把握し、その弱点である水タイプのポケモンを連れて来る様に指示した。しかし、スーツの男達は同時にゼブライカと複数のシママをボールから出す。こちらは馬でもシマウマだ。

 一匹のギャロップ及びゼブライカをリーダーとするポニータ、シママ軍団は整列して博物館を囲む。

 「水の弱点は電気。無駄だよ、正義は我々にある」

 ブルジョワ伯爵が誇らしげに言うが、アッシュは別のところが気になった。ギャロップをリーダーにするポニータのグループとゼブライカをリーダーとするシママのグループ。その両者が睨み合って見えたのだ。

 「どうしよお……数が多いよ。せめてみんな固まってればムシャーナのサイコキネシスでまとめて倒せるのに」

 「そうだ、もしかして!」

 ポニータ達とシママ達は綺麗に整列してフォーメーションを組む。大所帯ゆえ、一網打尽にされないような陣形を組んだのだ。敵の数に戸惑うベルだがアッシュは何かを思い付き、一斉に博物館を襲い掛かったポケモン達の群れに飛び込む。

 「お、おいアッシュ!」

 「おぅい! どうしたの?」

 ポカブとベルはアッシュのいきなりな行動に驚く。しかし、ポケモンの数が多くてアッシュをすぐに見失ってしまった。

 「よし、いたいた」

 アッシュはまず、ポニータ達のリーダーであるギャロップを見付ける。そして、耳元で囁く。ギャロップは怒った様な表情でゼブライカとシママの方を睨む。アッシュは次にシママ達のリーダー、ゼブライカの方に移動してゼブライカに耳打ちをする。

 「なっ、何をしているお前達!」

 そして、ギャロップを筆頭とするポニータ隊とゼブライカをトップに立てるシママ軍団が喧嘩を始めた。

 「よし、成功」

 「あんた一体何を……」

 アッシュがポカブとベルの下へ帰ってくる。先程までの美しいフォーメーションは乱れ、スーツの男達も喧嘩を止めようと必死だ。

 「え? ギャロップに『ゼブライカがギャロップ達を火だるまって言ってた』って言って、ゼブライカに『ギャロップがゼブライカ達を電池切れって呼んでた』って言ったら見事に喧嘩したよ? なんか雰囲気険悪だったからやってみた」

 ポカブの問いに答えつつ、アッシュはギャロップとゼブライカの喧嘩に耳を傾けた。

 「よくも俺らのことを火だるまとか言ってくれたなこのショート野郎!」

 「テメーこそ俺達を電池切れとかいっただろ!」

 「言ってねーよ!」

 「言っただろ!」

 如何せん、ポニータとギャロップが炎タイプ、シママとゼブライカが電気タイプなのでどちらが強いということもなく、争いは泥沼になっていた。

 「今だよお! ムシャーナ、サイコキネシス!」

 ベルが抱き抱えたムシャーナを投げ上げる。目をつぶっていたムシャーナは目を見開き、溢れるパワーを揉みくちゃになった集団に叩き込む。

 「ジュエルの力でパワー全開!」

 ベルの手には紫色の宝石が握られている。その宝石が輝き、ムシャーナの力を増幅させているのだ。これが、エスパージュエルの力だ。

 「うわああっ!」

 スーツの男達はポケモンもろとも叩き潰された。これで博物館を攻撃しようとしてた奴らは全滅した。

 「この青二才が! ゆけ、テッシード!」

 ブルジョワ伯爵は顔を真っ赤にして怒った。ボールから出て来たのは金属の種、テッシード。それがアッシュに迫っていた。

 「危ない! 火の粉!」

 ポカブはそれを火の粉で撃退する。苦手な炎攻撃を受けたテッシードは、アッシュに迫った二倍の速度でブルジョワ伯爵の下へ戻った。

 「ば、馬鹿そんな熱いまま戻ってくんなぐぎゃああ!」

 火の粉で熱を持ったテッシードの体当たりを受けたブルジョワ伯爵は吹っ飛ばされた。

 「最後まで気を抜かない!」

 「うん、ありがと」

 ポカブから叱咤を受けつつ、アッシュは彼女を抱き上げた。ブルジョワ伯爵は生き残ったスーツの男に運ばれていく。

 「おのれ…覚えていれ青二才! 我々『リベレート団』がポケモンを解放する!」

 そのうわごとを無視して、アッシュは空を見上げた。既に日は落ちて、辺りは真っ暗。しかし、暗い空に煌めく何かをアッシュとポカブは見付ける。

 「あれは……?」

 「鳥か?」

 空に浮かぶのは金色に輝く鳥ポケモン。ベルもそれを見つけ、ポケモン図鑑で確認する。

 『ホウオウ、にじいろポケモン。心正しきトレーナーの前に、七色の翼をはためかせて現れるという』

 「へえ、凄いんだねえ!」

 図鑑にはあまり詳細は書いてなかったが、とにかく普通のポケモンではないのがわかった。アッシュとポカブはただ、羽ばたくホウオウを眺めていた。




 アデクのポケモン講座

 アデク「何故このコーナーをわしが?」
 チェレン「若い人の育成には知識が必要ですので。では、このレバーを引いてそこのモニターに出て来たシルエットのポケモンを解説して下さい」
 アデク「スロットみたいじゃのう」
 チェレン「あ、レバー引く時にピカチュウの鳴き真似するのを忘れないで下さいね。それではよろしくお願いします」
 アデク「ピッピカチュウ!」
 ガチャン
 アデク「今日のポケモンはゆめうつつポケモンのムシャーナじゃ。ムンナが月の石で進化したムシャーナは食べた夢を額から出す煙で実体化するんじゃ。ベルの好きなポケモンでもあるぞ」
 チェレン「では早速、ここにムシャーナがいるので、夢の煙を見てみましょう」
 アデク「誰の夢を食べたんじゃ?」
 チェレン「フウロさん」
 アデク「なんでよりによってぶっ飛んだ人の夢をぶわああ! 凄い風が煙から!」
 チェレン「空を飛んでる夢ですね」
 アデク「だからって上空の風を実体化しなくてもー!」
 チェレン「アデクさん、吹き飛ばされたようだね。じゃあ、みんなもポケモン、ゲットするんだよ」
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