ポケットモンスター 灰色の疾風    作:級長

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 トレーナーカード
 ポケモントレーナー ヒュウ
 キョウヘイとメイの幼なじみ。原作『BW2』に登場。今までのライバルと違い、主人公に勝つことを目標としていない。むしろ、主人公とのバトルは強くなったかの確認である場合が多い。
 PVではダイケンキを使用していたため、パートナーはミジュマルにした。アッシュがミジュマルを選んでもヒュウはミジュマルになってた。すなわち、アッシュのパートナーは影響しない。
 同じ理由でキョウヘイはポカブ、メイはツタージャに。ベルはアニメ基準でパートナーがエンブオー。そのためトウコがダイケンキ、チェレンがジャローダを持つことに。
 手持ち
 フタチマル
 ハトーボー


16.戦場になる町、ヒュウの決意!

 P2ラボ 仮眠室

 

 「んっ、うぅ」

 仮眠室で少女は目を覚ました。布団の中からはい出て、黒髪と頭をふるふる揺らし、眠気を掃う。結局、いろいろ寝方を試したが、何も着ずに布団に包まった方が快適であるという結論に至った。

 「でも、ポケモンセンターではやめた方がいいかも」

 布団の中で脱いだワイシャツを着ながら、彼女は呟く。ゲーチスのプログラムで自動教育された知識が頭に馴染んできた。知識はあるが、経験はまだ乏しい。

 「まだ眠い」

 少女はそのまま、もう一度眠りにつく。二度寝だ。着たワイシャツも結局脱ぐことになった。まだまどろみに耐えてまで起床し、やらねばならないことはない。

 

 前日 ヒオウギシティ 展望台

 

 「そのマチルダってレパルダスの親友を捕まえたのは、多分うちのじいちゃんだ」

 アッシュはヒュウに呼び出され、ヒオウギの展望台に来ていた。ヒカリはポケモンセンターで待っているとのこと。

 「じゃあ今すぐ出しなされすぐ出しなさい!」

 「で、そいつの親友だったんだよな」

 ヒュウはマチルダの親友の消息を事細かに話す。残念ながら、ヒュウにマチルダの言葉はわからない。アッシュにしかマチルダの言ってることはわからないのが現状だ。

 「そのチョロネコは今どこにいます?」

 「いや、今すぐには合わせてやれねぇ」

 アッシュがマチルダの代弁をすると、意外な答えが返ってくる。ヒュウのおじいさんが捕まえたなら、てっきり彼の家にでもいると思っていた。

 「どういうことですの!」

 「どういうことなんです?」

 「そのチョロネコは、5年前にプラズマ団に誘拐されたんだ!」

 マチルダとアッシュが事情を聞くと、出て来たのはプラズマ団の名前。これは根の深い問題だ。アッシュ達が戦っているリベレート団はプラズマ団を信奉している。そのプラズマ団がマチルダの親友をさらったのだ。

 「イッシュラリーのエンブレムを4つも持ってるんだろ? 俺を強くしてくれ! プラズマ団から妹のチョロネコを取り返したいんだ!」

 「と、言われても……」

 ヒュウから強くしてくれと言われても、アッシュはそんなこと頼まれたことが無かったため、どうすることも出来ない。

 「よくわからないけど、ボクもマチルダのトモダチを助けたいから、一緒に旅をすればいいんじゃないかな?」

 「そうか! 待ってろ、今準備する!」

 アッシュは無い知恵を懸命に絞って提案する。断るという選択肢が無い辺り彼らしい。ヒュウは喜び勇んで準備しに、展望台から下りようとした。

 しかし、いきなり展望台の階段が爆発して寸断される。

 「なんだ!」

 「あれだ!」

 戸惑うヒュウ。アッシュはしっかり、爆発の原因を特定していた。空を飛ぶエレブーの群れだ。彼らの雷で爆発したのだ。

 「エレブーが飛んでる?」

 「何か付いてる!」

 そのエレブーはゴーグルを付け、背中にフライトジェットが付いていた。腕にも篭手のようなものがあり、そこからビームを撃ってアッシュ達を攻撃する。

 「マチルダ! バークアウト!」

 アッシュは冷静にマチルダのバークアウトで迎撃。ビームを相殺する。

 「ポケモンに兵器を?」

 アッシュはエレブー達から声を聞こうとした。しかし、何も聞こえない。彼らが話してくれなければ、アッシュには聞けないのだ。

 「君達は何なんだ! トレーナーにやらされてるの?」

 「……」

 「答えてくれない?」

 今までに経験がないことだった。アッシュはポケモンと話す能力でどんなポケモンともわかり合えた。だけど、今回みたいにわかり合おうとしないポケモンは初めてだった。

 「町に火が!」

 ヒュウが町からの出火を確認する。このヒオウギで何が起きているのか。あまりに突然の出来事だった。

 「とにかく下りるぞ!」

 ヒュウは壊れた階段を飛び降りた。一方、アッシュは高いとこが苦手なのか下りられない。柵があるような場所や鳥ポケモンの背中は平気でも、落ちるかもしれないと思うと足がすくむ。

 「早く来いよ! 俺が受け止めてやる!」

 アッシュはヒュウの言葉を信じ、彼目掛けて飛び降りた。同時に、エレブー達が展望台を一斉に攻撃した。アッシュとマチルダは間一髪で危機を回避した。

 「よし!」

 マチルダは難無く着地、アッシュもヒュウに受け止められる。ヒュウはアッシュが思ってたより軽かったので驚いた。

 「お前ちゃんと食ってるか? なんか細いし」

 「昨日もたくさん食べたよ大好物。春雨」

 「よりによって大好物がローカロリー!」

 食事内容を確認したら、まさかの春雨。ダイエット中なのにお菓子をバクバク食べるOLや女子大生が痩せたくて食べるやつの筆頭だ。好物がそんなんプラス少食。これじゃ体重が増えない。

 「あいつら何なんだ?」

 「リベレート団はこんな凄くないし……」

 ヒュウとアッシュは改めて町を襲うポケモンを確認した。地上ではブーバー達が家屋を焼き払う。同じ様な機械がブーバーにも付けられているが、フライトジェットではなく足にローラースケートみたいなやつが付いてるなど変更もある。

 「とにかくやめさせるぞ! フタチマル、任せた!」

 「マイン!」

 2人は互いのパートナーを出し、謎の集団を止めにかかる。この町が戦場になる。それだけは阻止したい。

 「フタチマル、シェルブレード!」

 「マイン、つっぱり!」

 フタチマルのシェルブレードとマインのつっぱりがブーバー達に激突。しかし、つっぱりはダメージを与えたがシェルブレードは効いてない。

 「馬鹿め! こいつらには水タイプ対策をしてある!」

 ブーバーのトレーナーらしき人物が姿を現した。集団で、かつ学校のものらしき制服を着ている。ブレザーに近いだろうか。ブーバー達の装甲に水タイプは効かないらしい。

 「お前らは誰だ!」

 「知る必要は無い!」

 ヒュウの問いに集団の1人は答えない。マインはフタチマルに、ブーバーの腕から剥ぎ取った篭手を渡す。

 「これってビームサーベルになるのか。科学の力って、スゲー!」

 フタチマルはその篭手を付けて戦闘を続行。主力技のシェルブレードが効かないなら仕方ない。篭手からビームの刃が出てくる仕掛けだ。

 「あらら!」

 しかし、エネルギーがすぐ尽きてしまう。ブーバーにしか付けられない仕組みなのだろうか。

 「元よりそんな道具に頼るつもりはねぇ! 弱点があるはずだ、そこを狙え!」

 ヒュウの指示でフタチマルはブーバーに斬りかかる。弱点、すなわちエネルギーパックだ。背中に背負ってる箱から伸びるケーブルを斬ると、エネルギーが供給されなくなって水に対するバリアもなくなる。

 「シャルル! バブルこうせんでフタチマルをサポートして!」

 アッシュはルリリのシャルルを出し、装甲のバリアが無くなったブーバーを追撃させた。炎タイプに水タイプの技は効果抜群だ。

 「装甲があるせいでこいつら避けないぞ!」

 「なら都合がいい!」

 マインとシャルルはブーバーが装甲に今まで頼っていて、回避が出来ないことに気付く。おかげでマインが装甲を潰し、シャルルがトドメを刺す連携が成立しやすい。

 「空からか!」

 空からエレブー達が攻撃を仕掛ける。リーダーらしきエレブーはビームライフルを手にしていた。完全にロボットだ。ヒュウはその攻撃にいち早く反応。フタチマルをハトーボーに乗せて飛ばせる。

 「町の地理なら俺達の方が詳しい! 任せたぜ相棒!」

 「小癪な、やっちまえエレブー!」

 町を飛行するフタチマルとハトーボーをリーダーのエレブーが追う。ライフルを連射しても、フタチマルに当たらない。普通の電撃なら電気が体に誘導されて当たり易かっただろう。ライフル故の失敗だ。

 だが路地に来たところでフタチマルがブーバーから奪った篭手をエレブーの顔面に投げつけ、視界を塞ぐ。エレブーがそれを払いのける頃には、フタチマルとハトーボーが消えていた。

 『ゴーグルにはサーモ機能がある!』

 エレブーのトレーナーが無線で指示を出す。エレブーはサーモ機能を使い、体温を元にフタチマルとハトーボーを飛びながら探す。検証番組でありがちな、温度を映すカメラだ。

 建物の陰から飛び出るハトーボーのシルエットを見つけたエレブーはそちらを見る。サーモ機能を切ると通常の視界に戻るが、ハトーボーの背中にフタチマルはいない。

 『何!』

 エレブーのトレーナーは驚いた。そして、下からジャンプして現れたフタチマルにもう一度驚く。

 「シェルブレード!」

 ヒュウは追いかけてないからフタチマルの現状などわからないが、直感で技名を叫ぶ。

 フタチマルのシェルブレードにエレブーは倒された。ポケモンの能力を信じるか信じないかの差が出た結果だ。

 ブーバー軍団もアッシュに全滅の憂き目を見た。よりによって面倒になったアッシュがゴーゴートのトーゴを出して力づくで壊滅させた。ウッドホーンは草技だから効果は今ひとつと思いきや、それで十分倒せた。なんと弱いブーバーだろうか。

 「お前達の目的はなんだ!」

 「言えるか!」

 ポケモンが全滅したトレーナー達を拘束し、ヒュウは尋問を始めた。何処からか机と電気スタンドを持ち出し、まるで刑事ドラマさながらの取り調べだ。

 「吐け! 吐くんだ!」

 「まあまあ、ヒュウさん」

 そこにヒカリが合流して加わる。カツ丼を差し出し、流れに乗っていた。刑事のコスプレまで完璧。コンテストの衣装にあったのだろうか

 「大丈夫刑事……」

 「食べな」

 「フン」

 それでもトレーナーは口を割らない。これまたいつの間にか屋外なのに用意されていたブラインドをヒカリは指で開き、外を見る。自分がいるところも外だが。

 「故郷にお袋さんがいるんだろ? 聞いたら悲しむぜ」

 この流れにアッシュは完全放置。トレーナーの表情が変わった。

 「話しちまえよ。楽になるぜ?」

 「ぐっ……」

 こうしてヒカリの手により、トレーナーは口を割った。この茶番にも意味はあったのだと信じたい。

 

 「トレーナーズスクールの破壊が奴らの目的だ! 急ぐぞ!」

 「うん!」

 「ええ!」

 情報を聞き出したヒュウ、アッシュ、ヒカリはトレーナーズスクールに急ぐ。チェレンがいるから大丈夫とは思うが、一応加勢に行く。

 「いた!」

 スクールではチェレンが1人でトレーナーを倒していた。オノノクスにギガイアスと、本気のチェレンにトレーナーはなす術もない。

 「全く、数が多くてメンドーなんだから」

 チェレンは『メンドー』と言ってる時ほど頑張ってる印象だが、今回ばかりは本気で面倒臭そうだった。

 エレブー達はギガイアスに撃ち落とされ、そこから丁寧に撃たれた地面技で薙ぎ倒される。ブーバーはオノノクスにフルボッコ。

 「国に帰るんだな」

 「畜生! スクールも出てないくせに! ギンさん、やっちゃって下さい!」

 涙目のトレーナー達はリーダーのギンに助けを求める。制服こそ同じだが、付いてる勲章が違いを出す。銀髪の男だった。

 「あれ? 何処かで見た様な……」

 アッシュはギンの顔を見て、首を傾げた。似た顔立ちをした人物を見た様な気がしていた。最近会った人なのは確かだが、誰かはわからない。アリスの兄がブルジョワ伯爵に仕えてると聞いたが、アリスは金髪なので違う。

 「うーん。ボンヤリとしか顔見てないから断定出来ないけど……もしかしたらエ」

 「ラグラージ! まずはあのガキから潰すぞ!」

 思案の最中であるアッシュを狙い、ギンはラグラージに攻撃させる。トーゴがウッドホーンで食い止めたため、事なきを得た。

 「邪魔だ!」

 「なら俺を退かすんだな!」

 トーゴはラグラージを食い止め、軽口を返す余裕。ラグラージが全力なのに、彼は本気じゃなかった。

 「ギンさんの切り札ラグラージを?」

 「馬鹿いえ、まだ調整中なだけだ。運のいいガキめ」

 取り巻きのトレーナーが慌てる中、ギンは落ち着いていた。ラグラージはまだ調整中とのことだが、切り札が未だ調整中とは奇妙だ。

 「シャンデラ、焼き払え!」

 「フタチマル、みずてっぽう!」

 ギンはトーゴをシャンデラで倒すことにした。しかし、横からヒュウのフタチマルが割り込んで炎を止める。

 「そいつも調整中とは運のいい」

 「言い訳だろ」

 ギンの調整中は言い訳に過ぎないと、チェレンは気付いていた。いくら調整中でもシャンデラの炎がみずてっぽうで止まりはしない。

 「この場は貴様らの運に免じて預けておく。しかし、いずれジキル博士の野望は成立する。リベレート団もプラズマ団も、我々選ばれしエリートの糧に過ぎん!」

 ギンはその場からトレーナー達を連れて離れた。分が悪くなったから逃げたとチェレンは判断する。素直に逃げると言えない辺り、彼らのエリート主義が垣間見える。

 「あいつら……」

 「おーい! 大丈夫か?」

 立ち去った集団をヒュウが見つめてると、1人の少年がやってきた。ガブリアスとカイリューを連れており、アデクに髪型が似てる。

 「アデクさん? これはまた若く……」

 「違う。俺はバンジロウだ」

 アッシュはてっきり若返ったアデクだと思っていたが、少年はアデクの孫のバンジロウだ。

 「アデクは俺のじいちゃん」

 「ビックリした。あんまりにもそっくりだもの」

 「それより、騒ぎは……」

 「わぁ、凄い! ガブリアスだ!」

 「話をだな……」

 バンジロウはアッシュに終始翻弄されていた。既にアッシュの興味はガブリアスへまっしぐらだ。

 「トモダチにいたんだよ。でも色が違うかも。もしかして色違い?」

 「お前の友達が色違いだよ」

 普段は周りを振り回すバンジロウが今日ばかりは形無しだ。

 「新しい組織が現れて深まる謎、ってところね」

 「あの制服、どこかで見たんだよ」

 ヒカリとチェレンは謎の集団について考えた。制服を着てるということは、学生なのだろうか。スクールを狙う理由がわかれば、正体に近づけるだろう。

 「プラズマ団、リベレート団は同じものとしてカウントしよう。あの組織だけが別枠か。またメンドーだね」

 「とりあえず、正体がわかってるその2つだけでも何とかしたい」

 アッシュはプラズマ団とリベレート団を両方潰すつもりでいた。マチルダの親友を救うため、レントラーを探すためにはそれが1番早い。

 「なら一緒にプラズマ団を潰そうぜ! 目的も一緒だしな!」

 「うん」

 ヒュウはアッシュと共同戦線を組むことにした。目的が同じ同士である。組んだ方が有利になると判断したのだ。

 新たにヒュウを加え、謎の組織も現れ混迷を極めるイッシュを旅するアッシュ。彼を待ち受けるのは何であろうか。




 トレーナーズスクール
 各地にあるトレーナーを養成する学校。イッシュにはヒオウギとサンヨウの二カ所ある。ホウエンはカナズミにあり、出身者がジムリーダーを勤めてるため有名。
 トレーナーズスクールを卒業しなくてもトレーナーになれるが、知識を得れる貴重な場所でもある。また、世界にはべらぼうに学費が高く、選ばれた人間しか通えないエリートスクールなるものがあるとか。
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